説明

固体発酵槽

この発明は、特に大容量向けの、固体基質上で微生物を培養するための固体発酵槽に関する。この発明の応用分野は、微生物に関する産業である。この発明による固体発酵槽は、空気と水が浸透することができ、互いに上下に配置された一つ以上の発酵槽段から構成され、これらの発酵槽段は、空気も水も側方に流れ去ることができない形で、この容器の壁面と接続されており、これらの発酵槽段の上には微生物を培養するための培養基質が有り、発酵槽の構成要素の冷却は、発酵槽の底部から垂直に立ち上がって、発酵槽段(4)を通り抜ける冷却用ランス(3)によって行われることと、パッキン(6)が、発酵槽段(4)の間に取り付けられており、このパッキンが、その上の段(4)の重量によって、発酵槽の内壁に対して押し付けられていることとを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に大容量向けの、固体基質上で微生物を培養するための固体発酵槽に関する。この発明の応用分野は、微生物に関する産業である。
【背景技術】
【0002】
既に、特許文献1は、空気と水が浸透することができ、互いに上下に配置された少なくとも二つの発酵槽段から成る固体発酵槽を開示しており、これらの発酵槽段は、空気も水も側方に流れ去ることができない形で、その容器の壁面と接続されており、発酵槽段の上には微生物を培養するための培養基質が有り、各段の下には冷却器が取り付けられている。
【0003】
この発酵槽は、使用に当たって、多くの欠点を有する。
1.各個別の発酵槽段に対して、段の下を通り、それぞれ冷媒の流入と冷媒の排出を発酵槽の壁面を通して外部から行わなければならない冷却コイル形式の冷却システムを採用していることは、発酵槽の構成要素が冷却に使用する冷媒で汚染される危険性を高くすることとなる。この汚染の危険性は、特に各冷却コイルが、(冷媒の供給と排出のための)二つのコネクターを用いて発酵槽の外部で冷媒の供給管及び排出管と接続しなければならないという事実に帰することができる。漏れは、これらのコネクターで生じる。この漏れが起こる危険性は、発酵槽の段数が増えるほど増加する。冷却システムの接続部分(発酵槽段当たり、一つの供給用と一つの排出用)が、外部から発酵槽内に突出している結果、その下に発酵槽段を装入して、接続することは難しい。発酵槽段は、装入に際して、接続部を通過させて、発酵槽のより低い方の部分に下降させて行くためには、角度を持たせて保持するか、或いは余白を設けなければならない。
2.特許文献1に記載された固体発酵槽の別の問題は、発酵槽段が「リング又は別の形状の器具」(請求項4)上に配置されていることである。これらの「リング又は別の形状の器具」は、耐熱性のガスケットを備えている。これは、水又は空気が発酵槽段を迂回して流れることを防止するためのものである。しかしながら、これらの「リング又は別の形状の器具」は、各段の下に段を装入して、接続することを難しくする効果を持つ。
【特許文献1】国際特許公開明細書第99/57239号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことから、この発明の課題は、特許文献1の特許請求の範囲に記載された固体発酵槽のこれらの欠点を、これに代わる構成によって解消するとともに、大容量の取扱いを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、この発明にもとづき、以下に記載された通り解決される。この発明の主要な特徴は、次の通りである。
【0006】
・新方式による発酵槽の構成要素の冷却
・新方式による発酵槽の壁面に対する発酵槽段の密閉
1.発酵槽の構成要素の冷却
発酵槽の構成要素の冷却は、発酵槽の底部から垂直に立ち上がる冷却用ランス(図1の符号3)によって保証される。冷却用ランスの間隔は、培養される微生物によって生じる熱量に依存する。冷却用ランスは、互いに三角形の配列で配置されており(図2)、その結果各冷却用ランスは、最も近いランスから同じ距離に有る。冷却用ランスは、冷媒の戻り用に使用される、より小さい直径の内側の管と、冷媒の供給用に使用される、より大きな直径の管とから構成され、このより大きな直径の管の中に、この内側の管が中心軸を一致させて配置されている(図3)。冷却用ランスの横断面は、環状である。この管は、その上方の端部に、円錐形のストッパーを備えている。好ましくは、この内側の管は、この外側の管のストッパーから1〜2cm手前で開いた形で終端している。これらの二つの管の直径の互いの比率は、好ましくは冷媒の供給時の流速が、冷媒の戻り時の流速と等しくなるように設計される。
【0007】
