説明

固体粒子の転化及び粉砕法

固体の出発粒子を固体の中間体粒子へと転化し、かつ該中間体粒子のメジアン直径を減じて製品粒子を得る、組み合わされた方法。この方法は、直列の少なくとも二つの転化容器を通して出発粒子の縣濁物を流し、それにより該出発粒子の少なくとも一部を中間体粒子へと転化すること、該転化容器の一つ以上に超臨界流体を加え、それにより超臨界縣濁物を形成すること、そして該超臨界縣濁物から圧力を開放し、それにより該縣濁物を膨張させ、かつ該中間体粒子を製品粒子へと転化することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あるメジアン直径を持つ固体粒子をより小さなメジアン直径を持つ固体の製品粒子へと転化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子寸法を減じる最も一般的な方法の一つは粉砕である。しかし、約1ミクロン未満のメジアン直径を持つ粒子は通常、標準的な粉砕手順により得られることはできない。
【0003】
今日、ナノテクノロジーは、高い期待と共に成長しつつある研究分野である。このテクノロジーはいわゆるナノ粒子を要求する。これは、約1ミクロン未満のメジアン粒子寸法を持つ粒子として本明細書において定義される。そのような粒子は通常、より大きい粒子の単純な粉砕により得られることはできない。
【0004】
米国特許第5,810,267号明細書は、粉末を超臨界状態における流体に縣濁し、該縣濁物を加圧し、ノズルを通して該流体を注入し、該縣濁物流体における圧力を減じ、そして超臨界又は亜臨界状態の下に固体粒子から気体として該流体を分離することにより粉末を粉砕する方法を開示している。10ミクロンのSiC粒子から1ミクロンのSiC粒子への粉砕がこの文献に例示されている。これらの粒子の寸法は変化されるが、これらの化学結合及び秩序度は同一のままである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、(a)粒子の秩序度を変化させること及び(b)所望なら、一つのプロセスにおいてナノメーター規模にこれらの粒子の寸法を減じることを組み合わせることを可能にすることが所望された。本発明は、そのような方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う方法は、固体の出発粒子を固体の中間体粒子へと転化し、かつ該中間体粒子のメジアン直径を減じて製品粒子を得るための組み合わされた方法に関し、該方法は、次の段階、即ち、
a) 直列の少なくとも二つの転化容器を通して出発粒子の縣濁物を流し、それにより該出発粒子の少なくとも一部を中間体粒子へと転化すること、
b) 該転化容器の一つ以上に超臨界流体を加え、それにより超臨界縣濁物を形成すること、及び
c) 該超臨界縣濁物から圧力を開放し、それにより該縣濁物を膨張させ、かつ該中間体粒子を製品粒子に転化すること
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
固体の出発粒子は無定形であるか、又は秩序度を有するかのいずれかである。該プロセスの間に、これらは好ましくは、(i)出発粒子が無定形であるとき、秩序度を有するところの中間体粒子に転化され、又は(ii)出発粒子が秩序度を有するとき、異なる秩序、異なる秩序度を有し、若しくは秩序を有しないところの中間体粒子に転化される。
【0008】
術語「秩序度」は、X線回折(XRD)、走査電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、又は拡張X線吸収端微細構造解析法(EXAFS)により検出可能な結晶性又は準結晶性、即ち、非無定形の相の存在として定義される。通常、秩序度は、(ピーク又はランプのいずれかとして)X線検出可能であるが、非常に少量の微結晶(即ち、XRD検出限界未満)の場合に、より有利な技術、即ち、SEM、TEM又はEXAFSが、秩序度を検出するために要求される。他方、無定形は、上記で定義された秩序度を有しないとして定義される。秩序度は、もし、微結晶がX線検出可能であるなら、例えば、XRDピーク(又はランプ)の幅から評価され得る。このピークが狭ければ狭いほど、秩序度はより高くなるであろう。異なる秩序は、上記の技術により異なる結晶構造又はモルホロジーの検出から追跡されるであろう。秩序の無いことは無定形を意味する。
【0009】
