説明

回転磁気ヘッド記録再生装置

【発明の詳細な説明】
〔発明の目的〕
(産業上の利用分野)
本発明はVTRなどの回転磁気ヘッドを用いて信号の記録・再生を行う回転磁気ヘッド記録再生装置に関する。
(従来の技術)
VTRに代表される回転磁気ヘッドを用いた磁気記録再生装置を第12図に示す。静止した固定ドラム1に対して、これと同心状に回転可能な回転ドラム2がある。回転ドラム2には磁気ヘッド4がドラム表面よりもわずかに突き出して取りつけられており、ドラムに巻回された磁気テープに信号の記録・再生を行う。その際、磁気ヘッド4と近接した位置に信号のアンプ回路等の電子回路5を置くべく、第12図に示すように回転ドラム2の内部に電子回路5を搭載することにより信号のS/N比を向上させることができる。つまり、回転している磁気ヘッド4に対して信号をやりとりするためのロータリートランス6と磁気ヘッド4との間に電子回路5が入ることになる。
しかし、回転する回転ドラム2は電子回路5の安全、風損を避けるなどのためにはほぼ密閉に近い状態であるため、電子回路5から発生する熱は放散せず、電子回路5内の電子部品が損傷するばかりでなく、回転ドラム2も高温になることによって回転ドラム2が熱変形する。あるいはドラムに巻回している磁気テープも熱によって損傷を受け、信号の記録・再生ができなくなるという欠点があった。
また、第13図においては略同一径の一対の固定ドラム21,22は一定の間隙を設けるように保持具27により固定してある。さらに、これら固定ドラム21,22の間にはドラム外周面よりもわずかに突き出した磁気ヘッド24を有する回転部材28が固定ドラム21,22と略同軸状に回転可能に取りつけられている。このような固定ドラム21,22に磁気テープ23が巻回し、回転部材28の回転により磁気ヘッド24が磁気テープ23を走査することによって信号の記録再生を行う。その際、磁気ヘッド24と近接した位置に信号のアンプ回路等の電子回路25を置くべく、第13図に示すように回転部材28に電子回路25を設けることにより、信号のS/N比向上、あるいは高帯域化が可能となり、より高性能な記録再生特性を得ることができる。
しかし、第13図からもわかるように、両固定ドラム21,22によって電子回路25は密閉に近い状態におかれるため電子回路25から発生する熱は放散せず、電子回路25内の電子部品が損傷するばかりでなく、固定ドラム21,22も高温になることによってドラムが熱変形する、あるいはドラムに巻回している磁気テープも熱によって損傷を受け、信号の記録再生ができなくなるという欠点があった。
(発明が解決しようとする課題)
上述したように、ドラム内に電子回路を組み込むことにより、ドラムが密閉に近い状態であるため電子回路から発生する熱によって電子部品が損傷する、ドラムが変形する、磁気テープが損傷するなどの問題点があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ドラム内に電子回路を設けても、そこから発生する熱によって電子部品や磁気テープなどが損傷を受けることなく、良好な信号の記録・再生を行える回転磁気ヘッド記録再生装置を提供することを目的とする。
〔発明の構成〕
(課題を解決するための手段)
磁気テープが巻装されるドラムと、このドラム内部に設けられる電子回路と、前記ドラムの表面から突出した状態で回転可能に設けられ、前記磁気テープ上を走査して信号の記録再生を行う回転磁気ヘッドとを有する回転磁気ヘッド記録再生装置において、 前記ドラムの前記回転磁気ヘッドの回転中心近傍に設けられ、該ドラム内部に冷却空気を導入可能な導入孔と、前記ドラムの前記磁気テープが巻装されている領域を除く部分の前記ドラムに、前記ドラムの回転中心から等距離に複数設けられ、該ドラム内部から前記冷却空気を排出可能な排出孔とを備え、前記電子回路を冷却すべく前記冷却空気が前記ドラム内部を略放射状に流れるように構成されたことを特徴とする回転磁気ヘッド記録再生装置。
また、前記導入孔の設けられた位置に防塵用のフィルターを配置したことを特徴としている。
また、前記ドラムに、前記導入孔に空気を案内するためのフードを設けたことを特徴としている。
(作用)
このように構成されたものにあっては、導入孔からドラム内に空気が流れ込み、ドラム内を放射状に流れることにより、一様に電子回路及びドラムを冷却するため、電子回路及び磁気テープの損傷、ドラムの変形等は生じない。
また、ドラム内部に流れ込んだ空気は、主に排出孔から排出されるため、磁気ヘッド近傍から排出される空気流量を該排出孔から排出される空気流量との兼ね合いで最適となるように調整することができる。
(実施例)
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。なお、従来と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
