説明

固形燃料用コンロ

【課題】固形燃料の良好で安定した燃焼によって強力な火力を確保すると共に不快な異臭を排除し燃焼残滓を低減させ、しかも、別体の火皿などを要することなく剥き出しもしくは合成樹脂フィルムでシュリンクしただけの固形燃料をそのまま用いることができる固形燃料用コンロを提供すること。
【解決手段】中空筒体の下端側を底板で閉止し上端側を開口して箱状ないし鉢状のコンロ基体となし、該コンロ基体の下端部ないし底部に通気孔を設け上端縁に排気間隙を設けてなる固形燃料用コンロにおいて、底板上面の略中央位置に下端側でコンロ基体の外部に連通し上端側で開口する中空部を有してなる通気筒を立設すると共に、該通気筒を取り囲む位置に周壁を植設して、通気筒と周壁によって固形燃料を充填収容する凹溝部を形成し、該凹溝部に充填収容された固形燃料の燃焼部に通気筒を介して流入する外気を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形燃料用コンロ、さらに詳しくは、固形燃料の良好で安定した燃焼によって強力な火力を確保すると共に不快な異臭を排除し燃焼残滓を低減させ、しかも、別体の火皿などを要することなく剥き出しもしくは合成樹脂フィルムでシュリンクしただけの固形燃料をそのまま用いることができる固形燃料用コンロに関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール系流体燃料を固化させて円筒形状その他の適宜形状に成形もしくは切り出してなる固形燃料は、燃焼時の火力に優れる上に保管・携帯の点でも便であることから普及・浸透を見せており、この種の固形燃料を用いるコンロ類も、キャンプ・ガーデンパーティーなどでの屋外調理から旅館・飲食店・宴会場・家庭における卓上調理にわたる広い範囲で各種のものが提供され利用されている。
【0003】
この種の固形燃料用コンロは、その構成の細部において多岐にわたるものの、多くは外周側壁をなす中空筒体の下端側を底板をもって閉止し上端側を開口して箱状ないし鉢状のコンロ基体となし、このコンロ基体の下端を閉止する底板の上面に固形燃料を載置すると共に、上端開口部に調理器具を載置して、固形燃料を燃焼させ調理器具上で加熱調理する構成をとっている。
【0004】
古くは、この種の固形燃料用コンロにあっては、コンロ基体外周側壁の中央部または中央部から上部にわたる位置に大きな通気孔を設け、酸素を十分に含んだ外気を固形燃料燃焼部に流入させようと図ったが、固形燃料を良好に燃焼させて強い火力を確保することはできず、不快な異臭を生じ、多量の燃焼残滓を不体裁に残す結果に終わっていた。
【0005】
これは、コンロ基体外周側壁の中央部に設けられた通気孔が固形燃料燃焼部の側方ないし上方に位置する結果、通気孔から流入した外気が燃焼熱によって燃焼部上方へ直ちに上昇移動してしまう上に、排気の少なくとも一部が通気孔から排出されて通気孔から流入した外気が固形燃料燃焼部を経て上方へ移動・排気される良好な空気流路を形成できなかったことによるもので、大形の通気孔を設けたにも拘わらず、固形燃料の燃焼部に十分な外気(酸素)が供給されず、常に不完全燃焼の状態に置かれていたためである。
【0006】
さらに、固形燃料燃焼部がコンロ基体外周側壁の通気孔を介して外部に露呈するため、屋外利用時の自然風はもちろん、屋内利用時のエアコンの風や人間の動きに伴う風が吹き込むだけで燃焼炎を容易に揺るがせ、固形燃料の安定した燃焼を阻害していたことも大きな理由であった。
【0007】
本発明者は、これらの問題を解決するため、コンロ基体の外周側壁に通気孔を設けず、コンロ基体の下端部ないし底部に通気孔を設けると共に外周側壁の上端部に排気孔ないし排気間隙を設けた固形燃料用コンロを既に提案・提供し、実用新案登録もしている(登録実用新案第3055386号)。
【0008】
本発明者に係るこの従来技術は、固形燃料より低く位置する通気孔から流入して上方に位置する排気孔もしくは排気間隙へ上昇移動する空気の流路を形成することで安定した外気供給と排気を確保し、この空気流路上に位置する固形燃料の燃焼部に常に新たな外気(酸素)を供給することによって良好な燃焼を確保しようとするもので、コンロ基体外周側壁に通気孔が設けられておらず横風による燃焼阻害が解消されていることと相俟って、それまでの固形燃料用コンロが抱えていた問題を大きく緩和し改善している。
