説明

固有情報の書き込み方法及び書き込みシステム

【課題】専用のインタフェースを用いることなく、登録すべき一意の固有情報をROMの不良品の数だけ無駄にすることのないように、電子機器に一意の固有情報を持たせることができるようにする。
【解決手段】各電子機器(電子計算機)2に登録すべき一意の固有情報を有するサーバ3、各電子機器2に登録すべき一意の固有情報を保持させるROM6に、予め定められた特定の情報を書き込むROMライタ7とを備える。サーバ3は、前述の予め定められた特定の情報が書き込まれたROMが搭載された電子機器2が前記サーバに接続されると、接続された前記電子機器に搭載されたROM6内の特定の情報を、当該電子機器2に登録すべき一意の固有情報に書き替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固有情報の書き込み方法及び書き込みシステムに係り、特に、電子計算機等の電子機器に付与されるMACアドレス等の一意の固有情報の書き込み方法及び書き込みシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子計算機等の電子機器には、その機器を特定するために一意の固有情報が付与されている。例えば、複数の電子計算機を用いてネットワークを構築するためには、複数の電子計算機のそれぞれが、MACアドレス等のそれぞれの電子計算機で異なる固有情報を持つ必要がある。
【0003】
このため、電子計算機等の電子機器は、その生産に際して、登録すべき一意の固有情報をそれらの機器が持つROM等に書き込んで付与しておくことが必要であり、かつ、生産者に判り易くするために、その固有情報を物理的に書き込んだ後に、書き込んだ生産物を管理する必要もある。
【0004】
固有情報をROMへ書き込み、そのROMを電子計算機等の電子機器に搭載して、電子機器に一意の固有情報を持たせるための固有情報の書き込み方法として、従来、2つの方法のいずれかが採用されて行われていた。
【0005】
図8は従来技術による固有情報(説明している例では、固有情報としてMACアドレスを用いるものとしている)の書き込みを行う第1の方法を説明する図、図9は図8に示す方法を実施する作業手順を説明する図である。ここで説明する第1の方法は、登録すべき一意の固有情報をROMライタを用いてROMへに書き込んだ後に、固有情報を書き込んだROMを電子計算機等の電子機器に搭載するという方法である。
【0006】
図8に示す方法は、専用プログラム8を有するROMライタ7を使用するものである。専用プログラム8は、ROMライタ7内に保存されていて、電子機器(ここでは、電子計算機2)に一意に登録すべき固有情報(MACアドレスA)1を出力するプログラムであり、ROMライタ7に取り付けられたROM6に固有情報1を書き込むものである。
【0007】
前述したようなROMライタ7を使用する実施する場合の作業手順としては、図9に示すように、まず、ROM6を直接ROMライタ7に取り付けて、ROM6に登録すべき固有情報1を専用プログラム8を用いて書き込む手順(ステップA1)を行った後、この書き込みが終わったROM6をROMライタ7から取り外し、固有情報1が書き込まれたROMを対応する電子計算機2へ取り付けるという手順(ステップA2)を行うものとなる。専用プログラム8は、ROM6への固有情報の書き込みの後、別のROM6がROMライタ7に取り付けられれば、その都度、異なった値を有する固有情報をROM6に書き込んでいく。
【0008】
前述したような従来技術による固有情報の書き込み方法は、ROM6へ固有情報を書き込む前に、ROMライタ7に対して専用プログラム8を作成し保存させる必要があり、また、その専用プログラムの中に多数の固有情報が誤りなく割り振られているというチェックを行う必要もある。その上、前述で説明した方法は、ROMライタ7を用いて、ROM6への書き込みを行った後、ROM6が不良品であったことが判った場合、一意に登録すべき固有情報1が不良品の数だけ無駄に発行されてしまったことになり、固有情報の発行効率を悪化させるという問題点を有している。
【0009】
また、一般に、ユーザが、付与した固有情報を目視できるよう表示したいという要求がある。このような要求を満たすためには、ROM6に書き込んだ固有情報を目視可能にROM6または電子計算機2等の電子機器に添付するという方法がある。実際に電子計算機2の生産管理を考慮して、前述したような表示を実行するためには2つの方法が考えられる。
【0010】