第1図に本発明の第1の実施例を示す。磁気ヘッド4が取りついた回転するドラム2の上面のほぼ中央部に導入孔10を設けてある。このようなドラムを回転させた場合、ドラム2の内部にある空気は遠心力の作用によって、ドラム2の側壁近くが高圧に、中央部が低圧になるため、図中に示すような放射状の空気の流れ12が発生する。つまり、ドラム2の外の空気が導入孔10を通ってドラム内部に流入し、磁気ヘッド4、電子回路5、ロータリトランス6等を結ぶ配線の孔11などを通ってドラム外へ流出することになる。このことにより熱を発生する電子回路5は冷却され、ドラムが高温になることも避けられる。さらに、この場合においては、磁気ヘッド部から空気が流出するためこの流量を適宜に設定すれば磁気テープと磁気ヘッドとの摺接圧が軽減され、磁気ヘッド4の長寿命化もはかれる。
第2図に本発明の第2の実施例を示す。
この例では上側の固定ドラム21の略中央部に導入孔30を設けてある。このようなドラム21,22にはさまれた内部において電子回路25の取りついた回転部材28が回路すると、両ドラム間の空気もこれにひきつられて回転し、遠心力の作用により中央部が低圧に、ドラム21,22の側壁に近づくにしたがって高圧になるため、図中に示すような放射状の空気の流れ32が発生する。つまり、ドラムの外部の空気が導入孔30を通って両ドラム間の空間に流入し、両固定ドラムの間隙から流出する。このことにより、熱を発生する電子回路25は冷却され、ドラム21,22が高温になることも避けられる。
また、本方式のように両固定ドラム21,22に磁気テープ23が巻回し走行する場合には、磁気テープ23と固定ドラム21,22の摩擦力が大きくなり、磁気テープ23の走行が不安定になる、あるいはテープ張力が大きくなるために磁気テープ23の寿命が短くなるなどの問題が発生することもあるが、本発明のドラムを用いれば、両固定ドラム間の間隙31から空気が流出することによりこの流出量を適宜に設定すれば磁気テープ23と固定ドラム21,22との摩擦力が低減され、こうした問題も解決できる。
また第3図(a)に示すように磁気ヘッド4が回転ドラム2の中で密閉されているような構造にあっては第4図R>図(a)に示すように磁気ヘッド4の近傍で磁気テープ3がドラム1,2の中に引き込まれる形となり磁気テープ3の摩耗が著しい場合もあった。しかし第3図(b)に示す本発明のように空気の流入孔10を設けることによって、第4図(b)に示すように磁気ヘッド4近傍の流出孔11から空気が流れ出し、この流出量を適宜に設定することにより、ドラム1,2のエッヂに磁気テープ3が押しつけられることなく磁気テープ3の摩耗も解消される。
次に、第5図と第6図は、本発明の第3の実施例を示す。第5図は、回転ドラム2の磁気テープの巻装されない側壁2aに、第6図は回転ドラム2の上壁2bにそれぞれ排出孔11bを設けている。
このように排出孔11bを設けたものでは、冷却空気は、排出孔11bと磁気ヘッド4の近傍の流出孔11の双方から流出するため磁気ヘッド4近傍の流出孔11から流出する空気流量を調整することが可能となる。
上記した冷却効果を高めるためには、ドラム内部を流れる空気流量を大きくする必要がある。しかし、空気流量が大きい場合、逆に磁気ヘッドと磁気テープとの間のヘッドタッチがとりにくくなる場合がある。従って、回転ドラム2の磁気テープが巻装されていない領域に排出孔11bを設けることは、電子回路等の冷却効果の向上と、良好なヘッドタッチの実現の双方に有効な手段となる。
さらに、第7図と第8図は導入孔10の変形例である。第7図は、回転ドラム2の側壁2aに段差を設け、この段差部14によって空気が導かれるように導入孔10が設けられている。第8図は、回転ドラム2の上壁2bの中央ではなく、周囲に導入孔10を設け、空気を導くためにフード15を設けたものである。
また、第9図においては、導入孔10の設けられている箇所に防塵用のフィルター16を取付けたものである。このフィルター16によって電子回路5がほこりから守られる。
また、さらに空気流量が大きくなる場合には、そのような場合には、第10図に示すように流れ止め板50を設けると共に流出孔11を回転ドラム2の上壁2bあるいは磁気テープの巻装されない側壁2aに形成して強制的に磁気ヘッド4の近傍以外の場所に排出させるようにしてもよい。
またさらには、第11図に示すように流れ止め板50に空気の流出量を制御するための制御孔51(この制御孔51は空気の流出量が調整できるように例えば、任意の個数設け、簡単にふさぐことができる。)を設け、これによって流出量を制御して良好なヘッドタッチを得るようにしている。
以上本発明の実施例、変形例について述べてきたが、本発明はこれに限定されるものではない。密閉されている電子回路6を冷却するために空気が循環するような構成であればどのようなものでもよい。
例えば流入孔10,30、流出孔11,31を設ける場所、個数、また孔の形状等については適宜変更して用いることができる。
つまり、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更して用いることができる。
