説明

固体電解コンデンサ

【課題】高温環境下にあっても、ESRの経時的変化が小さい固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】弁作用金属からなる陽極体11と、この陽極体11の表面に形成された誘電体酸化皮膜層12と、この誘電体酸化皮膜層12の表面に形成された固体電解質層13と、この固体電解質層13の表面に陰極層14として順次形成されたカーボン層14aと導電体層14bとからなるコンデンサ素子15を有する固体電解コンデンサにおいて、前記カーボン層14aが、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上を含有した構成の固体電解コンデンサとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用される固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年デジタル機器の発展により、等価直列抵抗(以下、ESRと記す)が低く高周波特性の優れたコンデンサが強く要望されている。このような市場の要望に応えて、電解質として二酸化マンガンやポリピロール、ポリチオフェンなどの固体電解質層を用いたものが開発され商品化されている。
【0003】
図2はこの種の従来の固体電解コンデンサの構成を示す断面図であり、図2において、アルミニウムやタンタル等の弁作用金属を多孔質に焼結した陽極体1と、この陽極体1に、一方の端部を埋設し他方の端部を表出させた陽極導出線1aと、前記陽極体1の表面に、陽極酸化法により形成された誘電体酸化皮膜層2と、この誘電体酸化皮膜層2の表面に、電解重合法および/または化学重合法によって設けられたポリピロールなどの導電性高分子を含んだ固体電解質層3と、この固体電解質層3の表面に、陰極層4として順次形成されたカーボン層4aおよび銀ペーストの導電体層4bとから、コンデンサ素子5が構成されている。このコンデンサ素子5と、前記陽極導出線1aに接続された陽極端子6と、前記陰極層4を構成する導電体層4bに接続された陰極端子8と、この陽極端子6と陰極端子8がそれぞれ電子回路に接続される接続部6a、接続部8aを露出させるようにしてコンデンサ素子5全体を被覆した絶縁性の外装樹脂9とによって、固体電解コンデンサが構成されている。
【0004】
以上のような構成の固体電解コンデンサは、固体電解質層3の固有抵抗が著しく低いという特徴を有するため、固体電解コンデンサのESR特性の低減を図ることができるとされている。
【0005】
また、前記カーボン層4aに少量の界面活性剤を混ぜる、もしくはカーボン層4aと固体電解質層3との間に界面活性剤層を設け、この界面活性剤として、ポリエチレングリコールラウリルエーテルを用いた構成とすることにより、固体電解質層3へのカーボン層4aの密着性が初期的に改善され、固体電解コンデンサのtanδの低減や静電容量出現率の向上を図ることができるとされている。このような従来の技術としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−159222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の固体電解コンデンサは、カーボン層4aにポリエチレングリコールラウリルエーテルを含有させることにより、固体電解コンデンサのtanδの低減や静電容量出現率の向上と共に、ESRについても初期的には低減することができるが、高温環境下にある場合では、ESRが経時的に変化して大きくなるという課題を有していた。
【0008】
この課題の主原因は、高温環境下において、導電性高分子を含んだ固体電解質層3上に形成されたカーボン層4aの剥離が生じやすく、固体電解質層3とカーボン層4aとの界面抵抗が増加し、またカーボン層4aの剥離でできた固体電解質層3との隙間から侵入した外部の酸素や水分によって固体電解質層3自身の固有抵抗が増加してしまうためであり、この結果として、固体電解コンデンサのESRが経時的に変化して大きくなりやすい。
【0009】
そこで、本発明は、高温環境下にあっても、ESRの経時的変化が小さい固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そしてこの目的を達成するために、本発明は、弁作用金属からなる陽極体と、この陽極体の表面に形成された誘電体酸化皮膜層と、この誘電体酸化皮膜層の表面に形成されたドーパントを含有した固体電解質層と、この固体電解質層の表面に陰極層として順次形成されたカーボン層と導電体層とからなるコンデンサ素子を有する固体電解コンデンサにおいて、前記カーボン層が、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩から選択された少なくとも一種以上の添加剤を含有し、前記添加剤は、前記ドーパントと異なる構成の固体電解コンデンサとした。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、カーボン層が、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩から選択された少なくとも一種以上を含有した構成により、高温環境下であっても固体電解質層へのカーボン層の密着力を持続させるため、カーボン層の剥離を抑制することができる。この結果として、固体電解質層とカーボン層との界面抵抗の増加を防ぎ、および外部の酸素や水分の侵入を抑えて固体電解質層自身の固有抵抗の増加を防ぐことができ、ESRの経時的変化が小さい固体電解コンデンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における固体電解コンデンサの構成を示す断面図
【図2】従来の固体電解コンデンサの構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は実施の形態1における固体電解コンデンサの構成を示した断面図である。
【0015】
図1において、11は陽極体で、アルミニウム等の弁作用金属の箔からなり、エッチングにより表面が粗面化され表面積が拡大され、またその端部は陽極引き出し部11aとなっている。この陽極引き出し部11aと陽極体11とは、箔の表面に密着するように設けた絶縁性のレジスト材20によって箔表面上で分離されている。
【0016】
