説明

回転杭打機

【課題】チャックを設けたマストを固定可能にすることにより打ち込む杭に大きな摩擦抵抗が作用してもマストが回動方向にずれるのを防止する回転杭打機を提供する。
【解決手段】回転杭打機10の基台12にはマスト16が回動可能に設けられている。このマスト16には鋼管矢板1を保持するチャック18が上下動可能に設けられている。前記マスト16の下後部には円弧状ラック24が固定されている。また、前記基台12にはピニオンギヤ26が回転可能に載置されている。このピニオンギヤ26は前記円弧状ラック24と噛み合って配設されている。前記ピニオンギヤ26の中央部には油圧モータ28が載置された状態で設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建設工事の基礎工事等を行う場合に鋼管矢板等の杭を地盤等に打ち込む回転杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場の基礎工事等においては鋼管矢板等の杭を地盤に打ち込む回転杭打機が使用される場合がある。
こ回転杭打機の基台にはマストが水平方向に回動可能に載置されると共にこのマストの前部には鋼管矢板等の杭を挟持して杭を打ち込むチャックが設けられている(特許文献1)。
ところで、前記回転杭打機の中にはチャックが杭を挟持しながら前記杭を回転させて前記杭を地盤に打ち込むことができるタイプの回転杭打機がある。
しかし、前記チャックで杭を回転させながら杭を固い地盤や岩盤に打ち込むと、杭が受ける大きな摩擦抵抗が反力となってチャック、マストに伝わり、マストが回動方向にずれてしまうという不具合が生じる場合がある。
【特許文献1】特開2005−113541
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものでありチャックを設けたマストを基台に固定することにより打ち込む杭に大きな摩擦抵抗が反力となって作用してもマストが回動方向にずれるのを防止することができる回転杭打機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、基台と、この基台に回動可能に載置されたマストと、このマストの前部に設けられたチャックと、を備えてなる回転杭打機であって、前記基台に取り付けられると共に前記マストの回動を阻止できるマスト回動阻止装置と、を有してなることを特徴としている。
請求項2の発明は、基台と、この基台に回動可能に載置されたマストと、このマストの前部に設けられたチャックと、を備えてなる回転杭打機であって、前記マストの後部に設けられると共にマストと一緒に回動可能な第1噛合体と、前記基台に回転可能に載置されると共に前記第1噛合体と噛み合って設けられた第2噛合体と、この第2噛合体を回転又は回転停止させることができる第2噛合体制御装置と、を有してなることを特徴としている。
請求項3の発明は、基台と、この基台に回動可能に載置されたマストと、このマストの前部に設けられたチャックと、を備えてなる回転杭打機であって、前記マストの後部に固定されると共にマストと一緒に回動可能なプレートと、前記基台に配設されると共に前記プレートを固定することができるブレーキ装置と、を有してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明の回転杭打機は、杭を打ち込む場合に打ち込む杭に大きな摩擦抵抗が反力となって作用してもマストが固定されているのでマストが回動方向にずれるのを防止することができるという優れた効果を有する。
また、本発明の回転杭打機は、杭を打ち込む場合に打ち込む杭に大きな摩擦抵抗が反力となって作用してもマストが回動方向にずれるのを防止できるので、杭を計画通りの位置に正確かつ円滑に打ち込むことができるという優れた効果を有する。
さらに、本発明の回転杭打機は、マストが基台に固定されるのでより確実にマストが回動方向にずれるのを防止できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明を実施するために最良の形態の例として以下のような実施例を示す。
【実施例1】
【0007】
図1〜図3には本発明に係わる回転杭打機の第1実施例が示されている。なお、この実施例では杭としての鋼管矢板1を回転させながら地盤に圧入する場合を例にして説明する。
図1に示されるように、本発明の回転杭打機10の基台12の下部には既に打ち込まれた鋼管矢板1を掴むクランプ14が複数設けられている。
