説明

固形物含有液体スープ

【課題】 コーン粒等の具を含む液体スープにおいて、静菌性や味、風味が向上した液体スープを提供すること。
【解決手段】 固形物を含有する液体スープにおいて、ショ糖ミリスチン酸エステルをAppm、ショ糖ステアリン酸エステルをBppmとしたときに、500<A<2000、かつ、0<B<4000、かつ、3500<2A+B<5000の濃度とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーンなどの固形物を含有する液体スープやその製造方法に関し、特に静菌性や味、風味が向上した液体スープに関する。
【背景技術】
【0002】
スープは、最近では一般の家庭でも日常的に食されており、家庭で作られる他に、粉末スープ、缶詰、レトルト食品など様々な形態で商品が販売されている。その中でもコーンスープは子供から大人まで広く飲食されている。
【0003】
コーンスープは、一般的に、蒸煮したコーンを粉砕して作るコーンペーストにチキンブイヨン、ルウ、牛乳などを加え、加熱調理して作られる。さらに、スープのなめらかさやコク味を付与するために、生クリームやバター、澱粉なども好んで加えられる。
近年では、朝食時の飲料として、レトルトパウチ、缶詰などの無菌充填包装の調理済みスープとして市販され、飲みごたえや食事感を付与するために、粗粉砕されたコーンやホールコーンが具材として利用されている。
【0004】
また、昨今では簡便性が求められる中、店頭で購入後直ちに飲食できるよう、レトルト処理されたコーンスープを店頭にて加温して販売するケースがみられる。
【0005】
また本格さやおいしさの点で、液体スープは人気がある。これらの液体レトルトスープにおいて、問題になるのが殺菌および静菌である。特にレトルトスープの場合は、通常、密封包装時に加熱殺菌されるが、クロストリジウム・サーモアセティカム(Clostridium thermoaceticum)などの強い耐熱性を有する高温危害菌が残存し、加温販売される際に生育してガスを発生したり、pHを低下させたりして品質を著しく低下させる虞がある。これらの菌は強い耐熱性を有するため、殺滅するために殺菌条件を更に強くすることが考えられるが、そうすると加熱臭の発生、栄養価の減少、風味の変化などの問題が生じる。
【0006】
従って、これらの液体スープにおいては、加熱殺菌とともに、微生物の増殖を抑制するために各種静菌剤を用いることが知られている。しかしながら、現在でも多種多様な発明がなされている現状から分かるように様々な課題が存在しているのが現状である。
【0007】
例えば、飲料の保存性をあげるためにショ糖脂肪酸モノエステルを含有させることが知られている(特許文献1)。しかしながら、当該発明はコーヒー飲料のオイルの分離・凝集および変敗を防ぐことが目的であり、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤を添加することを従来技術としたうえで、コーヒー飲料に特有の課題解決のためにステアリン酸を主体として、モノエステル含量が90重量%以上のショ糖脂肪酸エステルを含有させかつpHを5.0〜6.5の範囲に限定することが特徴の選択発明である。
【0008】
また、飲料にショ糖脂肪酸エステルを用いること、そしてその脂肪酸としてミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸を好適に用いることが知られている(特許文献2)。しかしながら当該発明は、構成脂肪酸の50重量%以上が炭素鎖長8〜16の脂肪酸であり、モノエステル含量が93重量%以上、灰分が0.5重量%以下であるショ糖脂肪酸エステルを含有し、pHが2〜4.5である酸性食品の発明である。その目的はショ糖脂肪酸エステルの溶解性を向上させ、それを添加した濁りや沈殿を生じがたい透明食品の提供である。そのため粘度がある飲料や固形分を含んだスープなどの殺菌の困難な液体スープについての適用については記載も示唆も無い。
【0009】
また、乳飲料にショ糖脂肪酸エステルを用いることが知られている(特許文献3)。しかし当該発明は、乳化状態不良を防ぎ、保存安定性に優れた乳飲料の提供が目的である。そのため、ショ糖脂肪酸エステルとともに特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することが特徴である。またショ糖脂肪酸エステルのHLBも3〜7であり、ショ糖脂肪酸モノエステルではなく、ショ糖脂肪酸ジエステル、ショ糖脂肪酸トリエステルなど、脂肪酸が複数結合したショ糖脂肪酸エステルを用いる事に特徴がある。そのため粘度がある飲料や固形分を含んだスープなどの殺菌の困難な液体スープについての適用については記載も示唆も無い。
