説明

固形糊繰出用容器

【課題】固形糊の詰替作業時に、詰替用固形糊が収容されているカートリッジケースを、固形糊繰出用容器における本体筒に強く押し当てて、固形糊が潰れてしまうような支障を来たすことがないようにするとともに、固形糊の本体筒内への収容時に、固形糊とスライダーとの離脱を防止することができるようにする。
【解決手段】本体筒2内を昇降させるようにしたスライダー6に装着させた固形糊4の前端部4aを、本体筒2より出没自在とするための固形糊繰出用容器1において、固形糊4の後端部を糊受部材9に保持させるとともに、この糊受部材9を、第1係着手段をもって、着脱可能にスライダー6に係着させることにより、固形糊4をスライダー6に間接的に装着させ、かつ固形糊4の本体筒2内への収容時におけるねじ杆5の回動により、第2係着手段をもって、糊受部材9とスライダー6とを係着させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形糊の詰替えを容易にした固形糊繰出用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
固形糊繰出用容器は、一般に本体筒の一端に装着された尾栓の回動により、尾栓と一体に形成されたねじ杆を本体筒内で回動させることによって、このねじ杆との螺合と、本体筒の内周面に軸線方向に設けた案内突条に係合する係合溝による案内とによって、本体筒内を昇降させるスライダーを備え、このスライダーに柱状の固形糊を装着させて、本体筒より固形糊の前端部を出没自在とさせるようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
また、消耗した固形糊を詰替える場合、固形糊を保持していたスライダーをねじ杆から取外した後、他のスライダーに保持されている詰替用固形糊を収容したカートリッジケースの後端開口を、本体筒の前端開口に外嵌し、スライダーの軸線位置に設けてある螺溝と、ねじ杆とを螺合させ、尾栓の回動により、スライダーに保持されている詰替用固形糊を、本体筒内に収容するようにしている。
【0004】
しかし、特許文献1のものでは、詰替作業時に、詰替用固定糊を保持しているスライダーとねじ杆とが、螺合しうる位置にあるかどうかは、必ずしも明確ではない。
そのため、カートリッジケースを本体筒に強く押し当てると、詰替用固形糊が押し潰されてしまう場合があり、詰替えた固形糊の円滑な使用に支障を来たすとともに、その程度が大きいときには、使用不能になる虞がある。
また、頻繁な固形糊の昇降により、本体筒の内周面に、固形糊の屑がこびり付き易いため、特に、収容時における固形糊の下降動作に対する負荷が大きくなり、固形糊がスライダーから千切れて、固形糊とスライダーとが離脱し易いという問題があった。
【特許文献1】特開2003−231572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の技術の有する上記の問題点に鑑み、固形糊の詰替作業時に、詰替用固形糊が収容されているカートリッジケースを、固形糊繰出用容器における本体筒に強く押し当てて、固形糊が潰れてしまうような支障を来たすことがないようにするとともに、固形糊の本体筒内への収容時に、固形糊とスライダーとの離脱を防止することができるようにした固形糊繰出用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1) 本体筒の一端に装着された尾栓の回動により、尾栓と一体に形成されたねじ杆を本体筒内で回動させることによって、このねじ杆との螺合と、本体筒の内周面に軸線方向に設けた案内突条に係合する係合溝による案内とによって、本体筒内を昇降させるスライダーを備え、このスライダーに柱状の固形糊を装着させて、本体筒より固形糊の前端部を出没自在とするための固形糊繰出用容器において、固形糊の後端部を糊受部材に保持させるとともに、この糊受部材を、第1係着手段をもって、着脱可能に前記スライダーに係着させることにより、固形糊をスライダーに間接的に装着させ、かつ固形糊の本体筒内への収容時におけるねじ杆の回動により、第2係着手段をもって、糊受部材とスライダーとを係着させるようにする。
【0007】
(2) 上記(1)項において、第1係着手段を、糊受部材とスライダーの両者のうち、一方に係止爪を、他方に係合部を設け、これらの係止爪と係合部の少なくとも一方を弾性変形可能とし、この弾性変形を利用して係止爪を係合部に係止させるように構成するとともに、第2係着手段を、糊受部材とスライダーの両者のうち、一方に切欠部を、他方に係止部を設け、固形糊の本体筒内への収容時における案内突条と係合溝との間の遊びによるスライダーの糊受部材に対する相対的な回動により、切欠部を係止部に係止させるようにする。
