説明

固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法

【課題】 Ptを含む貴金属触媒成分と、触媒担持カーボンと、高分子電解質とを含む触媒層を、高セル特性を示す範囲に適合するように調製することにより、高性能の固体高分子電解質型燃料電池を実現する。
【解決手段】 水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜102と、固体高分子電解質膜102を相互で挟持するように配置された燃料極103及び酸化剤極104と、燃料極103及び酸化剤極104の固体高分子電解質膜102に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層109,110と、を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池であって、触媒層109,110の組成は、該触媒層に含まれるPt重量当りの水蒸気吸着量が200〜500[m/gPt]の範囲となるように調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質に用いた固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高効率のエネルギー変換装置として燃料電池が注目を集めている。このような燃料電池は、電解質の相違により幾つかの種類に分類される。これらのうち、水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質型燃料電池は、コンパクトな構造で高出力密度を得ることができ、また簡素なシステムによる運転が可能であることから、宇宙用や車両用或いは家庭用電源として大きく注目されている。
【0003】
固体高分子電解質型燃料電池は、一般に単位セルを複数積層した積層体構造として構成されている。単位セルは、固体高分子電解質膜を燃料極及び酸化剤極で挟持した接合体と、接合体の外側に配置された1組のセパレータとで構成される。燃料極及び酸化剤極の基板はそれぞれ導電性多孔質材料からなる。また、燃料極及び酸化剤極の基板上には、カーボン粉と撥水材を含むガス拡散層がそれぞれ形成されている。さらに、燃料極及び酸化剤極のガス拡散層上に触媒と高分子電解質、或いは更に撥水材も加えた触媒層をそれぞれ形成した構造となっている。また、接合体の形成方法としては、燃料極及び酸化剤極を高分子電解質膜に加熱圧着して接合し、一体化する方法が行われている。
【0004】
この種の燃料電池を安定に作動させるには、高分子電解質材料を湿潤状態に保持することが望ましく、燃料極及び酸化剤極の両極に供給する反応ガスと共に、水蒸気を供給する必要がある。一方、発電を開始すると酸化剤極の触媒上では、電池反応による生成水が発生する。セルの運転条件により触媒層内で生成水の水蒸気が過飽和になると凝集し、凝集水の液滴となる場合がある。水蒸気や電池反応によって発生した生成水は、凝集して液滴を形成し、ガス拡散層内や触媒層内のガス拡散経路を遮断する。この現象は、フラッディングと呼ばれ、生成水の発生する酸化剤極で顕著であり、反応ガスの供給不足を招き、電圧低下を引き起こす。従って、安定して燃料電池を作動させるためには、接合体の触媒層内を十分に加湿する一方、凝集水は速やかに排出するといった、相反する要求を満たす必要がある。
【0005】
従来の触媒層調製方法としては、撥水処理した炭素粉末等の添加剤を用いて触媒層内部を撥水処理する方法、触媒層に親水性を付与する方法、更には疎水性粒子を担持した親水性粒子を触媒層中に含有させる方法、等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この種の方法では、セルを締結する圧力下で長時間運転を行うと、ガス拡散経路において、間隙を形成する各粒子が動きガス拡散経路がつぶれてしまい、製造時の性能が発揮できなくなることがあった。
【0006】
そこで、凝集水によるガス拡散経路の閉塞を効果的に防ぐため、親水性よりも保水能力に直接関係する水和性(水和力)に着目し、触媒層の導電性材料を最適な水和性にすることで、加湿条件によらず高い性能を発現する触媒層を有する燃料電池が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、酸化剤極の触媒層を、触媒成分とアイオノマー(高分子電解質)及び炭素材料を含む混合物で形成し、触媒担体炭素材料の25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量を50mL/g以上とした燃料電池が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、電極触媒層内部のアイオノマー量が増加すると、アイオノマーは親水的であるため実際の触媒層も親水的になっているはずにも拘わらず、電極触媒層内部ではガス透過性が低下するため、アイオノマー(高分子電解質)に被覆されている触媒粒子へのガス吸着量が低下し、水蒸気吸着量も低下する現象が起きる。このため、上述のような方法で水蒸気吸着量を規定してもアイオノマーや触媒材料の影響が考慮されておらず、電極の正確な湿潤状態を評価することはできない。
