説明

園芸用結束機の荷重軽減機構

【課題】結束時の操作荷重を軽減させる。
【解決手段】クリンチャアーム2を開閉操作してクリンチャアーム2の先端のヘッド部8とヘッド受け部9とを当接、離間させ、開放時にヘッド受け部9とヘッド部8との間に張られた結束テープa内に被結束物を入れ込んだ後、クリンチャアーム2を閉じ、さらにヘッド受け部9からステープルを打ち出してヘッド部で折り曲げて結束テープを綴じて被結束物を結束する園芸用結束機において、開放状態から結束までの間に係合部に対して係合する操作リンク4の係合部のうち、クリンチャアーム2が閉じるまでの第1の係合部18aに続いてステープルが打ち出されてから折り曲げが終了するまでの第2の係合部18bを有するとともに、第1の係合部18aのメインハンドル1の長手方向に対する角度を60°よりも大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステープルで結束テープを綴じる段階における操作荷重を軽減させる園芸用結束機の荷重軽減機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、苗木や木の枝などを結束テープによって結束して支柱に固定する用途に供される園芸用結束機として、特許文献1に示されるようなものが知られている。
【0003】
この結束機は、細長の主桿部の中間に作動アームの基部を軸支し、レバーの中間部には操作リンクの中間部を回動自在に軸着し、この軸着部の一方を握り部とし、他方の先端に形成したフック部を上記主桿部の側面に設けた係合突起に係合させ、上記握り部と主桿部とを握り締め、解放して上記レバーを開閉操作することにより上記レバーの先端のヘッド部と上記主桿部の前端のヘッド受け部とを当接、離間可能とし、開放時に上記ヘッド受け部とヘッド部との間に張られた結束テープ内に外から被結束物を入れ込んだ後、上記レバーを閉じ、さらに上記ヘッド受け部からステープルを打ち出してヘッド部で折り曲げて結束テープを綴じることにより被結束物を結束するものである。
【0004】
そして、上記レバー(5)が開放状態から結束までの間に上記係合突起(9)に対する係合部(30)は、直線状ではなく2段に形成され、中間部の傾斜が大きくなるように形成されている。その理由は、上記レバーを閉じた後、さらにステープルを打ち出して結束するときの操作荷重が最も大きいので、このときに係合突起が係合する係合部の傾斜を大きくすることによって同じ操作荷重でも大きな力を得ることができるようにするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平4−46543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記園芸用結束機によって連続して結束作業を続けると、疲労しやすいという問題があった。
【0007】
本発明は前記欠点を解消し、結束時にステープルの脚部を曲げる際の操作荷重が最も大きいことに着目し、結束時の操作荷重を軽減させることができる、園芸用結束機の荷重軽減機構を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、メインハンドルの中間にクリンチャアームの基部を軸支し、クリンチャアームの中間部には操作リンクの中間部を回動自在に軸着し、この軸着部の一方を握り部とし、他方の先端に形成したフック部を上記メインハンドルに設けたフック係合部に係合させ、上記握り部とメインハンドルとを握り締め、解放して上記クリンチャアームを開閉操作することにより上記クリンチャアームの先端のヘッド部と上記メインハンドルの前端のヘッド受け部とを当接、離間可能とし、開放時に上記ヘッド受け部とヘッド部との間に張られた結束テープ内に外から被結束物を入れ込んだ後、上記クリンチャアームを閉じ、さらに上記ヘッド受け部からステープルを打ち出してヘッド部で折り曲げて結束テープを綴じることにより被結束物を結束する園芸用結束機において、上記操作リンクには、上記フック部が上記フック係合部に係合した開放状態から上記クリンチャアームが閉じるまで係合しながら摺動する第1の係合部と、この第1の係合部に続いてステープルが打ち出されてから折り曲げが終了するまで係合しながら摺動する第2の係合部を形成するとともに、上記第1の係合部の上記メインハンドルの長手方向に対する角度を60°よりも大きくしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記第1の係合部の上記メインハンドルの長手方向に対する角度を62°〜65°としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、操作リンクには、フック部がフック係合部に係合した開放状態からクリンチャアームが閉じるまで係合しながら摺動する第1の係合部と、この第1の係合部に続いてステープルが打ち出されてから折り曲げが終了するまで係合しながら摺動する第2の係合部を形成されており、上記第1の係合部の上記メインハンドルの長手方向に対する角度が、従来は60°に設定されていたところ、これを60°よりも大きくしたから、全体として操作荷重は従来に比べて小さくなる。