説明

回転操作型電子部品

【課題】操作部に回転軸の軸線以外の方向から加重がかかった場合でも操作つまみが規定量以下に沈み込むようにできる回転操作型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の回転操作型電子部品1は、回転軸22の操作部22aが操作つまみ30の段付き凹部30aの最端部周辺部と嵌合するフランジ部22fを有し、このフランジ部22fが回転軸22の操作部22aが破断する際に操作つまみ30の段付き凹部30a部の最端部周辺が回転軸22の軸線方向と直交する軸線方向へ移動を規制するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーオーディオなどの車載用電子機器の入力操作部に使用される回転操作型電子部品である。
【背景技術】
【0002】
車載用電子機器に搭載される回転操作型電子部品において、この部品の操作パネル面から突出長が大きいと車両衝突などの事故発生時に乗員が負傷する可能性がある。
【0003】
そこで、回転操作型電子部品の操作パネル面からの突出長が所定の長さ以下となるように要求される場合がある。例えば、欧州の車載用電子機器では回転操作型電子部品の突出長が規定長以下となるように定められている。
【0004】
しかし、回転操作型電子部品の突出長が所定の長さ以下であると操作し難いため、突出長が所定の長さより突出することが許容されている。ただしこの場合、事故発生時の安全保障のために、回転操作型電子部品に所定量以上の加重が加えられると、突出した回転操作型電子部品の突出部分が規定長以下にまで沈み込むことが要求される。例えば、所定量以上の加重とは欧州の車載用電子機器では37.8daN下であり、規定長は9.5mm以下である。従来の回転操作型電子部品としては上記要求を満たすために以下のようなものがある。
【0005】
従来の回転操作型電子部品としては、回転軸の操作部を回転操作することで電気信号を発生する回転操作型電子部品であって、略円筒形の操作部を棒状の中間部の上方端部に有した回転軸と、中央に下方開口の段付き凹部を有しこの段付き凹部の段部から下方が回転軸の操作部に嵌め込まれた操作つまみとを備えており、回転軸は操作部と中間部とが薄肉の連結部を介して一体に形成されており、操作部に加わる回転軸の軸線方向からの所定以上の荷重に対し連結部で破断するものがある。
【0006】
以上の構成により所定量以上の加重が操作部分に加わった際に突出した操作部が沈み込むため、搭載
される電子機器の操作つまみの沈み込み量を確保できるようになっている。
【0007】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−170399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実際の車輌の操作つまみは様々な角度にて車両に取付けられている。このため、操作つまみにかかる荷重の方向は搭載角度によって異なる。
【0010】
従来の回転操作型電子部品は、操作部に回転軸の軸線方向からの所定以上の荷重がかかると連結部で破断することにより所定量以上の加重が加わった場合に突出した操作つまみが規定量以下に沈み込むものであった。しかし、従来の回転操作型電子部品は「操作部に回転軸の軸線方向から」所定以上の荷重が掛かると規定量以下に沈み込むものであったが
、「操作部に回転軸の軸線以外の方向から」加重がかかると規定量以下に沈み込まないという課題があった。
【0011】
例えば、操作つまみが操作パネル面に垂直な軸に対して30度の角度を持って取り付いているときに、操作パネル面に垂直な方向に操作つまみに加重がかかった場合、操作つまみの段付き凹部の最端周辺部分に操作部に回転軸の軸線以外の方向への加重がかかる。この場合は、sinθ(θ=30度)の加重が、操作部に回転軸の軸線方向と垂直となる軸線方向にかかる。操作つまみの段付き凹部の最端周辺部分には通常、回転軸の操作部に嵌め込みを容易にするための切り欠き(以下、「スリット」と称する)が形成されている。操作つまみの段付き凹部の最端周辺部分に操作部に回転軸の軸線以外の方向への加重が加わると、この加重によりスリットが開いてしまうため規定量以下に沈み込まなくなってしまうという課題があった。