12は誘電体酸化皮膜層であり、陽極体11の表面を化成処理することで得られた酸化皮膜によって形成されている。
【0017】
13は固体電解質層であり、誘電体酸化皮膜層12の表面に形成されている。この固体電解質層13は、二酸化マンガン層などのプレコート層と、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの導電性高分子層とからなっている。
【0018】
14は陰極層であり、固体電解質層13の表面に形成され、陰極引き出し部となっている。この陰極層14は、固体電解質層13の表面に順次形成されたカーボン層14aと、銀やニッケル等の導電性粒子を含む導電体層14bとからなっており、このカーボン層14aには、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上が含有されており、具体的な例としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アリールフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラキノンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、これらのナトリウム塩などがある。
【0019】
このようにしてコンデンサ素子15を構成しており、このコンデンサ素子15の陽極引き出し部11aに陽極端子16、陰極層14を構成する導電体層14bに陰極端子18がそれぞれ接続されており、この陽極端子16と陰極端子18がそれぞれ電子回路に接続される接続部16a、接続部18aを露出させるようにしてコンデンサ素子15全体を絶縁性の外装樹脂19で被覆し、固体電解コンデンサを構成している。
【0020】
次に、以上のように構成した実施の形態1における固体電解コンデンサの製造方法について図1を参照しながら説明する。
【0021】
まず、エッチング処理によって表面積を拡大したアルミニウム等の弁金属からなる箔を一定の幅と長さに切断して陽極体11とし、この陽極体11の外表面にテープ状の絶縁性レジスト材20を貼り付けることによって、陽極体11とその端部に設けた陽極引き出し部11aとを分離する。
【0022】
次に、この陽極体11をリン酸2水素アンモニウム水溶液等の溶液中に浸漬して直流電圧を印加して化成処理を施し、陽極体11の表面に酸化皮膜を形成して誘電体酸化皮膜層12を得る。
【0023】
その後、誘電体酸化皮膜層12を形成した陽極体11を硝酸マンガン水溶液に浸漬して引き上げた後、表面に付着した過剰の硝酸マンガン水溶液を取り除き、続いて約300℃の熱を加えて熱分解処理を施し、誘電体酸化皮膜層12の上に二酸化マンガン層を形成して後述する固体電解質層13のプレコート層とする。
【0024】
次に、このプレコート層として形成された二酸化マンガン層上に、電解重合法によりポリピロール等からなる導電性高分子層を形成し、固体電解質層13を設ける。
【0025】
その後、サブミクロンのカーボン粒子を2〜10wt%で水溶液に分散させ、前述した芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上と、カーボン粒子とを混濁したカーボン水溶液を用意し、このカーボン水溶液を固体電解質層13の表面に塗布して130℃〜215℃の高温で乾燥させて溶剤成分を除去しカーボン層14aを形成する。カーボン水溶液を固体電解質層13の表面に塗布する方法としては、カーボン水溶液に固体電解質層13までを形成した陽極体11を浸漬、あるいはカーボン水溶液を保持したローラ、スポンジ等の部材を固体電解質層13までを形成した陽極体11に当接させる方法等がある。
【0026】
次に、このカーボン層14a上に、銀やニッケル等の導電性粒子とエポキシ樹脂等からなる導電性ペーストを塗布、硬化させて導電体層14bを形成し、これらカーボン層14aと導電体層14bとを陰極層14とし、コンデンサ素子15を得る。
【0027】
その後、陽極体11の端部に設けた陽極引き出し部11aに陽極端子16の一方の端部を接続し、一方で、陰極層14を構成する導電体層14b上に導電性接着剤17を介して陰極端子18の一方の端部を接続する。
【0028】
次に、陽極端子16と陰極端子18のそれぞれ他方の端部が電子回路基板に接触できるようにし、それぞれの他方の端部が電子回路に接続される接続部16a、接続部18aを露出させるようにしてコンデンサ素子15全体をエポキシ樹脂等からなる絶縁性の外装樹脂19で被覆して固体電解コンデンサを作製する。
【0029】
なお、陽極体11は、弁作用金属からなる箔を用いたものであるが、アルミニウムやタンタル、チタン等の弁作用金属の粉末からなる多孔質焼結体とし、この多孔質焼結体に弁作用金属からなる導出線をその一部が表出するように陽極体11に埋設させて陽極引き出し部11aとしてもよい。
【0030】
また、固体電解質層13を形成する導電性高分子は、複素環式モノマーとしてピロール、チオフェン、アニリン、フランまたはこれらの誘導体、例えば3,4−エチレンジオキシチオフェンなどの少なくとも一つから選ばれる重合性モノマーを用いて、電解重合法、化学酸化重合法により形成される。
【0031】
なお、電解重合法は、重合性モノマー及びドーパントを含む重合液中で外部から給電を行うことによって、導電性高分子の固体電解質を形成する。
【0032】
なお、化学酸化重合法は、重合性モノマーの重合溶液に含浸した後、ドーパントと酸化剤の混合溶液、あるいはドーパントと酸化剤との化合物溶液に含浸する方法等を用いて導電性高分子を形成する。
【0033】
また、ドーパントは、カルボキシル基、スルホン酸基の少なくとも一方を有する芳香族化合物を用いる。
【0034】
なお、ドーパントに用いるスルホン酸基を有する芳香族化合物として、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホサリチル酸、スルホ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸などの化合物、その誘導体、またはそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩化合物から選択できる。
【0035】