【0008】
さらに、電極触媒層中のアイオノマー量が異なる場合の湿潤状態を表す新たな指標として、窒素ガスによる窒素吸着量を測定し、水蒸気吸着量を窒素吸着量で割ることによりガス透過性の差異をキャンセルして、電極の正確な湿潤状態を評価する方法もある。しかし、この方法においても、炭素担体の触媒層中における好ましい含有率は、炭素担体の種類や含有率、触媒成分の種類や担持率によって影響を受けるので、電極の正確な湿潤状態を評価することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−342505号公報
【特許文献2】特開2007−273145号公報
【特許文献3】特開2005−332807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、触媒成分と高分子電解質及び炭素材料を含む混合物で触媒層を形成した場合、従来提案されている方法で水蒸気吸着量を規定しても電極の正確な湿潤状態を評価することはできない。このため、貴金属触媒成分と、触媒担持カーボンと、高分子電解質とを含む固体高分子電解質型燃料電池用触媒層を最適に調製することは困難である。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、電池特性の安定化及び長寿命化をはかり得る固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明は、水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を相互で挟持するように配置された燃料極及び酸化剤極と、前記燃料極及び酸化剤極の前記固体高分子電解質膜に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層と、を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池であって、前記燃料極側及び前記酸化剤極側の各触媒層のうちの少なくとも一方の組成を、下記の範囲の一部若しくは全てを満たすように構成することを特徴としている。
【0013】
(1)触媒層に含まれるPt重量当りの、当該触媒層の水蒸気吸着量が200〜500[m/gPt]に含まれる範囲となるように調整する。
【0014】
(2)触媒層に含まれるPt重量当りの、当該触媒層の窒素吸着量が250〜650[m/gPt]に含まれる範囲となるように調整する。
【0015】
(3)触媒層のメソ細孔容積(単位:[cm/cm])に対する、当該触媒層のPt重量当りの水蒸気吸着量の比が600[m/gPt]/[cm/cm]以上となるように調整する。
【0016】
(4)触媒層のメソ細孔容積に対する、触媒層のPt重量当りの窒素吸着量の比が700[m/gPt]/[cm/cm]以上となるように調整する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池特性の安定化及び長寿命化をはかることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係わる固体高分子電解質型燃料電池の概略構成を示す断面図。
【図2】第1の実施形態を説明するためのもので、セル電圧特性と触媒層のPt重量当りの水蒸気吸着量との関係を示す図。
【図3】第1の実施形態を説明するためのもので、発電初期と200時間経過後とのセル電圧の差からセル電圧低下量を算出した結果を示す図。
【図4】第2の実施形態を説明するためのもので、セル電圧特性と触媒層のPt重量当りの窒素吸着量との関係を示す図。
【図5】第2の実施形態を説明するためのもので、触媒層の水蒸気吸着量と窒素吸着量との関係を示す図。
【図6】第3の実施形態を説明するためのもので、触媒層のメソ細孔容積に対する触媒層のPt重量当りの水蒸気吸着量の比とセル電圧特性との関係を示す図。
【図7】第3の実施形態を説明するためのもので、発電初期と200時間経過後とのセル電圧の差からセル電圧低下量を算出した結果を示す図。
【図8】第4の実施形態を説明するためのもので、触媒層のメソ細孔容積に対する触媒層のPt重量当りの窒素吸着量の比とセル電圧特性との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態を説明する前に、基本原理について説明する。
【0020】
前述したように、触媒層の形成に当たっては各成分の含有率を調整する工程が必要であり、更に低加湿条件で触媒層中の高分子電解質材料を常に好適な湿潤状態に維持しつつ、高加湿条件でもガス拡散経路が凝縮した水によって閉塞することを防ぐことができる触媒層の仕様を決める必要がある。この際、触媒層内のガス拡散経路から透過して供給される加湿蒸気に加えて、電池反応により酸化剤極(カソード)の触媒上で発生する生成水や、燃料極(アノード)の触媒上で発生する水素イオンと共に移動する随伴水を含めた湿潤状態を調整する必要があり、窒素吸着量と水蒸気吸着量との比から求めたガス透過性の差異だけでなく、生成水や随伴水の供給源となる触媒成分を考慮した指標が必要である。
