説明

固液分離装置

【課題】固体成分と液体成分とが混在する処理物の固液分離処理を効率よく行なう。
【解決手段】本発明の固液分離装置は、平面的に且つ相互に平行に配置した複数本の各回転軸7に多数の回転板8を軸装し、その上面側を回転板8の回転により処理物を順次回転方向に掻き送りしながら搬送面11とした装置において、上記回転板の最大回転半径を、搬送上流側を大きくし、下流側に向かって順次小さくなるように形成し、搬送面11上に搬送下流側に向かって下降傾斜し搬送される処理物を搬送面11との間で押圧して圧搾する圧搾具13を配置し、回転板8が圧搾具13の下面側に配置された回転板8である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生ごみ、下水道汚泥、食品工場排水、含水建築残土等のような固体成分と液体成分とが混在する処理物の固液分離を行なう固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば複数の回転板が軸装された回転軸を前後に複数並べて、各回転板を同一方向に回転させることにより、投入される多量の水分を含む処理物を順次搬送し、スリットを介して水分を濾過して固液分離する固液分離装置が公知となっている(例えば特許文献1参照)。また、処理物を押圧して圧搾する圧搾具を用いる場合、搬送下流側に向かって下降傾斜させ圧搾具と搬送面との間に形成される空間を順次狭くし、処理物の含水率の低下に伴う体積減少に対応した固液分離を行なう圧搾装置が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−211293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記処理では、回転板の回転半径が同一であるため、水分量の多い上流側では搬送時の体積が大きいために一定の脱水効率が確保されるが、水分が少ない下流側では体積が小さくなり、脱水効率が低下する。すなわち処理物の体積が減少しているにもかかわらず回転板が上流側と同量の処理物を掻き送るように動作するため、処理物の脱水に適した搬送がされなくなり、脱水効率が低下する。
【0004】
また、搬送路上に圧搾具を下降傾斜させて設けた場合は、下流側では搬送路と圧搾具との間の間隙が小さくなるため、圧搾効率が高いのに対し、上流側では上記間隙が大きいため、回転板に空転状態が生じ、搬送効率及び圧搾効率共に低下する欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の固液分離装置は、第1に平面的に且つ相互に平行に配置した複数本の各回転軸7に多数の回転板8を軸装し、その上面側を回転板8の回転により処理物を順次回転方向に掻き送りしながら搬送面11とした装置において、上記回転板の最大回転半径を、搬送上流側を大きくし、下流側に向かって順次小さくなるように形成したことを特徴としている。
【0006】
第2に、搬送面11上に搬送下流側に向かって下降傾斜し搬送される処理物を搬送面11との間で押圧して圧搾する圧搾具13を配置し、回転板8が圧搾具13の下面側に配置された回転板8であることを特徴としている。
【0007】
第3に、圧搾具13の下面側に搬送面11を形成する各回転板8の回転軌跡に対応する凹凸面16を形成してなることを特徴としている。
【0008】
第4に、凹凸面16が回転板8の回転軌跡に沿った円弧状の凹面を備えてなることを特徴としている。
【0009】
第5に、回転板8が処理する処理物の掻き送り搬送をしない無負荷状態の際は回転板8を高速回転させ、処理物の掻き送り時は通常速度で回転させる早戻り制御を行なう制御手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成される本発明の固液分離装置によれば、処理物を掻き送る回転板の最大回転半径を搬送下流側に向かって順次小さくすることにより、全ての回転板を同一の角速度で回転させた場合でも、処理物の搬送量を搬送下流側に向かって順次少なくすることができる。このため、処理物の液体成分比率に応じた適切な搬送量を確保することが可能になり、効率の良い固液分離を行なうことができる。
【0011】
搬送面上に処理物の圧搾具を設けた場合は、処理物の体積が大きい搬送上流では回転半径の大きい回転板で掻き送りしながら圧搾搬送し、体積が小さくなる下流側では回転半径の小さい回転板で掻き送りしながら圧搾搬送するので、上流側、下流側共に効率のよい固液分離ができる。
【0012】
また、圧搾具の下面側に設けたの凹凸面が回転板の回転軌跡に対応しているので、掻き送り搬送がスムーズで且つ圧搾効率も高くなる。
【0013】
さらに、回転板が処理物を掻き送りしない無負荷状態の際は回転板を高速回転させ、処理物の掻き送り時は通常回転される早戻り制御を行なう制御手段を備えることにより、処理物の送り速度が向上し、固液分離処理の時間を短縮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図示する本発明の実施形態を例えば多量の水分を含む生ゴミや糞尿等の処理物を脱水する場合につき説明する。