したがって、操作荷重が軽減され、長時間作業を続けても疲労しにくいという効果を得ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、第1の係合部の上記メインハンドルの長手方向に対する角度を62°〜65°の適正範囲に改善した。これにより、作動初期の操作荷重は大きいが、作動初期状態を抜け出してしまえば、操作荷重は小さくなるから、全体の操作荷重を軽減し、長時間作業を続けても疲労しにくいという効果を効果的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る園芸用結束機の一部を断面で示した側面図である。
【図2】上記結束機の閉じ状態の側面図である。
【図3】上記結束機の開き状態の側面図である。
【図4】上記結束機の結束物の囲い込み状態の側面図である。
【図5】上記結束機の閉じ状態の側面図である。
【図6】上記結束機のクリンチ終了状態の側面図である。
【図7】図5の要部の拡大図である。
【図8】(a)(b)は本発明に係る係合部と従来の係合部とを示した要部の拡大図である。
【図9】(a)(b)は他の荷重軽減機構に供される操作リンクの側面図である。
【図10】第1の係合部の角度と荷重の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は園芸用結束機の側面図であり、この結束機は細長のメインハンドル1の中間に設けた回転軸3にクリンチャアーム2の基部を軸支し、クリンチャアーム2の中間部に設けた軸5には操作リンク4の中間部を回動自在に軸着し、この軸着部の一方を握り部4aとし、他方のリンク部4bの先端に形成したフック部6を上記メインハンドル1の側部に設けたローラ状フック係合部7に係合させ、上記握り部4aとメインハンドル1とを握り締め、解放して上記クリンチャアーム2を開閉操作することにより上記クリンチャアーム2の先端のヘッド部8と上記メインハンドル1の前端のヘッド受け部9とを当接、離間可能としたものである。
【0014】
メインハンドル1の後端部には、結束テープの収容部10が形成され、結束テープaの先端はメインハンドル1の前端ヘッド受け部9の導出部11に引き出し可能に保持されている。また、メインハンドル1にはステープラ本体部12が配置されている。また、ステープラ本体部12は通常のステープラと同様にマガジン部13とステープル打ち出し部14とを備え、メインハンドル1の中間部の上記軸3に回動可能に取り付けられている。マガジン部13には門形のステープルを連結した連結ステープルが収納されている。また、ステープル打ち出し部14には、マガジン部13の先頭のステープルを下方に打ち出すドライバプレート15が設けられている。
【0015】
クリンチャアーム2のヘッド部8には、上記ステープル打ち出し部14に対応するクリンチャ溝16と、上記結束テープaの先端の引き出し部17が設けられている。
【0016】
上記構成において、苗木や木の枝などを結束テープaによって結束するときは、まず図2のようにクリンチャアーム2を閉じてそのヘッド部8の引き出し部17にヘッド受け部9の結束テープaの先端を保持させて図3のように開放する。さらに図4のように苗木や枝などの被結束物bを結束テープaの外側から入れ込んで図5のようにクリンチャアーム2を閉じる。さらに、図6のように操作リンク4の握り部4aを強く握り締めてヘッド部8をさらに押し込み、ドライバプレート(15)によりマガジン部13の先端のステープルを打ち出し、結束テープaを貫通させてヘッド部8のクリンチャ溝16に押し付けてステープルの脚部を折り曲げて結束テープaを綴じる。同時に結束テープaはカットされる。これにより、結束が終了する。
【0017】
