説明

固形物繰り出し容器、固形物繰り出し容器への固形物の充填方法および固形物塗布用具

【課題】 固形物が繰り出し容器に収容されてなる固形物塗布用具を製造するに際し、内容物を充填した後の容器の反転工程や、専用の充填用器具を着脱する工程、並びに複数回の充填工程を不要とし、しかも内容物が充填され固化された後の固形物塗布用具において、固形物の天面の沈みを防止することを課題とする。
【解決手段】 一端に開口部が形成された筒状の容器本体と、該開口部を密閉可能な蓋体と、該容器本体の内部空間に収容される固形物を保持する固形物保持体と、収容される固形物を前記開口部より出没させるべく該固形物保持体を容器本体に対して相対移動させうる移動機構を備えた固形物繰り出し容器であって、前記移動機構又は前記固形物保持体の少なくとも何れか一方には、前記容器本体の内部空間と該容器本体の外部空間とを連通する連通孔が形成されていることを特徴とする固形物繰り出し容器による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形薬剤、固形化粧料、固形糊などの固形物を出没自在とする、固形物繰り出し容器、固形物繰り出し容器への固形物の充填方法および固形物塗布用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形薬剤、固形化粧料、固形糊などの固形物を出没自在とする容器としては、例えば、下記特許文献1に記載されたような固形物繰り出し容器が知られている。即ち、この種の容器は、筒状の容器本体と、該容器本体の開口部を密閉するための蓋体と、該容器本体と相対回転自在に設けられた回転体と、該回転体と前記容器本体との相対回転により前記容器本体内を移動可能に設けられた固形物保持体とを備えており、回転体と容器本体との相対回転により固形物保持体を移動させ、これによって容器本体内に収容された固形物を前記開口部より出没させうるものである。
【0003】
そして、この種の固形物繰り出し容器が用いられた固形物塗布用具は、容器本体の開口部を上方に向けて該容器を載置し、この開口部から内容物を充填し、その後、蓋を装着する、という手順によって製造されている。
【0004】
しかしながら、上記のような方法により製造された固形物塗布用具は、内容物の充填後、蓋体が備えられる側を上方に向けた状態で内容物の冷却又は乾燥が行われるため、内容物が固化する際の体積収縮により、固形物の天面中央部が沈んだ製品となる。天面は前記固形物の蓋体側の表面であり、最初の使用時に使用者がその外観を容易に認識できる部位であるため、天面中央部が沈むという現象は、使用者に対して固形物の充填量不足ではないかという疑念を抱かせ、使用者からのクレームが発生するという問題を生じ得る。
【0005】
この問題に対し、蓋体が備えられる開口部から内容物を充填する方法において様々な対策がとられている。例えば、流動状態にある内容物を開口部より充填し、該開口部に蓋を装着した後、容器を反転した状態で内容物を固化させることにより、前記天面中央部の沈みが生じないようにする方法、あるいは、天面が凸状に膨らんだ専用の充填用器具を容器の開口部に取り付け、該天面中央部が凸状に膨らむような状態で内容物を固化させた後、その充填用器具を取り外す方法、あるいは、充填後、固形物の天面中央部の沈みを目立たなくするために該天面に再度内容物を追加充填する方法、などが採用されている。
【0006】
ところが、容器を反転してから内容物を固化させる方法は、充填後に容器を反転させる工程を必要とするため、充填工程が複雑となる。また、専用の充填用器具を用いる方法は、専用の充填用器具を必要とし、しかも該充填用器具を容器に取り付けた後、その充填用器具を取り外して最終的な蓋体を容器に装着するという複雑な工程を必要とする。また、再度内容物を充填する方法は、複数回の充填工程を必要とする。このように、いずれの方法も煩雑な工程を必要とし、生産性が悪い。
【0007】
【特許文献1】特開2002−086989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、固形物が繰り出し容器に収容されてなる固形物塗布用具を製造するに際し、内容物を充填した後の容器の反転工程や、専用の充填用器具を着脱する工程、並びに複数回の充填工程を不要とし、しかも内容物が充填され固化された後の固形物塗布用具において、固形物の天面の沈みを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明に係る固形物繰り出し容器は、一端に開口部(4)が形成された筒状の容器本体(2)と、該開口部(4)を密閉可能な蓋体(10)と、該容器本体(2)の