説明

固形化粧料の製造方法および固形化粧料

【課題】化粧皿の内側面に沿って形成された化粧料のバリに起因した、製品としての見栄えの悪化を有効に防止する。
【解決手段】固形化粧料3は、化粧皿2の内側面に沿って、自己の表面3aから上方に突出した突出部位3bを有する。この突出部位3bは、先端から下方に向かって厚みdが徐々に増大しているとともに、化粧料3の表面3aとなだらかに繋がっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形化粧料の製造方法および固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧皿内に充填された化粧料をプレスヘッドを用いてプレスすることによって、これを固化する固形化粧料の製造方法が知られている。このプレスヘッドは、化粧皿の開口部に挿入できるように、化粧皿の開口形状に対応した形状のプレス面を有するが、従来は、プレス面の縁部(エッジ)が面取りされていないものが用いられていた。そのため、成型品に事後的に加わる振動や衝撃によって、化粧皿の内側面に沿って環状に形成された化粧料のバリが砕けて粉末状に脱落し、製品としての見栄えの悪化を招いていた。なお、化粧料のバリが生じる理由は、プレスヘッドをスムーズに昇降させるために、プレスヘッドの外側面と、その外側に位置する化粧皿の内側面との間にはクリアランス(微少な隙間)が設けられているが、プレスによって押し出された化粧料がクリアランスに侵入して固化するからである。
【0003】
この問題に対する解決策の一つとして、特許文献1には、化粧皿内に充填された化粧料を、可撓性シートを介して、弾性のプレスヘッドでプレス成型する化粧製品の製造方法が開示されている。弾性のプレスヘッドは、プレス時に弾性変形して、化粧皿の凹部内全体に隙間なく拡がるため、プレスヘッドと化粧皿との間のクリアランスが緩和される。その結果、プレスヘッドと化粧皿との間に侵入する化粧料の量が減るので、化粧料のバリの発生自体を有効に低減できる。
【0004】
一方、上述した問題に着目したものではないが、特許文献2,3には、化粧皿内の固形化粧料の表面を曲面状に形成する構成が開示されている。具体的には、特許文献2には、固形化粧料の固さを均一にするために、固形化粧料の表面をドーム状、半球状、円錐状、角錐状、ダイヤカット状等の多種多様な立体形状に成型した凸型固形化粧料が開示されている。また、特許文献3には、容器底部の形状に応じて、化粧料の表面も立体的にすることによって、充填・成型される化粧料の厚みを均一として、プレス圧に差が生じないようにした固形粉末化粧料が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−154732号公報
【特許文献2】特開平5−201829号公報
【特許文献3】特開2002−51830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、化粧皿の内側面に沿って形成された化粧料のバリを有効に低減することである。
【0007】
また、本発明の別の目的は、振動や衝撃に起因した化粧料の飛散や脱落を有効に低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、化粧皿内に化粧料を充填する第1のステップと、化粧皿の開口部に対応した形状のプレス面を有し、このプレス面の縁部が全周に亘って曲面状に面取りされたプレスヘッドによって、化粧皿内に充填された化粧料をプレスする第2のステップとを有する固形化粧料の製造方法を提供する。ここで、第1の発明において、プレスヘッドは、弾性体によって形成されていることが好ましい。
【0009】
また、第2の発明は、化粧皿と、この化粧皿内に充填され、プレス成型された固形化粧料とを有する固形化粧料を提供する。この固形化粧料において、固形化粧料は、化粧皿の内側面に沿って、自己の表面から上方に突出した突出部位を有する。この突出部位は、先端から下方に向かって厚みが徐々に増大しているとともに、化粧料の表面となだらかに繋がっている。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、プレス面の縁部が面取りされたプレスヘッドを用いて、化粧皿内に充填された化粧料をプレスする。これにより、化粧皿の内側面に沿った化粧料のバリの発生を有効に低減することができる。また、プレスヘッドの面取り形状に起因して、化粧料の表面は、化粧皿の内側面から化粧皿の中央に向かってなだらかに繋がる曲面形状になる。したがって、振動や衝撃に起因した化粧料の飛散や脱落を有効に低減することができる。
【0011】
第2の発明によれば、化粧皿の内側面に沿って突出した固形化粧料の突出部位は、その先端から下方に向かって厚みが徐々に増大しているとともに、固形化粧料の表面となだらかに繋がっている。したがって、第1の発明と同様、振動や衝撃に起因した固形化粧料の飛散や脱落を有効に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本実施形態に係るプレスパッドの平面図である。図3に示すプレス基板4にプレスパッド1を取り付けたものが、プレスヘッド7として用いられる。プレスパッド1は、弾性体または硬質な非弾性体のどちらの材質で形成してもよい。ただし、エストラマー(合成ゴム)等の弾性体によって形成した場合には、上述した特許文献1に記載されているような、弾性変形によるバリの低減といった効果が期待できる。それとともに、化粧料の充填量のバラツキを吸収する作用も期待できる。本実施形態では、プレスパッド1として、弾性体によって形成されたものを用いる。なお、プレス基板4自体を弾性体で形成し、プレス基板4を後述するようなプレス面の形状にすることによって、プレス基板4のみでプレスヘッド7を形成してもよい。
【0013】
プレスパッド1の下面は、プレス工程において化粧皿内に充填された化粧料をプレスするプレス面1aとして機能する。このプレス面1aは、平面視で四隅が丸く面取りされた長方形状であり、プレス対象となる化粧皿の開口部に対応した形状を有する。ただし、プレスパッド1は、化粧皿の開口部内に嵌入された際であっても自在に昇降できるように、化粧皿の開口部に対して若干のクリアランスを以て形成されている。なお、プレス面1aには、化粧料表面への転写を行うために、網目状に形成した絞目、文字やロゴ等を形成してもよい。
