説明

回転電機および回転電機の製造方法

【課題】剛性が高く組み立て作業性に優れたフレームを有する回転電機および回転電機の製造方法を提供する。
【解決手段】フレーム本体部40とフィンカバー50に焼きばめ押さえ面を2箇所と、フィンカバー中央部先端の半円形状当たり面を1箇所備え、焼きばめ押さえ面の2箇所で剛性が高い結合を、フィンカバー中央部先端の半円形状当たり面で自由度の高い結合を行い、全体として剛性と作業効率が高い焼きばめによるフレーム本体部40とフィンカバー50の結合を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機および回転電機の製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の電磁部を構成するために、固定子の外周にフレームが配置される。フレームを安価に製造するために、アルミ押し出し材を採用したアルミフレームが用いられる。そのアルミフレームを用いたアルミフレーム構造の一例としては、特許文献1に記載のアルミフレーム構造が挙げられる。このアルミフレーム構造は、空冷モータの固定子を覆うフレーム本体と、通風穴を形成するフィンカバーとに分割して構成されている。この構成により、フレーム本体をアルミ押し出し成型で製造することができ、放熱面積を大きくとった放熱フィンを構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−299174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記アルミフレーム構造におけるフレーム本体とフィンカバーの固定方法には接着、圧入、ネジによる締結などが考えられる。
しかしながら、接着や圧入では高い剛性でそれらを結合することが難しく、後工程でフレームを加工追加するような場合に、フィンカバーが外れてしまい、歩留まりが悪いという課題がある。また、ネジによる締結では通風部の数が多いほどネジの本数が多くなり、作業効率が悪いという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、剛性が高く組み立て作業性に優れたフレームを有する回転電機および回転電機の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、回転子と、前記回転子に対して隙間を介して配置された固定子と、前記固定子の周りに配置されたフレームと、を備えた回転電機であって、前記フレームは、隅部を有し前記固定子を固定するフレーム本体部と、前記隅部に設けられた複数のフィンと、前記複数のフィンを覆うフィンカバーと、を備え、前記フレーム本体部は、前記固定子を取り囲む筒状部と、前記隅部に形成され前記筒状部から突出し前記筒状部側に傾斜面を有する突出部と、を備え、前記フィンカバーは、第1の板状部と、前記第1の板状部の両側に設けられた第2の板状部と、を備え、前記傾斜面に前記第2の板状部が押圧されることによって前記フィンカバーが前記フレーム本体部に固定されることを特徴とする回転電機が適用される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、剛性が高く組み立て作業性に優れたフレームを有する回転電機および回転電機の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る回転電機の断面図である。
【図2】第1実施形態に係るフレーム本体部の部分断面図である。
【図3】第1実施形態に係るフィンカバーの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。なお、同一の構成については同一の符号を付することにより、重複説明を適宜省略する。
【0010】
<第1実施形態>
まず、図1から図3を参照しつつ、第1実施形態に係る回転電機の構造について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る回転電機1は、回転子10と、回転子10に対して隙間を介して配置された電磁部としての固定子20と、固定子20の周りに配置されたフレーム30を備える。フレーム30は、固定子20を固定するフレーム本体部40と、フレーム本体部40の隅部41(図2参照)に設けられた複数のフィン42と、複数のフィン42を覆うフィンカバー50と、フレーム本体部40とフィンカバー50とで囲まれる空間で形成される通風部60とを備える。
【0012】
図2に示すように、フレーム本体部40は、固定子20を取り囲む筒状部43と、隅部41に形成され筒状部43から突出し筒状部43側に傾斜面44を有する突出部45と、隅部41の突出部45で挟まれた部分に筒状部43から突出して形成された複数のフィン42と、を備える。フレーム本体部40は、例えば、アルミニウムの押し出し材などで形成される。複数のフィン42は、第1のフィン42aと第1のフィンよりも長さが短い第2のフィン42bを含む。第1のフィン42aは第2のフィン42bに挟まれて配置される。これにより、隅部41に複数のフィン42を効率的に配置することができる。
【0013】
図3に示すように、フィンカバー50は、第1の板状部51と、第1の板状部51の両側に設けられた第2の板状部52と、を備える。フィンカバー50は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの弾性を有する材料で形成される。第1の板状部51側から見て、2つの第2の板状部52は、互いに間隔が広がる方向に設けられる。傾斜面44に第2の板状部52が押圧されることによってフィンカバー50がフレーム本体部40に強固に固定される。これにより、フレーム30の剛性が高くなる。また、ネジによる締結ではないため、組み立て作業性に優れている。
【0014】
さらに、フィンカバー50は、第1の板状部51の中央近傍であって2つの第2の板状部52に挟まれた位置に、第3の板状部53を備える。第3の板状部53の存在により、フレーム30の剛性がさらに高くなる。また、第3の板状部53は放熱フィンとしても機能するため、回転電機1の冷却効率がさらに向上する。