図10はROMに書き込んだ固有情報を目視可能にROMまたは電子計算機等の電子機器に添付する第1の方法を説明するフローチャートである。図10に示す第1の方法は、固有情報を書き込んだROM6を搭載した電子計算機を起動し(ステップA3)、ROM6内の固有情報を電子計算機2に読み取らせ、読み取った固有情報を含み目視可能なラベルを作成し(ステップA4)、その後、作成したラベルをROM6または電子計算機2に貼り付ける(ステップA5)という方法である。
【0011】
しかし、図10により説明した第1の方法は、ROM6内の固有情報を得るために電子計算機2を起動させなければならず、そのために多くの手間がかかり、量産を考えた場合に非現実的な方法である。
【0012】
図11はROMに書き込んだ固有情報を目視可能にROMまたは電子計算機等の電子機器に添付する第2の方法を説明するフローチャートである。図11に示す第2の方法は、ROM6へ固有情報を書き込むと同時に、書き込んだ固有情報を含む目視可能なラベルを作成し(ステップA8)、作成したラベルと固有情報を書き込んだROMとの物理的な対応付けを管理しておき(ステップA7)、電子機器である電子計算機の製造時におけるROM6を含む部品を基盤に取り付ける作業(面付け部品の取り付け、挿入部品の取り付け、ヒートシンクの取り付け等)を行いながら(ステップA6)、目視可能な固有情報を持つラベルをROMあるいは情報処理装置に貼付ることができるタイミングを見つけて、ROMあるいは情報処理装置にラベルを貼り付る(ステップA5)という方法である。
【0013】
しかし、図11により説明した第2の方法は、ROMとラベルとの対応付けの管理を行いながら(ステップA7)、半田付け等のマシン組み立て作業等を行っている(ステップA6)間、ラベルを貼り付ける機会を待たなければならず、管理するROMとラベルとの数が少数であれば問題にならないが、電子計算機等の電子機器の量産を考えたときに管理が困難になり、煩雑になってしまうという問題点を生じさせる。
【0014】
図12は従来技術による固有情報(説明している例では、固有情報としてMACアドレスを用いるものとしている)の書き込みを行う第2の方法を説明する図、図13は図12に示す方法を実施する作業手順を説明するスローチャートである。ここで説明する第2の方法は、固有情報を書き込んでいないROM6を電子計算機2に取り付け、その後にROM6へ登録すべき一意の固有情報(MACアドレスA)1をROMライタ7から書き込む方法である。
【0015】
すなわち、図12、図13に示す方法は、まず、電子計算機に固有情報が何も書き込まれていないROM6を搭載し(ステップA9)、次に、図12に示すように、図8で説明したものと同様な専用プログラム8を格納しているROMライタ7を用意し、このROMライタ7を、通信方法に合わせたケーブルである専用入出力装置10とこの専用入出力装置10を電子計算機2に接続する専用コネクタ11とを用いて電子計算機2に接続し、ROM6への書き込みを行うための専用回路12を用いて、ROMライタ7からROM6に固有情報(MACアドレスA)1を書き込む(ステップA13)という方法である。
【0016】
しかし、前述した図12、図13により説明した方法は、ROMライタ7と電子計算機2とを接続する専用の入出力装置10が必要になり、費用が多くかかるという問題点を有している。また、この方法は、電子計算機2上にROM6への書き込み専用のコネクタ11を取り付ける必要が生じ、ROM6への書き込みをするための専用回路12を電子計算機2上に付加する必要があるため、専用コネクタ11を取り付ける場所と、ROM6への書き込みをするための専用回路12を取り付ける場所とを電子計算機2上に確保しなければならず、全体の回路設計を見直す必要も出てくる恐れが生じるという問題点も有している。
【0017】
また、前述した図12、図13により説明した方法は、別機種の設計開発の観点で考えた場合、電子計算機2の機種毎に専用に入出力装置10が必要になるため、異なる機種の電子計算機2を開発する場合、機種毎に入出力装置10を製作し専用コネクタ11を用意する必要があるため、さらに費用がかかるという問題点を生じてしまう。
【0018】
なお、本発明に関連する従来技術として、例えば、非特許文献1等に記載された技術が知られている。