図1に示されるように、本発明の固液分離装置は、投入される処理物を、図1における右側から左側に向かって搬送しながら処理物を脱水する。
【0015】
本発明の固液分離装置は、フレーム1に分離されて落下する水分を受け止める受部2と上部フレームを兼ねたケーシング3が取り付けられている。ケーシング3は例えば全長が2500mm、幅が700mm、高さが800mm程度になる。ただし、上記サイズに限定されるものではない。受部2に溜まった水は受部2の下部に設けられた廃液口4から排水される。ケーシング3は上方及び下方が開口し、搬送下流側の壁面に脱水された処理物を排出するための排出口6を備える。
【0016】
ケーシング3内には処理物の供給側(上流側)の高位置の長いラインの第1分離ユニット5Aと排出側(下流側)の低位置の短いラインの第2分離ユニット5Bとで上下2段の分離ユニットが形成され、両分離ユニット5A,5Bは搬送方向長さ以外は略同一の構成となっている。また両分離ユニット5A,5Bは後述するようにフレーム1の搬送上流側端部(右端部)に設けた2台のモーター17A,17Bにより別々に駆動される。
【0017】
図2に示されるように、ケーシング3の流路を形成する2つ側壁面の間にはフレーム1又はケーシング3を介して複数の回転軸7が前後方向に回転自在に軸支されている。各回転軸7は平面的、且つ相互に平行に配置され、多数の回転板8が所定間隔毎に軸装されている。各回転板8は同位相で、左右に隣り合う回転板8が搬送方向に沿って一直線上に位置するよう配置されている。上記のように回転板8を配置することにより、図3に示されるように、隣り合う前後の回転板8には間隙Xが形成される。上記間隙Xは平面視で搬送方向に一直線状になり、この部分に案内部材9設ける。なお上記間隙Xは、左右の隣接する各回転板8間にスペーサー10によって形成される。
【0018】
図4に示されるように、上記案内部材9は楔状の断面形状を有し、楔の突起が下方に向くように取り付けられている。また、上端面は上記回転板8の回転によって送られる処理物を送り方向にガイドする平滑なガイド面を備えている。各案内部材9の間にはスリットSが形成されるが、案内部材9が楔状の断面形状をしていることにより、上記スリットSは下方に向かって広がる形状になっている。なお、回転板8の厚さは1mm程度であり、案内部材9の上記ガイド面の幅は3mm程度である。ただし、上記サイズに限定されるものではない。
【0019】
図5に示されるように、回転板8は基端部側と先端部側が大小異なる半径を形成しており、回転中心は基端部側の中心である。そして搬送方向に隣接する回転板8は、回転中は互いに干渉しない形状、乃至軸間距離となっており、先端部側のみが案内部材9の上面より突出する。
【0020】
上記の回転板8及び案内部材9によって、ケーシング3内にはウェーブ状に変形する搬送面11が形成される。搬送面11は各分離ユニット5A,5Bによって上下二段で構成されており、上段の搬送面11は搬送上流側、下段の搬送面11は搬送下流側に配置されている。また図1に示されるように、ケーシング3側には板状のアーム12により揺動可能に軸支された圧搾具13を搬送面11の上方に配置する。上記圧搾具13はケーシング3に軸支されたエアシリンダ14を備え、上記エアシリンダ14により処理物を弾力的に押圧して圧搾する。エアシリンダ14の代わりにウェートやスプリング等を用いてもよい。
【0021】
なお、搬送面11上に圧搾具13を配置する際に搬送下流側に向かって下降傾斜させ、搬送面11と圧搾具13との間に形成される空間が搬送下流側に向かって順次狭くなるようにする。また、アーム14の下面側に、各回転板8の回転軌跡Dに対応する凹凸面16を設ける。
【0022】
図6に示されるように、平面視で搬送方向に一直線上に配置された各回転板8の回転軸7の高さは同一であり、最大回転半径Rは、搬送下流側に配置された回転板8ほど順次小さくなっている。同図の例によれば、5つの回転板8の最大回転半径R〜Rは搬送方向の最後方にある回転板8の最大回転半径Rが150mm程度の直径であり、R、R、Rと搬送下流側にいくに従って最大回転半径Rが小さくなっており、搬送方向の最前方にある回転板8では最大回転半径Rは100mm程度に設計されている。
【0023】
上記回転板8の上方には処理物を圧搾するために圧搾具13が配置されているが、上記圧搾具13の下面側に設けられた凹凸面16には、各回転板8の回転軌跡D〜Dに沿って円弧状の凹面A〜Aが形成されている。このことにより、圧搾具13による処理物の圧搾時には、回転板8の先端部と凹凸面16との距離がほぼ一定になる。
【0024】
搬送面11を形成する回転板8の回転半径のうち、圧搾具13の下面側のものは上述のように上流側のものに対して回転半径を順次小さくする必要があるが、上記以外の例えば圧搾具13より上流側の回転板8の最大回転半径Rは、いずれも図1に示すように前述した圧搾具13下方の最上流の回転板8の最大回転半径Rと同一のものを用いてもよい。
【0025】
第1,第2の各分離ユニット5A,5Bは、前述したモーター17A,17Bによりそれぞれ独立した駆動系によってチェーン駆動され、各モーターの出力スプロケット18A,18Bは、ケーシング3内に中継軸19A,19Bを介して軸装されたスプロケット21A,21Bにチェーン接続されている。