内部空間に収容される固形物(20)を保持する固形物保持体(5)と、収容される固形物(20)を前記開口部(4)より出没させるべく該固形物保持体(5)を容器本体(2)に対して相対移動させうる移動機構とを備えた固形物繰り出し容器であって、前記移動機構又は前記固形物保持体(5)の少なくとも何れか一方には、前記容器本体(2)の内部空間と該容器本体(2)の外部空間とを連通する連通孔(6)が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成からなる固形物繰り出し容器によれば、開口部に前記蓋体を装着した状態であっても前記連通孔を介して内容物を充填でき、固化させることができる。従って、蓋体を下方側にして内容物を固化させることにより、前記固形物の体積収縮が前記固形物の天面の形状に悪影響が及ぼされにくくなり、天面の沈みが抑制されることとなる。また、前記連通孔を介して内容物を充填する際、予め蓋体を装着し、該蓋体を下方側に向けて配置しておくことができ、内容物充填後の反転操作も不要となる。
【0011】
本発明に係る固形物繰り出し容器は、好ましくは、前記移動機構が、軸心周りに回転可能な回転体(3)を備え、該回転体(3)の回転によって前記固形物保持体(5)が移動するように構成される。また、好ましくは、前記回転体(3)が前記固形物保持体(5)を貫通して前記開口部(4)に向けて突設された軸部(3a)を有しており、前記連通孔(6)の一端が、少なくとも該軸部(3a)の先端において前記内部空間と連通したものとされる。
【0012】
また、本発明に係る固形物繰り出し容器は、好ましくは、前記固形物保持体(5)に、前記連通孔(6)とは連通しない第1の空気孔(8)が形成され、該第1の空気孔(8)を介して、前記容器本体(2)の内部空間と外部空間との空気の流通が可能となるように構成される。また、好ましくは、前記固形物保持体(5)が、中央部において前記開口部(4)から離間するように傾斜したテーパ面(5a)を有しており、該テーパ面(5a)の中央部には前記第1の空気孔(8)が形成される。また、好ましくは、前記蓋体(10)は、前記開口部(4)において前記容器本体(2)内面と面一となるように当接し、該蓋体(10)の内側が角部分が滑らかに湾曲した凹面形状に形成されている。
【0013】
さらに、本発明に係る固形物繰り出し容器への固形物の充填方法は、一端に開口部(4)が形成された筒状の容器本体(2)と、該開口部(4)を密閉可能な蓋体(10)と、該容器本体(2)の内部空間に収容される固形物(20)を保持する固形物保持体(5)と、収容される固形物(20)を前記開口部(4)より出没させるべく該固形物保持体(5)を前記容器本体(2)に対して相対移動させうる移動機構とを備えた固形物繰り出し容器への前記固形物(20)の充填方法であって、前記開口部(4)に前記蓋体(10)を装着した状態で、前記移動機構又は前記固形物保持体(5)の少なくとも何れか一方に形成した連通孔(6)を通して、流動化された内容物を前記容器本体(2)の内部空間に充填し、充填された前記内容物を固化させて前記固形物(20)とすることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明に係る固形物塗布用具は、一端に開口部(4)が形成された筒状の容器本体(2)と、該開口部(4)を密閉可能な蓋体(10)と、該容器本体(2)の内部空間に収容された固形物(20)と、該固形物(20)を保持する固形物保持体(5)と、前記開口部(4)より前記固形物(20)を出没可能とするべく該固形物保持体(5)を前記容器本体に対して相対移動させる移動機構とを備えた固形物塗布用具であって、前記開口部(4)に前記蓋体(10)を装着した状態で、前記移動機構又は前記固形物保持体(5)の少なくとも何れか一方に形成された連通孔(6)を通して、流動化された内容物が前記容器本体(2)の内部空間に充填され、充填された前記内容物が固化されて前記固形物(20)とされたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、充填後の容器の反転工程、および、専用の充填用器具を着脱する工程、複数回の充填工程が不要となり、流動化された内容物が充填され固化された後の、固形物の天面中央部の沈みが抑制されるという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る固形物繰り出し容器の実施形態について、図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0017】