【非特許文献1】トランジスタ技術編集部著「LANによるハードウェア制御」CQ出版社 2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述で説明したように、電子機器に一意の固有情報を持たせるための固有情報の書き込み方法に関する第1の従来技術は、ROMに不良品があった場合、登録すべき固有情報をROMの不良品の数だけ無駄にしてしまうという問題点を有し、また、第2の従来技術は、ROMライタと電子計算機とを接続する専用の入出力装置が必要になり、費用が多くかかるという問題点を有し、かつ、電子計算機上にROMへの書き込み専用のコネクタと専用回路とを電子計算機上に取り付ける場所を確保しなければならず、全体の回路設計を見直す必要も出てくる恐れが生じるという問題点を有している。
【0020】
さらに、前述した従来技術は、そのいずれの場合も、ROM内の固有情報を得るために電子計算機を起動しなればならなかったり、あるいは、ROMと電子計算機とを物理的に対応付けて管理しなければならないという問題点を有している。
【0021】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、専用のインタフェースを用いることなく、登録すべき一意の固有情報をROMの不良品の数だけ無駄にすることのないように、電子機器に一意の固有情報を持たせることができるようにした固有情報の書き込み方法及び書き込みシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば前記目的は、電子機器に、その機器を特定するために付与される一意の固有情報の書き込み方法において、各電子機器に登録すべき一意の固有情報を有するサーバと、各電子機器に登録すべき一意の固有情報を保持させるROMに、予め定められた特定の情報を書き込むROMライタとを備え、前記サーバは、前記予め定められた特定の情報が書き込まれたROMが搭載された電子機器が前記サーバに接続されると、接続された前記電子機器に搭載された前記ROM内の特定の情報を、当該電子機器に登録すべき一意の固有情報に書き替えることにより達成される。
【0023】
また、前記目的は、電子機器に、その機器を特定するために付与される一意の固有情報の書き込み方法において、各電子機器に登録すべき一意の固有情報を有するサーバと、各電子機器に登録すべき一意の固有情報を保持させるROMに、予め定められた特定の情報を書き込むROMライタと、前記サーバ及び前記電子機器の複数とを相互に接続する電子機器と同数の汎用マシンとを備え、前記サーバは、前記予め定められた特定の情報が書き込まれたROMが搭載された電子機器が前記汎用マシンを介して前記サーバに接続されると、接続された前記複数の電子機器のそれぞれに搭載された前記ROM内の特定の情報を、当該電子機器に登録すべき一意の固有情報に書き替えることにより達成される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、専用のインタフェースを用いることなく、登録すべき一意の固有情報をROMの不良品の数だけ無駄にすることのないように、電子機器に一意の固有情報を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明による固有情報の書き込み方法及び書き込みシステムの実施形態を図面により詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の第1の実施形態による固有情報の書き込み方法を実施するためのシステム構成を示すブロック図、図2は本発明の第1の実施形態により固有情報の書き込みを実行する処理動作を説明するフローチャート、図3は本発明の第1の実施形態によりROMに書き込んだ固有情報からラベルを作成して貼り付ける処理を説明するフローチャートである。
【0027】
図1に示す本発明の第1の実施形態による固有情報の書き込み方法を実施するためのシステムは、電子計算機2に搭載したROM6に登録すべき一意の固有情報を持つサーバ3と、電子計算機2に搭載したROM6に登録した固有情報のチェックを行うと共に、生産された電子計算機2の出荷チェックを行う出荷検査用プログラム24を有する出荷検査用端末23とがネットワーク通信用回線14を介してネットワーク15に接続され、また、本発明により特定の情報が書き込まれたROM6が搭載された電子計算機2をネットワーク15に接続することが可能に構成されている。また、本発明の実施形態においては、ROM6に登録すべき一意の固有情報ではない特定の情報をROM6に書き込む汎用プログラム16を有するROMライタ7が用意される。
【0028】
前述において、ROMライタ7は、ROM6がROMライタ7に搭載されデータの書き込みが指示されると、汎用プログラム16が、ネットワークを介して接続される他の機器からMACアドレスに見える特定のデータ21をROM6に書き込む。ROMライタ7により書き込まれるROM6内のデータ21は、ROM6がROMライタ7に搭載されたときに常に同一のデータが書き込まれればよい。