〔発明の効果〕
以上、詳述してきたように、本発明によれば、信号のS/N比を向上させるべくドラムの内部に電子回路を設けた場合でも、ドラム内部の空気の流れによる冷却効果により電子回路やドラムが高温になることを防止でき、高性能な回転磁気ヘッド記録再生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の回転磁気ヘッド記録再生装置の第1の実施例を示す断面図、第2図は、本発明の第2の実施例を示す断面図、第3図と第4図は、本発明の変形例の効果を説明するための断面図及び概略説明図、第5図と第6図は、本発明の第3の実施例を示す断面図、第7図乃至第11図は、本発明の変形例を示すためのそれぞれ断面図、上面図、斜視図、第12図と第13図は従来の回転磁気ヘッド記録再生装置の断面図である。
1,21,22……固定ドラム、2……回転ドラム、3,23……磁気テープ、4,24……磁気ヘッド、5,25……電子回路、10,30……導入孔、11,31……流出孔、11b……排出孔、12,32……空気の流れ、15……フード、16……フィルター、50……流れ止め板(仕切部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】磁気テープが巻装されるドラムと、このドラム内部に設けられる電子回路と、前記ドラムの表面から突出した状態で回転可能に設けられ、前記磁気テープ上を走査して信号の記録再生を行う回転磁気ヘッドとを有する回転磁気ヘッド記録再生装置において、前記ドラムの前記回転磁気ヘッドの回転中心近傍に設けられ、該ドラム内部に冷却空気を導入可能な導入孔と、前記ドラムの前記磁気テープが巻装されている領域を除く部分の前記ドラムに、前記ドラムの回転中心から等距離に複数設けられ、該ドラム内部から前記冷却空気を排出可能な排出孔とを備え、前記電子回路を冷却すべく前記冷却空気が前記ドラム内部を略放射状に流れるように構成されたことを特徴とする回転磁気ヘッド記録再生装置。
【請求項2】前記ドラムの内部に、前記導入孔及び前記排出孔と、前記回転磁気ヘッドとの間を仕切るための仕切部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の回転磁気ヘッド記録再生装置。
【請求項3】前記仕切部材には、任意の孔が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の回転磁気ヘッド記録再生装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第6図】
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【第7図】
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【第8図】
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【第12図】
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【第5図】
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【第9図】
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【第10図】
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【第11図】
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【第13図】
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【特許番号】特許第3026438号(P3026438)
【登録日】平成12年1月28日(2000.1.28)
【発行日】平成12年3月27日(2000.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−120604
【出願日】昭和63年5月19日(1988.5.19)
【公開番号】特開平1−133249
【公開日】平成1年5月25日(1989.5.25)
【審査請求日】平成7年5月17日(1995.5.17)
【審判番号】平10−18915
【審判請求日】平成10年12月10日(1998.12.10)
【出願人】(999999999)株式会社東芝
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 昭59−151305(JP,A)
【文献】特開 昭59−146407(JP,A)
【文献】特開 昭59−101058(JP,A)
【文献】特開 昭63−241703(JP,A)
【文献】実開 昭60−44212(JP,U)
【文献】実開 昭60−106232(JP,U)