【0008】
(3) 上記(1)項または(2)項において、第1係着手段をもって糊受部材をスライダーに係着させる際に、スライダーに対する糊受部材の回転位置を定めるための回転位置決め手段として、糊受部材とスライダーとの対向面に、その一方に角柱状嵌合部、他方に角筒状被嵌合部を、これらの嵌合時に、外部から視認しうるようにして設け、かつ嵌合によって、位置決めをなしうるようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
【0010】
請求項1記載の発明によると、固形糊の後端部を糊受部材に保持させるとともに、この糊受部材を、第1係着手段をもって、着脱可能に前記スライダーに係着させることにより、固形糊をスライダーに間接的に装着させてあるため、スライダーを交換することなく、このスライダーに、予め詰替用固形糊を保持させた糊受部材を着脱可能に係着させて、固形糊の詰替作業を行うことができ、従来の詰替作業におけるように、詰替用固形糊を保持されたスライダーを、ねじ杆に螺合させるという面倒な作業が不要であり、詰替用固形糊が収容されているカートリッジケースを、固形糊繰出用容器における本体筒に強く押し当てて、固形糊が潰れてしまうような虞がない。
また、固形糊の本体筒内への収容時におけるねじ杆の回動により、第2係着手段をもって、糊受部材とスライダーとを係着させるようにしてあるため、頻繁な固形糊の昇降により、本体筒の内周面に固形糊の屑がこびり付いて、収容時における固形糊の下降動作に対する負荷が大きくなっても、糊受部材とスライダーとの離脱を防止することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、第1係着手段を、糊受部材とスライダーの両者のうち、一方に係止爪を、他方に係合部を設け、これらの係止爪と係合部の少なくとも一方を弾性変形可能とし、この弾性変形を利用して係止爪を係合部に係止させるように構成してあるため、係止爪が係合部に弾性変形により係止されるため、スライダーと糊受部材の係止が確実になされるとともに、詰替固形糊を保持した糊受部材が、スライダーに係着されたかどうか、視覚的のみならず、係止爪が係合部に弾性変形により係止されるときに発生する弾き音により、聴覚的にも明確に知ることができる。
また、第2係着手段を、糊受部材とスライダーの両者のうち、一方に切欠部を、他方に係止部を設け、固形糊の本体筒内への収容時における案内突条と係合溝との間の遊びによるスライダーの糊受部材に対する相対的な回動により、切欠部を係止部に係止させるようにしてあるため、収容時における固形糊の下降動作に対する負荷が大きくなっても、糊受部材とスライダーとの離脱を防止することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によると、糊受部材をスライダーに係着させる際に、スライダーに対する糊受部材の位置決め手段として、糊受部材とスライダーとの対向面に、その一方に角柱状嵌合部、他方に角筒状被嵌合部を、これらの嵌合時に、外部から視認しうるように設け、嵌合によって位置決めをなしうるようにしてあるため、スライダーに対する糊受部材の位置を容易に視認することができ、詰替作業を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における固形糊繰出用容器に、固形糊を収容したものを一部破断して示す中央縦断側面図、図2は、詰替用固形糊を収容したカートリッジケースを、一部破断して示す中央縦断側面図、図3は、固形糊の詰替作業を行う際の分解斜視図、図4は、詰替作業を説明するための要部拡大斜視図、図5は、詰替作業を説明するための要部拡大縦断側面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の固形糊繰出用容器1は、公知の固形糊繰出用容器と同様に、本体筒2の一端に装着された尾栓3の回動により、柱状の固形糊4の前端部4aを、本体筒2の前端開口2aから出没自在としうるようになっている。
【0015】
尾栓3と一体にねじ杆5が形成され、このねじ杆5にスライダー6を螺合させるとともに、図4に示すように、このスライダー6の外周面に軸線方向に設けた係合溝7と、本体筒2の内周面に軸線方向に設けた案内突条8との係合による案内によって、スライダー6が、尾栓3における時計回り方向(図1実線矢印参照)または反時計回り方向(図1点線矢印参照)の回動に伴って、本体筒2内を昇降するようになっている。