なお、ドーパントに用いるカルボキシル基を有する芳香族化合物として、安息香酸、フタル酸、スルホフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、などの化合物、あるいはその誘導体、またはそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩化合物から選択できる。
【0036】
また、酸化剤は、例えば第2鉄塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、過酸化水素などが用いられ、第2鉄塩としては硫酸鉄、またはp−トルエンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸などのドーパントとの鉄塩を用いることができる。
【0037】
なお、他の導電性高分子として、イミノ−p−フェニレン構造のポリアニリンなどの可溶化した導電性高分子を用いて導電性高分子を形成してもよい。
【0038】
また、固体電解質層13のプレコート層として形成した二酸化マンガン層の代わりに、導電性高分子等の導電性材料を用いてプレコート層を形成してもよい。
【0039】
また、カーボン層14aに含有されたカーボン粒子は、グラファイト、カーボンブラック、黒鉛のいずれかを選択し用いる。
【0040】
また、カーボン層14aの形成プロセスにおいて、カーボンペーストを用いた方法でもよく、酢酸ブチルやアルコール、ケトン等から成る有機溶媒にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂等の有機バインダーと、カーボン粒子を20〜90wt%加え、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上を混合したカーボンペーストを用い、このカーボンペーストを固体電解質層13までを形成した陽極体11に塗布し、高温で硬化させカーボン層14aを形成する。
【0041】
また、カーボン層14aは、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上に加え、一般式(化1)で表される芳香族化合物を含んでいてもよい。この場合、カーボン層14aの形成プロセスにおいて、カーボン水溶液を用いる方法では、カーボンを2〜10wt%で水溶液に分散させ、芳香族スルホン酸および/またはその塩のホルムアルデヒド縮合物と一般式(化1)で表される芳香族化合物を混濁したカーボン水溶液を使用すればよい。なお、一般式(化1)で表される芳香族化合物を溶解させるために、界面活性剤を添加してもよく、また、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコールを添加することもできる。
【0042】
【化1】

【0043】
以上のような構成および製造方法によって、カーボン層14aが、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上を含有した構成により、高温環境下であっても固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させるため、カーボン層14aの剥離を抑制することができる。この結果として、固体電解質層13とカーボン層14aとの界面抵抗の増加を防ぎ、および外部の酸素や水分の侵入を抑えて固体電解質層13自身の固有抵抗の増加を防ぐことができ、ESRの経時的変化が小さい固体電解コンデンサを得ることができるという効果を奏する。
【0044】
また、前記芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上がカーボン層14aに含有された割合を、カーボン粒子が1に対して0.06〜1.25の範囲とすることが好ましく、高温環境下において、固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させる作用が大きい。
【0045】
なお、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上がカーボン層14aに含有された割合を、カーボン粒子が1に対して0.06未満の範囲とした場合では、高温環境下において、固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させる作用を十分には得られず、1.25を超えた範囲では、カーボン層14aの固有抵抗が大きくなってしまい、ESRが増加する。
【0046】
また、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の中で、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、高温環境下において、固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させる作用が特に大きく、ESRの経時的変化が非常に小さい固体電解コンデンサを得ることができる。
【0047】
また、このポリスチレンスルホン酸およびその塩の分子量を、10000〜1000000の範囲とすることが好ましく、高温環境下において、固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させる作用が大きい。
【0048】
なお、ポリスチレンスルホン酸およびその塩の分子量が、10000未満では、高温環境下において、固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させる作用を十分には得られず、1000000を超えた範囲では、カーボン層14aの固有抵抗が大きくなってしまい、ESRが増加する。
【0049】
また、固体電解質層13上に、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上と、カーボン粒子とを含んだカーボン層14aを形成する方法として、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上と、カーボン粒子とを合わせて混濁させた混濁液を固体電解質層13上に塗布した後、乾燥させることにより、混濁液中のカーボン粒子の分散性が高いため、固体電解質層13表面に緻密で均質なカーボン層14aを形成し、固体電解質層13とカーボン層14aの密着力を高めることができる。
【0050】
