説明

回転連結機構

【課題】回転角度によって生じる摩擦トルクの大きさが異なる回転連結機構であって、軸部材を回転させた際にも回転軸がずれる恐れの少ない回転連結機構を提供すること。
【解決手段】棒状に形成された軸部材と、軸部材の軸方向に複数並べられて軸部材の周面を把持するクリップ部材とを有し、軸部材が、クリップ部材内においてクリップ部材に対して軸部材の中心軸周りに摺動回転可能にクリップ部材に把持されてなる回転連結機構であって、軸部材は、軸部材の回転角度によらず回転軸の位置を一定に保持する軸保持部と、軸部材とクリップ部材との間の摩擦によって生じる摩擦トルクを軸部材の回転角度によって変化させるトルク変化部と、を一体に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材同士を互いに回転可能に連結するとともに、任意の回転角度で位置保持可能とする回転連結機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ノートパソコンにおけるディスプレイ部分と本体部分を連結する連結回転機構のように、部材同士を任意の角度まで回転させて停止、固定するための連結回転機構がある。このような回転連結機構として、回転軸となる棒状の軸部材と、この軸部材を受けるクリップ部材とを有するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この回転連結機構におけるクリップ部材は、一対の腕部を有し、この一対の腕部によって軸部材の周面を把持するように形成されている。また、クリップ部材は、軸部材の軸方向に複数並べられて積層されるとともに、クリップ部材全体が一体に固定される。軸部材は、これら複数のクリップ部材に対して、摺動回転可能に把持されている。そして、回転可能に連結する2つの部材のどちらか一方に軸部材を固定し、他方にクリップ部材を固定することにより、2つの部材を相互に回転可能かつ、任意の角度で、位置保持可能としている。
【0004】
この回転連結機構は、軸部材とクリップ部材との間に摩擦を生じさせ、その摩擦によって、2つの部材を任意の回転角度に位置保持可能としているものである。また、この回転連結機構において、軸部材のクリップ部材によって把持される部分は、円柱を軸方向に沿って一部切り欠いた形状に形成されている。即ち、断面の円形の一部を切り欠いた形状に形成されている。従って、軸部材が回転すると、クリップ部材によって把持される部分の厚みが変化し、摩擦トルクの大きさが回転角度によって変化すると予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3087332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような構造の回転連結機構は、軸部材を回転させた際に、クリップ部材に把持される厚みが変化するため、回転軸がずれることがある。このような場合、例えば、上述の回転連結機構をノートパソコンのディスプレイ部分と本体部分との連結部分に使用すると、ノートパソコンのディスプレイ部分を本体部分に対して回転させた際に、ガタつきが生じる可能性や、引っ掛かりが生じる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明はこのような従来の問題に鑑み、回転角度によって生じる摩擦トルクの大きさが異なる回転連結機構であって、軸部材を回転させた際にも回転軸がずれる恐れの少ない回転連結機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、所期の目的を達成するための本発明にかかる回転連結機構は、棒状に形成された軸部材と、該軸部材の軸方向に複数並べられて該軸部材の周面を把持するクリップ部材とを有し、前記軸部材が、前記クリップ部材内において前記クリップ部材に対して前記軸部材の中心軸周りに摺動回転可能に前記クリップ部材に把持されてなる回転連結機構であって、前記軸部材は、該軸部材の回転角度によらず回転軸の位置を一定に保持する軸保持部と、前記軸部材と前記クリップ部材との間の摩擦によって生じる摩擦トルクを前記軸部材の回転角度によって変化させるトルク変化部と、を一体に有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の回転連結機構は、上記構成に加えて、前記クリップ部材は、前記軸部材の周面を把持する一対の腕部を有し、前記軸保持部は、前記軸部材を回転した際に、前記一対の腕部の把持力が一定に保持される形状の周面を有し、前記トルク変化部は、前記軸部材を回転した際に、前記一対の腕部の把持力が変化する形状の周面を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のクリップ部材によって軸部材を把持させる回転連結機構において、軸部材が、回転角度によらず回転軸の位置を一定に保持する軸保持部と、摩擦トルクを軸部材の回転角度によって変化させるトルク変化部と、を一体に有しているので、回転軸の位置を保持できるとともに、摩擦トルクの大きさ、即ち回転させるために必要なトルクの大きさを回転角度によって変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる回転連結機構を示す斜視図である。
【図2】図2は、同上の回転連結機構の軸部材を示す斜視図である。
