説明

回転打撃式削孔装置

【課題】限られた外径の範囲内で、必要な軸剛性を保持しながらピストンハンマの質量をより効果的に大きく設定することができ、大きな打撃力を得ることが可能であり、しかも安定的な進退動作が得られるように改良した回転打撃式削孔装置を提供する。
【解決手段】削孔ビット4に対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置において、前記ダウンザホールハンマのピストンハンマ1の両側をシリンダ2の内面に摺接可能な大径部13,14とするとともに、それらの大径部13,14の間をシリンダ2の内面に接触しない小径部12とし、両側の大径部13,14の外周面をシリンダ2の内面に摺動させてピストンハンマ1を動作方向の両側で支持した状態で進退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進退可能に構成された削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式の削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の削孔ビットに対して回転力と打撃力を付与して掘削を行う回転打撃式の削孔装置における打撃力の付与の仕方は、トップハンマ方式とダウンザホールハンマ方式に大別される。後者のダウンザホールハンマ方式は、先端の削孔ビットを直接的に打撃することから、掘削性能が高く、大深度削孔にも有効である。ところで、このダウンザホールハンマ方式を採用する回転打撃式削孔装置において、ピストンハンマ作動用の流体通路を合理的に配置することによりシリンダの外径の縮小を試みた従来技術が開示されている(特許文献1)。しかしながら、この従来技術は、流体通路の設置スペースが狭く、充分な通路面積を確保しにくいだけでなく、小口径でありながらピストンハンマの質量を増やして強力な打撃力が得られる構造にはなっていなかった。したがって、得られる打撃力の限界から削孔径の縮小化も制約を受けるという技術的問題があった。
【特許文献1】特開平6−73971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて開発したもので、限られた外径の範囲内で、必要な軸剛性を保持しながらピストンハンマの質量をより効果的に大きく設定することができ、大きな打撃力を得ることが可能であり、しかも安定的な進退動作が得られるように改良した回転打撃式削孔装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、請求項1の発明では、削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置において、前記ダウンザホールハンマのピストンハンマの両側をシリンダ内面に摺接可能な大径部とするとともに、それらの大径部の間をシリンダの内面に接触しない小径部とし、前記両側の大径部の外周面をシリンダ内面に摺動させることにより前記ピストンハンマを動作方向の両側で支持した状態で進退させるという技術手段を採用した。なお、前記シリンダの両側の前記ピストンハンマとの摺接部は、異なる内径からなる形態も可能であり、その場合にはそれらの内径の異なるシリンダの摺接部に対してそれぞれ摺動し得るように、前記ピストンハンマの両側の大径部も異なる外径から構成されることになる(請求項2)。さらに、前記ピストンハンマの大径部の外周部に気体流通溝を形成して、その大径部と前記シリンダ内面との摺接長を大きく設定することも可能である(請求項3)。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)請求項1の発明によれば、ピストンハンマを両側の大径部を介してシリンダ内面に摺接するように構成したので、ピストンハンマの支持状態が非常に安定化されるとともに、それらの大径部相互間を小径部としてシリンダ内面に接触しないように構成したので、シリンダ内面との摩擦抵抗を縮小できる。
(2)ピストンハンマを両側の大径部とその中間の小径部から構成するようにしたので、限られた外径の範囲内で、小径部の長さの設定を介して軸剛性を保持しながらピストンハンマの質量をより効果的に大きく設定することができ、強力な打撃力が得られるとともに、きわめて安定的な進退動作が可能である。したがって、小口径用の回転打撃式削孔装置にきわめて有効である。
(3)さらに、大径部相互間の小径部とシリンダ内面との間隙部を気体の流通路として活用することも可能である。
(4)請求項2の発明のように、シリンダが異なる内径の組合わせからなる場合にも、それに合わせて両側の大径部の外径を設定することにより簡便に対応することができる。