なお、この懸濁液にアンモニア等を加えてアルカリ性(pH約8〜11)にすることにより、混濁液中のカーボン粒子の分散性をさらに良くすることができる。
【0051】
なお、混濁液中のカーボン粒子の含有量を2〜10wt%とすればカーボン粒子の分散性を良くすることができる。
【0052】
また、カーボン層14aが、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上と、これらに加えて、一般式(化1)で表される芳香族化合物を含有する構成とすることにより、高温環境下における固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させる効果を、相乗的に高めることができ、ESRの経時的変化がさらに小さい固体電解コンデンサを得ることができるという効果を奏する。
【0053】
また、このカーボン層14aに含まれる一般式(化1)で表される芳香族化合物の含有割合を、カーボン粒子が1に対して0.1〜1.8の範囲とすることにより、高温環境下において、固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させる作用が大きくなり、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩との相乗効果が大きくなる。
【0054】
なお、一般式(化1)で表される芳香族化合物の含有量が0.1未満では、高温環境下における固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させる効果が低下し、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩との相乗効果も十分に得られなくなり、一方、一般式(化1)で表される芳香族化合物の含有量が1.8を超えた範囲では、カーボン層14aの固有抵抗が大きくなってしまい、固体電解コンデンサのESRが増加する。
【0055】
また、カーボン層14aに含まれる一般式(化1)で表される芳香族化合物は、カテコール、ピロガロールのいずれかが最適であり、高温環境下において、固体電解質層13へのカーボン層14aの密着力を持続させる作用が大きい。
【0056】
また、固体電解質層13上に、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上と、一般式(化1)で表される芳香族化合物を含んだカーボン層14aを形成する方法として、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上と、一般式(化1)で表される芳香族化合物と、カーボン粒子とを混濁させた混濁液を固体電解質層13上に塗布した後、乾燥させることにより、混濁液中のカーボン粒子の分散性が高いため、固体電解質層13表面に緻密で均質なカーボン層14aを形成し、固体電解質層13とカーボン層14aの密着力を高めることができる。
【0057】
また、前記混濁液を乾燥させるプロセスにおいて、その乾燥温度を、混濁液に含まれた芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、ポリスチレンスルホン酸と、これらの塩と、一般式(化1)で表される芳香族化合物の融点付近とすれば、固体電解質層13とカーボン層14aの密着性を高めることができ、その界面抵抗を低減することができる。
【0058】
しかし、一方で、前記固体電解質層13がポリピロール等の導電性高分子で構成されていることから、前記乾燥温度を215℃より高い温度とした場合、固体電解質層13自身の固有抵抗が増加してくる。
【0059】
また、前記乾燥温度を130℃より低い温度とした場合、混濁液中の水分を除去しきれないため、固体電解質層13とカーボン層14aの密着性を十分に得ることができなくなる。
【0060】
このため、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、ポリスチレンスルホン酸と、これらの塩と、一般式(化1)で表される芳香族化合物の融点を、130℃〜215℃の範囲とした構成にすることにより、固体電解質層13とカーボン層14aの密着性を高めることができ、その界面抵抗を低減すると同時に、固体電解質層13自身の固有抵抗の増加を防止して固体電解コンデンサのESRを低減することができる。
【0061】
ここで、融点が130℃〜215℃以下である具体的なものは、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物とその塩の例として、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アリールフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラキノンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、これらのナトリウム塩など、ポリスチレンスルホン酸塩の例として、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムなど、一般式(化1)で表される芳香族化合物の例として、カテコール、ピロガロールなどがある。
【実施例】
【0062】
高温環境下における、実施の形態1における固体電解コンデンサの特性変化をより明確に確認するため、実施の形態1における固体電解コンデンサのコンデンサ素子を用いて高温放置試験を行った。以下、実施の形態1における具体的な実施例1〜23および比較例1〜4について説明する。
【0063】
なお、実施例1〜11および比較例1〜3のカーボン層4a中に含まれている具体的な材料名と含有割合を(表1)にまとめて示し、実施例12〜23および比較例4のカーボン層4a中に含まれている具体的な材料名と含有割合を(表2)にまとめて示した。
【0064】
(実施例1)
エッチング処理を施して表面積を約125倍に拡大したアルミニウム箔の表裏の面に絶縁性のレジスト材20を貼り付けて陽極体11と陽極引き出し部11aとを分離し、陽極体11部分の有効面積が3.2mm×3.9mmとなるようにした。
【0065】
この陽極体11を液温が70℃で、かつ濃度が0.3wt%のリン酸2水素アンモニウム水溶液中に浸漬して12Vの直流電圧を20分間印加して陽極酸化皮膜を形成し、誘電体酸化皮膜層12を得た。
【0066】
