説明

固液分離装置

【課題】装置構成及び固液分離工程を簡素化し、動力コストを低減し、工事現場などへの設置が容易となる固液分離装置を提供すること。
【解決手段】固液混合物を被搬送物Wとしてこの被搬送物Wから固体分Wbと液体分Waとを分離する吸水搬送コンベア2を有する固液分離装置1において、吸水搬送コンベア2が、一対のローラ4a,4bからなるローラ部3と、ローラ4a(4b)の軸方向に所定間隔をあけてローラ部3の間に掛け回された二つの回転帯5,5と、回転帯5,5に一端部11aが保持されるとともに他端部11bが自由端となって二つの回転帯5,5の間に敷設され、回転帯5,5の循環経路Yに並んで吸水搬送ベルト10を形成する複数の吸水シート11と、吸水シート11を挟み込んでこの吸水シート11から排水する一対の排水ローラ15a,15bとを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場や工場などにて排出される固液混合物から固体分と液体分とを分離する固液分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の固液分離装置として、例えば下記特許文献1に開示されているものがある。この固液分離装置は、そのケーシング内に、液通過スリットが周壁に多数穿設されたスラリー収納ドラムを備えている。スラリー収納ドラムには、スラリー加圧シリンダが付設されるとともにスラッジ排出用チェックバルブが設けられている。また、スラリー収納ドラムの液通過スリットの外側には濾過体を介して負圧吸引チャンバが配設されており、スラリー収納ドラムは、負圧吸引チャンバを介して、バキュームポンプに接続されるとともに排水通路に接続されている。また、スラリー加圧シリンダにはスラリー加圧バルブが連結されている。
【0003】
上述した(下記特許文献1に開示の)固液分離装置によれば、建設現場や工場などにて排出される廃泥水などのスラリーを清澄水(液体)と固形粒子(固体)とに固液分離するに際し、まず、スラリーをスラリーポンプによりスラリータンクから送給通路を介してケーシング上部のスクリーンに送給し、礫などの粗粒分を分離してスラリー分だけをスラリー収納ドラム内に収納する。次に、スラリー収納ドラムに付設されたスラリー加圧シリンダに設けられたスラリー加圧バルブによりスラリー加圧シリンダの反復動作を介してスラリー収納ドラム内にてケーシングに許容最大圧力まで加圧し、スラリー収納ドラムの周壁に穿設された液通過スリットにより清澄水を通過させ、スラリー収納ドラム内に固形粒子を残留させて固液分離する。
【0004】
また、上述した(下記特許文献1に開示の)固液分離装置によれば、スラリー収納ドラムの外側に設けられた負圧吸引チャンバにバキュームポンプから所定の負圧が付与されていることによりスクリーンを介してスラリーの清澄水を吸引排出し、加圧濾過と負圧吸引濾過の相乗作用により、スラリーを清澄水と固形粒子とに分離する。ことのき、負圧吸引チャンバにおいては、フロートバルブにより清澄水が所定量排出されるとエアーを供給し、負圧吸引チャンバの清澄水を排水ポンプなどを介して排水通路から排出する。スラリー収納ドラム内の固形粒子のスラッジにおいては、スラッジ排出用チェックバルブのチェック圧調整機構により所定の圧力にてベルトコンベアなどに排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−39214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の固液分離装置は、フィルタープレス、デカンタ、スクリュープレス、遠心分離、真空脱水、熱乾燥などの大きな動力が必要になるとともに、固液分離するために複数の工程があり、各工程のそれぞれに動力を必要としていた。例えば上記特許文献1に開示の固液分離装置の場合は、スラリー収納ドラム内へのスラリーの供給、スラリー加圧シリンダによる加圧、負圧吸引チャンバへの負圧付与とエアーの供給、スラッジ排出のための加圧などの動力を必要とし、動力コストがかかっていた。また、固液分離に複数工程を経る分だけ装置構成が複雑、且つ大掛りになり、工事現場などにて現地で組み立てて設置するときには煩雑な作業を強いられていた。
【0007】