【0012】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、操作部に回転軸の軸線以外の方向から加重がかかった場合でも操作つまみが規定量以下に沈み込むようにできる回転操作型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、回転軸の操作部が操作つまみの段付き凹部と最端部周辺部と嵌合するフランジ部を有し、このフランジ部が回転軸の連結部が破断する際に操作つまみの段付き凹部の最端部周辺が回転軸の軸線方向と直交する軸線方向へ移動を規制するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フランジ部が回転軸の連結部が破断する際に操作つまみの段付き凹部の最端部周辺が回転軸の軸線方向と直交する軸線方向へ移動を規制するため、操作部に回転軸の軸線以外の方向から加重がかかった場合でも操作つまみが規定量以下に沈み込むようにすることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態における回転操作型電子部品の組立斜視図
【図2】同断面図
【図3】同要部である回転軸を説明するための図
【図4】同要部である操作つまみを回転軸に挿入した後の嵌合状態について説明するための図
【図5】同要部である操作つまみを回転軸に挿入する際の挿入状態について説明するための図
【図6】同要部である操作つまみに加重が印加された加重状態について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の回転操作型電子部品について、図1〜図3を用いて説明する。図1は本発明の一実施の形態における回転操作型電子部品の組立斜視図、図2は同断面図である。また、図3は回転軸を説明するための図である。
【0017】
回転操作型電子部品1は、回転軸22の操作部22aを回転操作することで電気信号を発生させるものである。回転操作型電子部品1は、軸受21、回転軸22、および、操作つまみ30にて構成される。回転操作型電子部品1の操作者が使用する部分が操作パネル31から突出している。
【0018】
軸受21は、筒状の中孔21aを有している。回転軸22は、略円筒形の操作部22aを棒状の中間部22bの上方端部に有している。この回転軸22の中間部22bが中孔21aに回転可能に組み合わされている。
【0019】
操作つまみ30は、中央に下方開口の段付き凹部30aを有している。この段付き凹部30aの段部から下方が回転軸22の操作部22aに嵌め込まれている。
【0020】
操作パネル31は、回転操作型電子部品1が実装される装置の操作者側の筐体である。回転操作型電子部品1の操作者は操作つまみ30を回転させることで種々の操作を行うことができる。
【0021】
以下、各部の構成について詳細に説明する。
【0022】
軸受21は、円筒状の筒状部21aを有する。回転軸22は、軸受21の上方に位置した上端の操作部22aと、略棒状の中間部22bとを有する。断面円形の中間部22bが軸受21の筒状部21aの上部で回転動作ならびに上下動作可能に嵌合支持される。
【0023】
回転軸22の中間部22bと操作部22aとは、軸受21に嵌合支持され、この筒状部21aから突出した中間部22bの上端部分が連結部22cとなって略円筒形の操作部22aの内壁部分と繋がった構成としている。
【0024】
回転軸22は、この操作部22aと中間部22bとが薄肉の連結部22cを介して一体に形成されており、操作部22aに加わる回転軸22の軸線方向からの所定以上の荷重に対し連結部22cで破断するようになっている。
【0025】
この連結部22cは、円形の略平板形状で、円形の外縁に近づくに従って上下方向の厚みが薄くなるように形成されて操作部22aと繋がっているものとしている。なお、リング状で設けられている最も薄肉の厚み箇所の厚みは、全周に亘って一律な厚みのものとしている。
【0026】
連結部22cの最も薄肉の位置は、軸受21の筒状部21Cの外径より大きい箇所でなるものとして設定している。したがって、略円筒形の操作部22aの内径も軸受21の筒状部21C外径より大きくなっている。
【0027】
回転軸22の操作部22aはその最下端部周辺に軸受21と反対の方向に開口した凹部22eを有する。この凹部22eは、後述する操作つまみ30が有する凸部30cと嵌合して、操作つまみ30が回転軸22から操作パネル31への方向に外れるのを防止するための機能をなすものである。
【0028】
また、回転軸22の操作部22aは、その最下端部周辺に、操作つまみ30の段付き凹部の最端部に嵌め込むフランジ部22fを有する。このフランジ部22fは、回転軸22の連結部22cが破断する際に操作つまみ30の段付き凹部の最端部周辺が回転軸22の軸線方向と直交する軸線方向へ移動を規制するように構成されている。
【0029】
図3に示すように、回転軸22の操作部22aが有するフランジ部22fは、操作つまみ30の段付き凹部30aの最端部周辺を、その周囲に対して軸受21と反対の方向にて嵌め込む形状となっている。ここで「周囲」とは、フランジ部22fが、凹部30aの最端部周辺の全周囲を嵌め込む形状でもよいし、図3に示すようにフランジ部22fが操作部22aの断面の中心点を通る直線上にある2箇所で嵌め込む形状であってもよい。