【0010】
また、低酸性液状食品にショ糖脂肪酸エステルを用いることが知られている(特許文献4)。当該発明ではショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸としてミリスチン酸、ステアリン酸の記載があり、ポタージュ等のスープの記載もある。しかしながら当該発明で開示されている飲料は全て固形物を含まないものである。そのため、静菌剤としてはショ糖脂肪酸エステルおよび、またはポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる事の記載はあるが、固形物、具体的にはコーン粒などの具が含有された液体スープについても効果がある静菌剤の組み合わせの記載はない。また実際、当該発明の静菌剤の組み合わせで、具が含有された液体スープについて静菌が出来ない条件が存在するという課題があった。
【0011】
また、澱粉及び/又はたんぱく質を特定量含有する食品にHLBが13以上のショ糖脂肪酸エステルを用いることが知られている(特許文献5)。しかしながら当該発明は、惣菜やフィリング等の加工食品の静菌が目的のため、ショ糖脂肪酸エステル以外にも、リゾチームと、グリシン及び/又は酢酸ナトリウムを特定量含むことが要求されるという課題があった。また粘度がある飲料や固形分を含んだスープなどの殺菌の困難な液体スープについての適用については記載も示唆も無い。
【0012】
また、デンプンや脂質を含む固形分の入ったポタージュスープにおいて、高温耐熱性を有する細菌に対しても安定なポタージュスープの発明が知られている(特許文献6)。しかしながら当該発明はグリシンの添加が必須であり、実際の製品に適用するとグリシン特有の味が影響するという課題があった。また当該発明の実施例では、コーンスープをベースにしてコーン粒を加えて静菌実験を行っているが、ショ糖ステアリン酸エステルでは菌が増殖することの記載があり、固形物を含んだスープなどの液状食品では静菌することが困難であることもまた、知られている。
【0013】
また、密封容器入り汁粉の静菌剤としてショ糖ミリスチン酸エステルが知られている。当該発明にはポタージュ、コンソメスープ、汁粉等の澱粉を多量に含むものにはショ糖脂肪酸エステルの静菌効果が小さいことが多いことの課題が記載されている(特許文献7)。しかしながら当該発明はショ糖ミリスチン酸エステルを含有し、かつ加熱殺菌工程を経て静菌することに特徴がある。当該発明にはショ糖ラウリン酸エステルが優れた静菌効果があるが苦味があること、ショ糖ミリスチン酸エステルは静菌効果が劣ることの記載がある。また実施例ではショ糖ミリスチン酸エステルと加熱を組み合わせた汁粉飲料では風味も良好との記載があるが、少なくともスープでの静菌剤でショ糖ミリスチン酸エステルのみを用いるとショ糖ミリスチン酸エステルの苦味が強いと言う課題があることが確認されている。
【0014】
このように静菌性を保つために液体スープにショ糖脂肪酸エステルを用いる事は周知であるが、従来技術を見ても分かるように、個別製品や個別原料、個別のpHなどによって用いるショ糖脂肪酸エステルやその組み合わせは異なる。またそれぞれに特許権が付与されている例もあることから分かるように、従来技術から単に適宜組み合わせるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10−70956号
【特許文献2】特開平11−127829号
【特許文献3】特開平11−75683号
【特許文献4】特開平6−261718号
【特許文献5】特開2005−27563号
【特許文献6】特開2007−97439号
【特許文献7】特開平7−147948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、コーン粒等の固形物の具を含む液体スープにおいて、静菌性や味、風味が向上した液体スープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記のような問題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、静菌剤として、ショ糖ミリスチン酸モノエステル及びショ糖ステアリン酸モノエステルを特定量かつ併用することにより、液体スープの風味が改善されること、さらに静菌性も保たれることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の各発明を包含する。
(1) ショ糖ミリスチン酸エステルをAppm、ショ糖ステアリン酸エステルをBppmとしたときに、500<A<2000、かつ、0<B<4000、かつ、3500<2A+B<5000の濃度であることを特徴とする、固形物を含有する液体スープ。