次に、この誘電体酸化皮膜層12を形成した陽極体11を、25℃の20wt%硝酸マンガン水溶液に3秒間浸漬して引き上げた後、表面に付着した過剰の硝酸マンガン水溶液をエアーにより吹き飛ばし、続いて1分以内に250℃以上に上昇させ、300℃で5分間熱分解することにより誘電体酸化皮膜層の上に二酸化マンガン層を形成し、固体電解質層13のプレコート層とした。
【0067】
その後、陽極体11に形成された二酸化マンガン層上に電解重合法によりポリピロール膜からなる導電性高分子の固体電解質層13を形成した。
【0068】
続いて、重合性モノマーとして複素環式モノマーであるピロールモノマー0.5mol/Lと、ドーパントとしてスルホサリチル酸0.1mol/Lとを有機溶媒に混合した重合溶液中で、陽極体11の二酸化マンガン層表面に重合用陽極電極を近接させ、この重合用陽極電極に対向して設けた重合用陰極電極に3Vの電位差が生じるように電圧を印加して電解重合を行い、導電性高分子からなる固体電解質層13を形成した。
【0069】
次に、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物とを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を準備し、この混濁したカーボン水溶液に固体電解質層13を形成した陽極体11を浸漬した後引き上げ、215℃で乾燥して溶剤成分を除去してカーボン層14aを形成した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は0.06の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0070】
続いて、カーボン層14a上に、銀フィラーとエポキシ系のバインダー樹脂からなる導電性ペーストを塗布した後、150〜200℃で10〜60分間硬化し導電体層14bを形成し、コンデンサ素子15を得た。
【0071】
(実施例2)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、2.5wt%のフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物とを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は0.5の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0072】
(実施例3)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、6.25wt%のフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物とを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は1.25の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0073】
(実施例4)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物とを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は0.06の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0074】
(実施例5)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のアリールフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物とを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してアリールフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は0.06の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0075】
(実施例6)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量:10000)とを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは0.06の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0076】
(実施例7)
上記実施例6において、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの分子量を1000000とした以外は、実施例6と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは0.06の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0077】
(実施例8)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、2.5wt%のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量:20000)とを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは0.5の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0078】
(実施例9)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、6.25wt%のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量:10000)とを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは1.25の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0079】
(実施例10)