【0029】
そして、サーバ3は、ROM6へ登録すべき一意の固有情報1として、MACアドレスAを有すると共に、自サーバ3を他の機器から認識させるための固有情報として、MACアドレスB22を有している。また、出荷検査用端末23は、電子計算機2に搭載されたROM6内の電子計算機2を一意に識別させるための固有情報1が正しくROM6に書き込まれているか否かをチェックするための固有情報1として、MACアドレスAを有し、自検査用端末23を他の機器から認識させるための固有情報として、MACアドレスC25を有すると共に、製品である電子計算機の検査を行う出荷検査用プログラム24を有している。
【0030】
本発明の第1の実施形態は、ROMライタ7の汎用プログラム16により他の機器からMACアドレスに見える特定のデータ21が書き込まれたROM6が搭載された電子計算機2がネットワーク通信用コネクタ13、ネットワーク通信用回線14を介してネットワーク15に接続されると、図2により後述する処理に従って、ROM6内の他の機器からMACアドレスに見える特定のデータ21が、ROM6への書き込み手段20によりその電子計算機2を一意に識別させる固有情報A26に書き替えられる。
【0031】
次に、図2に示すフローを参照して、本発明の第1の実施形態により固有情報の書き込みを実行する処理動作を説明する。
【0032】
(1)まず、ROMライタ7を用いて、ネットワークを介して接続される他の機器からMACアドレスに見える特定のデータ21をROM6に書き込み、特定のデータ21を書き込んだROM6を電子計算機2に搭載する(ステップS1、S2)。
【0033】
(2)次に、特定のデータ21が書き込まれたROM6を有する電子計算機2をネットワーク15に接続し、サーバ3及び出荷検査用端末23の間にネットワーク通信用回線14を用いてネットワーク15を構築する。このとき、電子計算機2が持つ特定のデータ21は、ネットワーク15上の他の機器からMACアドレスとして見える特定のデータ有し、また、サーバ3及び出荷検査用端末23は、それら自身を一意に識別する固有情報22(MACアドレスB)及び固有情報25(MACアドレスC)を持ち、それらが異なる値に設定されていることにより、ネットワーク15を介して、相互に通信を行うことが可能となる。すなわち、例えば、電子計算機2、サーバ3、出荷検査用端末23のいずれか1つの機器からの接続要求の情報を他の2つの機器へ送り、次に、その接続要求の情報を受け取った機器が接続許可の情報を接続要求の情報を送信した機器へ送り、最後に、接続許可の情報を受け取った機器から、接続許可の情報を他の2つの機器へ送ることにより、ネットワーク15を構築することができる(ステップS3)。
【0034】
(3)前述で説明したような方法で構築したネットワーク15を用いて、出荷検査用端末23を操作することにより、ネットワーク15に接続された電子計算機2に搭載されたROM6への固有情報の書き込み処理を開始する(ステップS4)。
【0035】
(4)固有情報の書き込み処理が開始されると、まず、出荷検査用端末23は、サーバ3に対し、固有情報を電子計算機2へ送信するように指示する固有情報送信要求を送付し、これを受けたサーバ3は、ROM6へ登録すべき一意の固有情報1としてのMACアドレスAを固有情報A26として電子計算機2に送付する(ステップS5、S6)。
【0036】
(5)電子計算機2は、サーバ3から固有情報を受信し、ROM6に受信した固有情報の書き込みを行う。この書き込みは、ROMライタ7によりROM6書き込まれたネットワークを介して接続される他の機器からMACアドレスに見える特定のデータ21を、サーバ3から送信されてきたROM6へ登録すべき一意の固有情報1としてのMACアドレスA(固有情報A26)に書き替える処理である(ステップS7)。
【0037】
(6)その後、出荷検査用端末23は、出荷検査プログラム24から電子計算機2を操作し、電子計算機2の出荷検査を実施する(ステップS8)。
【0038】
前述した処理により、電子計算機2に搭載されたROM6に登録された固定値21が固有情報A26に書き替えられる。そして、電子計算機2が別の電子計算機に変更されてネットワークに接続される毎に、その電子計算機2に搭載されているROMの情報が異なる値を持つ固有情報に書き替えられることになる。
【0039】