図1及び図2は、本発明に係る固形物繰り出し容器をヒトの皮膚に塗布するための抗炎症薬用に適用した実施形態の一例であり、図1は固形物繰り出し容器1縦断面図、図2は固形物繰り出し容器1の平面図(a)及び底面図(b)である。
【0018】
本実施形態の固形物繰り出し容器1は、図1に示すように、一端に開口部4が形成された筒状の容器本体2と、該開口部4を密閉可能な蓋体10と、該容器本体2の内部空間に収容される固形物20を保持する固形物保持体5と、収容される固形物20を前記開口部4より出没させるべく該固形物保持体5を容器本体2に対して相対移動させうる移動機構とを備えたものである。
【0019】
本実施形態においては、前記移動機構の一構成要素として、軸心回りに回転自在となるように前記容器本体2に係合された回転体3が備えられている。さらに、該回転体3は、一端側に前記容器本体2内で前記開口部4に向けて突設された棒状の軸部3aを有しており、他端側に容器本体2の外側に露出した把持部3bを有している。さらに、該軸部3aは、その外表面に螺合部を有している。
【0020】
本実施形態では、前記回転体3を前記容器本体2に対して相対的に回転させることにより、前記軸部3aはその軸心を中心に回転することとなる。回転体3は、外部より直接回転力を受けることも、間接的に回転力を受けることもできる。外部より直接回転力を受ける場合とは、例えば、本実施形態のように、回転体3自体が把持部3bにより手で回転される場合であり、間接的に回転力を受ける場合とは、例えば、容器内に設けられた歯車等を介して前記回転体3に回転力が伝えられる場合である。
前記固形物繰り出し容器1が単純な構造で機能するためには、前記回転体3が直接回転力を受け得る構造となっていることが好ましい。
【0021】
前記回転体3には、さらに、固形物が収容される容器本体2の内部空間と、該容器本体2の外部空間とに通じる連通孔6が少なくとも1つ具備されている。言い換えると、該連通孔6は、容器本体2の内部空間に通じる内側開口部6aと、容器本体2の外部空間に通じる外側開口部6bとを有しており、これら内側開口部6aと外側開口部6bとが連通された状態となっている。
【0022】
本実施形態では、図1に示すように、該連通孔6は、その一端が前記回転体3の先端部において前記空間と連通するように形成されており、言い換えると、回転体3の先端部に前記内側開口部6aが形成されている。また、該軸部3aの先端部が開口部4の近傍に至るように延設されているため、前記内側開口部6aも、容器本体2の開口部に近接するように形成されている。そして、該連通孔6は、前記回転体3の先端部から基端部に至るように、回転体3の軸心に沿って形成されている。即ち、本実施形態では、軸部3a及び把持部3bは、何れも軸心部分が中空状に形成されている。
【0023】
前記固形物保持体5は、容器本体2内に収容された固形物20を保持し、該固形物20と一体となって移動するように構成されたものである。本実施形態の固形物保持体5には、図1及び図3に示されているように、前記回転体3の前記軸部3aを挿通させ、該軸部3aと螺合する保持体螺合孔部5dが形成されている。また、より確実に前記軸部3aと前記保持体5とを螺合させるため、該固形物保持体5は、中空円柱状で前記保持体螺合孔部5dが内面側に形成された保持体柱部5bを有している。さらに、該固形物保持体5は、該保持体柱部5bと一体化され、該保持体柱部5bを囲むように該保持体柱部5bと容器本体2との間に設けられた皿状の皿部5cを有している。該保持体柱部5bの保持体螺合孔部5dには、前記回転体3の軸部3aが挿通され、保持体螺合孔部5dと軸部3aとが螺合された状態となる。
【0024】
保持体螺合孔部5dに挿通された軸部3aは、前記容器本体2の開口部4に向かって突設されており、好ましくは、該軸部3aの先端部が開口部4の近傍に至るように延設されている。斯かる構成により、固形物保持体5は、前記回転体3の回転により、前記軸部3aの軸方向に移動可能となっており、これに伴って、前記固形物保持体5に保持されている前記固形物20も、前記軸部3aの軸方向に移動可能となり、前記開口部4において出没自在となっている。
【0025】
さらに、前記固形物保持体5は、前記容器本体2に嵌入される形状であることが好ましい。つまり、前記固形物保持体5の皿部5cの外形が、前記容器本体2の内周面の断面形状と同じであり、かつ、前記固形物保持体5の大きさが、前記容器本体2に比較的隙間なく挿入できる大きさであることが好ましい。
【0026】
前記固形物保持体5の周縁部には、前記容器本体2の内壁に対して、その弾性により押圧付勢しうるように形成された付勢部12が備えられていることが好ましい。該付勢部12は、例えば、本実施形態のように、前記皿部5cから前記開口部4側へ向かって屈曲している屈曲体と、該屈曲体から前記開口部側の反対側(以下、反開口部側ともいう)へ向かって突出している突出片とを備えて構成される。