第3の板状部53の先端には半円形状の当接部53aを備えるため、フィンカバー50の姿勢の自由度を高めることができる。これにより、フィンカバー50は、第2の板状部52の外面を傾斜面44にしっかり当てる姿勢をとることができ、フレーム30の剛性をさらに高めることができる。
【0015】
また、第2の板状部52の先端部52aは、第2のフィン42bと傾斜面44とで挟まれた空間の中に配置される。隅部41の中央部分に配置された第1のフィン42aの長さよりも、傾斜面44の近傍に配置された第2のフィン42bの長さが短く設定されているため、第2の板状部52は、隅部41に深く入り込むことができ、傾斜面44に大きな面積で接している。これにより、フィンカバー50とフレーム本体部40との熱伝導効率が良好となり、回転電機1の冷却効率を高めることができる。
【0016】
次に、本実施形態に係る回転電機1の製造工程を説明する。
まず、フレーム本体部40を加熱し熱膨張させ、次に、筒状部43の内径側に固定子20を焼きばめすることによって固定する。また、焼きばめの余熱でフレーム本体部40が高温状態の時に、さらに常温のフィンカバー50を隅部41の2つの突出部45の間へ差し込み、通風部60を形成する。
【0017】
フレーム本体部40の隅部41の2つの傾斜面44間の寸法は、フィンカバー50の2つの第2の板状部52で形成される外形寸法よりも若干小さい寸法とし、焼きばめによりフレーム本体部40の傾斜面44がフィンカバー50の第2の板状部52を押し込むように設定する。
【0018】
フィンカバー50の第1の板状部51の中央近傍には、第3の板状部53が設けられている。第3の板状部53の端部には半円形状の当接部53aが形成されており、フレーム本体部40とフィンカバー50の中央部先端の当たり面は、曲面と面の線接触となる。フレーム本体部40とフィンカバー50は、フィンカバー50両端の第2の板状部52の外面で2箇所と、フィンカバー50の第3の板状部53の当接部53aで1箇所の計3箇所での固定となる。フィンカバー50両端の第2の板状部52の外面は面接触であるため、面と面をきれいに全面当てることによって高い剛性が得られる。このとき、フィンカバー50の第3の板状部53の当接部53aはフレーム本体部40と線接触となっているため、フィンカバー50の姿勢の自由度が高く、フィンカバー50両端の第2の板状部52の外面がきれいに面接触することに寄与する。
【0019】
以上説明したように、本実施形態に係る回転電機1のフレーム30は、傾斜面44と当接部53aを有することにより、簡単な構成で、フレーム本体部40とフィンカバー50とを高い剛性で結合することができる。したがって、剛性が高く組み立て作業性に優れたフレームを有する回転電機を提供することができる。
また、製造工程として前工程で電磁部としての固定子20をフレーム本体部40に焼きばめにより固定し、その余熱を利用してフレーム本体部40とフィンカバー50とを焼きばめにより固定することにより、工程の効率化をすることも可能である。
また、フィンカバー50も通風部60を形成する1部品であるため、冷却能力を期待できる。本実施形態ではフィンカバー50とフレーム本体部40の接触面積が大きく、また介在する接着剤などがないことから、フィンカバー50とフレーム本体部40間の熱通過が良化し、フィンカバー50の冷却能力をより有効に活用できる。
【符号の説明】
【0020】
30 フレーム
40 フレーム本体部
50 フィンカバー
60 通風部
20 固定子
44 傾斜面
53a 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、前記回転子に対して隙間を介して配置された固定子と、前記固定子の周りに配置されたフレームと、を備えた回転電機であって、
前記フレームは、
隅部を有し前記固定子を固定するフレーム本体部と、
前記隅部に設けられた複数のフィンと、
前記複数のフィンを覆うフィンカバーと、
を備え、
前記フレーム本体部は、
前記固定子を取り囲む筒状部と、
前記隅部に形成され前記筒状部から突出し前記筒状部側に傾斜面を有する突出部と、
を備え、
前記フィンカバーは、
第1の板状部と、
前記第1の板状部の両側に設けられた第2の板状部と、
を備え、
前記傾斜面に前記第2の板状部が押圧されることによって前記フィンカバーが前記フレーム本体部に固定される
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記フィンカバーが、前記第2の板状部に挟まれた位置に第3の板状部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記第3の板状部の端部に半円形状の当接部を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載の回転電機。
【請求項4】
前記複数のフィンが、
第1のフィンと、
第1のフィンよりも長さが短い第2のフィンと、
を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
請求項1記載の回転電機を製造する回転電機の製造方法であって、
前記フレーム本体部を加熱して熱膨張させ、焼きばめによって、前記筒状部の内径側に前記固定子を固定し、前記焼きばめの余熱で前記フレーム本体部が熱膨張状態の間に、前記フィンカバーを前記隅部の2つの前記突出部の間へ差し込む
ことを特徴とする回転電機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−231597(P2012−231597A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98163(P2011−98163)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】