【0030】
回転軸22の操作部22aには操作つまみ30が装着され、電子機器の操作パネル31から上記操作つまみ30の上方部分が突出している。この操作つまみ30は、電子機器の利用者が指でつまんで操作しやすい寸法である15mm程度、操作パネル31から突出している。
【0031】
操作つまみ30は、下面中央に下方開口の段付き凹部30aを有しており、その段付き凹部30aの段部から下方が操作部22aの外周を覆うように嵌め込まれている。そして、上記段部から上方の凹部は内径が上記操作部22aの内径と同じ大きさかそれより大径に形成され、かつ深さが後述する操作つまみの沈み込み量より深く設けられている。
【0032】
操作つまみ30は、その段付き凹部30aの段部から下方が回転軸22の操作部22aに嵌め込まれている。回転軸22の操作つまみ30の段付き凹部30aの最端部周辺であり、操作部22aに接する部位をリブ30bと呼ぶ。
【0033】
このリブ30bの段付き凹部30aの最端部には、軸受21へ向かう方向へ突出した凸部30cが形成される。この凸部30cは操作部22aに形成された凹部22eと嵌合する。
【0034】
また、リブ30bの一部は切欠き(スリット部30d)が形成される。操作つまみ30を回転軸22の操作部22aへ嵌め込む際に、操作部22aと凸部30cが干渉するが、操作つまみ30のリブ30bに形成したスリット部30dが一旦開く。
【0035】
その後、凸部30cと凹部22eとが嵌合することで、スリット部30dは、操作つまみ30の取付け前の広さまで閉じる。このようにスリット部30dを設けることにより、円滑に操作つまみ30を取付けることができる。
【0036】
以上のように構成された回転操作型電子部品1について、図4〜図6を用いてその動作を説明する。図6は操作つまみ30に角度θから荷重を加えられた際の断面図である。図4は回転操作型電子部品1の嵌合状態を、図5は挿入状態を、図6は加重状態を説明するための図である。
【0037】
ここで、「嵌合状態」は操作つまみ30を回転軸22に取付後、加重がかかる前の状態を、「挿入状態」は操作つまみ30を回転軸22に取付ける途中の状態を、「加重状態」は操作つまみ30に加重がかっかっている状態をいう。以下、この3つの状態について説明する。
【0038】
図4は嵌合状態におけるリブ30bの断面図である。この凸部30cは操作部22aに形成された凹部22eと嵌合している。操作つまみ30の段付き凹部30aの最端部がフランジ部22fに嵌め込まれている。
【0039】
このフランジ部22fと段付き凹部30aの最端部とは、軸受21から反対方向に寸法Aのクリアランスを有している。寸法Aのクリアランスは、操作つまみ30を回転軸22の操作部22aに嵌合させる際にスリット部30dが開くが、この開きを許容するための余裕隙間となる。
【0040】
また、リブ30bがフランジ部22fと干渉せずに組み付くためには、この寸法Aにおいてクリアランスが確保されていることが必要となる。この寸法Aは、例えば、0.5mm程度である。
【0041】
また、フランジ部22fの操作つまみ30の段付き凹部30aの最端部周辺が回転軸2
2の軸線方向と直交する軸線方向へ移動を規制するために、寸法Cの高さ嵌め込み壁を有する。
【0042】
図5は挿入状態におけるリブ30bの断面図である。操作つまみ30を回転軸22に取付けを開始すると、操作部22aと凸部30cが干渉するが、操作つまみ30のリブ30bに形成したスリット部30dが一旦開く。この状態が図5の挿入状態である。その後、凸部30cと凹部22eとが嵌合することで、スリット部30dが操作つまみ30の取付け前の広さまで閉じる。
【0043】
図6は加重状態におけるリブ30bの断面図である。加重状態とは、図2に示すように、例えば、回転軸22の軸線の方向に対して角度θにて加重がかかった状態である。
【0044】
操作つまみ30に回転軸22の軸線以外の方向への加重Pがかかった場合、リブ30bには、この加重Pの回転軸の軸線方向と垂直となる軸線方向への分力P*sinθの荷重が図2の矢印Kの方向にかかる。この加重により、リブ30bは矢印Kの方向と反対方向にP*sinθの荷重がかかる。この結果、スリット部30dが開き、リブ30bの先端部分は図6に示すように矢印Kの方向と反対方向に移動する。その結果、θが大きくなることによって破断部に掛かる軸線方向の荷重F*cosθが小さくなってしまう。その結果、本来破断部にかかるべき応力が減少してしまう。
【0045】