【0027】
このように、固形物保持体5の周縁部に、容器本体2の内壁に対し押圧付勢するように形成された前記付勢部12が形成されていると、前記容器本体2の横断面の内径が前記反開口部側から前記開口部4側にかけて広がる場合であっても、その材質の弾性により、前記開口部4付近においても前記容器本体2の内壁と隙間なく接触し得るものとなり、固形物20を繰り出して使用する際にも、固形物保持体5がぐらつくことなく、安定して固形物20を保持しうるものとなる。
【0028】
また、固形物保持体5には、前記固形物20が収容される前記容器本体2の内部空間と、該容器本体の外部空間との空気の通過が自在とされるような少なくとも1つの第1の空気孔8が形成されていることが好ましい。また、第1の空気孔8のみでは容器本体の外部空間と空気の連通が自在とならない場合には、前記容器本体2における前記第1の空気孔8よりも反開口部側に、少なくとも1つの第2の空気孔9が形成されていることが好ましい。これにより、前記固形物20が収容される前記容器本体2の内部空間と、該容器本体2の外部空間とが、前記第1の空気孔8と前記第2の空気孔9とを介して空気の流通が自在となる。
この結果、流動状態にある内容物を容器本体2に充填する際、空気の逃げ道が確保され、内容物の充填が速やかに行われるとともに内容物中への空気の取り込みが抑制される。
【0029】
また、本実施形態のように、前記固形物保持体5が、前記回転体3の前記軸部3aを螺合して挿通させている保持体柱部5bと、該保持体柱5bの周囲に形成された皿部5cとを有している場合には、該皿部5cは、保持体螺合孔部5dと近接した中央部において前記開口部4から離間するように傾斜したテーパ面5aを有していることが好ましく、該テーパ面5aにおいて前記開口部4から最も離間した部分に、前記第1の空気孔8が形成されていることがさらに好ましい。
このように構成された容器を使用することにより、内容物を前記容器本体2に充填する際、さらに効率良く空気の逃げ道が確保されることとなり、内容物の充填がさらに速やかに行われるとともに内容物中への空気の取り込みがさらに抑制される。
【0030】
蓋体10は、容器本体2の開口部4を密閉し得るように形成されたものであり、本実施形態においては、一方に蓋体開口部が形成された有底の筒状体であって、前記開口部4において容器本体2の外周面と嵌合、または、螺合するように形成されている。
より具体的には、該蓋体10は、前記開口部4に装着させた場合に、前記容器本体2の前記開口部4と接する蓋体側面部10aと、前記容器本体2の前記開口部4と対向する底部10bとを有している。そして、開口部4との接合部では、前記容器本体2の内面と該蓋体10の内面とが面一となるように当接し、角部分が滑らかに湾曲した凹面10cを有して形成されている。言い換えると、前記蓋体10は、前記蓋体側面体10aの内面壁と前記底部10bの内面壁とが境界部において連続した曲面となるように形成されている。固形物20は、後述の如く、該蓋体10を下方に向けた状態で充填され、固化されるため、容器本体2及び該蓋体10の内面に沿った形状となる。従って、蓋体10が上述の如き凹面を有していることにより、充填後に固化された固形物の角部が丸みを帯びたものとなる。また、前記容器本体2の内面と該蓋体10の内面とが面一となるように当接するような構成であれば、固形物の周囲における不要な凹凸の発生を防止しうる。この結果、特にヒトの皮膚に塗布する固形物の場合、使用時に固形物の端部の角が皮膚に当たって痛みを生じさせることなく、前記固形物20が塗布され得るものとなる。
【0031】
また、本発明に係る固形物繰り出し容器1には、図5に示すように、好ましくは、前記連通孔6を封止するための封止材13が備えられうる。該封止材13は、連通孔6を介して内容物が充填された後、該連通孔6を封止するように装着されるものであり、該封止材13によって連通孔6を封止することにより、該連通孔6を介して前記固形物20からの揮発成分の揮発が抑制されることとなる。
本実施形態においては、該封止材13は、回転体3の把持部3b内側に収容され、軸部3aと把持部3bとの境界付近において、該連通孔6を封止するように設けられる。
【0032】
また、前記容器本体2には、開口部4から離間した所定の位置において前記固形物保持体5の移動を規制するためのストッパー11が形成され得る。該ストッパー11により、前記固形物保持体5が開口部4から離間した所定の位置に達した際に必要以上の前記回転体3の回転を防止し、前記保持体5を定位置で固定できる。