本発明に従う方法は特にナノ粒子の製造のために適している。従って、この方法は好ましくは、1ミクロン未満、より好ましくは1〜500nm、更により好ましくは1〜200nm、かつ最も好ましくは1〜100nmのメジアン直径を持つ製品粒子の製造のために適用され得る。
【0010】
中間体粒子及び、殆どの場合に、また出発粒子は、製品粒子より大きなメジアン直径を有する。好ましくは、出発粒子のメジアン直径は、1ミクロンを超え、好ましくは約1〜1,000ミクロン、より好ましくは1〜500ミクロン、かつ更により好ましくは1〜200ミクロンである。
【0011】
該粒子の直径は、電子顕微鏡により検出された代表的な量の粒子の直径を測定することにより決定される。メジアン直径は分布の中間であり、粒子の数の50%がメジアン直径を超え、かつ50%がメジアン直径未満である。
【0012】
出発、中間体、及び製品粒子は好ましくは無機物質から作られる。
【0013】
出発粒子は好ましくは、低コスト物質、例えば、アルミニウム酸化物又は水酸化物、例えば、ボーキサイト、結晶性アルミニウム三水和物(ATH)、ギブサイト、ボーキサイト鉱石濃縮物(BOC)又はこれらの熱処理された形態(例えば、か焼された及び/又はフラッシュか焼された形態);合成及び天然クレー、例えば、カオリン、セピオライト、ハイドロタルサイト、スメクタイト、又はベントナイト;シリカ鉱石、例えば、砂又はケイソウ土;マグネシウム源、例えば、マグネシウム塩、マグネシウム酸化物又は水酸化物、例えば、ブルーサイト、炭酸マグネシウム、マグネシウムヒドロキシカーボネート;ジルコニウム化合物、例えば、ジルコニア、ジルコン又はバッデリライト;チタン酸化物又は水酸化物、例えば、ミクロ球体の形態における吸収剤、触媒又は触媒前駆体、即ち、スプレードライされた粒子等である。
【0014】
所望なら、出発粒子は、それらの粒子寸法を減じるために本発明に従う方法において使用する前に、機械的に処理(例えば、粉砕)され得る。
【0015】
出発粒子を中間体粒子へと転化する例は、硫酸アルミニウム及び硝酸アルミニウムの沈降された混合物をベーマイトへと転化すること、ボーキサイト鉱石濃縮物(BOC)をベーマイトへと転化すること、準結晶性ベーマイトを微結晶性ベーマイトへと転化すること、安価なシリケート鉱石(例えば、砂)をシリカ又はシリカに基づいた物質へと転化すること、ケイ素源(例えば、砂、シリカゾル、水ガラス、ケイソウ土)及び固体マグネシウム源(例えば、MgO、ブルーサイト、ヒドロマグネサイト又はマグネシウム塩)を層状マグネシウムシリケートへと転化すること、ジルコニア鉱石(例えば、ジルコン又はバッデリライト)を高結晶性ジルコニアへと再結晶すること、ケイ素源及び固体アルミニウム源(例えば、アルミニウム酸化物又は水酸化物)及び任意的にシード及び/又はテンプレートをモレキュラーシーブ(例えば、ゼオライトX、Y又はA、ZSM-タイプのゼオライト、ゼオライトベータ、メソ多孔性モレキュラーシーブ)へと転化すること、固体の三価及び二価金属源(例えば、アルミニウム及びマグネシウム源)をアニオン性クレー(例えば、ハイドロタルサイト)へと転化すること、二つの固体の二価金属源を層状ヒドロキシル(複)塩へと転化すること、ケイ素源及び固体のアルミニウム源及び任意的にベントナイトシードをベントナイトへと転化すること、並びにケイ素源、固体のアルミニウム源及び固体のマグネシウム源をスメクタイトへと転化することである。
【0016】
更に、上記転化の全ての種類の組み合わせがまた、種々の複合体、例えば、アニオン性クレー及びベーマイト含有複合体、又はアニオン性クレー、ベーマイト及びゼオライトを含む複合体を形成するために使用され得る。
【0017】
製品粒子は通常、それらのより小さい粒子寸法を除いて、中間体粒子と同一の物質から成るであろう。しかし、中間体粒子が、層状物質、例えば、アニオン性クレー(例えば、ハイドロタルサイト)、カチオン性クレー(例えば、スメクタイト、カオリン、ベントナイト、セピオライト等)又は層状ヒドロキシ(複)塩であるなら、圧力開放が、層状構造の剥離及び/又は剥脱を生じ得る。
【0018】
本発明に従う方法は、第1段階として、直列の少なくとも二つの転化容器を通して出発粒子の縣濁物を流すこと、そして最終段階として、縣濁物の圧力を開放することを含む。超臨界流体の導入のタイミングは、次の三つ実施態様に従って変化され得る。
【0019】
第一の実施態様において、出発粒子は、例えば、第1の転化容器、二つ又は三つの転化容器を使用して大気圧又は超大気圧下に非超臨界液体中で中間体粒子に転化される。この方法において使用されるべき適切な非超臨界液体は、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等、及び炭化水素液体、例えば、トルエン、ヘキサン、ホワイトスピリット、ガソリン等を含む。