次に、図3を参照して、本発明の第1の実施形態によりROMに書き込んだ固有情報からラベルを作成して貼り付ける処理を説明すると、図1、図2での説明から判るように、サーバ3が、ROM6へ登録すべき一意の固有情報1としてのMACアドレスAを固有情報A26として電子計算機2に送信しているので、このサーバ3から送信される固有情報からサーバ3にラベルを作成させ(ステップS9)、作成されたラベルをROM6あるいは電子計算機2に貼り付ける(ステップS10)ようにすればよい。
【0040】
前述した本発明の第1の実施形態による方法によれば、ROMライタ7からROM6へ書き込む情報の種類を初期状態の情報1種類にすることができるため、ROMライタ7に一意に固有情報を出力する専用プログラム8を作成し保存する必要をなくすことができる。また、図3で説明したように、サーバ3から一意に登録すべき固有情報を読み、ラベルを作成し貼り付けることができるため、電子計算機2とラベル6との関連付けを行うことも容易となり、かつ、電子計算機2を起動する必要もない。
【0041】
さらに、本発明の第1の実施形態によれば、ネットワークからROM6にデータを書き込む方法を採用しているため、ROMライタ7と電子計算機2とを結ぶ入出力装置10を不要とすることができ、入出力装置10の製作に要する材料と工数とを必要とせず、それらに要する費用も不要となる。また、本発明の第1の実施形態によれば、専用コネクタ11及び専用回路12を付加する必要もないため、それらに要する設計の見直し等を行う必要もなくすことができる。
【0042】
図4は本発明の第2の実施形態による固有情報の書き込み方法を実施するためのシステム構成を示すブロック図である。この本発明の第2の実施形態による方法は、前述で説明した本発明の第1の実施形態による方法を、量産のために拡張したものである。
【0043】
図4に示すシステムは、図1により説明したものと同様な、電子計算機2に搭載したROM6に登録すべき一意の固有情報を持つサーバ3と、電子計算機2に搭載したROM6に登録した固有情報のチェックを行うと共に、生産された電子計算機2の出荷チェックを行う出荷検査用プログラム24を有する出荷検査用端末23とがネットワーク通信用回線14を介してネットワーク15に接続され、また、本発明によりネットワーク上の他の機器からMACアドレスに見える特定の情報が書き込まれたROM6が搭載された電子計算機2をネットワーク15に接続することが可能に構成されたシステムを複数構成して、並列に動作させるようにしたものである。また、本発明の第2の実施形態においても、第1の実施形態で説明したと同様な、ROM6に登録すべき一意の固有情報ではない特定の情報をROM6に書き込む汎用プログラム16を有するROMライタ7が用意される。
【0044】
前述において、複数構成した各システムの出荷検査用端末23を操作することにより、一意に登録すべき固有情報1を、操作した出荷検査用端末23と同一ネットワーク上のサーバ3とから当該ネットワーク上の電子計算機2に送り、電子計算機2のネットワーク通信用コネクタ13からROM6への書き込み手段20を用いて、電子計算機2に搭載されたROM6に固有情報1を書き込むことができる。
【0045】
前述したような本発明の第2の実施形態による方法により、複数の電子計算機2に対して一意に登録すべき固有情報(MACアドレスA)1を持つサーバ3を用いてネットワーク通信により一意に登録すべき固有情報1を同時に書き込むことができる。なお、複数のサーバ3のそれぞれが有する電子計算機2に対して一意に登録すべき固有情報1は、各サーバ3と図示しない通信回線を介して接続される図示しないマスタサーバから配布するようにすることが可能である。
【0046】
前述で説明した本発明の第2の実施形態は、大量に電子計算機を生産して、各電子計算機の搭載するROMに固有情報を付与しようとすると、同時に処理を行おうとする電子計算機の台数だけサーバを用意しなければならないことになり、多くの場所を必要とすると共に、多くの費用を要することになってしまう。しかし、サーバの台数を少なくするために、1台のサーバと複数台の電子計算機を接続してネットワークを構築しようとすると、複数の電子計算機に搭載されるROMに、固有情報ではない特定の情報(全ての電子計算機で同一の情報)が書き込まれているため、ネットワークを構築することができなくなってしまう。
【0047】
図5は1台のサーバ3と複数台の電子計算機2とにより、電子計算機2上のROMに固有情報の書き込みを行う場合のシステムの構成と不具合とについて説明する図である。
【0048】