ところで、上述のように操作リンク4を握り締めてから結束テープaを綴じるまでの結束機の動作には、クリンチャアーム2が開放状態から閉じ状態となるまでの第1段階の動作(図1から図2又は図3から図4の動作)と、閉じ状態からドライバプレート15を作動させてステープルを打ち出して結束テープaを綴じるまでの第2段階の動作(図5から図6の動作)とが認められる。これらの2段階の動作が行なわれる間、操作リンク4の先端のフック部6に続く係合部18は、上記係合部7に対して連続的に移動しながら係合する。
【0018】
上記係合部18も上記動作段階に応じて、上記クリンチャアーム2が開放状態から閉じるまでの第1の係合部18aと、閉じた後にステープルが打ち出されてから折り曲げが終了するまでの第2の係合部18bとに分けることができる。
【0019】
ところで、クリンチャアーム2を単に閉じる第1段階の動作よりも、クリンチャアーム2が閉じた後、ステープルを打ち出して折り曲げる第2段階の動作の方が操作荷重が大きいことは明らかである。
【0020】
これに対し、図7のように、第2の係合部18bが第1の係合部18aの終端19に対して急角度に形成して急角度に形成されている方が、操作荷重は軽減されるが、その半面ストロークが長くなる。逆に、緩やかな角度に形成されていると、ストロークは短くなるが、操作荷重は重くなってしまう。
【0021】
そこで、上記第2段階における、ステープルが打ち出されてから折り曲げが終了するまでのステープルの状態を詳しくみると、ステープルが打ち出された直後はステープルの脚部は真直状態であるが、脚部の先端がクリンチャ溝16に当接し、さらに押し込まれることにより曲がり始め、さらに完全に曲がり終わる。そして、ステープルが打ち出されてからステープルが曲り始まるまでの段階の荷重が最も大きく、ある程度曲がり始めると、それ以後の荷重は急減する。
【0022】
以上を踏まえ、第2の係合部18bを、図7および図8(a)のように、ステープルを打ち出してからステープルが曲り始まるまでに移動する前段係合部20と、ステープルが曲り始めてから曲り終わるまでに移動する後段係合部21とに分け、前段係合部20は第1の係合部18aの終端19から略直角に形成され、後段係合部21は緩やかに形成されている。
【0023】
すなわち、ステープルを曲げるのに大きな力を必要とする前段係合部20が第1の係合部18aの終端に対して直角に近づけば近づくほど操作荷重は小さくなるが、操作リンク4のストロークは大きくなり、握り部4aは部品干渉を起こしてしまう。ところが、ステープルが曲がり始まると、荷重は急減するから、後段係合部21は緩やかな角度でよい。そこで、後段係合部21を緩やかに形成されている。このように、ステープルの折り曲げ荷重は始めは大きく、途中から急減することに応じて、第2の係合部18bを効果的な荷重配分とストローク調整に基づいて形成することにより、結束時の操作荷重を軽減することができる。図8(b)に示される、従来の第2の係合部18b´と比較してみると、クリンチ時に操作リンク4の握り部4aに力を入れて握った際に、図7のように、クリンチャアーム2に作用する力f2の角度は、従来のクリンチャアーム2に作用する力f1の角度よりもクリンチャアーム2の回転軸3側から遠のくため、操作荷重は軽減される。
【0024】
なお、第2の係合部18bは前段係合部20を急角度に形成し、その後段係合部21は緩やかに形成すればよく、2直線20、21で形成するものに限定されない。例えば、図9(a)に示すように、3以上の複数の直線20a、21a、21b・・・で形成してもよく、あるいは同図(b)に示されるように、曲線20Aで形成してもよい。
【0025】
また、第2の係合部18bの角度とは、図8(a)に示されるように、第1の係合部18aの終端19と回転軸5の中心とを結ぶ線と第2の係合部18bの前段係合部20とのなす角度のことで、上記角度が急角度であるとは、操作リンク4の回転軸5を中心として上記第1の係合部18aの終端19とを結ぶ線を半径とする円弧の上記終端19における接線と第2の係合部18bとのなす角度(つまり90°)よりも小さく、従来の第1の係合部18a´の終端19´と回転軸5とを結ぶ線と第2の係合部18b´とのなす角度α(図8(b)参照)よりも大きい角度のことである。なお、第2の係合部18bの角度が90°よりも小さいのは、90°よりも大きくなると、第2の係合部18bがローラ状係合部7に引っかかってしまい、操作リンク4が戻りにくくなり、現実にはありえないからである。ちなみに、図8(b)に示されるように、従来の第1の係合部18a´の終端19´と回転軸5とを結ぶ線と第2の係合部18b´とのなす角度αは約30°であった。
【0026】