【0033】
ここで、固形物保持体5の移動機構について説明する。本実施形態における固形物保持体5は、回転体3が回転することにより該回転体3の軸部3aの軸方向に沿って移動可能とされている。これは、固形物保持体5の容器本体2に対する相対的な周方向の回転が抑制されており、回転体3の回転による力が軸部3aの螺合部を介し、固形物保持体5の移動の力となっていることによる。よって、この場合には、固形物保持体5の容器本体2に対する周方向への相対的な回転が規制されていることが前提となる。固形物保持体5の容器本体2に対する周方向への相対的な回転を規制する具体例としては、本実施形態のように、固形物保持体5の最大外径が、容器本体2の横断面の最小内径より大きいこと、より具体的には、断面形状が楕円形であるような例が挙げられる。
【0034】
前記固形物20としては、特に限定されないが、例えば、固形薬剤、固形化粧料、固形糊などが挙げられる。前記固形物は、例えば、50〜90℃程度の加温時には溶融されて流動可能な状態となり、5〜40℃程度の室温では固形物となるようなものや、溶剤が加えられることによって流動可能な状態となり、該溶剤の揮発後には固形物となるようなものを挙げることができる。
【0035】
前記固形物20の具体例として、好ましくはヒトの皮膚への塗布用薬剤が挙げられる。ヒトの皮膚への塗布用薬剤は揮発性成分を比較的多く含有するため、固化するときの体積収縮の程度が比較的大きく、従来の充填方法では天面中央部が沈むという現象が顕著となる傾向にあり、充填時に溶融された内容物中への空気の取り込みも発生しやすい。このような塗布用薬剤に対して本発明に係る固形物繰り出し容器を適用することにより、これらの問題を有効に防止しうる。
【0036】
なお、前記固形物繰り出し容器1に充填される、溶融された内容物の、空気の取り込みが抑制された場合、その内容物が固化する際の体積収縮がより小さくなる。また、空気の取り込みが抑制された固形物は、繰り出し容器から出し入れしにくい、使用時に崩れやすい、といったことが生じにくくなる。
【0037】
前記固形物繰り出し容器1を構成する各部品の材質としては、特に限定されず、通常用いられるものが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックである。また、その他、必要に応じ用いられる材質として、金属、ガラス、セラミックス、ゴム等が挙げられる。
【0038】
また、前記封止材13の材質についても特に限定されず、通常用いられるものが挙げられる。具体的には、上述のようなプラスチックのほか、ゴム、金属等を挙げることができる。
【0039】
次に、本発明に係る固形物繰り出し容器への固形物の充填方法として、上記実施形態の固形物繰り出し容器1に固形物20を充填する場合について説明する。
【0040】
まず、図1のように、前記開口部4に前記蓋体10を装着して開口部4を密閉し、蓋体10が装着された固形物繰り出し容器1を、該蓋体10を下方にして配置する。
次に、図4に示すように、流動化された所定量の内容物を、前記連通孔6の外側開口部6bから供給し、連通孔6を介して容器本体2の内部空間に充填する。一例として、図4に示すように、流動状態にある内容物を供給するための充填装置(図示せず)から延びた充填ノズル25が使用され、該充填ノズル25を前記連通孔6の任意の位置まで差し込んだ状態で内容物が供給される。
本実施形態の繰り出し容器1は、上述のように、連通孔6の内側開口部6aが前記軸部3aの先端部に形成されているため、流動化された内容物が前記連通孔6の先端部より吐出され、図中、矢印で示されているように、容器の内部空間が下方側(開口部側)から上方側へと満たされる。従って、本実施形態の繰り出し容器1のように、前記内側開口部6aが容器本体2の開口部4に近接するように形成されている場合には、内容物を充填する際の空気の巻き込みが防止され、気泡の少ない固形物20が充填されうる。
【0041】
また、本実施形態の繰り出し容器1は、固形物保持体5に、保持体螺合孔部5dと近接した中央部において前記開口部4から離間するように傾斜したテーパ面5aを有しており、該テーパ面5aにおいて前記開口部4から最も離間した部分に、第1の空気孔8が形成されており、該第1の空気孔8を介して外部空間と空気の流通が可能となっている。従って、該容器の内部空間が、下方側(開口部側)から上方側へと内容物によって満たされた際には、この第1の空気孔8を介して内部にある空気が外部空間へと排出されることとなり、内部に空気を残留させることなく充填作業を速やかに行うことができる。
【0042】