いま、1台のサーバ3と、複数台の電子計算機2と、電子計算機2と同数の図示しない出荷検査用端末23と、ネットワーク通信用回線14とを用いてネットワーク17を構築しようとしたとする。この場合、複数の電子計算機2、サーバ3、出荷検査用端末23の全ての機器内にあり、それらの機器を一意に識別可能とする固有情報21、22、25が同一ネットワーク上で全て異なるものであるときにのみネットワーク17を構築することができる。
【0049】
しかし、本発明による方法は、図1に示して説明したように、複数の電子計算機に搭載されるROMのそれぞれに、固有情報ではない他の機器からMACアドレスに見える特定の情報(全ての電子計算機で同一の情報)が書き込まれているため、同一の固有情報が同一ネットワーク上に複数存在することになり、接続要求や接続許可の情報の送受信を行うことができなくなり、ネットワークを構築することができなくなってしまう。
【0050】
図6は本発明の第3の実施形態による固有情報の書き込み方法を実施するためのシステム構成を示すブロック図、図7は本発明の第3の実施形態により固有情報の書き込みを実行する処理動作を説明するフローチャートである。この本発明の第3の実施形態による方法は、一意に登録すべき固有情報1を持つサーバ3の数を少なくして、複数の電子計算機に搭載されるROMのそれぞれに固有情報を書き込むことができるようにしたものである。
【0051】
図6に示すシステムは、図1により説明したものと同様な、電子計算機2に搭載したROM6に登録すべき一意の固有情報を持つサーバ3と、電子計算機2に搭載したROM6に登録した固有情報のチェックを行うと共に、生産された電子計算機2の出荷チェックを行う出荷検査用プログラム24を有するブリッジとなる複数の汎用マシンA51〜X53とがネットワーク通信用回線14を介してネットワーク18に接続され、ブリッジとなる汎用マシンA51〜X53の1台に対して、図1により説明したと同様に特定の情報が書き込まれたROM6が搭載された電子計算機2をネットワーク19を介して接続して構成されている。
【0052】
すなわち、図6に示すシステムは、サーバ3と電子計算機2との間に、ブリッジとなる汎用マシンA51〜X53が設けられており、サーバ3とブリッジとなる汎用マシンA51〜X53とには、それらの機器を一意に識別可能とする固有情報22(MACアドレスB)、54(MACアドレスC)〜56(MACアドレスX)が全て異なるものとなるように割り振られているので、サーバ3とブリッジとなる汎用マシンA51〜X53のそれぞれとは、ネットワーク18を介して通信を行うことができる。そして、ネットワーク18とネットワーク19とは、ブリッジとなる汎用マシンA51〜X53のそれぞれにより切り離されているので、電子計算機2のROM6に同一の特定の情報が書き込まれていても、ブリッジとなる汎用マシンA51〜X53のそれぞれと、各電子計算機2とは、ネットワーク19を介して通信を行うことが可能である。
【0053】
次に、図7に示すフローを参照して、本発明の第3の実施形態により固有情報の書き込みを実行する処理動作を説明する。
【0054】
(1)まず、図6に示して説明したシステム環境を整える。そして、最初に、予め図1により説明した方法で、ROMライタ7を用いて、ネットワークを介して接続される他の機器からMACアドレスに見える特定のデータ21をROM6に書き込み、特定のデータ21を書き込んだROM6を電子計算機2に搭載する(ステップS11、S12)。
【0055】
(2)次に、サーバ3、電子計算機2の台数と同数のブリッジとなる汎用マシンA51〜X53を設置し、サーバ3と全てのブリッジとなる汎用マシンA51〜X53とをネットワーク通信用回線14を用いて接続してネットワーク18を構築する。また、同時に、特定のデータ21が書き込まれたROM6を有する電子計算機2を、ネットワーク通信用回線14を用いてブリッジとなる汎用マシンA51〜X53に接続してネットワーク19を構築する(ステップS13)。
【0056】
(3)前述で説明した処理を行って環境を整えた後、次に、ブリッジとなる汎用マシンA51〜X53を操作することにより、ネットワーク19に接続された電子計算機2に搭載されたROM6への固有情報書き込み処理を開始する(ステップS14)。
【0057】
(4)固有情報書き込み処理が開始されると、まず、ブリッジとなる汎用マシンA51〜X53は、サーバ3に対し、固有情報を送信してくるように指示する固有情報送信要求を送付し、これを受けたサーバ3は、ROM6へ登録すべき一意の固有情報1としてのMACアドレスAを固有情報A26としてブリッジとなる汎用マシンA51〜X53に送付する(ステップS15、S16)。
【0058】