【0021】
そこで本発明では、単に触媒層の水蒸気吸着量を評価するのではなく、触媒層に含まれるPt重量当りの水蒸気吸着量又は窒素吸着量を評価することにより、触媒層の仕様を最適に設定することを可能にしている。また、触媒層の空隙量を示すメソ細孔容積に対してPt重量当りの水蒸気吸着量の比又は窒素吸着量の比を評価することにより、触媒層の仕様を最適に設定することを可能にしている。
【0022】
以下、本発明の実施形態の詳細について、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
[構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる固体高分子電解質型燃料電池の概略構成を示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、単位セル100中の高分子電解質膜−電極接合体(以下、単に接合体と略記する)101は、高分子電解質膜102と、この高分子電解質膜102を相互に挟持するように配置された燃料極103及び酸化剤極104から構成される。燃料極103及び酸化剤極104の基板105,106はそれぞれ導電性多孔質材料からなる。また、燃料極103及び酸化剤極104の基板105,106上には、カーボン粉と撥水材を含むガス拡散層107,108がそれぞれ形成されている。さらに、燃料極103及び酸化剤極104のガス拡散層107,108上に、触媒と高分子電解質、或いは更に撥水材も加えた触媒層109,110をそれぞれ形成した構造となっている。また、接合体101の形成方法としては、燃料極103及び酸化剤極104を高分子電解質膜102に加熱圧着して接合し、一体化する方法が行われている。
【0025】
接合体101の燃料極103及び酸化剤極104の基板105,106の外周には、それぞれシール材111,112が配置される。燃料極103に接する面には、燃料ガスを供給するガス供給溝を形成した燃料極セパレータ113が配置される。さらに、酸化剤極104に接する面には、酸化剤ガスを供給するガス供給溝を形成した酸化剤極セパレータ114が配置されている。そして、これらにより単位セル100が構成されている。
【0026】
単位セル100内の電池反応において、反応ガス、特に燃料ガスである水素は、燃料極側ガス拡散層107内の気孔をガス拡散経路として燃料極側触媒層109中を拡散し、カーボン担持体上の白金等の触媒に到達すると反応して水素イオンと電子に分離される。電子は、燃料極103側から外部回路を通り酸化剤極104側へ移動する。水素イオンは、燃料極側触媒層109中の触媒に近接する高分子電解質を水素イオン伝達経路として高分子電解質膜102中へ移動し、酸化剤極104に到達する。そして、酸化剤極側触媒層110中の高分子電解質を水素イオン伝達経路として拡散して、酸化剤極の触媒上に到達し、酸化剤ガスとして供給する空気中の酸素と反応して生成水となる。生成水は、酸化剤極104或いは燃料極103の触媒層110,109、及びガス拡散層108,107中を移動し、或いは蒸発してガス拡散層の基板105、106外部へ除去される。
【0027】
[触媒層材料の調製]
本実施形態の固体高分子電解質膜型燃料電池の触媒層を製作する当り、使用する材料としては、例えば下記の構成によるものとした。
【0028】
Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子としては、一般的に使用されるものとしてカーボンブラック粉末、例えば、Ketjen EC(ケッチェンブラックインターナショナル社製)やVulcan(Cabot社製)、黒鉛、炭素繊維、活性炭、カーボンナノチューブ等が適用可能である。
【0029】
また、カーボン粒子に担持させるPtを含む貴金属触媒としては、白金に加え、コバルト、パラジウム、ルテニウム、金、ロジウム、オスミウム、イリジウム等の金属、或いは上記金属の2種以上からなる合金、金属酸化物等を挙げることができる。
【0030】
さらに、触媒層に用いる高分子電解質としては、水素イオン伝導性のスルホン酸基等を導入したフッ素系イオン交換樹脂等が適用可能であり、例えば、デュポン社製のパーフルオロカーボンスルホン酸高分子樹脂(Nafion)を用いる。また、ポリスルホン樹脂、リン酸基、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有する高分子樹脂を用いても良い。
【0031】
続いて、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子と、高分子電解質を含む溶液とを、純水或いは更にアルコール等の有機溶媒と共に加え、市販のホモジナイザー等による分散処理を行うことにより、触媒層形成用インクを作製した。ここで、触媒層形成用インクとして、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子、高分子電解質を含む溶液、及び純水或いは有機溶媒の各々の組成比を変えて、多数種のインクを用意した。次に、触媒層形成用インクを、接合体の燃料極或いは酸化剤極基板のガス拡散層上に塗布し、乾燥させることによって触媒層を形成する。或いはまた、別途用意した塗布基材上に上記触媒層形成用インクを塗布し乾燥させたものを、高分子電解質膜上に転写することによって当該高分子電解質膜上に触媒層を形成しても良い。