続いて、前記蓋体10を下方に向けた状態のまま、充填された前記固形物20を、前記固形物繰り出し容器1の中で固化させ、固形物とする。
内容物を固化させる際には、内容物の物性に応じ、必要ならば冷却操作又は乾燥操作を行ってもよい。冷却操作を行う場合には、前記固形物20の冷却に伴う急激な体積収縮をできるだけ防ぐため、充填温度から徐々に温度を下げる方法を採用することができる。例えば、充填温度が50℃である場合、充填後、40℃の雰囲気下で30分放置後、さらに30℃の雰囲気下で30分放置、その後、室温で放置、といった方法を採用することができる。
【0043】
充填操作後は、図5に示すように、前記連通孔6を封止材13で封止することが好ましく、これにより、固形物20中に揮発性成分が比較的多量に含有されている場合は、その揮発を防止することができる。前記連通孔6を封止する位置は任意である。
また、冷却操作の前後、又は途中において、前記第2の空気孔9についても、封止材で封止することが好ましい。
【0044】
上記のような方法により、固形物繰り出し容器に前記固形物が充填されてなる一実施形態としての固形物塗布用具30が製造されることとなる。
【0045】
このような固形物の充填方法によれば、内容物を固化させる際、固形物保持体5に形成された第1の空気孔8を介して揮発成分が揮発するため、仮に、体積減少が生じたとしても容器本体2の開口部4側からは認識されず、使用者に対して充填量不足ではないかという疑念を抱かせることもない。また、固形物保持体5との接合部分では、多少なりとも使用できない固形物が残留するのが一般的であるため、仮にその一部が目減りしていたとしても使用者の使用可能量には殆ど影響を与えることがない。
【0046】
また、従来のように容器の開口部から充填する場合には、専用の充填用器具等を使用する場合を除き、容器本体の開口部までしか固形物を充填することができなかったが、本発明によれば、蓋体の内側に凹面を形成しておくことにより、図6に示したような容器本体の開口部から凸状に張り出した固形物を充填することが可能となる。
【0047】
斯かる構成の固形物塗布用具30は、図6に示したように、前記蓋体10が前記開口部4から外されることにより固形物20が露出された状態となり、必要に応じて前記回転体3を容器本体2に対して相対回転させることによって更に固形物20が開口部4から繰り出され、例えば、皮膚等の固体表面に対して固形物20が塗布可能な状態とされ得る。また、使用した後は、必要に応じて前記回転体3が回転されることにより前記固形物20を前記繰り出し容器1の中に収容し、蓋体10を装着することにより、前記固形物20を密閉して保管し得る。
【0048】
尚、本発明に係る繰り出し容器は、上記のような実施形態に限定されるものではない。
例えば、固形物保持体の移動機構としては、固形物保持体と容器本体とが螺接され、固形物保持体が容器本体に対して相対回転自在に設けられており、固形物保持体が容器本体に対して相対回転することにより固形物保持体が移動可能となるものであってもよく、又は、固形物保持体に対し、その移動方向に向けた外部からの応力が直接的又は間接的に作用するように構成されたものであってもよい。
【0049】
また、容器本体2は、本実施形態のように、横断面の形状が楕円形に限定されず、例えば、円形や多角形、卵型、又は、図8(a)に示したようなゆるく屈曲した長円形(いわゆる飯盒型)等であってもよい。
【0050】
また、前記連通孔は、複数の内側開口部を有し、該複数の内側開口部において容器本体の内部空間と連通するものであってもよく、あるいは、固形物保持体が容器本体の内部空間と外部空間との境界をなす場合には、該固形物保持体に形成されたものであってもよい。
【0051】
また、前記実施形態のように容器本体2に第2の空気孔9を設ける代わりに、図7に示したように、前記回転体3の一部に第2の空気穴9を設けてもよい。また、このような場合には、図7に示したように、該第2の空気孔9と前記連通孔6とを近接させ、両者を一の封止材13によって同時に封止しうるように構成することも可能である。
【0052】
また、前記実施形態のように内側開口部6aが回転体3の先端部に形成されている代わりに、図8(b)に示したように、内側開口部6aが、軸部3aの軸方向の中央付近において形成されていてもよい。言い換えると、連通孔6は、その一端が前記回転体3の先端部ではなく、軸部3aの軸方向の中央付近において容器本体2の内部空間と連通するように形成されていることも可能である。この場合、図8(b)に示したように、軸部3aの把持部3b側が中空状となっており、該中空状になっている先端部に前記内側開口部6aが設けられている。中空状になっている部分には、充填された固形物20が入り、この部分の固形物20は塗布されることなく最後まで容器内に残存することになるが、このように中空部分を減らすことにより、用いられることなく残存する固形物の量を減らすことができる。