(5)ブリッジとなる汎用マシンA51〜X53は、受け取った固有情報を電子計算機2に送付し、電子計算機2は、ブリッジとなる汎用マシンA51〜X53から固有情報を受信して、ROM6にその固有情報を書込む。この書き込みは、ROMライタ7によりROM6書き込まれたネットワークを介して接続される他の機器からMACアドレスに見える特定のデータ21を、サーバ3から送信されてきたROM6へ登録すべき一意の固有情報1としてのMACアドレスA(固有情報A26)に書き替える処理である(ステップS17、S18)。
【0059】
(6)その後、ブリッジとなる汎用マシンA51〜X53は、出荷検査プログラム24から電子計算機2を操作し、電子計算機2の出荷検査を実施する(ステップS19)。
【0060】
前述した処理により、サーバ3の台数を電子計算機2の台数に比較して少なくしつつ、一意に登録すべきMACアドレスを含む固有情報1を一意性を保ちながらROM6に書き込むことができる。
【0061】
前述した本発明の実施形態での各処理は、プログラムにより構成し、本発明が備えるCPUに実行させることができ、また、それらのプログラムは、FD、CDROM、DVD等の記録媒体に格納して提供することができ、また、ネットワークを介してディジタル情報により提供することができる。
【0062】
前述した本発明の各実施形態によれば、初期状態の情報(他の機器からMACアドレスに見える特定のデータ)をROMライタ7からROM6へ書き込み、書き込みが終わったROM6を電子計算機2に取り付け、その後に、一意に登録すべき固有情報1をネットワークを介してROM6に書き込むことが可能となる。
【0063】
また、本発明の実施形態の1つによれば、一意に登録すべき固有情報1を持つサーバ3の数を少なくして、管理するサーバの数量を少なくし、かつ、新たに入出力装置10も製作せずに、専用コネクタ11および専用回路12を付加する必要も無く、一意に登録すべき固有情報1を持つROM6を一意の電子計算機2に搭載するという目的を、一意に登録すべき固有情報1を持つサーバ3の数を最小にしつつ実現することができる。
【0064】
前述し本発明の各実施形態によれば、一意に登録すべき固有情報1を持つサーバ3に対して、人が直接コマンド入力等により操作を行うことを必要とせずに、ブリッジとなる汎用マシンを操作することにより目的を実施することが可能である。このため、ブリッジとなる汎用マシン内に操作を自動化できるプログラムを作成し実行させるようにすることにより、サーバ3に対して人が直接操作することなく、目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態による固有情報の書き込み方法を実施するためのシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態により固有情報の書き込みを実行する処理動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態によりROMに書き込んだ固有情報からラベルを作成して貼り付ける処理を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態による固有情報の書き込み方法を実施するためのシステム構成を示すブロック図である。
【図5】1台のサーバと複数台の電子計算機とにより、電子計算機上のROMに固有情報の書き込みを行う場合のシステムの構成と不具合とについて説明する図である。
【図6】本発明の第3の実施形態による固有情報の書き込み方法を実施するためのシステム構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施形態により固有情報の書き込みを実行する処理動作を説明するフローチャートである。
【図8】従来技術による固有情報(説明している例では、固有情報としてMACアドレスを用いるものとしている)の書き込みを行う第1の方法を説明する図である。
【図9】図8に示す方法を実施する作業手順を説明する図である。
【図10】ROMに書き込んだ固有情報を目視可能にROMまたは電子計算機等の電子機器に添付する第1の方法を説明するフローチャートである。
【図11】ROMに書き込んだ固有情報を目視可能にROMまたは電子計算機等の電子機器に添付する第2の方法を説明するフローチャートである。
【図12】従来技術による固有情報(説明している例では、固有情報としてMACアドレスを用いるものとしている)の書き込みを行う第2の方法を説明する図である。