(2) ショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルのHLBがそれぞれ15以上、17以下の範囲であることを特徴とする、発明(1)記載の液体スープ。
(3) 固形物がコーン粒であることを特徴とする発明(1)記載の液体スープ。
(4) 固形物を1%以上、15%以下含有することを特徴とする発明(1)または発明(2)記載の液体スープ。
(5) 油脂を0.1〜5%および/または澱粉を1〜20%含有することを特徴とする、発明(1)記載の液体スープ。
【0018】
尚、本発明はこれからの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で置き換えたものを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コーン粒等の固形物の具を含む液体スープにおいて、静菌性や味、風味が向上した液体スープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、固形物含有液体スープに特に限定はないが、具材などの固形物を含むスープが好適な例として挙げられ、特に具体的な例としてはコーン粒を含んだコーンスープが挙げられる。コーンスープは一般的に、蒸煮したコーンを粉砕して作るコーンペーストにチキンブイヨン、ルウ、牛乳などを加え、加熱調理して作られる。さらに、スープのなめらかさやコク味を付与するために、生クリームやバター、澱粉なども好んで加えられる。また、近年では、飲みごたえや食事感を付与するために、粗粉砕されたコーンやホールコーンが具材として利用されている。
また、昨今では簡便性が求められる中、店頭で購入後直ちに飲食できるよう、レトルト処理されたコーンスープを店頭にて加温して販売するケースがみられるが、本発明の好適な例としてこのような加温販売されるレトルトスープがあげられる。レトルトスープの場合は、通常、密封包装時に加熱殺菌されるが、クロストリジウム・サーモアセティカムなどの強い耐熱性を有し高温域で生育しやすい高温危害菌が残存し、加温販売される際に生育して、ガスを発生したり、pHを低下させたりして品質を著しく低下させる虞がある。これらの菌は強い耐熱性を有するため、殺滅するために殺菌条件を更に強くすることが考えられるが、そうすると加熱臭の発生、栄養価の減少、風味の変化などの問題が生じる。
特に本発明においては、油脂および/またはデンプンを含む液体スープに効果があり好ましい。乳化剤はクロストリジウム・サーモアセティカムなどの高温危害菌の生育を抑えることができるが、デンプンや油脂は乳化剤を吸着して菌体への作用を減じてしまうことが一般的に知られている。このような場合、更に高濃度の乳化剤を添加しなくてはならないが、本発明では油脂および/または澱粉を含む液体スープでも効果がある点も重要な利点である。一方で、澱粉や油脂が少ないと、適度なとろみがなくなったり、油脂由来の風味がなくなったりと官能の面で好ましくなく、一定量以上の本原料の配合が好ましい。澱粉、油脂の好ましい配合量としては澱粉1〜20%、油脂0.1〜5%であり、更に好ましくは澱粉1〜10%、油脂0.1〜3%である。
【0021】
本発明において、液体スープに含有される固形物とは、コーン粒などのスープの主原料となる原料の固形物や、クルトンなどの食感や香味を楽しむためのスープ特有の具材を指す。また、固形物の量としては、スープ全体量に対して1〜15%含有されているものが好ましい。
【0022】
本発明は、固形物を含有する液体スープにおいて静菌性が保たれ、かつ、味、風味が良好であることが特徴であるが、そのためにショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルを併用することが重要である。
本発明で用いるショ糖ミリスチン酸エステルは、モノエステルを主成分とし、HLBが15〜17の範囲である乳化剤のことを指す。
本発明で用いるショ糖ステアリン酸エステルは、モノエステルを主成分とし、HLBが15〜17の範囲である乳化剤のことを指す。
また本発明において、ショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステル以外の静菌剤、例えばその他のショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルを用いても良いが、静菌性を保ち、かつ、味、風味が良好であるという点からは、ポリグリセリン脂肪酸エステルやショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステル以外のショ糖脂肪酸エステル含量は少ないほど良い。液体スープがポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルを含む場合は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル中のショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルの割合は60%以上、好ましくは90%以上が好ましい。