図1に図示されている通り、これらの冷却用ランスは、発酵槽に差し込まれた二つの管(一方は冷媒を供給するために使用され、他方は冷媒を戻すために使用される)を有し、最も下に有る発酵槽段の下で接続されている。このようにして、発酵槽の構成要素を冷却する目的のために、圧力容器として設計された発酵槽の外壁を、二箇所突き破らねばならないだけである。
【0008】
発酵槽段の底部には、穴が設けられている。これらの穴の直径は、冷却用ランスの外径より約1mm大きい。これらの穴には、上向き、即ち培養基質の方に開く蓋を設けることができる。上方から発酵槽に発酵槽段を装入する際に、これらの蓋は、冷却用ランスによって開かれて、従って冷却用ランスのための通路を開けることとなる。冷却用ランスは、その円錐形の先端のお陰で、発酵槽段の発酵槽への装入時に難なく培養基質を貫通することができる。冷却用ランスによって占有される容積が生じるために、発酵槽段は、発酵槽に装入される前には、発酵槽への装入後において発酵槽段内に十分な余裕が生まれる程度にのみ、培養基質を充填される。
【0009】
しかしながら、発酵槽段の充填は、当該の段が、ちょうど発酵槽の開口部の下に有り、冷却用ランスが発酵槽の底部から培養基質の目標とする高さのところまで突き通る形に、この段を発酵槽に装入した後に行うこともできる。この方式の充填では、発酵槽段の穴を塞ぐための蓋は不要である。これらの段は、目標とする高さまで充填されて、その段の下が発酵槽の底部に達するまで、発酵槽に装入される。
【0010】
特別な場合、ここで述べた発酵槽は、培養基質を充填された一段だけで運用することができる。このことは、特に粒状の培養基質が、非常に安定した構造を示し、培養基質が滅菌又は発酵時に圧縮するか、或いはその特性を培養プロセスにとって不利となる別の形に変化する危険性が無い場合に可能である。
2.発酵槽の壁面に対する発酵槽段の密閉
好気性微生物の発酵又は培養のためには、微生物が成長する培養基質への酸素の持続的な供給が必要である。そのために、特許文献1の特許請求の範囲に記載された発明では、空気は、培養基質を通して誘導されている。しかしながら、これは、発酵槽段が発酵槽の壁面に対して密閉されている場合にのみ可能である。さもなければ、空気は、より抵抗が少ないために、段を迂回して流れ、培養基質は、十分に酸素を供給されなくなる。発酵槽の壁面に対する発酵槽段の密閉は、発酵槽の接種のためにも必要である。特許文献1の特許請求の範囲に記載された発明では、接種は、発酵槽の最上部の発酵槽段の上に滅菌水を溜めることによって行っている。そして、この水の中に撒き散らかされた接種材は、蓋の穴を通して取り込まれて行く。その後、この水が底部の排出口を通して再び発酵槽から排出されることによって、すべての発酵槽段の一様な接種が達成される。このようにして、すべての発酵槽段を通して一様に流されると同時に、接種材が混入されるものである。しかしながら、これは、この水が発酵槽段を側方に流れない場合にのみ可能である。
【0011】
この発明では、パッキンを発酵槽段の間に取り付けて、その上に配置された段の重量により押し付けることによって、気密かつ防水の密閉を実現している(図1の符号6と6a)。このパッキンは、弾力性の有る耐熱性の材料(例えば、シリコーン)で構成される。このパッキンが押し付けられると、このパッキンは、側方に膨張して、発酵槽の内壁に対して押し付けられる。このようにして、所要の気密かつ防水の密閉が保証されるものである。このパッキンが、強く押し付けられ過ぎるのを防止するために、その上の発酵槽段を、その下に有る発酵槽段の上で支えるようにする。これは、例えばスペーサ−(図1の符号6a)によって実現することができ、このスペーサーは、パッキンが、すべての段の間で等しく押し付けられるような隙間を生じさせるものである。このパッキンは、例えば溝を用いて、その下の段の上端の上か、或いはその上の段の底部の下の端部に取り付けることができる。
【0012】
主に湿潤剤を収容するために使用される、最も下の発酵槽段だけが、発酵槽の壁面上に堅固に取り付けられたリング上で支えられ、このリングの上に、パッキンが配置される(図1)。
【0013】
符号一覧
(図1)
1 発酵槽の壁面
2 発酵槽の蓋
3 冷却用ランス
4 発酵槽段
5 微生物培養用基質
6 発酵槽段間のパッキン
6a 開放された状態のパッキン
7 蓋のパッキン
8 蓋のねじ接続
9 蒸気取入口
10 水滅菌フィルター
11 水取入口
12 排出口
13 空気滅菌フィルター
14 空気取入口
15 冷媒の戻り
16 冷媒の供給
17 接種用開口部
18 排気滅菌フィルター
19 排気口
20 安全弁
(図2)
a) 正面図
b) 平面図