前記基台12の上面にはマスト16が設けられている。このマスト16は作業上の便宜を図るため適宜手段により前記基台12に対して水平方向(図2矢印A1,A2方向)に回動可能に載置されている。
前記マスト16の前部には前記鋼管矢板1を保持するチャック18が上下動可能に設けられている。
前記チャック18の外筒部20の内側には内筒部22が図2矢印B1,B2方向に回転可能に配設されている。また、この内筒部22は鋼管矢板1を適宜手段で確実に掴むことができるようになっている。なお、前記鋼管矢板1の先端部には図示しない刃が円周状に連続形成されている。
従って、前記チャック18は固定した前記鋼管矢板1を図2矢印B1方向又は矢印B2方向に回転させることができると共に上下動することができるようになっている。
これにより、前記回転杭打込機10で鋼管矢板1を地盤に打ち込む場合は、クランプ14が既に打ち込まれた鋼管矢板1を掴んで、チャック18が鋼管矢板1を回転させながら鋼管矢板1を地盤に打ち込むことができるようになっている。
図3に示されるように、前記マスト16の下後部にはマスト16と一緒に回動する第1噛合体としての円弧状ラック24が固定されて取り付けられている。従って、前記マスト16が基台12の上を水平状に回動するとこの円弧状ラック24もマスト16と共に水平状に回動するようになっている。
また、前記基台12には第2噛合体としての円板状のピニオンギヤ26が回転可能に載置されている。このピニオンギヤ26は図2及び図3に示すように前記円弧状ラック24と噛み合って配設されている。
前記ピニオンギヤ26の中央部には第2噛合体制御装置としての油圧モータ28が載置された状態で設けられている。この油圧モータ28を図示しない操作系統でオン状態にするとピニオンギヤ26が回転し、オフ状態にするとピニオンギヤ26が回転を停止するようになっている。
従って、前記油圧モータ28をオン状態にしてピニオンギヤ26を回転させるとピニオンギヤ26と噛み合っている円弧状ラック24が回動するため、円弧状ラック24が固定されている前記マスト16が水平状に回動するようになっている。
また、前記油圧モータ28をオフ状態にすると前記ピニオンギヤ26は回転を停止して停止状態を維持するのでピニオンギヤ26と噛み合っている円弧状ラック24も停止状態を維持する。従って、前記マスト16が水平状に回動しようとしてもマスト16はピニオンギヤ26によって回動を確実に阻止される。
【0008】
次に、第1実施例の回転杭打機10を使用して鋼管矢板1を地盤に打ち込む場合を例にして説明する。
新しく打ち込む鋼管矢板1を回転杭打機10のチャック18の内筒部22で挟持する。そして、油圧モータ28をオン状態にしてピニオンギヤ26を回転させる。これにより、マスト16を回動させて新しく打ち込む鋼管矢板1を打ち込む場所に位置させる。鋼管矢板1を打ち込む場所に対応させることができたら、前記油圧モータ28をオフ状態にする。
これにより、ピニオンギヤ26は回転を停止して停止状態を維持するため、ピニオンギヤ26と噛み合っている円弧状ラック24を介して前記マスト16は固定状態を維持する。
そして、例えば前記チャック18の内筒部22を図2矢印B1方向に回転させて鋼管矢板1を図2矢印B1方向に回転させながら地盤に打ち込むと矢印B2方向の大きな摩擦抵抗が鋼管矢板1に作用し、反力となってチャック18に伝わると共にマスト16にも反力が伝わる。
このため、マスト16には矢印A2方向に回動しようとする力が作用するが、マスト16の後部に固定された円弧状ラック24は停止しているピニオンギヤ26と噛み合っているので、円弧状ラック24、マスト16は回動を確実に阻止される。
従って、回転杭打機10が鋼管矢板1を回転させながら打ち込む場合に、前記マスト16は回動方向にずれないので、打ち込む予定位置に鋼管矢板1を正確かつ円滑に地盤に打ち込むことができる。
なお、実施例の回転杭打機10においては回動可能なマスト16はピニオンギヤ26と直結状態で固定されているので、より確実にマスト16が回動方向にずれるのを防止することができる。
【0009】
図4及び図5には本発明に係わる回転杭打機の第2実施例が示されている。なお、第1実施例と同一の構成は同一の符号を用いてその説明を省略する。
図4に示されるように、第2実施例の回転杭打機40のマスト16の下後部にはプレートとしての円弧状に形成さ円弧状プレート42がマスト16に固定されて取り付けられている。
従って、前記マスト16が基台12の上を水平状に回動するとこの円弧状プレート42もマスト16と一緒に回動するようになっている。また、前記基台12にはブレーキ装置としての油圧ディスクブレーキ44が載置されている。この油圧ディスクブレーキ44は図示しない操作系統によりオン・オフすることができるようになっている。