また本発明において、液体スープ中に占めるショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルの割合は、ショ糖ミリスチン酸エステルをAppm、ショ糖ステアリン酸エステルをBppmとしたときに、500<A<2000、かつ、0<B<4000、かつ、3500<2A+B<5000であることが特に重要である。
ショ糖ミリスチン酸エステル(A)が、500ppm以下だと静菌性の点で好ましくなく、2000ppm以上だと味、風味の点で好ましくない。ショ糖ミリスチン酸エステル(A)は、1000≦A≦1500であると更に好ましい。
またショ糖ステアリン酸エステル(B)は、ショ糖ミリスチン酸エステルに比べて静菌性が劣ることが知られているが、今回の発明ではショ糖ステアリン酸エステルを加えることも重要である。ショ糖ステアリン酸エステルを入れないと官能の点で満足の行く固形物含有液体スープが製造することが出来ず、4000ppm以上だと味、風味の点で好ましくない。ショ糖ステアリン酸エステル(B)は、500≦B≦3000であると更に好ましい。
またショ糖ミリスチン酸エステルをAppm、ショ糖ステアリン酸エステルをBppmとしたときに、3500<2A+B<5000であることが重要であるが、更に好ましくは、4000≦2A+B≦4500である。
【0023】
本発明で用いられる味とは飲食物を舌にのせた時に、舌の味蕾を刺激して感じられる感覚を示す。
【0024】
以下、本発明について実施例で更に説明するが、本発明の技術範囲はこれら実施例によって制限されるものではない。また、本実施例において、官能評価は特に断りのない限り、食品業務に平均して5年以上従事している充分に訓練された3名の専門パネルを用いて実施した。
【実施例】
【0025】
(試験例1 ショ糖ミリスチン酸エステルが、固形物を含有する液体スープと固形物を含有しない液体スープに与える静菌性および味覚への影響)
<コーンスープの作成>
トウモロコシからコーン粒を取り外し機械的に磨砕した後に加熱殺菌して作られたコーンペースト、澱粉、油脂を合わせたスープベースを15部、砂糖、食塩、香辛料等などを合わせた調味料ベースを6部、残部(71部)を水としたものをコーンスープのベースとした。
<コーンスープにショ糖ミリスチン酸エステルを各濃度で添加したときの静菌性および味覚の評価>
上記で得られたコーンスープ200mlに、コーン粒15〜25粒(コーンスープに対して3〜5%に相当)、ショ糖ミリスチン酸エステル(乳化剤ともいう)(1000ppm、1500ppm、2000ppm、2500ppm)を添加し、1食とした。そこに10個/食となるよう菌液(C.thermoaceticum)を添加し、それぞれに125℃・20分の殺菌を施し、C.thermoaceticum以外の菌を死滅させた。それらを55℃、1ヶ月間、保管し、pHを測定し、未接種品から0.3以上のpHの乖離のあるものをC.thermaceticumによる変敗として、変敗した物を×、変敗しなかったものを○とした。
また官能の評価は、以下のように味について行った。
味は飲食物を舌にのせた時に、舌の味蕾を刺激して感じられる感覚を示し、乳化剤由来の苦味、エグ味を評価した。はっきりと感じられる場合には×、感じられないときは○、評価が分かれるときは△とした。
また総合評価は、静菌性と官能の両方の評価が○ときには○、どちらかもしくは両方が×の時には×とし、×はないがどちらかもしくは両方に△がある時には△とした。
静菌性の結果と、官能の結果と、総合評価を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1の結果から、コーン粒を含んだもしくは含まないコーンスープにおいてショ糖ミリスチン酸エステルを乳化剤に用いたときの結果は、官能の点では2000ppm以上でショ糖ミリスチン酸エステル特有の苦味が感じられる様になり、逆に静菌性の点では1500ppm以下で静菌できなくなり総合的に官能と静菌性を両立させることが出来ないことが判明した。
【0028】
(試験例2 各種静菌剤が、固形物を含有する液体スープに与える静菌性および味覚への影響)
<培地上に各種ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加したときの静菌性および味覚の評価>