【図13】図12に示す方法を実施する作業手順を説明するスローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 一意に登録すべき固有情報(MACアドレスA)
2 電子計算機
3 サーバ
6 ROM
7 ROMライタ
8 専用プログラム
10 専用入出力装置
11 専用インターフェース
12 専用回路
13 ネットワーク通信用コネクタ
14 ネットワーク通信用回線
15、17〜19ネットワーク
16 汎用プログラム
20 書き込み手段
21 特定のデータ
22 サーバ自身の固有情報(MACアドレスB)
23 出荷検査用端末
24 出荷検査用プログラム
25 出荷検査用端末自身の固有情報(MACアドレスC)
51 ブリッジとなる汎用マシンA
52 ブリッジとなる汎用マシンB
53 ブリッジとなる汎用マシンX
54 汎用マシンA自身の固有情報(MACアドレスC)
55 汎用マシンB自身の固有情報(MACアドレスD)
56 汎用マシンX自身の固有情報(MACアドレスX)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に、その機器を特定するために付与される一意の固有情報の書き込み方法において、
各電子機器に登録すべき一意の固有情報を有するサーバと、各電子機器に登録すべき一意の固有情報を保持させるROMに、予め定められた特定の情報を書き込むROMライタとを備え、
前記サーバは、前記予め定められた特定の情報が書き込まれたROMが搭載された電子機器が前記サーバに接続されると、接続された前記電子機器に搭載された前記ROM内の特定の情報を、当該電子機器に登録すべき一意の固有情報に書き替えることを特徴とする固有情報の書き込み方法。
【請求項2】
電子機器に、その機器を特定するために付与される一意の固有情報の書き込み方法において、
各電子機器に登録すべき一意の固有情報を有するサーバと、各電子機器に登録すべき一意の固有情報を保持させるROMに、予め定められた特定の情報を書き込むROMライタと、前記サーバ及び前記電子機器の複数とを相互に接続する電子機器と同数の汎用マシンとを備え、
前記サーバは、前記予め定められた特定の情報が書き込まれたROMが搭載された電子機器が前記汎用マシンを介して前記サーバに接続されると、接続された前記複数の電子機器のそれぞれに搭載された前記ROM内の特定の情報を、当該電子機器に登録すべき一意の固有情報に書き替えることを特徴とする固有情報の書き込み方法。
【請求項3】
前記電子機器が電子計算機であり、前記固有情報がMACアドレスであることを特徴とする請求項2記載の固有情報の書き込み方法。
【請求項4】
前記汎用マシンは、前記電子機器に搭載されたROMに書き込まれて付与された固有情報の検査を行う機能を有することを特徴とする請求項2または3記載の固有情報の書き込み方法。
【請求項5】
電子機器に、その機器を特定するために付与される一意の固有情報の書き込みシステムにおいて、
各電子機器に登録すべき一意の固有情報を有するサーバと、各電子機器に登録すべき一意の固有情報を保持させるROMに、予め定められた特定の情報を書き込むROMライタとを備え、
前記サーバは、前記予め定められた特定の情報が書き込まれたROMが搭載された電子機器が前記サーバに接続されると、接続された前記電子機器に搭載された前記ROM内の特定の情報を、当該電子機器に登録すべき一意の固有情報に書き替えることを特徴とする固有情報の書き込みシステム。
【請求項6】
電子機器に、その機器を特定するために付与される一意の固有情報の書き込みシステムにおいて、
各電子機器に登録すべき一意の固有情報を有するサーバと、各電子機器に登録すべき一意の固有情報を保持させるROMに、予め定められた特定の情報を書き込むROMライタと、前記サーバ及び前記電子機器の複数とを相互に接続する電子機器と同数の汎用マシンとを備え、
前記サーバは、前記予め定められた特定の情報が書き込まれたROMが搭載された電子機器が前記汎用マシンを介して前記サーバに接続されると、接続された前記複数の電子機器のそれぞれに搭載された前記ROM内の特定の情報を、当該電子機器に登録すべき一意の固有情報に書き替えることを特徴とする固有情報の書き込みシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−20593(P2010−20593A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181329(P2008−181329)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】