【0020】
任意的に、中間体粒子を含む縣濁物の液体含有量が減じられた後及び/又は機械的に処理された後に、次の転化容器において、中間体粒子を含む縣濁物は超臨界流体と一緒にされて、超臨界縣濁物を得る。次いで、超臨界縣濁物は、次の容器にノズル又はオリフィスを経てポンプ送液され、それにより超臨界縣濁物を膨張させかつ製品粒子を形成する。
【0021】
第二の実施態様において、超臨界流体は、出発粒子を中間体粒子へと転化する間に加えられる。故に、中間体粒子への転化の一部は、超臨界状態の下で生ずる。再び、縣濁物と超臨界流体とを一緒にする前に、縣濁物の液体含有量が、例えば、乾燥又は脱水により減じられ得、かつ縣濁物は、機械的処理(例えば、粉砕)に付され得る。
【0022】
所望の転化度の後に、超臨界縣濁物は、次の容器にノズル又はオリフィスを経てポンプ送液され、それにより超臨界縣濁物を膨張させ、そして製品粒子を形成する。
【0023】
これらの最初の二つの実施態様において、超臨界流体を含む/含まないところの転化容器は通常、超臨界流体を仕込まれた容器より低い圧力に維持される。個々の容器の間の大きな圧力差を可能にするために、該装置は高圧スラリーポンプを備えられ得る。これは連続処理を可能にする。
【0024】
あるいは、該方法は、(a)超臨界流体を容器の一つに仕込むことそして(b)超臨界縣濁物を膨張させることの順序の間に中間体粒子の製造を妨げることにより半連続的になされ得る。この妨害期間の間に、超臨界状態の下における転化容器は、非超臨界状態の下における転化容器から分離される。
【0025】
第三の実施態様において、出発粒子を中間体粒子へと転化する全体のプロセスは超臨界状態の下でなされる。従って、超臨界流体は、直列の少なくとも二つの転化容器の最初のものに加えられる。最後に、中間体粒子が形成された後に、超臨界縣濁物は、次の容器にノズル又はオリフィスを経てポンプ送液され、それにより超臨界縣濁物を膨張させそして製品粒子を形成する。
【0026】
超臨界流体の例は、超臨界CO2、超臨界窒素、超臨界エチレン、超臨界キセノン、超臨界エタン、超臨界亜酸化窒素、超臨界プロパン、超臨界アンモニア、超臨界ペンタン、超臨界イソプロパノール、超臨界メタノール、超臨界トルエン、及び超臨界水を含む。
【0027】
超臨界CO2は、本発明に従う方法において使用されるべき好ましい超臨界流体である。CO2は、穏やかな臨界温度(31℃)を有し、それは不燃性かつ無毒である。更に、それは、温室効果への更なる寄与なしに、現存する工業プロセスから得られ得る。超臨界二酸化炭素は、高い拡散率、低い粘度、及び低い表面張力を有する。超臨界CO2を使用することの更なる利点は、気体状CO2が蒸発し、そして乾燥固体製品粒子が容易に集められ得ることである。
【0028】
本発明の方法に適切に使用され得るところの少なくとも二つ転化容器を含む装置の例は、米国特許第2003-000305号明細書及び国際特許出願公開第03/078055号公報に従う装置である。この装置はフィード調製容器を含み得、該装置に初期の固体粒子及び任意的にシード、アルカリ及び/又は酸が加えられ、かつ液体と混合され得る。フィードポンプにより強制されて、得られた縣濁物は直列の少なくとも二つ、しかし、好ましくは3〜5個の転化容器の最初のものに導入され得る。転化容器の夫々は、追加の液体、酸、塩基、シード、及び他の成分がそれを経て導入され得るところのインジェクター、及びミキサー、好ましくは軸流ミキサー又は同軸ミキサー、例えば、二重らせんインペラー又はEKATO-INTERMIG(商標) (外側の羽根が下向きにポンプ送液する一方、内側の羽根が上向きにポンプ送液するところの、低粘度を持つスラリーを混合するために適しているインペラー)と組み合わされた固定攪拌機を含み得る。
【0029】
超臨界流体が超大気圧(CO2の場合に約73バールを超える)を要求する故に、超臨界状態の下で作動する転化容器はオートクレーブでなければならない。超臨界状態のための典型的な圧力範囲は、約200〜300バールである。この目的にために使用され得るところのオートクレーブの典型的な例は、AHPTLtd., P.O. Box 11807, Tel Aviv 61116, Israelにより提供されたAHPTオートクレーブである。
【0030】