1 発酵槽段の壁面
2 パッキン
3 冷却用ランスのための開口部
4 穴の開いたシートで構成された段の底部
(図3)
1 内側の管
2 外側の管
3 供給
4 戻り
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】固体発酵槽の模式図
【図2】発酵槽段
【図3】冷媒の供給と冷媒の戻りのための冷却用ランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の発酵槽段から成る固体発酵槽であって、これらの発酵槽段は、空気と水が浸透することができて、互いに上下に配置されており、空気も水も側方に流れ去ることができない形で、この容器の壁面と接続されており、これらの発酵槽段の上には微生物を培養するための培養基質が有る固体発酵槽において、
発酵槽の構成要素の冷却は、発酵槽の底部から垂直に立ち上がって、発酵槽段(4)を通り抜ける冷却用ランス(3)によって行われることと、
パッキン(6)が、発酵槽段(4)の間に取り付けられており、このパッキンが、その上の段(4)の重量によって、発酵槽の内壁に対して押し付けられていることと、
を特徴とする固体発酵槽。
【請求項2】
冷却用ランス(3)が、互いに三角形の配列に配置されており、各冷却用ランスは、最も近い冷却用ランスとの間隔が同じであることを特徴とする請求項1に記載の固体発酵槽。
【請求項3】
冷却用ランス(3)が、冷媒の戻り用に使用される、より小さい直径の内側の管と、冷媒の供給用に使用される、より大きな直径の管とで構成され、このより大きな直径の管の中に、この内側の管が中心軸を一致させて配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体発酵槽。
【請求項4】
当該の外側の管には、その上方の端部に円錐形のストッパーが配備されており、当該の内側の管は、好ましくは、この外側の管のストッパーから1〜2cm手前で開いた形で終端していることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の固体発酵槽。
【請求項5】
当該の冷却用ランスは、好ましくは、1〜3cmの外径を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の固体発酵槽。
【請求項6】
当該の二つの管の直径の互いの比率は、好ましくは、冷媒の供給時の流速が、冷媒の戻り時の流速と等しくなるように設計されることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の固体発酵槽。
【請求項7】
当該のパッキンは、弾力性が有る耐熱性の材料から構成され、その上の段(4)の重量によって、発酵槽の内壁に対して押し付けられることを特徴とする請求項1に記載の固体発酵槽。
【請求項8】
当該のパッキンは、シリコーンから構成されることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の固体発酵槽。
【請求項9】
スペーサー(6a)が、段(4)の間に配備されていることを特徴とする請求項1、7、8のいずれか一つに記載の固体発酵槽。
【請求項10】
当該のパッキンは、例えば溝を用いて、その下の段(4)の上端の上か、或いはその上の段(4)の底部の下の端部に取り付けられることを特徴とする請求項1又は請求項7から9までのいずれか一つに記載の固体発酵槽。
【請求項11】
主に湿潤剤を収容するために使用される、最も下の発酵槽段(4)が、発酵槽の壁面に堅固に取り付けられたリング上に支えられており、このリングの上に、パッキンが配置されることを特徴とする請求項1又は請求項7から10までのいずれか一つに記載の固体発酵槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−500502(P2007−500502A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521386(P2006−521386)
【出願日】平成16年7月17日(2004.7.17)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001558
【国際公開番号】WO2005/012478
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505379342)プロフィタ・ビオロギッシャー・プフランツェンシュッツ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】