上記実施例9において、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの分子量を1000000とした以外は、実施例9と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは1.25の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0080】
(実施例11)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のポリスチレンスルホン酸(分子量:10000)とを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸は0.06の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0081】
(実施例12)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、0.5wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は0.06、ピロガロールは0.1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0082】
(実施例13)
上記実施例12において、前記カーボン水溶液を浸漬によって塗布した固体電解質層13を乾燥する温度を130℃とした以外は、実施例12と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は0.06、ピロガロールは0.1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0083】
(実施例14)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、5wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は0.06、ピロガロールは1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0084】
(実施例15)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、9wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は0.06、ピロガロールは1.8の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0085】
(実施例16)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物と、0.5wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は0.06、ピロガロールは0.1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0086】
(実施例17)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のアリールフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、0.5wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してアリールフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は0.06、ピロガロールは0.1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0087】
(実施例18)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量:10000)と、0.5wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは0.06、ピロガロールは0.1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0088】
(実施例19)
上記実施例18において、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの分子量を1000000とした以外は、実施例18と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは0.06、ピロガロールは0.1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0089】
(実施例20)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量:20000)と、5wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは0.06、ピロガロールは1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0090】
(実施例21)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量:10000)と、9wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは0.06、ピロガロールは1.8の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0091】
(実施例22)
上記実施例21において、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの分子量を1000000とした以外は、実施例21と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは0.06、ピロガロールは1.8の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0092】
(実施例23)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(分子量:10000)と、0.5wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリスチレンスルホン酸ナトリウムは0.06、ピロガロールは0.1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0093】