(5)請求項3の発明のように、ピストンハンマの大径部の外周部に気体流通用の溝を形成して、その大径部と前記シリンダ内面との摺接長を大きく設定するようにすれば、ピストンハンマの更に安定的な進退動作が得られるとともに、ピストンハンマの質量を効果的に増やして更に強力な打撃力を得ることが可能である。延いては、この場合にも小口径用の回転打撃式削孔装置としてきわめて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は小口径用の回転打撃式削孔装置としてきわめて有効であるが、種々の口径用としても適用が可能である。また、単体の削孔ビットを使用する単管削孔装置としても、インナービットとその外周部に配設されたアウタービットを使用する二重管削孔装置としても適用が可能である。要は、削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置であれば、シリンダやピストンハンマの径如何や、削孔ビットの形態如何に関わらず、広く適用することが可能である。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の一実施例の要部を示した縦断面図である。図中1はピストンハンマで、シリンダ2の内部に摺動可能に嵌装されている。シリンダ2の先端部には、そのシリンダ2の端部に螺着された案内支持部材3を介して削孔ビット4が進退可能に嵌装されており、該削孔ビット4の後端部をピストンハンマ1により打撃することにより打撃力が伝達されるように構成されている。削孔ビット4の先端部には複数個の削孔用チップ5が備えられており、内部にはエア流通用の内部流通路6が形成されている。この内部流通路6の上流側はバルブ細管7を介してピストンハンマ1の内部に形成された内部流通路8に対して嵌入・脱離可能に構成され、下流側は流出孔9を介して外部に連通されている。また、削孔ビット4は案内支持部材3の内面との間に形成されたスプライン結合によって前後方向のみ摺動可能に案内され、シリンダ2の回転動作によって共に回転するように構成されている。削孔ビット4の後部外周面には、凹部10が形成されており、シリンダ2側に固定された係止部材11との係合によって削孔ビット4のストロークが規制されるように構成されている。
【0008】
前記ピストンハンマ1は、中央部の小径部12と両側の大径部13,14から構成され、前方の大径部13をシリンダ2の内面に摺接するとともに、後方の大径部14をシリンダ2の後端部に螺入された給気管15の連結部16の内面に摺接することにより、ピストンハンマ1を両側で軸線方向に進退可能に支持している。本発明は、このピストンハンマ1の両側の大径部13,14をシリンダ2の内面に摺接し、それらの大径部13,14の中間部の小径部12をシリンダ2の内面から離間した状態で進退させるように構成した点に特徴を有し、これによりピストンハンマ1の動作方向の両側が支持された状態で摺動されるので、進退動作が大幅に安定化されるとともに、シリンダ内面との摩擦抵抗を縮小できる。また、小径部12の長さを長く設定することにより、軸剛性を保持しながらピストンハンマの質量をより効果的に大きく設定することができるので、強力な打撃力を実現できるとともに、きわめて安定的な進退動作が可能である。したがって、小口径用の回転打撃式削孔装置としてきわめて有効である。因みに、本実施例では、シリンダ2の後方部に給気管15の連結部16が内装され、シリンダ2の後方部の内径が縮径される結果、シリンダ2の両側のピストンハンマ1との摺接部の内径が異なるものとなり、それに応じてピストンハンマ1の両側の大径部13,14も異なる外径からなる場合を示したが、これに限定されるものではなく、シリンダ2と両側のピストンハンマ1との摺接部が同じ径からなる形態にも適用が可能であることはいうまでもない。そして、給気管15からは加圧エアが供給され、バルブシート17に接離可能に配設された逆止弁18を介してバルブ室19に流入した後、シリンダ2と給気管15の連結部16との間に形成された連通路20を経て給気口21から給気されるように構成している。なお、逆止弁18の背圧側にはバネ材22が配設されるとともに、バルブ細管23が一体的に形成されており、ピストンハンマ1の内部流通路8に対して嵌入・脱離可能に構成されている。
【0009】
次に、加圧エアの流れと共にピストンハンマ1の打撃動作に関して説明する。しかして、図1に示した削孔ビット4の前進状態から地盤からの反力によって、図2のように削孔ビット4がシリンダ2に対して相対的に後退(図において上動)した場合には、前記給気口21からピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24へ加圧エアが流入し、さらにピストンハンマ1の大径部13の外周面の後半部に形成された気体流通用の縦溝25及びシリンダ2の内周面に形成された凹部26を経てピストンハンマ1と削孔ビット4の後端部との間に流入し、図3に示したようにフロントチャンバ27を拡大しながらピストンハンマ1を後退させることになる。以上のように、本実施例では、小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24が加圧エアの流通路として活用されている。また、図1に示したように、前記凹部26は、前進状態の削孔ビット4の後端部から離れた位置まで形成し、その凹部26が形成されていない部分をクッション室として構成している。これにより、後述のように、軟弱な地盤の掘削時における装置の損傷を軽減することが可能である。