【0026】
そして、各中継軸19A,19Bの両突出端に軸装されたスプロケット22,22とチェーンによって順次巻き掛けられる駆動スプロケット(図示しない)を介し、各回転軸7によって回転板8がそれぞれ同一角速度で同一方向(処理物送り方向)に回転駆動される。この時両分離ユニット5A,5Bの回転板8の回転速度は同一でもよく、また第2分離ユニット5Bの方が遅く設定されてもよい。
【0027】
上記各分離ユニット5A,5Bの回転板8の回転には早戻り制御が行なわれ、回転板8が処理物を掻き送る直前から倒伏する負荷状態(約90°の回転角範囲)では通常の速度とし、送り方向倒伏後、略起立する役270°の回転角範囲の無負荷状態では回転速度を高める。この早戻り制御手段は周知のものが用いられ、一般的には回転軸9の回転位置を検出し、その検出によりインバータのスイッチをON,OFFするもの等が用いられる。ちなみに、回転板8の回転数は図示された実施例では10rpm程度である。
【0028】
本固液分離装置の上記構成により、回転板8及び案内部材9の上に多量の水分を含有した処理物を供給し、各回転軸7を回転させる。この際、上述した回転板8の早戻り制御により、処理物の送り速度を向上させ、脱水時間を短縮させることができる。
【0029】
処理物が搬送面11上を搬送される途中に、処理物に含まれる水分は各回転板8間の間隙X、案内部材9間のスリットSにより濾過されて受部2内に排水される。処理物が脱水される際、図4に示すようにスリットSは下方に向かって広がるように形成されているため、上記処理物は回転板8の回転とあいまってスムーズに下方に排出される。
【0030】
その際、処理物を掻き送る回転板8の最大回転半径Rを搬送下流側に向かって順次小さくすることにより、全ての回転板8を同一の角速度で回転させた場合でも、処理物の搬送量を搬送下流側に向かって順次少なくすることができる。このため、処理物の含水率に応じた適切な搬送量を確保することが可能になり、効率の良い脱水を行なうことができる。
【0031】
また、搬送面11上に処理物の圧搾具13を設けた場合は、処理物の体積が大きい搬送上流では最大回転半径Rの大きい回転板8で掻き送りしながら圧搾搬送し、体積が小さくなる下流側では最大回転半径Rの小さい回転板8で掻き送りしながら圧搾搬送するので、上流側、下流側共に効率のよい固液分離ができる。さらに、圧搾具13の下面側に設けた凹凸面16が回転板8の回転軌跡Dに対応しているので、掻き送り搬送がスムーズで且つ圧搾効率も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本固液分離装置の構造を示す側面断面図である。
【図2】本固液分離装置の平面図である。
【図3】搬送面の要部平面図である。
【図4】回転板及び案内部材の要部正面断面図である。
【図5】回転板の回転状態を示す側面図である。
【図6】搬送方向に隣接する回転板の配置状態、及び凹凸面を有する圧搾具の配置状態を示す側面図である。
【図7】本固液分離装置の正面断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 フレーム
2 受部
3 ケーシング
4 廃液口
5A,5B 分離ユニット
6 排出口
7 回転軸
8 回転板
9 案内部材
10 スペーサー
11 搬送面
12 アーム
13 圧搾具
14 エアシリンダ
16 凹凸面
17A,17B モーター
19A,19B 中継軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面的に且つ相互に平行に配置した複数本の各回転軸(7)に多数の回転板(8)を軸装し、その上面側を回転板(8)の回転により処理物を順次回転方向に掻き送りしながら搬送面(11)とした装置において、上記回転板の最大回転半径を、搬送上流側を大きくし、下流側に向かって順次小さくなるように形成した固液分離装置。
【請求項2】
搬送面(11)上に搬送下流側に向かって下降傾斜し搬送される処理物を搬送面(11)との間で押圧して圧搾する圧搾具(13)を配置し、回転板(8)が圧搾具(13)の下面側に配置された回転板(8)である請求項1の固液分離装置。
【請求項3】
圧搾具(13)の下面側に搬送面(11)を形成する各回転板(8)の回転軌跡に対応する凹凸面(16)を形成してなる請求項2の固液分離装置。
【請求項4】
凹凸面(16)が回転板(8)の回転軌跡に沿った円弧状の凹面を備えてなる請求項3の固液分離装置。
【請求項5】
回転板(8)が処理する処理物の掻き送り搬送をしない無負荷状態の際は回転板(8)を高速回転させ、処理物の掻き送り時は通常速度で回転させる早戻り制御を行なう制御手段を備えた請求項1,2,3又は4の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−307512(P2007−307512A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140973(P2006−140973)
【出願日】平成18年5月20日(2006.5.20)
【出願人】(399122985)株式会社研電社 (7)
【Fターム(参考)】