そこで本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、装置構成及び固液分離工程を簡素化し、動力コストを低減し、工事現場などへの設置が容易となる固液分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明による請求項1記載の固液分離装置は、固液混合物を被搬送物Wとして、前記被搬送物Wを搬送しながら該被搬送物Wから固体分Wbと液体分Waとを分離する吸水搬送手段2を有する固液分離装置1において、
前記吸水搬送手段2は、
少なくとも一対のローラ4a,4bからなるローラ部3と、
前記ローラ4a(4b)の軸方向に所定間隔をあけて前記ローラ部3の間に掛け回され、該ローラ部3の回転により循環する二つの回転帯5,5と、
前記回転帯5,5に一端部11aが保持されるとともに他端部11bが自由端となって二つの該回転帯5,5の間に敷設され、前記回転帯5,5の循環経路に沿って並んで前記被搬送物Wの吸水搬送ベルト10を形成する複数の吸水シート11と、
前記回転帯5,5の循環経路の所定位置に配設され、前記吸水搬送ベルト10を形成する前記吸水シート11を挟み込んで該吸水シート11から排水する一対の排水ローラ15a,15bと、
を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の固液分離装置は、前記吸水搬送ベルト10を形成する複数の前記吸水シート11の隣り合うもの同士を、前記回転帯5,5の循環方向Yの前方に位置する吸水シート11の前記他端部11bが前記循環方向Yの後方に位置する吸水シート11の前記一端部11aと重なるように並べることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の固液分離装置は、更に、前記吸水搬送手段2の上方に配設されて前記被搬送物Wの固液分離を補助する吸水補助手段20を有し、
前記吸水補助手段20は、
少なくとも一対のローラ22a,22bからなるローラ部21と、
前記ローラ22a(22b)の軸方向に所定間隔をあけて前記ローラ部21の間に掛け回され、該ローラ部21の回転により循環する二つの回転帯23,23と、
前記回転帯23,23に一端部31aが保持されるとともに他端部31bが自由端となって二つの該回転帯23,23の間に敷設され、前記回転帯23,23の循環経路に沿って並んで吸水ベルト30を形成する複数の吸水シート31と、
前記回転帯23,23の循環経路の所定位置に配設され、前記吸水ベルト30を形成する前記吸水シート31を挟み込んで該吸水シート31から排水する一対の排水ローラ34a,34bと、
を備えることを特徴としている。
【0011】
なお、前記吸水補助手段20では、前記吸水ベルト30を形成する複数の前記吸水シート31の隣り合うもの同士を、前記回転帯23,23の循環方向Y’の前方に位置する吸水シート31の前記他端部31bが前記循環方向Y’の後方に位置する吸水シート31の前記一端部31aと重なるように並べてもよい。
【0012】
請求項4記載の固液分離装置は、前記吸水シート11,31が前記回転帯5,5,23,23に着脱自在に保持されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固液混合物を被搬送物として、この被搬送物を複数の吸水シートからなる吸水搬送ベルトに載せて搬送するだけで固液分離が可能となる。これにより、固液分離を連続的に効率良く行うことができるようになる。しかも、装置構成及び固液分離工程が簡素となり、工事現場などへの設置が容易になるとともに、固液分離に必要な動力が搬送動力だけとなることから、動力コストを低減することができる。
【0014】
また、吸水搬送ベルトを形成する複数の吸水シートの隣り合うもの同士が重なることにより、吸水搬送ベルトを隙間のないように形成することができる。
【0015】
さらに、吸水搬送手段の上方に、吸水搬送手段と同様に吸水シートからなる吸水ベルトを備える吸水補助手段が配設されることにより、吸水搬送手段に搬送される被搬送物(固液混合物)の上面に残存する液体分を吸水することができる。これにより、更に確実な固液分離が可能となる。
【0016】
また、吸水搬送手段及び吸水補助手段のそれぞれの吸水シートが回転帯に着脱自在に保持されることにより、吸水シートの取り換えが容易になる。これにより、例えば、吸水シートの一部が破断したときなどに容易に取り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による固液分離装置の第一の実施の形態を示す正面図である。