【0016】
スライダー6には、固形糊4を保持した糊受部材9が、着脱自在に係着されており、尾栓3を時計回り方向(図1実線矢印参照)に回動させることにより、スライダー6および糊受部材9を共に昇降させて、固形糊4の前端部4aを本体筒2の前端開口2aから出没させるようになっている。
【0017】
糊受部材9の外周面には、スライダー6の外周面に軸線方向に設けた係合溝7と同様に、本体筒2の内周面に軸線方向に設けた案内突条8と係合する係合溝9aが設けられている。
【0018】
図4、図5に示すように、スライダー6は、後面周縁に縁枠10が設けられたスライダー基台11と、このスライダー基台11の中央の軸線方向に前方に突出させて設けられたスライダー筒体12とにより構成されている。
【0019】
スライダー筒体12は、後部の内周面に、ねじ杆5との螺合部13を有し、かつ、前部に、筒孔14aが平面視正方形を有する角筒状被嵌合部14が形成されている。
【0020】
スライダー基台11には、角筒状被嵌合部14の下端外周に、係合部としての4個の係合孔15が、等間隔で穿設されている。
【0021】
一方、糊受部材9は、円板状の糊受基台16の中央に、前後に突出させて設けられた軸線方向の糊受筒体17と、糊受基台16の後面に、直径方向に対峙させて後方に向けて突設された2個の係止片18とにより形成されている。
糊受筒体17の前部の筒外周面には、固形糊4を保持するための鍔状保持部19が設けられ、糊受筒体17の後部は、突状嵌合部としての角柱状嵌合部20が形成されている。
【0022】
係止片18は、糊受筒体17の径方向に弾性変形可能となっており、その後端部には、外向きの係止爪18aが設けられ、角筒状被嵌合部14の下端外周に穿設した4個の係合孔15のうち、対応する2個の係合孔15に係止しうるようにした第1系着手段を構成している。
【0023】
各係止片18の後端部における係止爪18aの近傍には、図4に示すように、切欠部24が形成されている。この切欠部24は、固形糊4の本体筒2内への収容時に、尾栓3を反時計回り方向(図1点線矢印参照)に回動させ、案内突条8と係合溝10の間の遊びを利用して、スライダー6を糊受部材9に対して相対的に回動させることにより、係合孔15の内周端縁15aを係止部として、係止しうるようにした第2係着手段を構成している。
【0024】
図2に示すように、カートリッジケース21内に収容された詰替用の固形糊4は、糊受部材9に保持されている。
【0025】
次に、固形糊4を詰め替える際の作業について説明する。
まず、図4に示すように、本体筒2のキャップ(図1参照)22を取り外し、尾栓3を時計回り方向(図1実線矢印参照)に回動させて、スライダー6を、本体筒2の前端開口2aより一部突出させる。
【0026】
次いで、図2に示すように、詰替用の固形糊4が収容されているカートリッジケース21のキャップ23を取り外し、カートリッジケース21を逆さにして、図4に示すように、糊受部材9をスライダー6に近づけ、糊受部材9における角柱状嵌合部20を、スライダー6のスライダー筒体12における角筒状被嵌合部14の筒孔14a内に嵌合させる。
【0027】
角柱状嵌合部20と角筒状被嵌合部14とは、外部から視認しうるようになっているため、角柱状嵌合部20を角筒状被嵌合部14内に容易に嵌合させることができ、かつこの嵌合によって、スライダー6に対する糊受部材9の適正な位置が自動的に調整される。
【0028】
更に、カートリッジケース21を後方に向けて押して、糊受部材9を押し込むことにより、糊受部材8における係止片18の係止爪18aが、スライダー6おける係合孔15の内周縁に当接し、係止片18は、内方に向けて弾性変形する。
【0029】
更に、糊受部材9を押し込み、スライダー6に対して相対的に後方に向けて移動させることにより、図5に示すように、係止片18の係止爪18aが、スライダー基台11におけるスライダー筒体12の係合孔15に係止される。この係止により、固形糊4が、糊受部材9を介して、間接的にスライダー6に装着される。
【0030】
次いで、詰替用の固形糊4が保持されている糊受部材9を、スライダー6と共に本体筒2内に引き込ませるために、尾栓3を反時計回り方向(図1点線矢印参照)に回動させると、スライダー6は、案内突条8と係合溝10の間の遊びにより、糊受部材9に対して相対的に回動し、切欠部24に、係合孔15の内周端縁15aが係止される。この状態で、さらに尾栓3を反時計回り方向に回動させると、糊受部材9は、スライダー6と係止したまま、本体筒2内に引き込まれ、詰替用の固形糊4の詰替作業が終了する。