【図3】図3は、同上の回転連結機構のクリップ部材を示す斜視図である。
【図4】図4は、同上の回転連結機構を示す斜視図である。
【図5】図5は、同上の回転連結機構のハウジングを示す斜視図である。
【図6】図6は、同上の回転連結機構における軸保持部とクリップ部材との嵌合状態を示す断面図である。
【図7−1】図7−1は、同上の回転連結機構におけるトルク変化部とクリップ部材との嵌合状態を示す断面図である。
【図7−2】図7−2は、同上の回転連結機構におけるトルク変化部とクリップ部材との嵌合状態を示す断面図である。
【図8】図8は、同上の回転連結機構の摩擦トルクの回転角度による変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる回転連結機構の実施例を図1〜図8に基づいて詳細に説明する。回転連結機構1は、例えば、ノートパソコンにおけるディスプレイ部分と本体部分を連結する連結回転機構のように、部材同士を任意の角度まで回転させて停止、固定するためのものである。
【0013】
回転連結機構1は、軸部材2と、この軸部材2を把持するクリップ部材3とを有している。軸部材2は、回転連結機構1において回転軸となる部分であり、棒状に形成されている。軸部材2には、クリップ部材3に把持される把持部11が形成されている。把持部11は、軸保持部13とトルク変化部14とを有している。軸保持部13は、図2に示すように、断面円形である円柱状に形成されている。
【0014】
また、軸保持部13は、本実施の形態においては、2箇所形成されている。そして、この一対の軸保持部13,13の間に、トルク変化部14が形成されている。トルク変化部14は、断面が楕円形の柱状に形成されている。トルク変化部14と軸保持部13とは一体に形成されている。尚、符号12は、例えばノートパソコンの本体部分に固定するための固定部材が固定される部分である。
【0015】
クリップ部材3は、基部23と、そこから伸びる一対の腕部21,22とを有し、この腕部21,22によって軸部材2をその径方向に抱持するように形成されている。一対の腕部21,22は、図3に示すように、互いに対向するように基部23から突出し、略C字形状となるように形成されている。また、図6に示すように一対の腕部21,22の内側面24が軸保持部13の周面と面接触して、軸部材2を把持するように形成されている。このようにして、軸部材2は、クリップ部材3によって、所謂、締まりばめ状態となる。また、クリップ部材3の基部23は、両端が突出した形状に形成され回転防止部となっている。
【0016】
クリップ部材3は、図4に示すように、軸部材2の把持部11に複数個設置されている。クリップ部材3は、軸部材2の軸方向に並べられて積層されている。クリップ部材3は、それぞれ、軸保持部13とトルク変化部14に複数個づつ設置されている。これらの複数のクリップ部材3は、ハウジング4に固定されている。ハウジング4には、図5に示すように、クリップ部材3の外側の輪郭をかたどった形状の孔であるクリップ嵌合孔41が形成されており、このクリップ嵌合孔41に積層された複数のクリップ部材3が一体に嵌合されて固定されている。クリップ部材3は、回転防止部を有するので、クリップ部材3がハウジング4に対して回転しない。
【0017】
クリップ部材3は、ハウジング4のクリップ嵌合孔12に嵌合されているので、一対の腕部21,22が、軸部材2の径方向であって軸から遠ざかる方向に開くことが抑制されている。従って、常時、好適な摩擦がクリップ部材3と軸部材2との間で生じるようになっている。
【0018】
軸部材2は、その中心軸を回転軸Aとしてクリップ部材3に対して回転させることができる。その際には、軸部材2がクリップ部材3の内側面24を摺動しながら回転する。軸部材2とクリップ部材3との間の摩擦によって、摩擦トルクが生じる。従って、軸部材2をクリップ部材3に対して、任意の回転角度で位置保持することができる。
【0019】
軸部材2の軸保持部13は、複数のクリップ部材3にその周面を把持されることにより、軸部材2の回転軸Aの位置が保持されるように、即ち、クリップ部材3内において軸保持部13の中心軸の位置がずれないようにクリップ部材3に抱持されるように形成されている。軸保持部13の周面は、円周状に形成されている。即ち、軸保持部13の周面は、軸部材2を回転した際に一対の腕部21,22の把持力が一定に保持される形状に形成されている。また、軸部材2を回転した際に、軸保持部13を把持しているクリップ部材3の一対の腕部21,22間の距離は一定に保たれる。このように構成された軸保持部13が、軸部材2に形成されているので、軸部材2を回転した際に回転角度によらず回転軸Aの位置を保持することができる。
【0020】
軸部材2のトルク変化部14は、図7−1に示すように、トルク変化部14の断面の長径方向一端部が、一対の腕部21,22の突出方向先端部間にある間は、クリップ部材3からの押圧力が、次に示す状態と比べて小さい。従って、軸部材2を回転させる際に、より少ないトルクで回転させることができる。これに対して、図7−2に示すように、トルク変化部14の断面の長径方向両端部が、一対の腕部21,22によって、挟まれた状態にあるときは、腕部21,22の押圧力をより大きく受けるので、大きな摩擦力が発生し、軸部材2を回転させるために、より大きなトルクが必要となる。このように、トルク変化部14は、軸部材2の回転角度によって、クリップ部材3と軸部材2との摩擦によって生じる摩擦トルクが変化するように形成されている。即ち、トルク変化部14によって、軸部材2を回転させるために必要なトルクを回転角度によって変化させることができる。