【0014】
図2は、プレスパッド1の要部断面図である。プレスパッド1のプレス面1aは、その大半が平面状に形成されているが、縁部1bのみが全周に亘って曲面状に面取りされている。従来の技術では、この縁部1bは略直角状に形成されていたのに対して、本実施形態は、この縁部1bを丸く面取り(R付)した点に特徴がある。後述するように、縁部1bの丸みの径は、化粧料のバリの発生度合いや、その強度に直接影響を及ぼす。したがって、その具体的な値は、化粧料の材質固有の強度、製品の運搬時に加わるであろう振動や衝撃の大きさ、化粧皿の開口面積、発生するパリの高さ等を考慮した上で、実験やシミュレーションを通じて適切に設定する必要がある。
【0015】
つぎに、上述したプレスパッド1を有するプレスヘッド7を用いて化粧料をプレスするプレス工程を、図3および図4を参照しつつ説明する。
【0016】
まず、図3に示すように、化粧皿2内に化粧料3を充填するとともに、この化粧皿2を、ABS樹脂等で形成された硬質なプレス基板4と、プレスパッド1とによって構成されたプレスヘッド7の直下にセットする。化粧皿2内への化粧料3の充填は、乾式充填法および湿式充填法のどちらを用いて行ってもよい。なお、プレスパッド1と化粧料3との間には、メッシュ、紙、マニラ麻繊維といった単一または複数の薄葉紙5が設けられている。複数の薄葉紙5として、メッシュと紙とを重ねて用いる場合、メッシュをプレス面(打型面)側に配することでにより、プレス時のエア抜き作用が奏される。
【0017】
つぎに、図4に示すように、上昇していたプレスヘッド7を下降させ、プレスパッド1によって、化粧皿2内に充填された化粧料3をプレスする。プレスされた化粧料3の表面は、その大半が平面状であるが、プレスパッド1の縁部1bに対応して、化粧皿2の外枠近傍が曲面状に隆起する。なお、プレスパッド1として弾性体を用いる場合、このプレス工程でのプレス圧に応じて、プレスパッド1が弾性変形し、化粧皿2の凹部内全体に隙間なく拡がる。これにより、プレスパッド1の外側面と、化粧皿2の内側面との間に存在するクリアランスが緩和される。クリアランスが狭くなった分だけ、クリアランス内に入り込む化粧料3の量が減るので、結果的に、化粧皿2の内側面における化粧料2のバリの発生が抑制される。その後、プレスヘッド7を上昇させることによって、プレス成型された固形化粧料6が完成する。
【0018】
図5は、プレス成型された固形化粧料6の状態を示す図である。この固形化粧料6において、化粧皿2内に充填された固形化粧料3は、化粧皿2の内側面に沿って、自己の表面3aから上方に突出した突出部位3bを有する。この突出部位3bは、その先端から下方に向かって厚みdが徐々に増大しているとともに、その下方において表面3aとなだらかに繋がっている。
【0019】
このように、本実施形態によれば、プレス面1aの縁部1bが面取りされたプレスパッド1を用いて、化粧皿2内に充填された化粧料3をプレスする。これにより、化粧皿2の内側面に沿った化粧料3のバリの発生を有効に低減することができる。また、プレスパッド1の面取り形状に起因して、化粧料3の表面は、化粧皿2の内側面から化粧皿2の中央に向かってなだらかに繋がる曲面形状になる。したがって、突出部位3bが存在するとしても、振動や衝撃によってこれが砕け難くなるので、化粧料3の飛散や脱落を有効に低減することができる。それとともに、突出部位3bが化粧料3の表面3aとなだらかに繋がっているため、突出部位3bが目立ち難くなる。その結果、製品としての見栄えの悪化を有効に防止することができる。
【0020】
また、特にプレスパッド1として弾性体を用いる場合、プレス時の弾性変形によって、プレスパッド1が化粧皿2の凹部内全体に隙間なく拡がるため、プレスパッド1と化粧皿2との間のクリアランスが緩和される。その結果、プレスパッド1と化粧皿2との間に入り込む化粧料3の量が減るので、化粧料3のバリの発生自体を有効に低減できるとともに、化粧料3の充填量のバラツキも有効に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】プレスパッドの平面図
【図2】プレスパッドの要部断面図
【図3】プレス工程の説明図
【図4】プレス工程の説明図
【図5】プレス成型された化粧料の状態を示す図
【符号の説明】
【0022】
1 プレスパッド
1a プレス面
1b 縁部
2 化粧皿
3 化粧料(固形化粧料)
3a 表面
3b 突出部位
4 プレス基板
5 薄葉紙
6 固形化粧料
7 プレスヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形化粧料の製造方法において、
化粧皿内に化粧料を充填する第1のステップと、
前記化粧皿の開口部に対応した形状のプレス面を有し、当該プレス面の縁部が全周に亘って曲面状に面取りされたプレスヘッドによって、前記化粧皿内に充填された化粧料をプレスする第2のステップと
を有することを特徴とする固形化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記プレスヘッドは、弾性体によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載された固形化粧料の製造方法。
【請求項3】
固形化粧料において、
化粧皿と、
前記化粧皿内に充填され、プレス成型された固形化粧料とを有し、
前記固形化粧料は、前記化粧皿の内側面に沿って、自己の表面から上方に突出した突出部位を有し、当該突出部位は、先端から下方に向かって厚みが徐々に増大しているとともに、前記化粧料の表面となだらかに繋がっていることを特徴とする固形化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−269863(P2009−269863A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122344(P2008−122344)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】