しかし、本実施の形態においては、フランジ部22fにより凹部の最端部周辺が回転軸22の軸線方向と直交する軸線方向へ移動が規制される。その後、操作つまみ30に掛かる荷重が連結部22cの最も薄肉になされた部分に伝播し、連結部22cが破断する。
【0046】
図6の寸法Dは、リブ30bの先端部分がフランジ部22fの嵌め込み壁に接触した際の、リブ30bとフランジ部22fとの接点とフランジ部22fの底との幅である。フランジ部22fの高さ寸法Cは、リリブ30bが開いた際にこのリブ30bがフランジ部22fに乗り上げないようにするため、寸法Dよりも大きく設計することが必要である。
【0047】
以上のように本発明の一実施の形態における回転操作型電子部品1は、フランジ部22fが回転軸22の連結部22cが破断する際に、操作つまみ30の段付き凹部30aの最端部周辺が回転軸22の軸線方向と直交する軸線方向へ移動を規制する。これにより、スリット部30dへ回転軸22の軸線方向以外の方向に加重がかからず、連結部22cが破断する際にスリット部30dが開くことがない。
【0048】
以上ようにすることにより、操作部22aに回転軸22の軸線以外の方向から加重がかかった場合でも操作つまみ30が規定量以下に沈み込むようにすることができるという効果を奏する。
【0049】
なお、本発明の一実施の形態における回転操作型電子部品は、車載用オーディオ装置、車載用ナビゲーション装置などの車載用電子機器をはじめ、様々な電子機器に搭載可能である。
【0050】
なお、本発明の一実施の形態では、フランジ部22fは操作つまみ30の段付き凹部30aの最端部周辺をこの周囲に対して嵌め込む形状であると記載したが、フランジ部22fは、操作つまみ30の段付き凹部30aの最端部周辺を4箇所で嵌め込む形状であり、この4箇所のフランジ部22fは操作部22aの断面の中心点にて直交する二本の直線と操作つまみ30の段付き凹部30aの最端部周辺との交点近傍に位置するようにしてもよい。操作部22aに回転軸22の軸線以外の方向から加重がかかった場合、この加重の方向がいずれの方向であっても、上記のようにすることにより、スリット部30dの開きを
均等に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明による回転操作型電子部品は操作部に回転軸の軸線以外の方向から加重がかかった場合でも操作つまみが規定量以下に沈み込ませることができ、車載用オーディオ装置、または、車載用ナビゲーション装置などの車載用電子機器として有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 回転操作型電子部品
21 軸受
21a 筒状部
22 回転軸
22a 操作部
22b 中間部
22c 連結部
22e 凹部
22f フランジ部
30 操作つまみ
30a 段付き凹部
30b リブ
30c 凸部
30d スリット部
31 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方開口に段付き凹部を有する操作つまみと、この操作つまみの段付き凹部を装着する略円筒形の操作部を棒状の中間部の上方端部に有する回転軸を備え、この回転軸の操作部を回転操作することで電気信号を発生する回転操作型電子部品であって、
前記回転軸は前記操作部と中間部とを薄肉の連結部を介して一体に形成しかつ前記操作部に加わる前記回転軸の軸線方向からの所定以上の荷重に対し前記連結部で破断するもので、
前記回転軸の操作部は前記操作つまみの段付き凹部と最端部周辺部と嵌合するフランジ部を有することを特徴とする回転操作型電子部品。
【請求項2】
前記操作つまみの段付き凹部の最端部周辺にスリットを形成したことを特徴とする請求項1に記載の回転操作型電子部品。
【請求項3】
前記回転軸の操作部が有するフランジ部は、前記操作つまみの段付き凹部の最端部周辺を2箇所で嵌合し、この2箇所で嵌合するフランジ部は操作部の断面の中心点を通る直線と前記操作つまみの段付き凹部の最端部周辺との交点近傍に位置することを特徴とする請求項1に記載の回転操作型電子部品。
【請求項4】
前記回転軸の操作部が有するフランジ部は、操作つまみの段付き凹部の最端部周辺の全周囲を嵌合する形状であることを特徴とする請求項1に記載の回転操作型電子部品。
【請求項5】
前記回転軸の操作部が有するフランジ部は、前記操作つまみの段付き凹部の最端部周辺を4箇所で嵌合する形状であり、この4箇所のフランジ部は操作部の断面の中心点にて直交する二本の直線と前記操作つまみの段付き凹部の最端部周辺との交点近傍に位置することを特徴とする請求項1に記載の回転操作型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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