説明

固形石鹸を充填可能な泡立て具及び泡立て機能を備えた石鹸

【課題】安易に泡立てが可能で、携帯に便利で、更に小さくなっても使用感が悪くならない固形石鹸と泡立て具を提供する。
【解決手段】スティック状の固形石鹸103が収納可能なスリーブ101とスピンドル駆動部102を設け、スピンドル駆動部102には固形石鹸103を繰り出す際に回転させるツイストグリップ102aと、スライダ104を繰り出す為のらせん状のねじ切りを備えた充填部材繰り出し部102bと、充填部材繰り出し部102bの先端にガイドバー105を設け、そのガイドバー105にスポンジでできた吸水部106をそれぞれ設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形石鹸を充填可能な泡立て具及びその充填物並びに泡立て機能を備えた石鹸に関する。更に詳しくは固形石鹸と、固形石鹸を充填可能な泡立て具とを一体化して泡だて機構とし、少ない動作で泡を作ることが出来ることとした洗顔用の石鹸並びに泡立て具に関する。また固形石鹸の保管や携帯の方法に関連を有する。
【背景技術】
【0002】
従来から手や顔、体を洗う為の固形石鹸が使用されている。この固形石鹸は両手に固形石鹸を挟み、水をかけて湿り気を与え、両手をこすり合わせて石鹸表面の一部を溶かし、石鹸を石鹸入れに戻して、更に両手をこすり合わせて泡を立て、その泡で各所を洗っていた。
【0003】
最近では極め細やかな泡を作ることが可能な固形石鹸が登場し、主に洗顔に使用されている。この石鹸の泡立て方は、両手に固形石鹸を挟み、水をかけて湿り気を与え、両手をこすり合わせて石鹸表面の一部を溶かし、石鹸を石鹸入れに戻した後、片手の手のひらに、もう片方の手でくみ上げた少量の水を加えながら、水を加えた手の先でもう片方の手のひらをマッサージするように回転させ、更に水を加えて回転させる動作を数回繰り返して、ボリュームのある極め細やかな泡を作って洗顔するという方法で、近年大きく普及している。
【0004】
一方石鹸を泡立てる為の泡立て具も、繊維を二重に重ねて空気の層を作るもの、スポンジに石鹸をしみこませてスポンジをこすって泡立てるもの、ネットに石鹸を入れてそれをこすり合わせて泡立てるものなどが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手で石鹸を練り上げて泡立てる方法も、泡立て具を使用する方法も、複数の動作を必要とし、煩雑で有るばかりか、加える水分量の調整や石鹸の溶かし加減などにムラがでることも多い。少ない動作で泡立てができて、しかも誰が使用しても極め細やかな泡を作ることが出来る泡立て具の考案が大きな課題となってくる。
【0006】
また、網に固形石鹸を入れて網ごと手でこすり合わせて泡立てる方法など、泡立て具を使用する場合の問題点として、使用後の固形石鹸の置き場所が問題となる。濡れた固形石鹸を置くための石鹸置きは広く普及しているものの、洗面所に設置スペースを必要とし、濡れた固形石鹸から溶けた成分が洗面所を汚す可能性や、石鹸自体が変形する可能性などもあった。
【0007】
また一度使用した固形石鹸や、網に入れて使用した固形石鹸などでは、それを携帯して外部で使用することは極めて困難だった。このため外出先では固形石鹸よりも容器に入った液体石鹸などが利用されている。例えば液体では作ることが困難な優れた特性を持つ固形石鹸を開発しても、その使用や携帯の不便さから敬遠されがちだった。
【0008】
一方で固形石鹸は使用するごとに形が全体的に小さくなる為、徐々に使用感が悪くなり、大きさが半分以下になると溶け出す石鹸の量も小さくなり、両手で石鹸をこすり合わせる時間も徐々に長くなっていく。使用を重ねても石鹸の表面積が変化せず、使用感も変わらない固形石鹸の開発が出来れば極めて有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[構成1]本発明は、前記課題を解決する為に、まず、スティック状の固形石鹸を充填可能に構成された泡立て具であって、前記泡立て具には少なくとも、内部で前記固形石鹸を移動可能に収納できるスリーブと、前記固形石鹸を前記スリーブの先端開口から押出可能に構成された押出機構を備え、更に前記押出機構には、前記固形石鹸を固定し前記固定石鹸と一体的に移動可能に構成されたスライダを備えたことを特徴とした。
【0010】
スティック状の固形石鹸とは、口紅やリップクリーム、スティック糊などの充填部材と同様の形状をなす固形石鹸で、一般的に円柱状、円筒状、四角柱状などの形を持つ棒状充填部材を指し、スリーブからスムーズに当該充填部材を押し出すことが可能な形状を特徴とする。ここでスリーブとは、中に収納した固形石鹸が先端開口に向かって移動可能に構成された筒状のケースを指し、内側がスティック状固形石鹸の外形と近似の形状をしたものをいう。押出機構とは、一般的にリップクリームなどをケースから押出する機構全般から非限定的に選んだ一つの機構を表し、具体的にはスピンドル駆動などの棒状充填部材繰り出し部と、それを収納するケース部と、繰り出しを操作するツイストグリップなどの操作部、ケース内に設けられた凸型のリードと棒状充填部材に設けられた凹型のスプライ溝からなる棒状充填部材の回転を止める為の回転防止機構、などから構成され、スリーブに収納された固形石鹸を繰り出し押出することが可能に構成された機構をいう。またここでスライダとは固形石鹸を把持することが可能で、充填部材の繰り出しに応じて固形石鹸と一体にスリーブの先端開口に向けて繰り出される部分をいう。スリーブの先端開口にはキャップをつけることが可能で、携帯時に液漏れを防止することができて便利である。