【0032】
本実施形態の触媒層の作製方法は、特に上記に限定されるものではなく、前記の触媒層材料を用い調製されたものであれば良い。
【0033】
[接合体の製作]
上記のように製作した触媒層について、セル特性を調べるため接合体を次のように製作した。
【0034】
即ち、図1と同様に接合体101は、燃料極102及び酸化剤極103の基板105,106として、例えばカーボンペーパーを用いる。カーボンペーパーの面上にカーボン粉とフッ素樹脂粉末を混合して塗布焼成することにより、燃料極側ガス拡散層107及び酸化剤極側ガス拡散層108をそれぞれ形成した。次に、燃料極側ガス拡散層107及び酸化剤極側ガス拡散層108に隣接する面に、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子と高分子電解質とを含む触媒層109,110を、上記に示したように触媒層形成用インクを用いて製作する。
【0035】
さらに、触媒層109,110を形成した燃料極102及び酸化剤極103は、触媒層109,110を互いに対向するように高分子電解質膜102を挟んで組立てられる。組立てた部材を積層方向に加熱圧着して一体化することにより、接合体101を形成する。ここで、[触媒層材料の調製]の項で述べたような方法により、多数種の触媒層形成用インクを製作し、種類の異なるインクを用いた複数種の接合体を形成する。
【0036】
<触媒層の水蒸気吸着量測定>
水蒸気吸着量測定に用いた触媒層粉末は、触媒層形成用インクを塗布し乾燥した後の基材から当該触媒層を掻きとって採取した。
【0037】
本実施形態で指標となる水蒸気吸着量は、次のように測定した。即ち、触媒層粉末を約100mg秤量し、80℃にて24時間真空脱気する。この粉末を、日本BEL(株)製BELSORP−aqua3(商品名)を用いて、定容法により、水蒸気吸着脱離等温線を測定し、相対圧0.3以下の測定データについてBETプロット法により算出した比表面積を水蒸気吸着量(測定単位:[m/g])とした。さらに、測定した触媒層粉末に含まれるPt組成比から触媒層に含まれるPt重量当りの、当該触媒層の水蒸気吸着量(単位:[m/gPt])を算出した。測定温度は水蒸気298.15Kで行い、飽和蒸気圧3.169kPa、吸着質断面積0.125nmで計算した。
【0038】
[セル特性評価]
セル特性評価を行うために製作した接合体の両側からカーボン製セパレーターで挟持し、所定の電池組立治具により締付けることで評価用電池を構成した。
【0039】
さらに、発電時の試験条件として、次の設定が可能な制御装置を具備した試験装置を使用した。即ち、セル温度は80℃で保持し、燃料としては水素を用い、加湿温度65℃で供給すると共に、酸化剤としては空気を用い、加湿温度65℃で供給した。さらに、セル電圧の評価は負荷電流を200mA/cm、水素利用率70%(常圧)、酸素利用率40%(常圧)の条件で、200時間保持した後のセル電圧値により評価を行った。
【0040】
<評価結果>
セル特性評価の結果について、図2にセル電圧特性と当該触媒層のPt重量当りの水蒸気吸着量との関係を示す。さらに、図3に発電初期と200時間経過後とのセル電圧の差からセル電圧低下量を算出した。
【0041】
水蒸気吸着量が増えるに伴いセル電圧は上昇し、水蒸気吸着量が約350[m/gPt]でセル電圧は最大となり、水蒸気吸着量がこれ以上となるとセル電圧は減少する。そして、水蒸気吸着量が200[m/gPt]から500[m/gPt]の範囲で750mV以上のセル電圧が得られた。
【0042】
従って、発電200時間で750mV以上を示すような高いセル電圧特性を得るためには、図2に示したように、触媒層に含まれるPt重量当りの、触媒層の水蒸気吸着量が200〜500[m/gPt]に含まれる範囲となるように調整すればよいことが分かった。さらに、図3に示すように、200[m/gPt]未満、或いは500[m/gPt]を超える範囲では、セル電圧低下量が増大し、不安定な特性を示すことが分かった。
【0043】
ここで、触媒層の組成を変えると、当然のことながらPtの単位量に対する水蒸気吸着面積も変わる。しかし、[触媒層材料の調製]に使用した触媒層の組成の変化に伴い、Ptの単位量に対する水蒸気吸着面積とセル電圧との関係は図2に示したような相関を示すすのを確認している。即ち、Ptの単位量に対する水蒸気吸着面積は、触媒層の各材料の組成比によって変化するが、Ptの単位量に対する水蒸気吸着面積とセル電圧との関係は、触媒層の各材料の組成比によらず図2に示したような相関関係となる。これらの事実から、触媒層の組成を一義的に決めるのではなく、Ptの単位量に対する水蒸気吸着量が前記範囲となるように触媒層の組成を決めるのが重要であるのが分かった。
【0044】