ところで、上述のように操作リンク4をクリンチ荷重を軽減できる形状にした場合、図10に示されるように、作動初期状態のメインハンドル1と操作リンクの操作部4aとの間の距離(メインハンドルの操作ストローク)Lを従来のものと同等にしたとき、第1の係合部18aのメインハンドル1の長手方向(一点鎖線で示す)に対する角度θ1を従来の第1の係合部18a´のメインハンドルの長手方向に対する角度θ2よりも大きくすると、角度θ1が急角度になればなるほど、物理的には操作荷重は小さくなる。しかし、この角度θ1は操作リンク4に対して起きた状態になってしまう。つまり、クリンチャアームを開放状態から閉じ状態に作動開始するとき、操作リンク4の握り部4aに力を入れて握った際に、クリンチャアーム2に作用する力f3の角度が、従来のクリンチャアーム2に作用する力f4の角度よりもクリンチャアーム2の回転軸3側に近づいてしまうため、操作荷重が重くなってしまう。このため、従来は角度θ2を約60°に設定していた。
【0027】
しかし、クリンチャアーム2が開いた状態か閉じるまでの第1段階の操作荷重を詳しくみると、特に作動初期は静的摩擦係数が作用するので、荷重は大きいが、作動を開始してしまうと、上記静的摩擦係数が動的摩擦係数で動くので、後の荷重は重さを感じないほど小さくなるということがわかった。
【0028】
つまり、角度θ1を従来の角度θ2に近づければ、作動初期の操作荷重は従来と同様の軽さに近づく。角度θ1を角度θ2よりも大きくすると、作動初期は操作荷重が大きいが、しかし作動初期状態を抜け出してしまえば、操作荷重は小さくなる。これらを勘案し、最も好ましい角度は、約62°〜65°(角度θ1)とするのがよい。
【0029】
上述のように、上記結束機によれば、操作部4aのストロークを従来と同じに維持した状態で、第1の係合部18aのメインハンドル1の長手方向に対する角度が従来のθ2からθ1に改善されたので、全体の操作荷重を軽減し、長時間作業を続けても疲労しにくいという効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
a 結束テープ
1 メインハンドル
2 クリンチャアーム
3 回転軸
4 操作リンク
4a 握り部
8 ヘッド部
9 ヘッド受け部
18 係合部
18a 第1の係合部
18b 第2の係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインハンドルの中間にクリンチャアームの基部を軸支し、クリンチャアームの中間部には操作リンクの中間部を回動自在に軸着し、この軸着部の一方を握り部とし、他方の先端に形成したフック部を上記メインハンドルに設けたフック係合部に係合させ、上記握り部とメインハンドルとを握り締め、解放して上記クリンチャアームを開閉操作することにより上記クリンチャアームの先端のヘッド部と上記メインハンドルの前端のヘッド受け部とを当接、離間可能とし、開放時に上記ヘッド受け部とヘッド部との間に張られた結束テープ内に外から被結束物を入れ込んだ後、上記クリンチャアームを閉じ、さらに上記ヘッド受け部からステープルを打ち出してヘッド部で折り曲げて結束テープを綴じることにより被結束物を結束する園芸用結束機において、
上記操作リンクには、上記フック部が上記フック係合部に係合した開放状態から上記クリンチャアームが閉じるまで係合しながら摺動する第1の係合部と、この第1の係合部に続いてステープルが打ち出されてから折り曲げが終了するまで係合しながら摺動する第2の係合部を形成するとともに、
上記第1の係合部の上記メインハンドルの長手方向に対する角度を60°よりも大きくしたことを特徴とする、園芸用結束機の荷重軽減機構。
【請求項2】
上記第1の係合部の上記メインハンドルの長手方向に対する角度を62°〜65°としたことを特徴とする、請求項1に記載の園芸用結束機の荷重軽減機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−183912(P2010−183912A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116766(P2010−116766)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【分割の表示】特願2005−244859(P2005−244859)の分割
【原出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】