【図2】(a)同実施の形態が備える吸水シートを示す平面図である。 (b)同実施の形態が備える吸水シートを示す正面図である。
【図3】同実施の形態が備える一対の排水ローラによる排水動作を示す説明図である。
【図4】本発明による固液分離装置の第二の実施の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
本発明による固液分離装置は、建設現場や工場などに設置され、そこから排出される汚泥などの固液混合物を被搬送物として、被搬送物を搬送しながらこの被搬送物から固体分と液体分とを分離する装置である。
【0019】
「第一の実施の形態」
まず、図1〜3を参照して本発明の第一の実施の形態を説明する。
図1に示すように、固液分離装置1(1A)は、汚泥などの固液混合物を被搬送物Wとして所定方向に搬送する吸水搬送手段としての吸水搬送コンベア2を有し、これを主な構成要件としている。
【0020】
吸水搬送コンベア2は、一対のローラ4a,4bからなるローラ部3と、ローラ4a(4b)の軸方向に所定間隔をあけてローラ部3、すなわち、一対のローラ4a,4bの間に掛け回された二つの回転帯5,5と、を備えている。
【0021】
ローラ部3の一対のローラ4a,4bのうち、一方は駆動ローラ4aに設定され、他方は従動ローラ4bに設定されている。なお、駆動ローラ4aは、図示しないモータなどの駆動源に連結されており、駆動源から駆動力を受けると所定方向に回転する。これら一対のローラ4a,4bは、固液分離装置1Aの図示しないフレームに支持されている。
【0022】
回転帯5,5は、ローラチェーンからなり、駆動ローラ4aの回転によって所定方向に循環する。また、図2(a)に示すように、二つの回転帯5,5の間には、回転帯5,5を連結するように連結部材6が架設されている。連結部材6は、回転帯5,5の循環経路に沿って所定間隔をあけて複数並んで設けられている。連結部材6の両端部、すなわち、回転帯5,5上に位置する部分には、回転帯5,5の循環方向Yに先端が向くように屈曲形成されてなる取付フック7,7が設けられている。
【0023】
また、吸水搬送コンベア2は、被搬送物Wを搬送するときにその搬送面を形成する吸水搬送ベルト10を備えている。吸水搬送ベルト10は、複数の吸水シート11からなる。図2(a)に示すように、吸水シート11は、略矩形のシート本体12と、シート本体12の循環方向Yの前方端縁の剛性を補強するように設けられている補強部材13と、から構成されている。補強部材13の両端部、つまり、回転帯5,5上に位置する部分には、回転帯5,5の取付フック7,7と係合させるための略矩形の取付孔14,14が設けられている。吸水シート11の取付孔14,14と回転帯5,5の取付フック7,7との係合によって、吸水シート11は回転帯5,5に着脱自在に保持されるようになる。また、複数の吸水シート11は、回転帯5,5に一端部11aが保持されるとともに、他端部11bが自由端となって二つの回転帯5,5の間に敷設されることとなる。図1に示すように、複数の吸水シート11は、回転帯5,5の循環経路Yに沿って並んで、上述したように吸水搬送ベルト10を形成する。このとき、複数の吸水シート11の隣り合うもの同士は、回転帯5,5の循環方向Yの前方に位置する吸水シート11の他端部11bが、回転帯5,5の循環方向Yの後方に位置する吸水シート11の一端部11aと重なるように並べられている。
【0024】
吸水シート11のシート本体12には、気孔径が厳密に管理された吸水スポンジを使用している。吸水スポンジの好適な例としては、ポリビニルアルコールスポンジ(PVAスポンジ)などがある。PVAスポンジには気孔径80〜700μmの種類のものがあり、固液混合物の固体分の粒子の大きさに応じて適宜選択することができる。PVAスポンジは、気孔率が90%と高く、液体分が通過するときの圧損が低く、大容量の液体分の保持を可能とする。また、縦横にめぐる微細気孔によって毛細管現象が生じるため、自己吸水性、保水性に優れている。
【0025】