【0010】
しかして、上述のように、図2においてピストンハンマ1と削孔ビット4の後端部との間に加圧エアが供給されると、図3に示したようにフロントチャンバ27が拡大し、ピストンハンマ1が後退する。この図2から図3へのピストンハンマ1の後退動作においては、ピストンハンマ1の後方のリアチャンバ28がピストンハンマ1の内部流通路8、削孔ビット4の内部流通路6及び流出孔9を介して外部へ開放されているので、ピストンハンマ1はスムーズに後退する。そして、やがて図示のように縦溝25が凹部26から外れると、フロントチャンバ27への加圧エアの供給が停止され、同時にピストンハンマ1の内部流通路8の後端側にバルブ細管23が嵌入し、リアチャンバ28が密閉される。因みに、この状態においても、フロントチャンバ27には加圧エアが充満されているので、ピストンハンマ1は、リアチャンバ28を圧縮しながら後退動作を継続する。
【0011】
そして、図4の状態に至ると、ピストンハンマ1の後方の大径部14が給気管15の連結部16の内面に形成した凹部29内に位置し、給気口21からの加圧エアがその大径部14と凹部29との間隙を介してリアチャンバ28に流入する。そして、さらにピストンハンマ1が後退すると、図5のように大径部14により後方のクッション室30が密閉され、ピストンハンマ1に対する前進方向への押圧力が急増する。同時に、前方のバルブ細管7がピストンハンマ1の内部流通路8から抜けて脱離するので、フロントチャンバ27内の加圧エアはバルブ細管7、削孔ビット4の内部流通路6及び流出孔9を介して外部へ放出され、フロントチャンバ27の内圧は激減する。その結果、ピストンハンマ1は前進動作に切替えられる。
【0012】
しかる後、ピストンハンマ1の前進動作が図6の状態まで進むと、給気口21からの加圧エアがピストンハンマ1の大径部14と前記凹部29との間隙を介してリアチャンバ28に流入し、リアチャンバ28内の内圧が急増する結果、ピストンハンマ1の前進動作が加速される。因みに、この時点で、ピストンハンマ1の内部流通路8の前端側にバルブ細管7が嵌入して、フロントチャンバ27が密閉される。その後、図7に示したようにピストンハンマ1が前進して大径部14と前記凹部29との間隙が遮断されても、フロントチャンバ27内は低圧のままであることから、リアチャンバ28内の加圧エアによりピストンハンマ1の前進動作が継続される。
【0013】
そして、図8に示したように、ピストンハンマ1の前方の大径部13に形成した縦溝25とシリンダ2の内周面に形成された凹部26との連通が開始されると、給気口21からピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24を介して供給される加圧エアがフロントチャンバ27へ流入して、ピストンハンマ1の後退動作への切替えの準備に入る。因みに、このフロントチャンバ27への加圧エアの流入によりピストンハンマ1の前進動作に対してブレーキがかかることになるが、この時点では、ピストンハンマ1はそれ自体の慣性によって高速での前進動作を維持するように各部の寸法が設定されている。
【0014】
しかして、ピストンハンマ1が高速で更に前進すると、図9に示したように削孔ビット4の後端面を打撃することになる。この打撃の瞬間におけるピストンハンマ1と削孔ビット4との間のエアは凹部26側へ逆流したり削孔ビット4の外周部のスプライン結合部から逃げることになる。なお、この打撃動作の際には、後方のバルブ細管23はピストンハンマ1の内部流通路8の後端側から抜けて脱離した状態にあり、リアチャンバ28は内部流通路8、削孔ビット4の内部流通路6及び流出孔9を介して外部へ開放された状態にある。そして、硬質の地質部分を掘削中の場合には、掘削量が小さいことからピストンハンマ1の打撃を受けても削孔ビット4はあまり前進しない。しかも、図9の状態では給気口21がピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24に連通した状態にあり、打撃後のピストンハンマ1と削孔ビット4との間には加圧エアが供給され続けるので、更に以上の図2〜図9の動作を繰返すことになる。
【0015】