水蒸気吸着量は、当該触媒層表面の分子構造の極性部位に対して、極性を持つ水分子が吸着或いは内部に吸収される量を示しており、水分子の吸着量が多いほど触媒層は保水能力が高く、触媒層を湿潤に保つ機能を有すると考えられる。一方、触媒層のPt成分は電池反応の反応サイトであり、特に酸化剤極では生成水の発生部位となり、燃料極では電池反応で生ずる水素イオンに対して随伴水を供給する必要のある部位となる。触媒作用を示すPt成分は、一般的に数nmから数10nmの範囲で分布した粒子状でカーボン担体に担持して用いられている。例えば、市販のPtを含む貴金属触媒を用いる場合においては、上記のような一般的な粒子分布を想定した上で、反応サイトの数或いは面積は触媒層を形成したセル面内の単位面積当たりのPt担持量に比例して増減するものとして扱い、単位面積当たりのPt担持量をパラメータとしたセル発電特性の評価などが行われている。
【0045】
つまり、セル電圧特性を向上するためにセル内、特に反応サイトを有する触媒層内部の湿潤性を最適化するに当り、触媒層に含まれるPt成分の影響を考慮する必要がある。従って、本実施形態のように、触媒層に含まれるPt重量当りの水蒸気吸着量を指標とすることは極めて有効である。
【0046】
このように本実施形態によれば、触媒層の仕様として、触媒層に含まれるPt重量当りの、触媒層の水蒸気吸着量を指標として、200〜500[m/gPt]に含まれる範囲で調整することにより、高セル電圧特性を示すように触媒層を調製することが可能となる。これにより、触媒層内の組成や構造を最適化した状態で接合体を形成することができるので、電池特性が安定し寿命を向上させた高性能の固体高分子電解質型燃料電池を実現することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
第1の実施形態と同様に作製した試料に対し、水蒸気吸着量の代わりに窒素吸着量を測定した。
【0048】
窒素吸着量測定に用いた触媒層粉末は、触媒層形成用インクを塗布し乾燥した後の基材から当該触媒層を掻きとって採取した。
【0049】
なお、窒素吸着量は、次のように測定した。即ち、電極粉末を約100mg秤量し、80℃にて24時間真空脱気する。この粉末を日本BEL(株)製BELSORP−mini(商品名)を用いて、定容法により窒素吸着脱離等温線測定を測定し、相対圧0.3以下の測定データについてBET法により算出した比表面積を窒素吸着量(測定単位:[m/g])とした。さらに、測定した触媒層粉末に含まれるPt組成比から触媒層に含まれるPt重量当りの、当該触媒層の窒素吸着量(単位:[m/gPt])を算出した。測定温度は窒素77K、飽和蒸気圧は実測、吸着質断面積0.162nm で計算した。
【0050】
図4に、セル電圧特性と触媒層のPt重量当りの窒素吸着量との関係を示す。さらに、図5では触媒層の水蒸気吸着量と窒素吸着量との関係を示す。
【0051】
図4に示すように、窒素吸着量が増えるに伴いセル電圧は上昇し、窒素吸着量が約400[m/gPt]でセル電圧は最大となり、窒素吸着量がこれ以上となるとセル電圧は減少する。そして、窒素吸着量が250[m/gPt]から650[m/gPt]の範囲で750mV以上のセル電圧が得られた。
【0052】
窒素吸着量は、対称形で無極性の窒素分子が、当該触媒層表面に物理吸着する量を示しており、触媒層表面の構造が極性の有無によらず微細形状であるほど窒素吸着量は多くなる。さらに、触媒層表面が微細形状であるほど反応サイトを有するPt粒子を担持する面積が増加するので、Pt成分量に対して窒素吸着量を最適化することでPt粒子の担持状態をより均質にできる可能性がある。また、図5で示したように、触媒層の窒素吸着量は水蒸気吸着量と互いに相関しているので、本実施形態における触媒層の仕様として、触媒層に含まれるPt重量当りの、当該触媒層の窒素吸着量を指標とすることができる。さらに、発電200時間で750mV以上を示すような高いセル電圧特性を得る条件としては、図4に示したように、触媒層に含まれるPt重量当りの、触媒層の窒素吸着量は250〜650[m/gPt]に含まれる範囲で調整することにより提供できる。
【0053】
このように本実施形態によれば、触媒層の仕様として、触媒層に含まれるPt重量当りの窒素吸着量を指標として、250〜650[m/gPt]に含まれる範囲で調整することにより、高セル電圧特性を示すように触媒層を調製することが可能となる。従って、本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
(第3の実施形態)
第1の実施形態と同様に作製した試料に対し、水蒸気吸着量の代わりに、触媒層のメソ細孔容積に対するPt重量当りの水蒸気吸着量の比を測定した。
【0055】
水蒸気吸着量に用いた触媒層粉末は、第1の実施形態と同様に、触媒層形成用インクを塗布し乾燥した後の基材から当該触媒層を掻きとって採取した。
【0056】
なお、メソ細孔容積の測定は、水蒸気吸着脱離等温線測定データについて、所定の測定系に導入した水蒸気吸着体積量からBJHプロット法により算出した(測定単位:[cm/g])。また更に、下記のように求めた見かけ密度(単位:[g/cm])当りに換算した当該メソ細孔容積の値を用いた(単位[cm/cm])。即ち、見かけ密度は、触媒層を形成する前後の基板について、マイクロメータで測定した厚みの差分から算出した触媒層厚みと、単位面積当りの触媒層塗布重量を計測した結果とから算出した。ここでは上記のように見かけ密度を測定したが、形成した触媒層の密度を示す上で、同様の主旨であれば別の測定方法を採用することも可能である。