【0009】
【特許文献1】登録実用新案第3055386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、本発明者が提案・提供した上記の従来技術は、それ以前の固形燃料用コンロに伴っていた固形燃料の顕著な不完全燃焼や燃焼疎外の問題を明らかに緩和・改善しているが、完全燃焼や完全燃焼に近い良好な燃焼による強い火力の確保、異臭の排除と燃焼残滓の低減という点では、なお改善・改良の余地を残すものであった。
【0011】
これは、次の二つの理由によるものである。即ち、理由の第一は、上記従来技術によって、コンロ内部では固形燃料の下方位置(通気孔)から上方位置(排気孔ないし排気間隙)へ上昇移動する安定した空気の流路が形成されているが、流入した外気は主にコンロ基体外周側壁の内面に沿って上昇してしまうため、コンロ基体の底板略中央位置に載置された固形燃料上面の燃焼部に対しては、完全燃焼や完全燃焼に近い良好な燃焼を可能とするだけの十分な外気(酸素)が供給されていなかったことによる。
【0012】
また他の理由として、上記従来技術を含むこの種の固形燃料用コンロ一般においては、アルコール系流体燃料を充填して固化させ又は固化済み固形燃料を充填収容した別体の火皿(金属などの不燃・耐熱素材を用いた上部開口のカップ状容器)や、固化済み固形燃料の外周をアルミ箔で包被したものを用いてきたことが挙げられる。
【0013】
これは、固形燃料の火力と燃焼時間が燃焼部となる上面面積と高さ(容量)によって規定されるため、燃焼進行中に容易に変形してしまう剥き出しの固形燃料や合成樹脂フィルムでシュリンクしただけの固形燃料では所定の火力と燃焼時間が安定的に得られないために余儀なく採られている選択であると言える。
【0014】
しかし、固形燃料の上面燃焼部に常に十分な外気(酸素)が供給されているのであれば別段、外気供給が未だ不十分な従来の固形燃料用コンロにあって、固形燃料の外周部に火皿やアルミ箔を密着させれば、さらに良好な燃焼が損なわれることとなり、特に固形燃料の燃焼が進み燃焼部が火皿やアルミ箔の外周上端より低く位置した場合、この問題は顕在化せざるを得ない。
【0015】
本発明は、上記した従来技術の問題を緩和・解決し、コンロ基体の外部から流入させた外気(酸素)を固形燃料燃焼部へより十分に供給して良好に燃焼させることによって、強い火力や異臭の排除と燃焼残滓の低減を確保すると共に、剥き出し或いは合成樹脂フィルムでシュリンクしただけの廉価で簡便な固形燃料を用いることができる固形燃料用コンロを提供することを課題とし目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、外周側壁をなす中空筒体の下端側を底板をもって閉止し上端側を開口して箱状ないし鉢状のコンロ基体となし、該コンロ基体の下端部ないし底部に通気孔を設けると共に外周側壁の上端部に排気孔ないし排気間隙を設けた固形燃料用コンロであって、底板上面の略中央位置に、その下端側で前記コンロ基体の外部に連通し上端側で開口する中空部を有してなる通気筒を立設すると共に、前記底板上面の前記通気筒を取り囲む位置に周壁を植設したこと、を特徴とする固形燃料用コンロである。
【0017】
請求項2の発明は、前記周壁の上端部を前記通気筒の上端部より低く位置させたこと、を特徴とする請求項1に記載の固形燃料用コンロである。
【0018】