さらに、吸水搬送コンベア2は、吸水搬送ベルト10を形成する複数の吸水シート11から排水するための一対の排水ローラ15a,15bを備えている。一対の排水ローラ15a,15bは、回転帯5,5の循環経路の所定位置に配設されている。具体的には、図1に示すように、吸水搬送コンベア2の下側、つまり、吸水搬送ベルト10の搬送面とは反対側となる非搬送面側に設けられ、一方の排水ローラ15aと他方の排水ローラ15bにて吸水シート11を挟み込むように設けられている。また、一対の排水ローラ15a,15bは、一方の排水ローラ15aを固定し、他方の排水ローラ15bを上下に可動とし、可動となる排水ローラ15bには挟み込んだ吸水シート11を好適に絞るために上方に向けてテンションが付与されている。
【0026】
図1に示すように、吸水搬送コンベア2の下方には、一対の排水ローラ15a,15bによって吸水シート11から排出された被搬送物Wの液体分Waを受けるための排水タンク16が設置されている。
【0027】
また、図1に示すように、吸水搬送コンベア2の循環方向Yの前方には、吸水搬送ベルト10(吸水シート11)によって搬送された被搬送物Wの固体分Wbを受けるためのスクレーパ17が設けられている。なお、スクレーパ17は、循環する吸水搬送ベルト10上の固体分Wbを掻き落とすように、一端部17aを吸水シート11に僅かに接触させている。スクレーパ17の他端部17bは、掻き落とした固体分Wbを外に排出するために開放されている。
【0028】
さらに、図1に示すように、吸水搬送コンベア2における被搬送物Wの搬入部位(図1にて左側にあらわれる部位)には、吸水搬送ベルト10(吸水シート11)の剛性を補強するために補強部材18が設けられている。補強部材18は、パンチングメタルなどの板状部材にて形成されおり、吸水シート11をその上面にて支持して、被搬送物Wを受けたときの吸水シート11の撓みなどを防止する。また、補強部材18を、例えば、複数のパイプ部材が回転帯5,5の循環方向Yに沿って並んでいる構成としてもよい。このように構成すれば、循環する吸水シート11の摩擦抵抗を軽減することができる。
【0029】
ここから、固液分離装置1Aによる固液分離の工程について説明する。
図1に示すように、作業者などによって、図1の左側にあらわれる吸水搬送コンベア2の搬入部位に固液混合物を連続的に搬入する。吸水搬送コンベア2では、搬入された固液混合物を被搬送物Wとして、回転帯5,5の循環方向Yに搬送する。このとき、吸水搬送ベルト10を形成する複数の吸水シート11が被搬送物Wから液体分Waを毛細管現象により吸収し、吸水シート11上には固体分Wbだけが残るようになる。したがって、吸水搬送コンベア2は、吸水シート11上に固体分Wbを載せた状態で搬送し、吸水シート11内に液体分Waを吸収した状態で搬送することになる。
【0030】
吸水搬送コンベア2は、吸水シート11上から被搬送物Wの固体分Wbをスクレーパ17によって掻き落とし、スクレーパ17を介して図示しない固体収容タンクなどに固体分Wbを排出する。
【0031】
図3に示すように、被搬送物Wの液体分Waを吸収した吸水シート11は、循環経路に沿って循環するうちに、一対の排水ローラ15a,15bの間に挟み込まれる。吸水シート11が圧縮されながら循環することにより、吸水シート11内の液体分Waは循環方向Yの後方に位置する他端部11b側に押しやられる。こうして、吸水シート11の他端部11bから液体分Waを排水タンク16に排出する。
【0032】
固液分離装置1Aは、上述した工程を連続して繰り返すことにより、固液混合物(被搬送物W)から固体分Wbと液体分Waとを分離する。
【0033】
また、本発明の発明者等は、上述した第一の実施の形態(固液分離装置1A)を用いて芋焼酎の蒸留廃液を固液分離する実験を行った。この実験では、蒸留廃液100gを吸水搬送コンベア2にて搬送して、その後、スクレーパ17にて掻き落とした蒸留廃液の固体分の重さを測定した。そして、これを10回実施して、その平均値を算出した。
【0034】
【表1】

【0035】
実験の結果、上記表1に示すように、約50%の液体分を回収するとともに、約50%の固体分を回収することが実証された。
【0036】