これに対して、軟弱な地質部分を掘削する場合には、1回の打撃毎の掘削量が大きく、図9に示したようにピストンハンマ1が高速で削孔ビット4の後端面を打撃すると、削孔ビット4は図10に示したように前進する。この図10の場合には、給気口21とピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24との連通が大径部14により遮断された状態にある。さらに、以上の打撃動作を再度実行させるには、装置を押込んで地盤からの反力により削孔ビット4をシリンダ2に対して相対的に後退(図において上動)させて、前記給気口21と間隙24を連通させることにより可能である。
【0016】
ところで、この地質が軟弱な場合の掘削においては、図8に関して説明したようにフロントチャンバ27へ加圧エアが供給された際に、その加圧エアによって削孔ビット4が前進してしまうこともある。また、打撃時のピストンハンマ1と削孔ビット4との間のエアの圧力上昇や、打撃タイミングのずれなどによって打撃位置が前方(図において下方)にずれることがある。このような場合には、地盤からの反力が弱いため、削孔ビット4に作用した打撃力を前記係止部材11を介して装置側で受止めなければならないことから装置が損傷を受けやすい。本実施例では、この装置の損傷を軽減するため、図11に示したように、凹部26が形成されていない前方の部分をクッション室31として構成するという技術手段を採用した。すなわち、図示のように、ピストンハンマ1の前進に伴って削孔ビット4の後端面との間に閉じられたクッション室31が形成されるので、そのクッション手段としての緩衝機能により削孔ビット4に対する打撃力が緩和され、装置が損傷から保護されることになる。なお、クッション室31内のエアはやがて削孔ビット4の外周部のスプライン結合部から漏出することになる。因みに、このクッション手段としては、バネ材等の弾性手段を付設する形態も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の要部を示した縦断面図である。
【図2】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図3】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図4】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図5】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図6】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図7】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図8】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図9】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図10】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図11】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1…ピストンハンマ、2…シリンダ、3…案内支持部材、4…削孔ビット、5…削孔用チップ、6…内部流通路、7…バルブ細管、8…内部流通路、9…流出孔、10…凹部、11…係止部材、12…小径部、13,14…大径部、15…給気管、16…連結部、17…バルブシート、18…逆止弁、19…バルブ室、20…連通路、21…給気口、22…バネ材、23…バルブ細管、24…間隙、25…縦溝、26…凹部、27…フロントチャンバ、28…リアチャンバ、29…凹部、30,31…クッション室



【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置において、前記ダウンザホールハンマのピストンハンマの両側をシリンダ内面に摺接可能な大径部とするとともに、それらの大径部の間をシリンダの内面に接触しない小径部とし、前記両側の大径部の外周面をシリンダ内面に摺動させることにより前記ピストンハンマを動作方向の両側で支持した状態で進退させるように構成したことを特徴とする回転打撃式削孔装置。
【請求項2】
前記シリンダの両側の前記ピストンハンマとの摺接部が異なる内径からなり、それらの内径の異なるシリンダの摺接部に対してそれぞれ摺動し得るように、前記ピストンハンマの両側の大径部が異なる外径からなることを特徴とする請求項1に記載の回転打撃式削孔装置。
【請求項3】
前記ピストンハンマの大径部の外周部に気体流通用の溝を形成し、その大径部と前記シリンダ内面との摺接長を大きく設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転打撃式削孔装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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