M−TGC培地200mlに、コーン粒15〜25粒(コーンスープに対して3〜5%に相当)、および濃度を振った各種乳化剤を添加し、1袋とした。そこに、10個/袋となるよう芽胞菌液(C.thermoaceticum)を添加し、それぞれに125℃・20分の殺菌を施し、C.thermoaceticum以外の菌を死滅させた。それらを55℃、1ヶ月間、保管し、pHを測定し、未接種品から0.3以上のpHの乖離のあるものをC.thermaceticumによる変敗として、静菌に必要な最低の乳化剤濃度を求めた。各種乳化剤の名称と各種乳化剤での静菌濃度の結果と、官能の結果を表2に示す。官能の評価は試験例1と同じ基準で実施した。
【0029】
【表2】

【0030】
表2の結果から、コーン粒(具)が存在する際に静菌可能なレベルまで乳化剤を単独で添加すると、いずれの乳化剤も官能に著しい悪い影響を与えることが判明した。
【0031】
(実施例1 ショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルの濃度変化が、固形物を含有する液体スープに与える静菌性および味覚への影響)
<コーンスープの作成>
試験例1と同様にしてコーンスープを作成した。
<コーンスープにショ糖ミリスチン酸エステル及びショ糖ステアリン酸エステルを各濃度で添加したときの静菌性および味覚の評価>
上記で得られたコーンスープ200mlに、ショ糖ミリスチン酸エステル及びショ糖ステアリン酸エステルを表3のように濃度条件を振って添加し、1食とした。そこに10個/食となるよう菌液(C.thermoaceticum)を添加し、それぞれに125℃・20分の殺菌を施し、C.thermoaceticum以外の菌を死滅させた。
それらを55℃、1ヶ月間、保管し、pHを測定し、未接種品から0.3以上のpHの乖離のあるものをC.thermoaceticumによる変敗として、変敗した物を×、変敗しなかったものを○とした。
また官能の評価および総合評価について、試験例1と同じ基準で実施した。
【0032】
【表3】

【0033】
表3の結果から、液体スープ中に占めるショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルの割合は、ショ糖ミリスチン酸エステルをAppm、ショ糖ステアリン酸エステルをBppmとしたときに、500<A<2000、かつ、0<B<4000、かつ、3500<2A+B<5000であることが特に好ましいことが判明した。
またショ糖ミリスチン酸エステル(A)が、500ppm以下だと静菌性の点で好ましくなく、2000ppm以上だと味、風味の点で好ましくないことが判明した。ショ糖ミリスチン酸エステル(A)は、1000≦A≦1500であると更に好ましいことが判明した。
またショ糖ステアリン酸エステル(B)は、ショ糖ミリスチン酸エステルに比べて静菌性は劣るが、ショ糖ステアリン酸エステルを入れないと官能の点で満足の行く固形物含有液体スープが製造することが出来ず、4000ppm以上だと味、風味の点で好ましくないことが判明した。ショ糖ステアリン酸エステル(B)は、500≦B≦3000であると更に好ましい。
またショ糖ミリスチン酸エステルをAppm、ショ糖ステアリン酸エステルをBppmとしたときに、3500<2A+B<5000であることが好ましいが、更に好ましくは、4000≦2A+B≦4500 である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、ショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルを含有する、コーンなどの固形物を含有する液体スープやその製造方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショ糖ミリスチン酸エステルをAppm、ショ糖ステアリン酸エステルをBppmとしたときに、500<A<2000、かつ、0<B<4000、かつ、3500<2A+B<5000の濃度であることを特徴とする、固形物を含有する液体スープ。
【請求項2】
ショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ステアリン酸エステルのHLBがそれぞれ15以上、17以下の範囲であることを特徴とする、請求項1記載の液体スープ。
【請求項3】
固形物がコーン粒であることを特徴とする請求項1記載の液体スープ。
【請求項4】
固形物を1%以上、15%以下含有することを特徴とする請求項1または2記載の液体スープ。
【請求項5】
油脂を0.1〜5%および/または澱粉を1〜20%含有することを特徴とする、請求項1記載の液体スープ。