上述した第一の実施の形態によれば、固液混合物を被搬送物Wとして、この被搬送物Wを複数の吸水シート11からなる吸水搬送ベルト12に載せて搬送するだけで固液分離が可能となる。これにより、固液分離を連続的に効率良く行うことができるようになる。しかも、装置構成及び固液分離工程が簡素となり、工事現場などへの設置が容易になるとともに、固液分離に必要な動力が搬送動力だけとなることから、動力コストを低減することができる。この結果、イニシャルコスト、ランニングコストなどを大幅に削減することができる。
【0037】
また、吸水搬送ベルト12を形成する複数の吸水シート11の隣り合うもの同士が重なることにより、吸水搬送ベルト12を隙間のないように形成することができる。
【0038】
さらに、複数の吸水シート11がそれぞれ二つの回転帯5,5に保持されることにより、固液分離装置1Aが稼動している最中に、吸水シート11の片寄りやスリップ、ローラ4a,4bの回転不良、ローラ4a,4bの異常摩耗などの不具合の発生を抑えることが可能となる。
【0039】
また、吸水シート11が回転帯5,5に着脱自在に保持されることにより、吸水シート11の取り換えが容易になる。これにより、例えば、吸水シート11が破断したときなどに容易に取り換えることができる。この場合、吸水搬送ベルト12全体を交換する必要はなく、破断した吸水シート11だけを取り換えればよいため、安価となり、メンテナンスにかかるコストを低減することができる。
【0040】
なお、例えば、吸水搬送ベルト12を一枚状の吸水シートにて構成した場合、上述した一対の排水ローラ15a,15bなどで吸水搬送ベルト12(吸水シート)から強制的に排水しようとすると、吸水シート内にて液体分の逆流現象が生じ、液体分は時間の経過と共に飽和状態となる。ところが、上述した第一の実施の形態では、吸水搬送ベルト12を複数の吸水シート11により形成することで、各吸水シート11の各端部(他端部11b)から排水することができる。
【0041】
「第二の実施の形態」
次に、図4などを参照して本発明の第二の実施の形態を説明する。
なお、第二の実施の形態において、上述した第一の実施の形態と同等又は同一の箇所には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図4に示すように、固液分離装置1(1B)は、上述した吸水搬送コンベア2の上方に配設されて被搬送物の固液分離を補助する吸水補助手段としての吸水補助コンベア20を有し、吸水搬送コンベア2及び吸水補助コンベア20を主な構成要件としている。
【0043】
吸水補助コンベア20は、一対のローラ22a,22bからなるローラ部21と、ローラ22a(22b)の軸方向に所定間隔をあけてローラ部21、すなわち、一対のローラ22a,22bの間に掛け回された二つの回転帯23,23と、を備えている。
【0044】
ローラ部21の一対のローラ22a,22bのうち、一方は駆動ローラ22aに設定され、他方は従動ローラ22bに設定されている。なお、図示しないが、駆動ローラ22aは、吸水搬送コンベア2の駆動ローラ4aとローラチェーンなどで連動連結されており、駆動ローラ4aの回転によりこれと同期して回転する。このとき、駆動ローラ22aの回転方向は、駆動ローラ4aの回転方向とは逆向きとなる。また、一対のローラ22a,22bは、固液分離装置1Bの図示しないフレームに支持されている。
【0045】
回転帯23,23は、ローラチェーンからなり、駆動ローラ22aの回転によって所定方向に循環する。なお、回転帯23,23の循環方向Y’は、吸水搬送コンベア2の回転帯5,5の循環方向Yとは逆向きとなる。また、二つの回転帯23,23は、図2(a)を参照して説明した回転帯5,5と同様に、その間には回転帯23,23を連結するように連結部材が架設されている。連結部材は、回転帯23,23の循環経路に沿って所定間隔をあけて複数並んで設けられている。さらに、連結部材の両端部、すなわち、回転帯23,23上に位置する部分には、回転帯23,23の循環方向Y’に先端が向くように屈曲形成されてなる取付フック24,24が設けられている。
【0046】