請求項3の発明は、前記通気筒と前記周壁が形成する凹溝部に固形燃料を充填収容した場合に、前記周壁が充填収容された前記固形燃料の外周位置と接触位置することのない空隙部を有してなること、を特徴とする請求項1または2に記載の固形燃料用コンロである。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、コンロ基体下端部ないし底部に設けられた通気孔に加えて、固形燃料の燃焼部に外気(酸素)を供給する新たな手段である通気筒を設けると共に、この通気筒と周壁が形成する凹溝部によってコンロ基体それ自体に固形燃料の充填収容手段を与えているから、固形燃料に対する外気供給を効果的に高めて良好な燃焼による強力な火力や異臭の排除と燃焼残滓の低減を確保すると共に、剥き出し或いは合成樹脂フィルムでシュリンクしただけの固形燃料を用いることが可能な固形燃料用コンロを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1並びに図2は、本発明に係る固形燃料用コンロの一例を示すもので、外周側壁をなす中空筒体2の下端側を底板3で閉止すると共に上端側を開口して、開口側に向かって僅かに拡開する略鉢状のコンロ基体1を形成し、底板3の周縁近傍位置に底部外方へ連通する通気孔4を穿設すると共に、外周側壁2の上端縁を等間隔で切り欠いて排気間隙5を形成しており、これらの点においては従来技術(特許文献1)と同様の構成を採っている。
【0022】
しかし、コンロ基体1の底板3の上面には、その略中央位置に下端側でコンロ基体1の外部(底部外方)に連通し上端側で開口する中空部を有してなる通気筒8が上方へ向かって立設されると共に、この通気筒8を取り囲む位置に周壁9が植設されており、この点で上記従来技術とは著しく異なる構成となっている。
【0023】
本実施形態に係る固形燃料用コンロは以上の構成を有してなるものであるから、底板3の上面に設けられた通気筒8と周壁9の間に環状の凹溝部が形成されることとなり、この凹溝部に板状の固形燃料を曲げて押し入れ或いは適径のリング状固形燃料を嵌挿するなどすれば、固形燃料Fを凹溝部に容易且つ安定的に充填収容することができる(図3参照)。
【0024】
このように、本実施形態では通気筒8と周壁9によって形成された凹溝部がコンロ基体1自体に固形燃料の充填収容部を与えているから、煩雑な上に利用コストを押し上げていた別体の火皿に充填収容された固形燃料やアルミ箔で包皮された固形燃料を用いる必要は全くなく、さらに、凹溝部に充填収容された固形燃料はその外周部を通気筒8の外周面と周壁9の内周面によって支持され、燃焼の進行に伴って固形燃料が変形し燃焼部面積が不安定に変化する虞もないから、剥き出しもしくは合成樹脂フィルムでシュリンクされただけの廉価で簡便な固形燃料をそのまま充填収容して良好な燃焼に供することができる。
【0025】
また、通気筒8と周壁9が形成する凹溝部に固形燃料を充填収容し、その露呈した上面に着火して燃焼させると、底板3に設けた通気孔4から外気が流入して固形燃料燃焼部に酸素を供給するばかりではなく、固形燃料燃焼部の中央に位置する通気筒8からも外気が流入して燃焼部に直接酸素を供給するから、燃焼中の固形燃料燃焼部に対する外気(酸素)の供給は従来例に比して著しく向上している。
【0026】
このように、本発明に係る固形燃料用コンロでは、燃焼中の固形燃料燃焼部に対して外気(酸素)が常に十分に供給されているから、完全燃焼もしくは完全燃焼に近い良好な燃焼が実現されており、不快な異臭を伴うことのない強力で安定した火力を確保することができると共に、燃焼利用後にも量的に低減された燃焼残滓が凹溝部に残されるに止まり、剥き出しもしくは合成樹脂フィルムで包皮しただけの固形燃料を用いるにも拘わらず、凹溝部に残された僅かな燃焼残滓を清掃・除去するだけで簡便に再利用に供することができ、コンロ利用の便も大きく向上する。
【0027】
なお、図3に明示する通り、本実施形態においては、底板3の上面に設けた周壁9の上端位置を通気筒8の上端位置より低く設定している。これは、周壁9の上端位置が通気筒8の上端位置より高いは場合には、固形燃料Fの燃焼残滓によって通気筒8の上端開口が閉塞され或いは狭められる可能性があり、これを避けるために固形燃料Fの上面を周壁9の上端縁より低く位置するように充填収容すると、着火時の良好な燃焼を損なう可能性もあることによる。
【0028】
本発明者が行った実験では、固形燃料燃焼部に対する外気(酸素)の供給が大きく向上しているため、周壁9の上端位置と通気筒8の上端位置を同じ高さに設定した場合にも、周壁9の上端位置を通気筒8の上端位置より僅かに高く設定した場合にも、固形燃料は着火時から安定した燃焼を見せたが、良好な燃焼を安定的に確保する上で、周壁9の上端位置を通気筒8の上端位置より低く設定することが望ましいと考える。