【0053】
また、前記実施形態の固形物保持体5の周縁部にある付勢部12の代わりに、図8(b)に示したように、固形物保持体5の皿部5cから反開口部側へ向かって屈曲している屈曲体と、該屈曲体から前記開口部4側へ向かって突出している突出片とを備えている付勢部12を設けてもよい。該付勢部12は前述したように、容器本体2の内壁に対して、その弾性により押圧付勢しうるように形成されている。このように形成された固形物保持体5は、容器本体2の横断面の内径が反開口部側から開口部4側にかけて広がる場合であっても、その材質の弾性により、開口部4付近においても容器本体2の内壁と隙間なく接触し得るものとなり、固形物20を繰り出して使用する際にもぐらつくことなく、安定して固形物20を保持しうるものとなる。
図8(b)に示したように、このような付勢部12を有する固形物保持体5とし、かつ、固形物保持体5の皿部5cを開口部4と平行とすることにより、塗布されることなく残存する固形物20を減少させることができる。つまり開口部4から露出され得ない固形物20の量を減らすことができる。
【0054】
また、流動化された内容物が固形物保持体5の皿部5cを超えて反開口部側まで充填され固化された後に、固形物20が塗布され固形物保持体5が開口部4付近にある場合であっても、固形物20が脱落しにくいように、固形物保持体5に第1の空気孔8が形成されていてもよい。図8(b)、図9(a)に示したように、第1の空気孔8を、前記固形物20の脱落を防止するため、固形物20が第1の空気孔8の部位で抵抗を受けて引っかかるように形成することにより、皿部5cの第1の空気孔8において固形物20が固定され、固形物保持体5から固形物20が脱落しにくくなる。
【0055】
さらに、固形物保持体5の付勢部12の一部に第1の空気孔8aを設けることもできる。該第1の空気孔8aにより、流動状態にある内容物を容器本体2に充填する際、前記付勢部の凹部に滞留する空気の逃げ道が確保される。
【0056】
また、図9(b)に示したように、回転体3の一部に第2の空気穴9を設けることもできる。該回転体3を用いた繰り出し容器の場合、図8(b)に示したように、第2の空気孔9と前記連通孔6とが近接しているため、両者を一の封止材13によって同時に封止しうるように構成することも可能である。この封止材13は回転体3のできるだけ反開口部側で連通孔6を封止するように備えられ得る。斯かる構成によれば、回転体3の反開口部側に生じる窪みを小さくすることができる。
【0057】
また、図9(a)に示したように複数の第1の空気孔8を固形物保持体5の一部に設け、かつ、図9(b)に示したように、複数の第2の空気穴9を回転体3の一部に設けることもできる。これらの空気孔は、回転し得る回転体3がどの回転位置にあるときであっても、前記第1の空気孔8と前記第2の空気穴9とが通じ、容器本体の内部空間と外部空間とが常に通じているように形成されているものである。斯かる構成によれば、充填を行う際、回転体3を回転させ、固形物保持体5を最も反開口部側まで移動させた状態において、回転体3は任意の回転位置であればよいこととなる。
【0058】
本発明に係る繰り出し容器を構成する各部材は、一体成形品であっても、複数の部品を一体化させたものであってもよく、または、成形された後に加工することにより作製されたものであってもよく、必要に応じて、その他の部品も備えたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る固形物繰り出し容器の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】(a)本発明に係る固形物繰り出し容器の一実施形態を示す平面図、(b)同底面図。
【図3】(a)一実施形態の固形物繰り出し容器における固形物保持体の縦断面図、(b)同平面図。
【図4】一実施形態の固形物繰り出し容器への内容物の充填状態を示す縦断面図。
【図5】一実施形態の固形物繰り出し容器に固形物が充填されてなる固形物塗布用具の一実施形態を示す縦断面図。
【図6】一実施形態の固形物塗布用具の使用状態を示す縦断面図。
【図7】本発明に係る固形物繰り出し容器の他の実施形態を示す縦断面図。
【図8】(a)本発明に係る固形物繰り出し容器の他の実施形態を示す平面図、(b)同縦断面図。
【図9】(a)本発明に係る固形物繰り出し容器の他の実施形態における固形物保持体の平面図、(b)本発明に係る固形物繰り出し容器の他の実施形態における回転体の平面図。
【符号の説明】