【0057】
図6に、セル電圧特性と触媒層のメソ細孔容積に対する、触媒層のPt重量当りの水蒸気吸着量の比との関係を示す。また更に、図7に、発電初期と200時間経過後とのセル電圧の差からセル電圧低下量を示した。
【0058】
発電200時間で750mV以上を示すような高いセル電圧特性を得るためには、この図6に示したように触媒層のメソ細孔容積に対する、触媒層のPt重量当りの水蒸気吸着量が、600[m/gPt]/[cm/cm]以上となる範囲となるように調整することが必要であり、図7に示したような600[m/gPt]/[cm/cm]未満の範囲ではセル電圧低下量が増大し不安定な特性を示すことが分かった。
【0059】
前記メソ細孔容積は、触媒層粉末の微細細孔内で窒素分子が吸着蓄積し、細孔を埋める体積を示しており、前記のように単位cm/cm で換算した値は触媒層の単位体積内における空隙量、即ち気孔体積率を示している。
【0060】
また、一般に触媒層のように開口部位を有する細孔構造で空隙量の多いものは、ガスが細孔内に進入し相対的にガス透過量が多くなることが推定される。このため、空隙量を定量的に示すメソ細孔容積は、ガス透過性を現す特性の一つとして適用が可能と考える。さらに、湿潤性を保ちながらガス透過量を最適化するためには、電池反応の反応サイトとして生成水等の発生源及び移動源となるPt粒子の成分量に基づき、触媒層のメソ細孔容積との関係を示す必要がある。このため、本実施形態による触媒層の仕様として、発電200時間で750mV以上を示すような高いセル電圧特性を得る条件としては、図6に示したように、触媒層のメソ細孔容積に対する、触媒層のPt重量当りの水蒸気吸着量(単位[m/gPt])の比を指標とし、600[m/gPt]/[cm/cm]以上となる範囲で調整することにより提供できる。
【0061】
このように本実施形態によれば、触媒層の仕様として、触媒層のメソ細孔容積に対する、触媒層のPt重量当りの水蒸気吸着量(単位[m/gPt])の比を600[m/gPt]/[cm/cm]以上となる範囲で調整することにより、高セル電圧特性を示すように触媒層を調製することが可能となる。従って、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
(第4の実施形態)
第1の実施形態と同様に作製した試料に対し、窒素吸着量の代わりに、触媒層のメソ細孔容積に対するPt重量当りの窒素吸着量の比を測定した。
【0063】
窒素吸着量に用いた触媒層粉末は、第1の実施形態と同様に、触媒層形成用インクを塗布し乾燥した後の基材から当該触媒層を掻きとって採取した。
【0064】
なお、メソ細孔容積の測定は、窒素吸着脱離等温線測定データについて、所定の測定系に導入した窒素吸着体積量からBJHプロット法により算出した(測定単位:[cm/g])。また更に、下記のように求めた見かけ密度(単位:[g/cm])当りに換算した当該メソ細孔容積の値を用いた(単位[cm/cm])。即ち、前記見かけ密度は、当該触媒層を形成する前後の基板について、マイクロメータで測定した厚みの差分から算出した触媒層厚みと、単位面積当りの触媒層塗布重量を計測した結果とから算出した。ここでは上記のように見かけ密度を測定したが、形成した触媒層の密度を示す上で、同様の主旨であれば別の測定方法を採用することも可能である。
【0065】
図8に、セル電圧特性と触媒層のメソ細孔容積に対する、触媒層のPt重量当りの窒素吸着量の比との関係を示す。触媒層のPt重量当りの窒素吸着量は、前記図5で得られるような水蒸気吸着量との相関性を考慮したものである。従って、触媒層の仕様として、発電200時間で750mV以上を示すような高いセル電圧特性を得る条件としては、図8に示したように、触媒層のメソ細孔容積(単位[cm/cm])に対する、触媒層のPt重量当りの窒素吸着量(単位[m/gPt])の比を指標として700[m/gPt]/[cm/cm]以上となる範囲で調整することにより提供できる。
【0066】
このように本実施形態によれば、触媒層の仕様として、触媒層のメソ細孔容積に対する、触媒層のPt重量当りの窒素吸着量(単位[m/gPt])の比を700[m/gPt]/[cm/cm]以上となる範囲で調整することにより、高セル電圧特性を示すように触媒層を調製することが可能となる。従って、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。実施形態では、Ptを含む貴金属触媒を担持する材料としてカーボン粒子を用いたが、上記による本発明の主旨を満たす範囲で同様の機能を果たす材料であれば代替することも可能である。さらに、実施形態では、酸化剤極側及び燃料極側の両方の触媒層の組成を調整したが、もし燃料極側と酸化剤極側の一方の触媒層の調製でも十分な効果が得られる場合は、何れか一方の触媒層の組成を調整するのみでも良い。電池反応による生成水が酸化剤極側の触媒層で発生することから、酸化剤極側の触媒層に対する要求の方が厳しく、従って酸化剤極側のみの触媒層の調製でも本発明の効果は期待される。