(比較例1)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と0.3wt%のポリエチレングリコールラウリルエーテル(エチレンオキサイドを8モル付加したもの)とを混濁しアンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してポリエチレングリコールラウリルエーテルは0.06の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0094】
(比較例2)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.3wt%の分岐型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対して分岐アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムは0.06の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0095】
(比較例3)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子を懸濁しアンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した。
【0096】
(比較例4)
上記実施例1において、カーボン層14aの形成方法として、5wt%のカーボン粒子と、0.5wt%のピロガロールとを混濁し、アンモニアを添加してpH10としたカーボン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンデンサ素子15を作製した(このときカーボン層14aにおいて、カーボン粒子が1に対してピロガロールは0.1の割合で含有され、カーボン層14aに均一に分散されている)。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
このようにして作製された実施の形態1の実施例1〜23、および比較例1〜4のコンデンサ素子15の初期特性(静電容量C、ESR)と、125℃で500時間放置したときの容量変化率(ΔC)とESR変化率(ΔESR)を(表3)に示す。
【0100】
また、上記各サンプルのコンデンサ素子15の陽極引き出し部11aに陽極端子16を溶接し、導電体層14bに導電性接着剤を用いて陰極端子18を接続する。その後、陽極端子16、陰極端子18の各接続部16a、18aをそれぞれ露出させるようにしてコンデンサ素子15を絶縁性の外装樹脂19で被覆する。このようにして各サンプルの固体電解コンデンサを作製する。この固体電解コンデンサの寸法は7.3×4.3×2.8mm、定格値は4.0WV、47μFである。
【0101】
このようにして作製した各サンプルの固体電解コンデンサを上記コンデンサ素子15と同様にして評価した。その結果も併せて(表3)に示す。
【0102】
なお、測定は温度25〜30℃で行い、静電容量は120Hz、ESRは100kHzで測定し、n=30個の平均値を示した。
【0103】
【表3】

【0104】
この(表3)から明らかなように、実施例1〜11のコンデンサ素子は、カーボン層14aに芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩を含有した構成となっていることより、比較例1、2(比較例1:ポリエチレングリコールラウリルエーテルを含有、比較例2:分岐型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含有)に対して、125℃で500時間放置したときのΔESRを小さくすることができる。
【0105】
また、実施例1〜3のコンデンサ素子は、カーボン層14aにおいて、カーボン粒子に対するフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の含有割合を変化させたものであるが、このフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の含有割合を、カーボン粒子が1に対して0.06〜1.25の範囲とすることにより、ESR変化のより少ない高温環境負荷後特性を確実に得ることができる。
【0106】
また、カーボン層14aに含有する芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物として、特にフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を用いた実施例1は、その他の芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を用いた実施例4や5と比較して、特にESR変化の少ない優れた高温環境負荷後特性を得ることができる。
【0107】
また、実施例6〜11のコンデンサ素子は、カーボン層14aにおいて、カーボン粒子に対するポリスチレンスルホン酸ナトリウムの含有割合を変化させたものであるが、このポリスチレンスルホン酸ナトリウムの含有割合を、カーボン粒子が1に対して0.06〜1.25とすることにより、ESR変化のより少ない高温環境負荷後特性を確実に得ることができる。
【0108】
また、実施例6〜11のコンデンサ素子は、カーボン層14aに含まれるポリスチレンスルホン酸ナトリウムの分子量を変化させたものであるが、このポリスチレンスルホン酸ナトリウムの分子量を、10000〜1000000の範囲とすることにより、ESR変化のより少ない高温環境負荷後特性を確実に得ることができる。
【0109】
また、比較例4のコンデンサ素子は、カーボン層14aに一般式(化1)で表される芳香族化合物であるピロガロールを含有した構成となっており、この構成によっても、比較例3と比較して静電容量CおよびESRの初期特性を改善し、かつ125℃で500時間放置後のΔESRを低減させる効果を得ることができる。
【0110】
