説明

土のう袋とこの土のう袋を用いた土のうの製作方法

【課題】吊るために必要な材料が少なく縫製も簡単な、土のう袋およびそれを用いた土のうの製作方法を提供する。
【解決手段】土のう袋10は、土のう袋10の内側に、袋底部16の袋材と一体化されたロープ13を設け、このロープ13を用いて、中詰め材を充填した土のう袋を吊り下げるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成繊維や天然繊維製の土のう袋で砂、土砂などの中詰め材を充填し、重し、土留め、せき止めやコンテナバッグなどとして使用する土のう袋およびこの土のう袋を用いた土のうの製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の土のう袋がたとえば、特開2003−105734号公報(特許文献1)や、特開2006−45889号公報(特許文献2)に開示されている。図8は、これらの公報に開示された土のう袋を模式化した図である。図8を参照して、従来の土のう袋100は、土砂等の中詰材を収容する立方体形状の土のう袋本体101と、土のう袋本体101を吊るための吊りベルト102とが設けられている。
【特許文献1】特開2003−105734号公報(要約)
【特許文献2】特開2006−45889号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の土のう袋は、袋の外側に取り付けられた吊りベルトで吊られているが、4点吊り、6点吊りなど吊りベルトの縫製に手間取る。通称1トン土のうと言われるような質量の大きい土のうにおいては、土のう袋の外側に取り付けたベルトで吊られているが、ベルトの取り付けには縫製する手間がかかり、質量が大きくなるほどベルトの幅、厚さ、本数も増大し、ベルトに使用する材料も多くなるという問題があった。
【0004】
この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、吊るために必要な材料が少なく、縫製も簡単な、土のう袋およびそれを用いた土のうの製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る土のう袋は、土のう袋の内側に、袋底部の袋材と一体化されたロープを設け、このロープを用いて、中詰め材を充填した土のう袋を吊るようにしたことを特徴とする。
【0006】
好ましくは、吊りロープが合成繊維製又は天然繊維製のロープで無端状、または、両端部に輪を有している。
【0007】
この発明の他の局面においては、土のうの製作方法は、上記土のう袋から吊りロープを袋外に仮だしした状態で、土のう袋に、中詰め材を充填した後、吊りロープを土のう袋開口部より袋外に突出させ、開口部を紐で括って閉じる。
【0008】
この発明のさらに他の局面においては、土のう袋は、開口部と底部とを有する。土のう袋の開口部には、開口部を閉じるための第1ロープが設けられ、底部には、底部を絞るための第2ロープが設けられ、第2ロープを当該土のう袋を吊るための吊りロープとして使用する。
【0009】
第2ロープは無端状、または、両端部に輪を有してもよい。
【0010】
この発明のさらに他の局面においては、土のうの製作方法は、上記の土のう袋を反転して、開口部から、反転した土のう袋の内部に中詰め材を充填し、第2ロープを開口部から取り出し、開口部を第1ロープで閉じることにより、土のうを製作する。
【発明の効果】
【0011】
土のう袋の内側に袋底部の袋材と一体化されたロープを設け、このロープで中詰め材を充填した土のう袋を吊るようにした。したがって、土のう袋の内側に取り付けられた吊りロープで土のう袋が吊られるので、土のうの質量が大きくなっても、質量に合わせて適合する強さのロープを選定することにより、常に1本のロープで吊ることが出来る。
【0012】
その結果、吊るために必要な材料が少なく、縫製も簡単な、土のう袋を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施の形態に係る土のう袋の全体構成を示す図である。図1を参照して、土のう袋10は合成繊維又は天然繊維製の織物を縫製して作成される。土のう袋10は、開口部14と、その反対側に設けられた一直線状の袋底部16とを含む。開口部14の周囲には、端部を縫製することによって通路11が形成され、通路11には閉じ紐(第1ロープ)12が通されている。この閉じ紐12を引くことによって開口部14は閉じられる。
【0014】
袋底部16にも通路15が設けられ、通路15には、無端状の吊りロープ(第2ロープ)13が通される。吊りロープ13に添って袋底部16を絞り巾着状態にし、その状態で裏返して図2のように吊りロープ13を袋の内側に入れる。これによって、巾着絞り部19が形成される。
【0015】
なお、図6に示すように、通路15にスリット部17を付与し、スリット部17から吊りロープ13を引き出し可能に構成してもよい。そうすれば、袋底部16の両端が絞られて密着して巾着状態となるので好ましい。
【0016】
図3は、この実施の形態に係る土のう袋10を用いて土のうを製作する方法を示す図である。図3を参照して、土のうを製作するための製作枠18に土のう袋10を入れ、中詰め材(図示なし)として砂や土砂などを充填する。ここでは、製作枠18は上下に開口部を有する直方体状である。このように上下に開口部を設けることで、製作枠18自体を取り外すこともでき、また土のう20を取り出してもよい。この時、吊りロープ13は上開口部14から上に出しておく。中詰め材を充填後、開口部14を閉じ紐12で括って閉じる。この状態を図4に示す。この後、図示のないクレーンのフックに吊りロープ13を引っ掛けて、土のう20を吊り上げて製作枠18から取り出す。この場合、製作枠18をクレーンで吊り上げ、土のう20を取り出してもよい。図5(中詰め材は図示なし)に土のう20を吊り上げた状態を示す。
【0017】
吊り上げ時に袋底部16を構成する底部袋材が底部中央に集中し、荷重が土のう袋10全体に均等に掛かるので、従来の袋外側のベルトで吊る場合のように、袋材に局部的に荷重がかかることがない。
【0018】
次に、具体的な土のう袋10の仕様等について説明する。土のう袋10に使用する繊維としては、1670dtexのポリエステル長繊維を使用した、タテ、ヨコとも20本/インチの密度の平織りで引張強度4,400N/5cmの織物、巾1.8m×長さ5.4mを用いて5.4mの辺を二つ折にして上部開口部が巾1.8m、縁辺の長さが2.7mの袋を作成した。