また、吸水補助コンベア20は、吸水搬送コンベア2にて搬送される被搬送物W(図1参照)の上面に接触する吸水ベルト30を備えている。吸水ベルト30は、複数の吸水シート31からなる。吸水シート31は、図2(a)を参照して説明した吸水シート11と同様に、略矩形のシート本体32と、シート本体32の循環方向Y’の前方端縁の剛性を補強するように設けられている補強部材と、から構成されている。補強部材の両端部、つまり、回転帯23,23上に位置する部分には、回転帯23,23の取付フック24,24と係合させるための略矩形の取付孔33,33が設けられている。吸水シート31の取付孔33,33と回転帯23,23の取付フック24,24との係合によって、吸水シート31は回転帯23,23に着脱自在に保持されるようになる。また、複数の吸水シート31は、回転帯23,23に一端部31aが保持されるとともに、他端部31bが自由端となって二つの回転帯23,23の間に敷設されることとなる。図4に示すように、複数の吸水シート31は、回転帯23,23の循環経路Y’に沿って並んで吸水ベルト30を形成する。
【0047】
なお、複数の吸水シート31の隣り合うもの同士は、図4の例では僅かな隙間をあけて並べられているが、上述した吸水搬送コンベア2の吸水シート11のように、回転帯23,23の循環方向Y’の前方に位置する吸水シート31の他端部31bが、回転帯23,23の循環方向Y’の後方に位置する吸水シート31の一端部31aと重なるように並べられてもよい。
【0048】
また、吸水シート31のシート本体32には、上述した吸水シート11のシート本体12同様、PVAスポンジなどの吸水スポンジを使用することが望ましい。
【0049】
さらに、吸水補助コンベア20は、吸水ベルト30を形成する複数の吸水シート31から排水するための一対の排水ローラ34a,34bを備えている。一対の排水ローラ34a,34bは、回転帯23,23の循環経路の所定位置に配設されている。具体的には、図4に示すように、吸水補助コンベア20の上側、つまり、吸水ベルト30の被搬送物との接触面とは反対側となる非接触面側に設けられ、一方の排水ローラ34aと他方の排水ローラ34bにて吸水シート31を挟み込むように設けられている。また、一対の排水ローラ34a,34bは、一方の排水ローラ34aを固定し、他方の排水ローラ34bを上下に可動とし、可動となる排水ローラ34bには挟み込んだ吸水シート31を好適に絞るために上方に向けてテンションが付与されている。
【0050】
図4に示すように、吸水補助コンベア20の内部には、一対の排水ローラ34a,34bによって吸水シート31から排出された被搬送物の液体分を受けるための排水タンク35が設置されている。
【0051】
また、図4に示すように、吸水補助コンベア20の循環方向Y’の前方には、吸水ベルト30(吸水シート31)が被搬送物の上面に接触することで付着した被搬送物の固体分を掻き落とすためのサブスクレーパ36が設けられている。サブスクレーパ36は、循環する吸水ベルト30に対してその一端部36aを吸水シート30に僅かに接触させている。サブスクレーパ36の他端部36bは、掻き落とした固体分をスクレーパ17に向けて排出するために開放されている。
【0052】
ここから、固液分離装置1Bによる固液分離の工程について説明する。
上述した第一の実施の形態と同様に、作業者などによって、吸水搬送コンベア2の搬入部位に固液混合物を連続的に搬入する。吸水搬送コンベア2では、搬入された固液混合物を被搬送物として、回転帯5,5の循環方向Yに搬送する。このとき、吸水搬送ベルト10を形成する複数の吸水シート11が被搬送物から液体分を毛細管現象により吸収し、吸水シート11上には固体分だけが残るようになる。したがって、吸水搬送コンベア2は、吸水シート11上に固体分を載せた状態で搬送し、吸水シート11内に液体分を吸収した状態で搬送することになる。さらに、固液分離装置1Bでは、吸水搬送コンベア2の上方に配設されている吸水補助コンベア20の吸水ベルト30(吸水シート31)が、吸水搬送ベルト10上の被搬送物の上面に接触してこの被搬送物の上面に残存する液体分を毛細管現象により吸収し、吸水シート31内の液体分を一対の排水ローラ34a,34bにて排水タンク35に排出する。吸水シート31上に付着した被搬送物の固体分はサブスクレーパ36にて掻き落として排出する。
【0053】
吸水搬送コンベア2は、吸水シート11上から被搬送物の固体分をスクレーパ17にて掻き落とし、スクレーパ17を介して図示しない固体収容タンクなどに固体分を排出する。
【0054】
固液分離装置1Bは、上述した工程を連続して繰り返すことにより、固液混合物(被搬送物)から固体分と液体分とを分離する。
【0055】