【0029】
また、図1ないし図3に示す通り、本実施形態においては、通気筒8を取り囲む位置に設けた周壁9を等間隔の3カ所で外方へ張り出すよう構成し、上記凹溝部に充填収容した固形燃料Fの外周部が占める位置と接触位置することのない空隙部9aを形成しているが、これは充填収容した固形燃料Fの外周部にも外気(酸素)を直接供給して燃焼効率をさらに高めるためることを企図したもので、従来のように別体の火皿に充填収容した固形燃料やアルミ箔で包皮した固形燃料を用いる場合には全くなし得ないところである。
【0030】
本発明に係る固形燃料用コンロでは、凹溝部に充填収容された固形燃料の燃焼部に常に十分な外気(酸素)が供給されているため、本発明者の実験では、周壁9に空隙部9aを設けず、充填収容された固形燃料の外周全体に周壁9を密着させた場合にも、不完全燃焼に陥り或いは燃焼が不安定となることはなかったが、空隙部9aの存在は原理的に固形燃料のより良好な燃焼に資するものと考える。
【0031】
なお、本実施形態では、周壁9を横断面円形状に構成し、空隙部9aもこの周壁9の一部を外方へ張り出させることで形成したが、周壁9の形状は通気筒8と共に固形燃料を充填収容する凹溝部を形成して充填収容された固形燃料を支持する限り何らの制約もなく、空隙部9aも充填収容された場合の固形燃料が占める外周位置と接触位置しない部分として形成されていれば足りる。
【0032】
例えば、図4に横断面正方形状の周壁9を他の一例として挙げたが、この場合にも周壁9は通気筒8と固形燃料を充填収容する凹溝部を形成すると共に充填収容された場合の固形燃料の外周を支持できる位置にあり、充填収容された固形燃料が占める外周位置と接触位置することのない空隙部9aがその四隅に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る固形燃料用コンロの一例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】本発明に係る固形燃料用コンロの一例を示す平面図である。
【図3】本発明に係る固形燃料用コンロの実施の状況を示す断面図である。
【図4】本発明に係る固形燃料用コンロの他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 コンロ基体
2 外周側壁
3 底板
4 通気孔
5 排気間隙
6 支持脚
7 着火口
8 通気筒
9 周壁
9a 空隙部
F 固形燃料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側壁をなす中空筒体の下端側を底板をもって閉止し上端側を開口して箱状ないし鉢状のコンロ基体となし、該コンロ基体の下端部ないし底部に通気孔を設けると共に外周側壁の上端部に排気孔ないし排気間隙を設けた固形燃料用コンロであって、底板上面の略中央位置に、その下端側で前記コンロ基体の外部に連通し上端側で開口する中空部を有してなる通気筒を立設すると共に、前記底板上面の前記通気筒を取り囲む位置に周壁を植設したこと、を特徴とする固形燃料用コンロ。
【請求項2】
前記周壁の上端部を前記通気筒の上端部より低く位置させたこと、を特徴とする請求項1に記載の固形燃料用コンロ。
【請求項3】
前記通気筒と前記周壁が形成する凹溝部に固形燃料を充填収容した場合に、前記周壁が充填収容された前記固形燃料の外周位置と接触位置することのない空隙部を有してなること、を特徴とする請求項1または2に記載の固形燃料用コンロ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−68751(P2009−68751A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236340(P2007−236340)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(593009583)株式会社ニチネン (8)