圧力は好ましくは、次の容器中に、Joule-Thompson冷却に帰する凍結を防ぐために加熱され得るところのノズル又はオリフィスを通って超臨界縣濁物をスプレーすることにより開放される。この方法はまた、超臨界縣濁物の迅速膨張(RESS)と言われる。
【0031】
次の容器は、ほぼ大気圧状態の下に、又は幾分高い圧力、例えば、40〜50バールの下に維持され得る。後者は、超臨界流体のよりエネルギー効率が高くかつ経済的な循環を可能にする。
【0032】
出発粒子を中間体粒子へと転化することを可能にするために、追加の化合物(シード、テンプレート、添加剤、追加の出発粒子)が、縣濁物の処理の間に転化容器に一つ以上に加えられ得る。更に、転化容器の各々における温度は異なり得る。
【0033】
加えて、界面活性剤、例えば、アセテート又はグルコネートが、非超臨界液体と固体粒子との間の相互作用を減じるために、かつ固体粒子と超臨界流体との間の相互作用を増大するために縣濁物に加えられ得る。これは特に、極性の液体、例えば、水が縣濁物中に存在するなら所望される。
【0034】
更に、金属添加物が、金属ドープされた中間体粒子及び/又は出発粒子を得るために縣濁物に加えられ得る。そのような金属添加物の例は、アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca及びBa)、遷移金属(例えば、Mn、Fe、Co、Ti、Zr、Cu、Ni、Zn、Mo、W、V、Sn、Nb)、アクチニド、希土類金属、例えば、La及びCe、貴金属、例えば、Pt及びPd、ケイ素、ガリウム、ホウ素、チタン、リン、並びにこれらの混合物の群から選ばれる元素を含む化合物である。金属添加物は、例えば、続く複数の容器の一つに金属添加物を加えることにより、出発粒子と一緒に又は別々に縣濁物に加えられ得る。
【0035】
層状物質が中間体粒子として形成されるなら、相互作用された層状物質の形成を可能にするために縣濁物中に存在する相互作用剤を有することが所望され得る。術語「相互作用剤」は、層状物質の層間に集結され得て、それにより層間の間隔を増大するところの化合物として定義される。相互作用剤の例は、有機化合物、例えば、芳香族環及び/又は、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミド、エーテル、アンモニウム、及びエステルより成る群から選ばれる官能性を含む有機化合物である。そのような化合物の例は、アミノ酸(例えば、グリシンセリン、L-アスパラ銀酸)、オレエート、グルコネート、カルボキシメチル化カルボハイドレート(例えば、カルボキシメチルセルロース)、有機溶剤(例えば、ジメチルスルホキシド、イソホロン、ガンマ-ブチロラクトン、n-メチルピロリドン、2-ピロリドン、ジグリム、カプロラクタム、フルフリルアルコール、テトラヒドロフラン)、第四級アンモニウムカチオン、アルキルサルフェート(例えば、ナトリウムドデシルサルフェート)、アルキルスルホネート(例えば、スチレンスルホネート、ポリスチレンスルホネート)、及び他のイオン性アルキル鎖又は界面活性剤である。
【0036】
相互作用剤として使用され得るところのアニオン性無機化合物の例は、ピラリングアニオン、例えば、Fe(CN)63‐、HVO4 、V2O7 4‐、HV2O124‐、V3O9 3‐、V10O286‐、Mo7O24 6‐、PW12O403‐、B(OH)4 、[B3O3(OH)4] 、[B3O3(OH)5]2‐、B4O5(OH)4 2‐、HBO4 2‐、HGaO3 2‐、CrO4 2‐、Cr2O72‐、又はケギンイオンである。
【0037】
転化容器を通って流れる非超臨界縣濁物は、高い固体対液体比(SLR)を有し得る。該縣濁物のSLRは、結晶水を含む固体対縣濁物中の液体の重量比として定義される。最適なSLRは、縣濁物のレオロジー挙動、例えば、ゲルを形成するための傾向に依存し、かつ0.1〜1.33、より好ましくは0.3〜1.33、更により好ましくは0.5〜1.33、及び最も好ましくは0.65〜1.00の範囲であり得る。非超臨界縣濁物の粘度は好ましくは、0.1秒‐1のせん断速度において1〜500Pa・sである。
【0038】
本発明に従う方法により、種々の用途のための製品粒子が製造され得る。これらの用途は、物質のタイプ及び粒子の寸法に依存する。例えば、ナノ粒子は、例えば、分子電子装置(例えば、分子ワイヤ、ダイオード、トランジスター、メモリー)、センサー、ナノポンプ、(触媒、触媒添加物、触媒担体等としての)触媒作用、吸着剤、コーティング組成物(例えば、金属及び/又はプラスチック基材のためのプライマー、ベースコート及び/又はクリアコート)、製紙、紙保存(例えば、歴史文書の保存)、(フィラーとしての)ポリマー等においてこれらの使用を見出すことができる。