【0068】
また、燃料電池としての装置構成は前記図1に何ら限定されるものではなく、固体高分子電解質膜とこれを挟む燃料極及び酸化剤極との間に触媒層を配置した構成であり、触媒層がPtを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成されたものであれば適用可能である。
【0069】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
100…単位セル
101…接合体
102…高分子電解質膜
103…燃料極
104…酸化剤極
105…燃料極基板
106…酸化剤極基板
107…燃料極ガス拡散層
108…酸化剤極ガス拡散層
109…燃料極触媒層
110…酸化剤極触媒層
111…燃料極シール材
112…酸化剤極シール材
113…燃料極セパレータ
114…酸化剤極セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜を相互で挟持するように配置された燃料極及び酸化剤極と、
前記燃料極及び酸化剤極の前記固体高分子電解質膜に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層と、
を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池であって、
前記燃料極側及び前記酸化剤極側の各触媒層のうちの少なくとも一方の組成は、該触媒層に含まれるPt重量当りの水蒸気吸着量が200〜500[m/gPt]の範囲となるように調整されてなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。
【請求項2】
水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜を相互で挟持するように配置された燃料極及び酸化剤極と、
前記燃料極及び酸化剤極の前記固体高分子電解質膜に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層と、
を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池であって、
前記燃料極側及び前記酸化剤極側の各触媒層のうちの少なくとも一方の組成は、該触媒層に含まれるPt重量当りの窒素吸着量が250〜650[m/gPt]の範囲となるように調整されてなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。
【請求項3】
水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜を相互で挟持するように配置された燃料極及び酸化剤極と、
前記燃料極及び酸化剤極の前記固体高分子電解質膜に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層と、
を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池であって、
前記燃料極側及び前記酸化剤極側の各触媒層のうちの少なくとも一方の組成は、該触媒層のメソ細孔容積に対するPt重量当りの水蒸気吸着量の比が600[m/gPt]/[cm/cm]以上となるように調整されてなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。
【請求項4】
水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜を相互で挟持するように配置された燃料極及び酸化剤極と、
前記燃料極及び酸化剤極の前記固体高分子電解質膜に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層と、
を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池であって、
前記燃料極側及び前記酸化剤極側の各触媒層のうちの少なくとも一方の組成は、該触媒層のメソ細孔容積に対するPt重量当りの窒素吸着量の比が700[m/gPt]/[cm/cm]以上となるように調整されてなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。
【請求項5】
水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を相互で挟持するように配置された燃料極及び酸化剤極と、前記燃料極及び酸化剤極の前記固体高分子電解質膜に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層と、を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池の製造方法であって、
前記触媒層の組成が異なる複数種の評価用燃料電池を作製する工程と、
前記作製された各評価用燃料電池のセル特性を測定する工程と、