【0011】
[構成2]構成1に記載の泡立て具であって、前記スリーブ又は前記押出機構には更に攪拌部を備えたことを特徴とした。
【0012】
ここでいう攪拌部とはスリーブの先端開口廻りや、繰り出し部に備えたガイドバー、ツイストグリップの下部など本発明にかかる泡立て具全体の中から選択される一部分に、溶けた石鹸と空気を攪拌して泡を立てやすくすることが可能なブラシ、毛筆、スポンジ、網などを固定したものをいう。特にスリーブの先端開口周りにこの攪拌部を設けると、スリーブの先端開口から押出した固形石鹸と攪拌部と手のひらが互いに接し、スピーディーかつ極め細やかな泡を作ることが出来る。また、スリーブの先端開口を覆うように泡立て用ネットなどを石鹸の先端部に設けることも可能である。
【0013】
[構成3]構成1又は構成2のいずれかに記載の泡立て具であって、前記スリーブ又は前記押出機構には更に水を蓄えることが可能な吸水部を備えたことを特徴とした。
【0014】
吸水部とは、スポンジや布地など、石鹸の泡を立てる際に水を含ませることが可能な素材を固定した部分をいう。前記攪拌部との違いは、攪拌部はその用途が主に極め細やかな泡を作ることに有るのに対し、吸水部の用途は水分を把持することにある点である。吸水部に使うスポンジなどの素材のサイズを適量制御すると石鹸の泡立ての際に使用する水分の量を予めコントロールすることができる。吸水部も充填される固形石鹸に触れるよう配置するとより効果的である。
【0015】
[構成4]構成1乃至構成3のいずれかに記載の泡立て具に充填可能なスティック状の固形石鹸であって、そのスティック形状の中心線に同心をとった空洞部が設けられていることを特徴とした。
【0016】
スティック形状の中心線とは、前記固形石鹸が前記スリーブの先端開口に向かって繰り出される方向と平行な方向をこの場合縦方向と規定すると、縦方向に対して垂直に切断した断面の中心点を通過する縦方向の仮想線を現す。この場合スティック状の固形石鹸は筒状の空洞を有する形状となる。前記固形石鹸は本発明を構成する泡立て具に充填されて使用されるが、使用により充填物が減った場合、詰め替え可能にすると便利である。
【0017】
[構成5]構成1乃至構成3のいずれかに記載の泡立て具に充填可能なスティック状の固形石鹸であって、前記固形石鹸には更に前記スライダを備えたことを特徴とした。
【0018】
詰め替え用の前記固定石鹸を実用化する場合、詰め替え作業が楽である必要があるが、本発明を構成する泡立て具に備えるスライダを、予め前記固定石鹸に固定しておけば、詰め替え作業が楽になり便利である。
【0019】
[構成6]構成1に記載の泡立て具であって、前記押出機構には更に構成4に記載の固形石鹸に備えられた前記空洞部に挿入可能なガイドバーを有し、前記ガイドバーには少なくとも前記吸水部又は前記攪拌部から選択される一方又は双方を備えたことを特徴とした。
【0020】
ここでガイドバーとは押出機構の棒状充填部材繰り出し部などの先端に設けられ、固形石鹸に設けられた空洞部に挿入して詰め替え作業を簡便化するための導入棒をいう。このガイドバーの先端にスポンジなどの吸水素材を固定しておけば、手のひらと石鹸とスポンジを合わせてこすることが可能である。
【0021】
[構成7]泡立て機構を備えた石鹸であって、構成1乃至構成3又は構成6のいずれかに記載の泡立て具に、構成4又は構成6の固形石鹸を充填してなることを特徴とした
【発明の効果】
【0022】
片手に泡立て具を持ってもう片方の手のひらと擦りあわせ、簡単に石鹸の泡立てが可能であり、誰でも一定の石鹸量で一定の水分量の極め細やかな泡を作ることが出来る。また、携帯に便利でかつ保管時の液ダレを防止し、更に石鹸が小さくなっても同じ面積で石鹸を使用できるなど固形石鹸の利便性を高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を示す図面に基づいて詳述する。ここで示す実施の形態は非限定例示であり、ここに示した構成のほか、全ての機能やサイズ、材質、形状、配置は本発明の範囲において任意に組み合わせ可能であり、その構成に限定されない。
【0024】
図1は本発明の構成例を示す断面図である。本構成例ではスティック状の固形石鹸103が収納可能なスリーブ101とスピンドル駆動部102を備え、スピンドル駆動部102には固形石鹸103を繰り出す際につまんで回転させるツイストグリップ102aと、スライダ104を繰り出す為のらせん状のねじ切りを備えた充填部材繰り出し部102bとを設けた。充填部材繰り出し部102bの先端には、充填部材繰り出し部102bに延長して設けられたゴム製のガイドバー105を備え、そのガイドバー105にスポンジでできた吸水部106を設けた。
【0025】
固形石鹸103は予めスライダ104に固定されており、スライダ104の内側に切られているらせん状の溝が、充填部材繰り出し部102bの外側に設けられたらせん状のねじ切りの回転によって、スリーブの先端開口に向かって上下する。
【0026】