【0039】
実施例
実施例1
この実施例は、アルミニウム三水和物及び酸化マグネシウム出発粒子をアニオン性クレー中間体粒子へと転化し、そしてこれらのアニオン性クレー中間体粒子をアニオン性クレー製品ナノ粒子へと転化するための本発明に従う方法を説明する。
【0040】
24.2kgのアルミニウム三水和物(AlcoaからのATH M6(商標))、25kgのMgO(Martin MariettaからのZolitho 40(商標))、及び150.8kgの水が、250リットルのフィード調製容器において混合された。固体対液体比は0.33であった。分子比MgO/Al2O3は4であった。
【0041】
縣濁物は第1の転化容器にポンプ送液された。スチームインジェクションにより、該縣濁物は170℃まで加熱され、それにより固体対液体比を0.25まで減少した。縣濁物は、平均滞留時間が約45分間であったような流れで、続く二つの転化容器を通って導かれた。
【0042】
全ての転化容器において縣濁物は、76〜83rpmにおいて二重らせんインペラーを使用して攪拌された。僅かに発熱を伴う反応のために、温度は、第1の転化容器における170℃から第二の転化容器における180℃まで増加された。全体の系の圧力は、第三の転化容器の直ぐ向こう側に位置付けられた圧力弁により制御された。この実験において系の圧力は12バールに維持された。
【0043】
X線回折(XRD)測定は、Mg-Alアニオン性クレーが形成されたことを示した。該アニオン性クレー中間体粒子は、約4ミクロンのメジアン粒子直径を有していた。
【0044】
第三の転化容器の後に、該縣濁物は第四の転化容器に入れられた。該転化容器は、超臨界CO2ポンプを使用して超臨界状態における所望の条件(T>304.2K、p>73atm)にCO2で昇圧された。超臨界流体を入れられる前に、第四の転化容器は、第三の転化容器から分離され、そしてアニオン性クレー出発粒子の製造が中断された。得られた超臨界縣濁物は、10分間、高速(1,000〜2,000rpm)において攪拌された。縣濁物中のCO2対H2O重量比は5より高く、それにより固体対液体比を0.054未満に減じた。
【0045】
次いで、縣濁物は、ほぼ大気圧状態の下に維持されていたところの次の容器にノズルを通して開放され、それによりCO2ガス回収に湿ったCO2ガスを排出してそして系を乾燥した。乾燥されたCO2ガスは、超臨界CO2コンプレッサー/ポンプを使用して循環された。この方法の半連続モードによれば、第3及び第4の転化容器が再び接続され、製品粒子の製造が再開され、そして第4の転化容器に再び出発粒子が入れられた。
【0046】
最後の容器から集められた生成物粒子は、500nm未満のメジアン粒子寸法を持つMg-Alアニオン性クレー粒子であると分析された。
【0047】
実施例2
超臨界CO2に代えて超臨界窒素(126K、33.5atm)が使用されたことを除いて、実施例1が繰返された。再び、製品粒子がMg-Alアニオン性クレーを含んでおり、かつ500nm未満のメジアン粒子寸法を有していた。
【0048】
実施例3
この実施例は、ケイ酸ナトリウム及びフラッシュか焼されたアルミナ出発粒子をゼオライト中間体粒子へと転化し、そしてこれらの中間体粒子をゼオライト製品粒子へと転化すること説明する。
【0049】
(ゾル粒子として)3.73kgの、28重量%の固体を含む水性ケイ酸ナトリウムが、大気圧状態の下において40グラムのアルミニウムCP-3(フラッシュか焼されたアルミニウム三水和物)及び2.80グラムの水と混合されて縣濁物を形成した。この縣濁物の固体対液体比(SLR)は0.20であった。SLRの計算において、28重量%のケイ酸ナトリウム質量が固体として計算され、他の72重量%は液体として計算された。ZSM-5シード(10重量%)が加えられた。縣濁物が170℃に加熱され、そして300分間、この温度に保持された。縣濁物は、76〜83rpmにおいて二重らせんインペラーを使用して攪拌された。
【0050】
そのように形成されたゼオライト中間体粒子は約7ミクロンのメジアン直径を有していた。
【0051】
縣濁物は第二の容器に入れられた。該容器は、超臨界CO2ポンプを使用して超臨界状態における所望の条件(T>304.2K、p>73atm)にCO2で昇圧された。得られた超臨界縣濁物は、10分間、高速(1,000〜2,000rpm)において攪拌された。該縣濁物中のCO2対H2O重量比は5より高く、それにより固体対液体比を0.033未満まで減じた。