【0021】
このように、トルク変化部14は、楕円周状の周面を有している。即ち、トルク変化部14は、軸部材2を回転させた際に、トルク変化部14を把持しているクリップ部材3の腕部21,22の把持力が変化する形状の周面を有している。また、トルク変化部14が回転した際には、トルク変化部14を把持しているクリップ部材3の腕部21,22が開き方向或いは閉じ方向に変形し、腕部21,22間の距離が変化する。
【0022】
このように回転連結機構1は、軸保持部13とトルク変化部14とを一体に有しているので、回転軸の位置を保持することができるとともに、回転角度によって回転に必要なトルクを変化させることができる。
【0023】
続いて、ハウジング4をノートパソコンの本体部分と固定し、軸部材2を同ディスプレイ部分に固定する際の一例について説明する。例えば、トルク変化部14の断面形状である楕円の長径方向一端部がクリップ部材3の腕部22の突出方向先端部に軽く接する位置を軸部材2の回転角度0度となるようにする。即ち、ノートパソコンにおいて、ディスプレイ部分が本体部分に対して閉じた状態の際に、トルク変化部14の長径方向一端部がの腕部22の突出方向先端部に軽く接する位置となるように軸部材2及びクリップ部材3を配設する。この状態から、図において、時計回りに回転させると、図7−1に示す状態となる。そして、更に、回転を続けると、トルク変化部14の長径方向一端部が腕部21の突出方向先端部に当接する。そして、それ以上、回転させる際には大きなトルクが必要となる。
【0024】
即ち、この腕部21,22の突出方向先端部間をトルク変化部14の長径方向一端部が移動している間は、軸部材2を回転させることに大きなトルクを必要としない。つまりディスプレイ部分を開ける際に、大きなトルクを必要としない。そして、所定の角度までディスプレイ部分を開けると、そこからは、開けることに即ち回転させることにある程度大きなトルクが必要となる。図8は、この回転角度によって変化するトルクのイメージを示している。
【0025】
このように、ノートパソコン使用時におけるディスプレイ部分の通常位置前後の角度において、回転させる際に必要なトルクの大きさを大きく設定したとしても、ディスプレイ部分を開ける際及び閉じる際における必要なトルクの大きさを小さくすることができる。
【0026】
尚、本実施の形態においては、一対の腕部21,22の長さを等しく形成しているが、異なる長さに形成してもよい。また、本実施の形態においては、軸保持部13が2箇所形成されているが、軸保持部13は、何箇所でもよい。
【0027】
本実施の形態において、トルク変化部14は、断面が略楕円形状に形成されているが、円柱を軸方向に沿って一部切り欠いた形状に形成してもよい。即ち、断面の円形の一部を切り欠いた形状に形成してもよい。軸部材2を回転させると、クリップ部材3によって把持される部分の厚みが変化し、摩擦トルクの大きさが回転角度によって変化する。
【0028】
また、上述の実施の形態においては、軸部材2において軸保持部13とトルク変化部14の断面形状を変えることによって、トルク変化部14を構成しているが、軸部材2の周面の一部において摩擦係数が異なる部分を形成することによって、摩擦トルクの大きさを回転角度によって変化させてもよい。
【0029】
尚、本実施の形態においては、回転連結機構1をノートパソコンに適用した場合を例示しているが、回転連結機構1を自動車のサンバイザーに適用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
A 回転軸
1 回転連結機構
2 軸部材
3 クリップ部材
4 ハウジング
11 把持部
12 クリップ嵌合孔
12 固定部
13 軸保持部
14 トルク変化部
21 腕部
22 腕部
23 基部
24 内側面
41 クリップ嵌合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に形成された軸部材と、該軸部材の軸方向に複数並べられて該軸部材の周面を把持するクリップ部材とを有し、前記軸部材が、前記クリップ部材内において前記クリップ部材に対して前記軸部材の中心軸周りに摺動回転可能に前記クリップ部材に把持されてなる回転連結機構であって、
前記軸部材は、該軸部材の回転角度によらず回転軸の位置を一定に保持する軸保持部と、前記軸部材と前記クリップ部材との間の摩擦によって生じる摩擦トルクを前記軸部材の回転角度によって変化させるトルク変化部と、を一体に有することを特徴とする回転連結機構。
【請求項2】
前記クリップ部材は、前記軸部材の周面を把持する一対の腕部を有し、
前記軸保持部は、前記軸部材を回転した際に、前記一対の腕部の把持力が一定に保持される形状の周面を有し、
前記トルク変化部は、前記軸部材を回転した際に、前記一対の腕部の把持力が変化する形状の周面を有していることを特徴とする請求項1に記載の回転連結機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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