説明

回転陽極X線管装置

【課題】X線管装置においてはX線管容器の側面に絶縁油の温度上昇による体積の増加分を吸収するためにベローが取り付けられ、その拡張スペースとしてのスペースが確保されているので、X線管容器の側面部はその分延長され、その結果X線管容器やX線漏洩を防止するための鉛板の重量が増加し、最終的にX線管装置の重量増加につながっている。本発明は上記に起因するX線管装置の重量の増加を防止して、X線透視撮影装置の操作性等に及ぼす悪影響を低減することを目的とする。
【解決手段】X線管容器2の内部で高電圧ソケット4あるいは5等の高電圧印加部から絶縁距離を確保した位置にそれぞれのスペースに適合した形状に成形され、その内部の空間がX線管容器2の外部に通じる通気口を有する風船状のゴム製のベロー10およびベロー11を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線管容器とその中に封入配置されるX線管を含むX線管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線管装置は図3に示すように、通常アルミニウム鋳物等により構成されるX線管容器2内にX線管保持部3等によりX線管1を固定して、絶縁油6を満たした構成になっており、高電圧ソケット4および5を経由して外部からX線管1に高電圧を印加することによりX線を発生するものである。そしてX線管容器2の内側には撮影に関係しないX線の漏洩を防ぐために鉛板9が敷設されるとともに、X線管1の陽極(図示しない)の発熱等により絶縁油6の温度が上昇し体積が増加する分を吸収するためにX線管容器2の側面にお椀状のゴム成形品のベロー7が取り付けられるとともに、その拡張スペースとしてのベロースペース8が設けられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平09−92188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したようにX線管装置においては通常X線管容器2の側面に絶縁油6の温度上昇による体積の増加分を吸収するためにベロー7が取り付けられるとともに、その拡張スペースとしてのベロースペース8が確保されているので、X線管容器2はその分長手方向に延長され、X線管容器2や鉛板9の重量が増加し、結局X線管装置の重量増加につながっている。そしてX線管装置の重量の増加は通常X線透視撮影装置の操作性に大きく影響する。特に回診用X線装置等の移動式装置の場合、X線管装置の重量増加による移動式装置全体の重量の増加は操作者が装置を移動させるとき大きな負担になる。またX線管装置とX線受光部を被検者のまわりで移動させて撮影を行う断層撮影装置や循環器撮影装置等においては、画質の向上のために必要なX線管装置の高速移動による撮影時間の短縮を困難にするとともに、X線管装置を保持するアームにより大きな強度と剛性を持たせなければならないことや、X線管装置を移動させる動力を供給するモータの出力もより大きいものが必要になる等のため透視撮影装置全体の大型化につながっている。本発明は上述のX線透視撮影装置の操作性の改善や小型化、さらにX線管装置を高速に移動させて撮影時間を短縮することによる断層撮影画像等の画質の向上を実現するためにX線管装置の重量を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は上記の目的を達成するために、絶縁油が充填されたX線管容器内にX線管を封入したX線管装置において、前記X線管容器内にゴム製の風船状に成形されたベローを、前記ベローの内側の空気が前記X線管容器の外側の空間に出入り可能に固定するX線管装置を提供する。
【0005】
請求項2記載の発明は上記の目的を達成するために、一個または複数個のゴム製の風船状に成形されたベローをそれぞれX線管容器内の伸縮しても高電圧印加部から絶縁距離を確保できる位置に配置し、絶縁油の膨張を前記ベローの収縮により吸収することにより前記X線管容器の長さを短縮した請求項1記載のX線管装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により従来に比べてX線管容器の長さを短くできるので、X線管装置の重量を軽減することができ、その結果X線管装置を搭載するX線透視撮影装置の操作性の悪化や大型化を防ぐことが可能になるとともに、X線管装置とX線受光部を被検者のまわりで移動させて撮影を行う断層撮影装置や循環器撮影装置等においては、画質の向上のために必要なX線管装置の高速移動による撮影時間の短縮を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1および図2により本発明の実施例について説明する。ただし図1において図3と同じ符号で示される部品等は図3と同じものなのでそれらについての説明は省略する。図1に示すように、あらかじめそれぞれのスペースに適合した形状に成形された風船状のゴム成形品のベロー10またはベロー11を、例えばベロー10については高電圧ソケット5の配置との関係上存在する従来絶縁油で満たされたデッドスペース、またベロー11についてはX線管保持部3近辺のアース電位に近いデッドスペースのように、X線管容器2の内部で高電圧ソケット4あるいは5等の高電圧印加部から絶縁距離を確保した位置に配置し、図2に示すようにその一部に取り付けられた通気口金具12をX線管容器2に設けられた孔部に通してナット13によりX線管容器2に固定するとともに、Oリング14により前記孔部からの絶縁油6の外部への漏洩を防止する。通気口金具12の中心部には通気口15が風船状のベロー10またはベロー11の内部の空間とX線管容器2の外部の大気を結ぶように設けられているので、ベロー10またはベロー11は絶縁油6の温度が上昇してその体積が増加した場合、絶縁油6により圧縮されるが、その後絶縁油6の温度が下降してその体積が減少するにつれて元の形状に戻っていくように動作する。
【0008】
上記のようにX線管容器2の内部に従来デッドスペースとして存在し、絶縁油6で満たされていた空間に配置可能な形状のベロー10および11を配置することにより、X線管容器2の長さを延長して得られる空間にベロースペース8を確保していた従来の方法に比べてX線管容器2の長さを短縮することができる。これによりX線管装置の重量が軽減されるので、X線管装置を搭載するX線透視撮影装置の操作性の悪化や大型化を防ぐことができるとともに、X線管装置とX線受光部を被検者のまわりで移動させて撮影を行う断層撮影装置や循環器撮影装置等においては、画質の向上のために必要なX線管装置の高速移動による撮影時間の短縮を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明はX線管容器とその中に封入配置されるX線管を含むX線管装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるX線管装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明によるベローの固定方法の例を示す図である。
【図3】従来のX線管装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0011】
1:X線管
2:X線管容器
3:X線管保持部
4:高電圧ソケット
5:高電圧ソケット
6:絶縁油
7:ベロー
8:ベロースペース
9:鉛板
10:ベロー
11:ベロー
12:通気口金具
13:ナット
14:Oリング
15:通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁油が充填されたX線管容器内にX線管を封入したX線管装置において、前記X線管容器内にゴム製の風船状に成形されたベローを、このベローの内側の空気が前記X線管容器の外側の空間に出入り可能に固定したことを特徴とするX線管装置。
【請求項2】
一個または複数個のゴム製の風船状に成形されたベローをそれぞれX線管容器内の伸縮しても高電圧印加部から絶縁距離を確保できる位置に配置し、絶縁油の膨張を前記ベローの収縮により吸収することにより、前記X線管容器の長さを短縮したことを特徴とする請求項1記載のX線管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−324013(P2007−324013A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154239(P2006−154239)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】