【0031】
詰替えた固形糊4が消耗して、新しい詰替用の固形糊4を詰め替える際には、尾線3を時計回り方向(図1実線矢印参照)に回動させると、スライダー6が、案内突条8と係合溝10の間の遊びによる糊受部材9に対して相対的に回動し、切欠部24と係合孔15の内周端縁15aとの係止状態が解除される。この状態で、さらに尾栓3を反時計回り方向に回動させ、糊受部材9をスライダー6と共に押し上げて、本体筒2の前端開口2aから突出させた後、糊受部材9における係止片18を、外側から内側に向けて押し込むように弾性変形させる。
これにより、係止片18の係止爪18aと、スライダー基台11におけるスライダー筒体12の係合孔15との係止状態は解除され、糊受部材9がスライダー6から取外し可能となり、この糊受部材9の取り外しと共に、消耗した固形糊4の取り外しが行われる。
なお、取出し後の消耗した固形糊4は、糊受部材9と共に、あるいは糊受部材9と分離して廃棄処分すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態における固形糊繰出用容器に、固形糊を収容したものを一部破断して示す中央縦断側面図である。
【図2】詰替用固形糊を収容したカートリッジケースを、一部破断して示す中央縦断側面図である。
【図3】固形糊の詰替作業を行う際の分解斜視図である。
【図4】詰替作業を説明するための要部拡大斜視図である。
【図5】詰替作業を説明するための要部拡大縦断側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 固形糊繰出用容器
2 本体筒
2a 前端開口
3 尾栓
4 固形糊
4a 前端部
5 ねじ杆
6 スライダー
7 係合溝
8 案内突条
9 糊受部材
9a 係合溝
10 縁枠
11 スライダー基台
12 スライダー筒体
13 螺合部
14 角筒状被嵌合部
14a 筒孔
15 係合孔(係合部)
15a 内周端縁(係止部)
16 糊受基台
17 糊受筒体
18 係止片
18a 係止爪
19 鍔状保持部
20 角柱状嵌合部
21 カートリッジケース
22 キャップ
23 キャップ
24 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筒の一端に装着された尾栓の回動により、尾栓と一体に形成されたねじ杆を本体筒内で回動させることによって、このねじ杆との螺合と、本体筒の内周面に軸線方向に設けた案内突条に係合する係合溝による案内とによって、本体筒内を昇降させるスライダーを備え、このスライダーに柱状の固形糊を装着させて、本体筒より固形糊の前端部を出没自在とするための固形糊繰出用容器において、
固形糊の後端部を糊受部材に保持させるとともに、この糊受部材を、第1係着手段をもって、着脱可能に前記スライダーに係着させることにより、固形糊をスライダーに間接的に装着させ、かつ固形糊の本体筒内への収容時におけるねじ杆の回動により、第2係着手段をもって、糊受部材とスライダーとを係着させるようにしたことを特徴とする固形糊繰出用容器。
【請求項2】
第1係着手段を、糊受部材とスライダーの両者のうち、一方に係止爪を、他方に係合部を設け、これらの係止爪と係合部の少なくとも一方を弾性変形可能とし、この弾性変形を利用して係止爪を係合部に係止させるように構成するとともに、
第2係着手段を、糊受部材とスライダーの両者のうち、一方に切欠部を、他方に係止部を設け、固形糊の本体筒内への収容時における案内突条と係合溝との間の遊びによるスライダーの糊受部材に対する相対的な回動により、切欠部を係止部に係止させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の固形糊繰出用容器。
【請求項3】
第1係着手段をもって糊受部材をスライダーに係着させる際に、スライダーに対する糊受部材の回転位置を定めるための回転位置決め手段として、糊受部材とスライダーとの対向面に、その一方に角柱状嵌合部、他方に角筒状被嵌合部を、これらの嵌合時に、外部から視認しうるようにして設け、かつ嵌合によって、位置決めをなしうるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の固形糊繰出用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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