一方、実施例12〜23に示すコンデンサ素子は、カーボン層14aに芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上を含有し、さらにピロガロールを併せて含有した構成となっていることにより、高温環境下において、固体電解質層13とカーボン層14aの密着力を持続する作用を相乗的に高めることができる。この結果、カーボン層14aに、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩と、ピロガロールとを、それぞれ別個に含有した場合よりも、125℃で500時間放置後のΔESRをより効果的に低減させることができる。
【0111】
また、実施例12〜23のコンデンサ素子は、カーボン層14aにおいて、カーボン粒子に対するピロガロールの含有割合を変化させたものであるが、このピロガロールの含有割合を、カーボン粒子が1に対して0.1〜1.8の範囲とすることにより、ESR変化の特に少ない優れた高温環境負荷後特性を確実に得ることができる。
【0112】
また、実施例12、13のコンデンサ素子は、カーボン層14aの形成の際に、カーボン水溶液を浸漬によって塗布した固体電解質層13を乾燥する温度を変化させたものであるが、この乾燥温度を、130℃〜215℃の範囲とすることにより、ESR変化のより少ない高温環境負荷後特性を確実に得ることができる。
【0113】
また、固体電解コンデンサの評価結果においても上記コンデンサ素子の評価結果と同様の傾向を示している。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の固体電解コンデンサは、カーボン層が、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上を含有した構成により、高温環境下であっても固体電解質層へのカーボン層の密着力を持続させるため、カーボン層の剥離を抑制することができる。この結果として、固体電解質層とカーボン層との界面抵抗の増加を防ぎ、および外部の酸素の侵入を抑えて固体電解質層自身の固有抵抗の増加を防ぐことができ、ESRの経時的変化が小さい固体電解コンデンサとすることができ、各種電子機器用として有用である。
【符号の説明】
【0115】
11 陽極体
11a 陽極引き出し部
12 誘電体酸化皮膜層
13 固体電解質層
14 陰極層
14a カーボン層
14b 導電体層
15 コンデンサ素子
16 陽極端子
16a 接続部
17 導電性接着剤
18 陰極端子
18a 接続部
19 外装樹脂
20 レジスト材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用金属からなる陽極体と、この陽極体の表面に形成された誘電体酸化皮膜層と、この誘電体酸化皮膜層の表面に形成されたドーパントを含有した固体電解質層と、この固体電解質層の表面に陰極層として順次形成されたカーボン層と導電体層とからなるコンデンサ素子を有する固体電解コンデンサにおいて、
前記カーボン層が、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩から選択された少なくとも一種以上の添加剤を含有し、前記添加剤は、前記ドーパントと異なる構成の固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上がカーボン層に含有された割合を、カーボン粒子が1に対して0.06〜1.25の範囲とした請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記ポリスチレンスルホン酸およびその塩の分子量を、10000〜1000000の範囲とした請求項1または請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物が、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アリールフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラキノンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、またはこれらの塩の少なくとも一種以上である請求項1または請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記ポリスチレンスルホン酸の塩が、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムである請求項1または請求項2または請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記カーボン層が、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、またはこれらの塩の少なくとも一種以上と、一般式(化1)で表される芳香族化合物を含有した請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【化1】

【請求項7】
前記一般式(化1)で表される芳香族化合物がカーボン層に含まれた割合を、カーボン粒子が1に対して0.1〜1.8の範囲とした請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記一般式(化1)で表される芳香族化合物が、カテコール、ピロガロールの少なくともいずれかである請求項6または請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
前記芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、ポリスチレンスルホン酸と、これらの塩と、一般式(化1)で表される芳香族化合物の融点が、130℃〜215℃の範囲である請求項1または6に記載の固体電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−58793(P2013−58793A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−256175(P2012−256175)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2008−128012(P2008−128012)の分割
【原出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)