【0052】
次いで、縣濁物は、ほぼ大気圧状態の下に維持されていたところの第3の容器にノズルを通して開放され、それによりCO2ガス回収に湿ったCO2ガスを排出してそして系を乾燥した。乾燥されたCO2ガスは、超臨界CO2コンプレッサー/ポンプを使用して循環された。第3の容器から集められた製品粒子は、あるシリカ対アルミナ比(SAR)を持つZSM-5であり、これらの製品粒子の55.90%が1ミクロン未満の粒子寸法を有していると分析された。
【0053】
実施例4
第四の転化容器に入れられる前に、縣濁物が高圧ろ過段階を使用して脱水され、それにより10重量%未満に該縣濁物の水含有量(LOI)を減じたことを除いて、実施例1及び2が繰返された。これは、第四の転化容器における超臨界流体対水比を増加した。
【0054】
実施例5
第二の容器に入れられる前に、縣濁物が高圧ろ過段階を使用して脱水され、それにより10重量%未満に該縣濁物の水含有量(LOI)を減じたことを除いて、実施例3が繰返された。これは、第二の容器における超臨界流体対水比を増加した。
【0055】
実施例6
実施例1〜5が繰返された。ここで、グルコン酸ナトリウムが縣濁物に加えられた。
【0056】
実施例7
ほぼ大気圧状態の下の容器に開放される前に、超臨界縣濁物はまず、幾分より高い圧力(超臨界CO2の場合、40〜50バール)下の容器に解放され、それにより超臨界流体のよりエネルギー効率の良くかつ経済的な循環を可能にすることを除いて、実施例1〜6が繰返された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の出発粒子を固体の中間体粒子へと転化し、かつ該中間体粒子のメジアン直径を減じて製品粒子を得る方法であって、次の段階、
a) 直列の少なくとも二つの転化容器を通して出発粒子の縣濁物を流し、それにより該出発粒子の少なくとも一部を中間体粒子へと転化すること、
b) 該転化容器の一つ以上に超臨界流体を加え、それにより超臨界縣濁物を形成すること、及び
c) 該超臨界縣濁物から圧力を開放し、それにより該縣濁物を膨張させ、かつ該中間体粒子を製品粒子へと転化すること
を含むところの方法。
【請求項2】
固体の製品粒子が1ミクロン未満のメジアン直径を有するところの請求項1記載の方法。
【請求項3】
固体の製品粒子が1〜500nmのメジアン直径を有するところの請求項2記載の方法。
【請求項4】
固体の製品粒子が1〜200nmのメジアン直径を有するところの請求項3記載の方法。
【請求項5】
固体の出発粒子が無機固体粒子であるところの請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
中間体粒子が、アニオン性クレー、スメクタイト、ゼオライト、ベーマイト、シリカ、カチオン性クレー、層状ヒドロキシ塩、及びこれらの組み合わせより成る群から選ばれる物質を含むところの請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
超臨界流体が超臨界二酸化炭素であるところの請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
出発粒子を中間体粒子へと転化することの少なくとも一部が、超臨界状態の下に行われるところの請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
超臨界縣濁物が、直列の転化容器の第1番目に加えられるところの請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
出発粒子を中間体粒子へと転化した後に、超臨界流体が出発粒子の縣濁物に加えられるところの請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。

【公表番号】特表2006−507930(P2006−507930A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556283(P2004−556283)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013673
【国際公開番号】WO2004/050251
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505002495)アルベマーレ ネザーランズ ビー.ブイ. (19)
【Fターム(参考)】