また、本発明の発明者等は、第一の実施の形態と同様に、第二の実施の形態(固液分離装置1B)を用いて芋焼酎の蒸留廃液を固液分離する実験を行った。この実験では、蒸留廃液100gを吸水搬送コンベア2にて搬送して、その後、スクレーパ17及びサブスクレーパ36にて掻き落とした蒸留廃液の固体分の重さを測定した。そして、これを10回実施して、その平均値を算出した。
【0056】
【表2】

【0057】
実験の結果、上記表2に示すように、約82%の液体分を回収するとともに、約18%の固体分を回収することが実証された。これによると、第二の実施の形態(固液分離装置1B)は第一の実施の形態(固液分離装置1A)よりも高性能に固液分離したことがわかる。
【0058】
上述した第二の実施の形態によれば、第一の実施の形態と同様の効果に加えて、吸水搬送コンベア2の上方に吸水補助コンベア20が配設されることにより、吸水搬送コンベア2に搬送される被搬送物(固液混合物)の上面に残存する液体分を吸水することができる。これにより、更に確実な固液分離が可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1(1A,1B)…固液分離装置
2…吸水搬送手段としての吸水搬送コンベア
3…ローラ部
4a,4b…一対のローラ
5…回転帯
10…吸水搬送ベルト
11…吸水シート
11a…一端部
11b…他端部
15a,15b…一対の排水ローラ
20…吸水補助手段としての吸水補助コンベア
21…ローラ部
22a,22b…一対のローラ
23…回転帯
30…吸水ベルト
31…吸水シート
31a…一端部
31b…他端部
34a,34b…一対の排水ローラ
W…被搬送物
Wa…液体分
Wb…固体分
Y…循環方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液混合物を被搬送物として、前記被搬送物を搬送しながら該被搬送物から固体分と液体分とを分離する吸水搬送手段を有する固液分離装置において、
前記吸水搬送手段は、
少なくとも一対のローラからなるローラ部と、
前記ローラの軸方向に所定間隔をあけて前記ローラ部の間に掛け回され、該ローラ部の回転により循環する二つの回転帯と、
前記回転帯に一端部が保持されるとともに他端部が自由端となって二つの該回転帯の間に敷設され、前記回転帯の循環経路に沿って並んで前記被搬送物の吸水搬送ベルトを形成する複数の吸水シートと、
前記回転帯の循環経路の所定位置に配設され、前記吸水搬送ベルトを形成する前記吸水シートを挟み込んで該吸水シートから排水する一対の排水ローラと、
を備えることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記吸水搬送ベルトを形成する複数の前記吸水シートの隣り合うもの同士を、前記回転帯の循環方向の前方に位置する吸水シートの前記他端部が前記循環方向の後方に位置する吸水シートの前記一端部と重なるように並べることを特徴とする請求項1記載の固液分離装置。
【請求項3】
更に、前記吸水搬送手段の上方に配設されて前記被搬送物の固液分離を補助する吸水補助手段を有し、
前記吸水補助手段は、
少なくとも一対のローラからなるローラ部と、
前記ローラの軸方向に所定間隔をあけて前記ローラ部の間に掛け回され、該ローラ部の回転により循環する二つの回転帯と、
前記回転帯に一端部が保持されるとともに他端部が自由端となって二つの該回転帯の間に敷設され、前記回転帯の循環経路に沿って並んで吸水ベルトを形成する複数の吸水シートと、
前記回転帯の循環経路の所定位置に配設され、前記吸水ベルトを形成する前記吸水シートを挟み込んで該吸水シートから排水する一対の排水ローラと、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記吸水シートが前記回転帯に着脱自在に保持されることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−183362(P2011−183362A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54597(P2010−54597)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(594066604)柳沢コンクリート工業株式会社 (3)
【出願人】(399019722)
【Fターム(参考)】