スライダ104と固形石鹸103の固定は、ここでは単にスライダ104のハウジングに固形石鹸103を挿入して構成しているが、脱落を防止するツメや溝を備えることも可能である。
【実施例1】
【0027】
図2は、本発明の構成例の一部分に使用されるスピンドル駆動部の一例を、斜め上方からみた際の斜視図である。本構成ではツイストグリップ201と一体的に成型された充填部材繰り出し部202の先端にゴムで出来たガイドバー203を設け、ガイドバー203に絹の繊維を束ね固定して作ったブラシ状の攪拌部204を設けた攪拌部204は石鹸と水分を浸した手のひらに擦ると極め細やかな泡を生じる。
【実施例2】
【0028】
図3は本発明の構成例である空洞部を備えたスティック状の固形石鹸の一例を示す斜視図である。本構成例では、まず固形石鹸301と、固形石鹸301を固定するスライダ302を設け、更に固形石鹸301には空洞部303とスプライ溝304を設けた空洞部303はガイドバー(図2:203)に挿入することにより、空洞部303の先端から攪拌部(図2:204)を露出させることが可能である。
【実施例3】
【0029】
図4は本発明の構成例の一態様を示す斜視図の一部分である。本構成例ではスリーブ401の先端開口に攪拌部404を設け、また固形石鹸402に設けられた空洞部405からは吸水部403が露出している。吸水部403は固形石鹸402とは固定されておらず、スピンドル駆動部(図1:102)に設けられている。本構成例によると、吸水部403に吸われた水が、手のひらに擦り合わせることにより固形石鹸402の表面に広がり、適度な水分と石鹸成分が手のひらに付着する。その手のひらに付着した石鹸成分を攪拌部404がかき回して泡立てることにより、極め細やかな泡を作ることが可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は優れた固形石鹸を開発した際に、泡立てや保管や携帯の不便さの為に、利用が敬遠されることなく、その固形石鹸を普及させる為の技術の一環として利用される他、新しい洗顔の方法や携帯の方法を提案することにより、それに対応した固形石鹸の新しい内容成分の開発に貢献が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の構成例の一部分に使用されるスピンドル駆動部の一例を、斜め上方からみた際の斜視図である。
【図3】本発明の構成例である空洞部を備えたスティック状の固形石鹸の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の構成例の一態様を示す斜視図の一部分である。
【符号の説明】
【0032】
101 スリーブ
102 スピンドル駆動部
102a ツイストグリップ
102b 充填部材繰り出し部
103 固形石鹸
104 スライダ
105 ガイドバー
106 吸水部
204 攪拌部
303 空洞部
304 スプライ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スティック状の固形石鹸を充填可能に構成された泡立て具であって、前記泡立て具には少なくとも、内部で前記固形石鹸を移動可能に収納できるスリーブと、前記固形石鹸を前記スリーブの先端開口から押出可能に構成された押出機構を備え、更に前記押出機構には、前記固形石鹸を固定し前記固定石鹸と一体的に移動可能に構成されたスライダを備えたことを特徴とした泡立て具。
【請求項2】
請求項1に記載の泡立て具であって、前記スリーブ又は前記押出機構には、更に攪拌部を備えたことを特徴とした泡立て具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の泡立て具であって、前記スリーブ又は前記押出機構には更に水を蓄えることが可能な吸水部を備えたことを特徴とした泡立て具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の泡立て具に充填可能なスティック状の固形石鹸であって、そのスティック形状の中心線に同心をとった空洞部が設けられていることを特徴とした固形石鹸。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の泡立て具に充填可能なスティック状の固形石鹸であって、前記固形石鹸には更に前記スライダを備えたことを特徴とした固形石鹸。
【請求項6】
請求項1に記載の泡立て具であって、前記押出機構には更に請求項4に記載の固形石鹸に備えられた前記空洞部に挿入可能なガイドバーを有し、前記ガイドバーには少なくとも前記吸水部又は前記攪拌部から選択される一方又は双方を備えたことを特徴とした泡立て具。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3又は請求項6のいずれかに記載の泡立て具に、請求項4又は請求項6の固形石鹸を充填してなる、泡立て機構を備えた石鹸

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−239338(P2006−239338A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95987(P2005−95987)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(595135372)
【Fターム(参考)】