【0019】
次に図1に示すように、開口端部20cmを二つ折りにして縫製し通路11を作り、通路11にナイロン繊維製ロープ(φ6mm)の閉じ紐12を挿通した。
【0020】
吊りロープ13の取り付けは、折り返して二つ折りにした袋底部16の10cm巾をミシンで縫製して通路15を形成し、その通路15中に吊りロープ13としてポリエステル繊維製ロープ(φ22mm、長さ4m)を挿通し、無端状に加工した。
【0021】
次に吊りロープ13に添って袋底部16の通路15を巾着絞りし、その状態で袋を裏返して該巾着絞り部19を袋の内側に入れた(図2参照)。
【0022】
土のう袋10を巾1.1m×長さ1.1m×高さ1.1mの中詰め材充填用の金属製の製作枠18に広げて入れ、吊りロープ13は製作枠18の上部に金属棒21を渡し、仮止め用紐(図示なし)で仮止めした。この状態で土砂約1m3を充填し、充填後に仮止め用紐を金属棒21から解いて吊りロープ13を開口部14の外側に出し、開口部14を閉じ紐12で括って閉じた。この後、クレーンで吊りロープ13を吊って土のうを取り出した。
【0023】
本発明の土のう袋は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルホルマール、ポリ乳酸などの合成繊維又は麻、ジュートなどの天然繊維で織られた織物および撚られたロープで構成される。
【0024】
この土のう袋10に、砂や土砂などの中詰め材を充填して土のうを製作する。なお、この実施の形態においては土のう袋とは、中詰め材を充填していないものをいい、土のうとは、中詰め材を充填したものを言う。
【0025】
次にこの発明の他の実施の形態について説明する。図7はこの発明の他の実施の形態に係る土のう袋30を示す全体図である。図7を参照して、この実施の形態における土のう袋30においては一直線状の袋底部16に設けられた通路15には、両端部に輪24a,24bを有する吊りロープ23が通される。この吊りロープ23においては、使用時には、図7において矢印Aで示すように、一端の輪24aを他端の輪24bに通して、輪24aを吊り部として使用する。また、輪24a,24bを吊り具に掛けてもよい。この点以外については、先の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0026】
次にこの発明のさらに他の実施の形態について説明する。図9はこの発明のさらに他の実施の形態に係る土のう袋40を示す図である。図9を参照して、この実施の形態における土のう袋40においては一直線状の袋底部16に設けられた通路15には、二重になった吊りロープ13a,13bが通される。この吊りロープ13a,13bにおいては、ロープ13aを引くことによって、ロープ13bで土のう袋40の下端部を絞ることができる。この点以外については、先の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0027】
図10は、この場合における土のう袋40の開口部14の通路11を通る閉じ紐の他の例を示す図である。図10を参照して、この実施の形態においては、閉じ紐として、それぞれが無端の紐12a,12bの2本を設けた。閉じ紐12a,12bを個別に引っ張ることによって、容易に開口部14を閉じることが可能になる。
【0028】
なお、このような閉じ紐2本を設けた開口部は、上記した実施の形態において用いてもよい。
【0029】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】縫製加工され、無端状の吊りロープ及び閉じ紐を付与した土のう袋を示す図である。
【図2】図1の土のう袋を裏返しにした状態を示す図である。
【図3】土のうの製作方法を示す図である。
【図4】製作枠に土のう袋を入れ、中詰め材を充填し、閉じ紐で縛った状態を示す図である。
【図5】中詰め材を充填し、閉じ紐で縛った土のうを吊り上げた状態を示す。
【図6】土のう袋に吊りロープを引き出すスリット部を設けた状態を示す図である。
【図7】他の実施の形態に係る土のう袋を示す図である。
【図8】従来の吊り部がベルトである土のう袋を示す図である。
【図9】さらに他の実施の形態に係る土のう袋を示す図である。
【図10】土のう袋の開口部の他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10,30,40 土のう袋、11,15 通路、12 閉じ紐、13 吊りロープ、14 開口部、16 袋底部、18 製作枠、20 土のう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土のう袋の内側に、袋底部の袋材と一体化されたロープを設け、このロープを用いて、中詰め材を充填した土のう袋を吊るようにしたことを特徴とする、土のう袋。
【請求項2】
吊りロープが合成繊維製又は天然繊維製のロープで無端状または両端部に輪を有することを特徴とする請求項1に記載の土のう袋。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載された土のう袋から吊りロープを袋外部に仮出しした状態で土のう袋に、中詰め材を充填した後、吊りロープを土のう袋開口部より袋外に突出させ、開口部を紐で括って閉じる土のう製作方法。
【請求項4】
開口部と底部とを有する土のう袋であって、
前記開口部には、前記開口部を閉じるための第1ロープが設けられ、
前記底部には、前記底部を絞るための第2ロープが設けられ、
前記第2ロープを当該土のう袋を吊るための吊りロープとして使用する、土のう袋。
【請求項5】
前記第2ロープは無端状または、両端部に輪を有する、請求項4に記載の土のう袋。
【請求項6】
請求項4または5に記載の土のう袋を反転して、開口部から、反転した土のう袋の内部に中詰め材を充填し、第2ロープを開口部から取り出し、開口部を第1ロープで閉じることにより、土のうを製作する、土のうの製作方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−63837(P2008−63837A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243286(P2006−243286)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(392031572)キョーワ株式会社 (22)
【Fターム(参考)】