前記各評価用燃料電池から前記触媒層を掻き取って採取し、該触媒層の水蒸気吸着量を測定する工程と、
前記複数種の触媒層に対する前記セル特性及び水蒸気吸着量の測定結果から、前記触媒層に含まれるPt重量当りの水蒸気吸着量とセル特性との関係を求める工程と、
前記水蒸気吸着量とセル特性との関係から所定のセル電圧が得られる水蒸気吸着量を求める工程と、
前記求められた水蒸気吸着量となるように前記触媒層の組成を決定し、該決定した組成の触媒層を用いて固体高分子電解質型燃料電池を作製する工程と、
を含むことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池の製造方法。
【請求項6】
水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を相互で挟持するように配置された燃料極及び酸化剤極と、前記燃料極及び酸化剤極の前記固体高分子電解質膜に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層と、を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池の製造方法であって、
前記触媒層の組成が異なる複数種の評価用燃料電池を作製する工程と、
前記作製された各評価用燃料電池のセル特性を測定する工程と、
前記各評価用燃料電池から前記触媒層を掻き取って採取し、該触媒層の窒素吸着量を測定する工程と、
前記複数種の触媒層に対する前記セル特性及び窒素吸着量の測定結果から、前記触媒層に含まれるPt重量当りの窒素吸着量とセル特性との関係を求める工程と、
前記窒素吸着量とセル特性との関係から所定のセル電圧が得られる窒素吸着量を求める工程と、
前記求められた窒素吸着量となるように前記触媒層の組成を決定し、該決定した組成の触媒層を用いて固体高分子電解質型燃料電池を作製する工程と、
を含むことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池の製造方法。
【請求項7】
水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を相互で挟持するように配置された燃料極及び酸化剤極と、前記燃料極及び酸化剤極の前記固体高分子電解質膜に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層と、を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池の製造方法であって、
前記触媒層の組成が異なる複数種の評価用燃料電池を作製する工程と、
前記作製された各評価用燃料電池のセル特性を測定する工程と、
前記各評価用燃料電池から前記触媒層を掻き取って採取し、該触媒層の水蒸気吸着量を測定する工程と、
前記複数種の触媒層に対する前記セル特性及び水蒸気吸着量の測定結果から、前記触媒層のメソ細孔容積に対するPt重量当りの水蒸気吸着量とセル特性との関係を求める工程と、
前記水蒸気吸着量とセル特性との関係から所定のセル電圧が得られる水蒸気吸着量を求める工程と、
前記求められた水蒸気吸着量となるように前記触媒層の組成を決定し、該決定した組成の触媒層を用いて固体高分子電解質型燃料電池を作製する工程と、
を含むことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池の製造方法。
【請求項8】
水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とした固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を相互で挟持するように配置された燃料極及び酸化剤極と、前記燃料極及び酸化剤極の前記固体高分子電解質膜に対向する面にそれぞれ配置され、Ptを含む貴金属触媒担持カーボン粒子及び高分子電解質を含んで形成された触媒層と、を具備した固体高分子電解質膜型燃料電池の製造方法であって、
前記触媒層の組成が異なる複数種の評価用燃料電池を作製する工程と、
前記作製された各評価用燃料電池のセル特性を測定する工程と、
前記各評価用燃料電池から前記触媒層を掻き取って採取し、該触媒層の窒素吸着量を測定する工程と、
前記複数種の触媒層に対する前記セル特性及び窒素吸着量の測定結果から、前記触媒層のメソ細孔容積に対するPt重量当りの窒素吸着量とセル特性との関係を求める工程と、
前記窒素吸着量とセル特性との関係から所定のセル電圧が得られる窒素吸着量を求める工程と、
前記求められた窒素吸着量となるように前記触媒層の組成を決定し、該決定した組成の触媒層を用いて固体高分子電解質型燃料電池を作製する工程と、
を含むことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−138297(P2012−138297A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290961(P2010−290961)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】