【0060】
1・・・固形物繰り出し容器
2・・・容器本体
3・・・回転体
3a・・・軸部
3b・・・把持部
4・・・開口部
5・・・固形物保持体
6・・・連通孔
8・・・第1の空気孔
9・・・第2の空気孔
10・・・蓋体
13・・・封止材
20・・・固形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部(4)が形成された筒状の容器本体(2)と、該開口部(4)を密閉可能な蓋体(10)と、該容器本体(2)の内部空間に収容される固形物(20)を保持する固形物保持体(5)と、収容される固形物(20)を前記開口部(4)より出没させるべく該固形物保持体(5)を容器本体(2)に対して相対移動させうる移動機構とを備えた固形物繰り出し容器であって、
前記移動機構又は前記固形物保持体(5)の少なくとも何れか一方には、前記容器本体(2)の内部空間と該容器本体(2)の外部空間とを連通する連通孔(6)が形成されていることを特徴とする固形物繰り出し容器。
【請求項2】
前記移動機構が、軸心周りに回転可能な回転体(3)を備え、該回転体(3)の回転によって前記固形物保持体(5)が前記容器本体(2)に対して相対移動するように構成されている請求項1に記載の固形物繰り出し容器。
【請求項3】
前記回転体(3)が、前記固形物保持体(5)を貫通して前記開口部(4)に向けて突設される軸部(3a)を有しており、前記連通孔(6)の一端が、少なくとも該軸部(3a)の先端において前記内部空間と連通している請求項2に記載の固形物繰り出し容器。
【請求項4】
前記固形物保持体(5)には、前記連通孔(6)とは連通しない第1の空気孔(8)が形成されており、該第1の空気孔(8)を介して、前記容器本体(2)の内部空間と外部空間との空気の流通が可能となるように構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の固形物繰り出し容器。
【請求項5】
前記固形物保持体(5)が、中央部において前記開口部(4)から離間するように傾斜したテーパ面(5a)を有しており、該テーパ面(5a)の中央部には前記第1の空気孔(8)が形成されている請求項4に記載の固形物繰り出し容器。
【請求項6】
前記蓋体(10)が、前記開口部(4)において前記容器本体(2)内面と面一となるように当接し、該蓋体(10)の内側が角部分が滑らかに湾曲した凹面形状に形成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の固形物繰り出し容器。
【請求項7】
一端に開口部(4)が形成された筒状の容器本体(2)と、該開口部(4)を密閉可能な蓋体(10)と、該容器本体(2)の内部空間に収容される固形物(20)を保持する固形物保持体(5)と、収容される固形物(20)を前記開口部(4)より出没させるべく該固形物保持体(5)を前記容器本体(2)に対して相対移動させうる移動機構とを備えた固形物繰り出し容器への前記固形物(20)の充填方法であって、
前記開口部(4)に前記蓋体(10)を装着した状態で、前記移動機構又は前記固形物保持体(5)の少なくとも何れか一方に形成した連通孔(6)を通して、流動化された内容物を前記容器本体(2)の内部空間に充填し、充填された前記内容物を固化させて前記固形物(20)とすることを特徴とする固形物繰り出し容器への固形物の充填方法。
【請求項8】
一端に開口部(4)が形成された筒状の容器本体(2)と、該開口部(4)を密閉可能な蓋体(10)と、該容器本体(2)の内部空間に収容された固形物(20)と、該固形物(20)を保持する固形物保持体(5)と、前記開口部(4)より前記固形物(20)を出没可能とするべく該固形物保持体(5)を前記容器本体に対して相対移動させる移動機構とを備えた固形物塗布用具であって、
前記開口部(4)に前記蓋体(10)を装着した状態で、前記移動機構又は前記固形物保持体(5)の少なくとも何れか一方に形成された連通孔(6)を通して、流動化された内容物が前記容器本体(2)の内部空間に充填され、充填された前記内容物が固化されて前記固形物(20)とされたことを特徴とする固形物塗布用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−230676(P2008−230676A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74604(P2007−74604)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(507092713)シグマ化成有限会社 (1)
【Fターム(参考)】