図5に示されるように、この油圧ディスクブレーキ44の第1片部46と第2片部48は対向して配設されている。この第1片部46には前記油圧ディスクブレーキ44の図示しない油圧機構により第1パッド50が進退可能に設けられ、第2片部48には前記油圧ディスクブレーキ44の図示しない油圧機構により第2パッド52が進退可能に設けられている。
前記第1パッド50と第2パッド52の間には前記円弧状プレート42が配設されている。
従って、前記油圧ディスクブレーキ44がオフ状態の時は前記第1パッド50と第2パッド52が後退するので前記円弧状プレート42は前記第1パッド50と第2パッド52に挟持されないようになっている。
また、前記油圧ディスクブレーキ44がオン状態の時は前記第1パッド50と第2パッド52が進出して前記円弧状プレート42を挟持して油圧ディスクブレーキ44が円弧状プレート42を固定することができるようになっている。
従って、前記油圧ディスクブレーキ44がオフ状態の時は前記マスト16は回動を阻止されないが、前記油圧ディスクブレーキ44がオン状態の時は油圧ディスクブレーキ44によって前記マスト16は回動を阻止されるようになっている。
なお、他の構成、作用、効果は第1実施例の回転杭打機10と同一であるので、その説明は省略する。
【0010】
なお、実施例では地盤に圧入する杭として鋼管矢板1を例にして示したが、圧入する杭は前記鋼管矢板1に限定されるものでないことは勿論である。
また、実施例ではチャック18が鋼管矢板1を回転させながら打ち込むタイプの回転杭打機10を示したが、鋼管矢板1を回転させないで鋼管矢板1を打ち込む回転杭打機でもよいことは勿論である。
なお、第1実施例では第1噛合体として円弧状ラック24を示したが、第1噛合体は第2噛合体と噛み合うことができれば円弧状ラック24に限定されるものでないことは勿論である。
また、第2実施例ではブレーキ装置として油圧ディスクブレーキ44を示したが、ブレーキ装置は油圧ディスクブレーキ44に限定されるものでないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施例の回転杭打機の作業状態を示す概略側面図である。
【図2】第1実施例の回転杭打機の概略平面図である。
【図3】第1実施例の回転杭打機の一部拡大斜視図である。
【図4】第2実施例の回転打機の一部拡大斜視図である。
【図5】第2実施例の回転杭打機の一部拡大側面図である。
【符号の説明】
【0012】
10 回転杭打機
12 基台
14 クランプ
16 マスト
18 チャック
20 外筒部
22 内筒部
24 円弧状ラック
26 ピニオンギヤ
28 油圧モータ
40 回転杭打機
42 円弧状プレート
44 油圧ディスクブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、この基台に回動可能に載置されたマストと、このマストの前部に設けられたチャックと、を備えてなる回転杭打機であって、前記基台に取り付けられると共に前記マストの回動を阻止できるマスト回動阻止装置と、を有してなることを特徴とする回転杭打機。
【請求項2】
基台と、この基台に回動可能に載置されたマストと、このマストの前部に設けられたチャックと、を備えてなる回転杭打機であって、前記マストの後部に設けられると共にマストと一緒に回動可能な第1噛合体と、前記基台に回転可能に載置されると共に前記第1噛合体と噛み合って設けられた第2噛合体と、この第2噛合体を回転又は回転停止させることができる第2噛合体制御装置と、を有してなることを特徴とする回転杭打機。
【請求項3】
基台と、この基台に回動可能に載置されたマストと、このマストの前部に設けられたチャックと、を備えてなる回転杭打機であって、前記マストの後部に固定されると共にマストと一緒に回動可能なプレートと、前記基台に配設されると共に前記プレートを固定することができるブレーキ装置と、を有してなることを特徴とする回転杭打機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−267135(P2008−267135A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−122006(P2008−122006)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(503370929)伸栄株式会社 (5)
【Fターム(参考)】