説明

土中温度計測装置および土中温度計測方法

【課題】 土中の加温についてのデータ取得が論理的に行えるような熱伝達率算出装置を提供する。
【解決手段】 所望する温度となる熱を出力することができる制御機構を備えて土中へ埋設したヒータ装置(10)と、 そのヒータ装置(10)から所定の距離となるように土中へ埋設して土中温度データを計測可能な温度計測装置(20)と、 当該土壌の熱伝達率を算出する算出装置(30)とを備える。 算出装置(30)は、前記のヒータ装置(10)および前記の温度計測装置(20)の距離データと、ヒータ装置(10)が出力する出力温度データとを入力するデータ入力部を備えるとともに、 算出した熱伝達率を出力する出力部を備える。 そして、前記データ入力部に入力された距離データおよび出力温度データと、前記の温度計測装置(20)が計測した土中温度データとを用いて当該土壌の熱伝達率を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長促進や品質の安定および向上のため、土中の温度測定をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物や花卉類の出荷時期を多様化したり、成長速度を速めたり、品質の一定化や向上は、常に求められている。 その要求に対しては、加温による促成栽培が一般的である。
農作物、花卉類を問わず、植物の周囲温度を上昇させるため、外気を遮断するビニルハウスと、そのビニルハウス内の気温を加温する手段との組み合わせがもっとも普及している。 その加温の方法としては、重油ボイラが主流となっている。 花卉類の栽培においては、ヒートポンプの導入も一部で始まっている。
【0003】
近年では、ビニルハウス内の気温上昇の他、土中の温度を上昇させる方法も普及している。 土中にパイプを埋設し、そのパイプ内に加温した流体を循環させる方法である。
【0004】
先行する技術として、特許文献1に記載される技術がある。 この技術は、農圃の土壌温度を上昇させる加熱装置であって、前記加熱装置が、土壌中に埋設され、かつ、電熱ヒータを取り囲んで砂鉄である蓄熱体を充填した温熱管から構成され、前記温熱管の直径が30〜150mmの範囲であること、また、前記温熱管内の所定位置の蓄熱体温度を設定温度範囲内に制御する電熱ヒータの加熱制御装置を提供する、というものである。
【0005】
【特許文献1】特開2009−72202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、土中を加温することによる植物の成長促進は、どのような加温が効率的であるのか、ということについて、明確なデータの取得が困難であった。その理由は、以下の通りである。
第一に、ヒートポンプでは、温度域に斑(ムラ)があるからである。
第二に、土中の熱伝達率は、その土壌を構成する要素(土、堆肥、肥料、水分量など)やその配分、土壌の耕し方、散水の量や頻度、周囲の気温や湿度、植物の根の張り具合などによって異なるからである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、土中の加温についてのデータ取得が論理的に行えるような技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するため、本願発明は、土中の熱伝達率を算出できるような技術を提供する。
【0009】
(第一の発明)
第一の発明は、土中の加温データから当該土壌の熱伝達率を算出するための装置に係る。
すなわち、所望する温度となる熱を出力することができる制御機構を備えて土中へ埋設したヒータ装置(10)と、 そのヒータ装置(10)から所定の距離となるように土中へ埋設して土中温度データを計測可能な温度計測装置(20)と、 当該土壌の熱伝達率を算出する算出装置(30)とを備える。
算出装置(30)は、前記のヒータ装置(10)および前記の温度計測装置(20)の距離データと、ヒータ装置(10)が出力する出力温度データとを入力するデータ入力部を備えるとともに、 算出した熱伝達率を出力する出力部を備える。 そして、前記データ入力部に入力された距離データおよび出力温度データと、前記の温度計測装置(20)が計測した土中温度データとを用いて当該土壌の熱伝達率を算出する。
【0010】
(用語説明)
「ヒータ装置(10)」は、たとえば、熱を出力する部位に半導体ヒータを採用した装置である。
「データ入力部」は、操作者がキーボードなどを用いて入力するもののほか、通信によってデータを受信する受信部も含まれる。
【0011】
(作用)
ヒータ装置(10)を土中に埋設し、そのヒータ装置(10)から所定の距離となるように土中へ温度計測装置(20)を埋設する。 算出装置(30)のデータ入力部には、ヒータ装置(10)および前記の温度計測装置(20)の距離データと、ヒータ装置(10)が出力する温度データとが入力される。
前記の温度計測装置(20)が計測した土中温度データを取得し、入力された距離データおよび出力温度データを用いて熱伝達率を算出する。算出した熱伝達率は、出力部から出力する。
以上により、土中の熱伝達率を算出することができる。
【0012】
(発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成しても良い。
すなわち、 前記の温度計測装置(20)は、棒状をなし、その長手方向に複数の温度計測が可能であるように構成してもよい。
複数の温度計測は、3カ所以上の場合には等間隔であることが一般的である。 熱伝達率の算出に便利だからである。
【0013】
(作用)
温度計測装置(20)による複数箇所の温度計測が可能であるので、多様なデータ取得が可能となる。そのため、熱伝達率の算出において、土壌の場所(たとえば深さ方向)による変化などを把握することができる。
【0014】
(発明のバリエーション2)
前記のバリエーション1は、以下のように形成しても良い。
すなわち、棒状をなす温度計測装置(20)の長さ方向の一端(20a)を尖らせるとともに、他端(20b)を他の部位よりも面積が大きくなるように形成してもよい。
【0015】
(作用)
尖らせた一端(20a)を土壌の表面に突き立て、他端(20b)をハンマーなどで打ち込むことで、温度計測装置(20)を埋設しやすい。
【0016】
(発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のように形成しても良い。
すなわち、 前記のヒータ装置(10)は、熱の出力箇所を複数備えることとしてもよい。
【0017】
(作用)
ヒータ装置(10)が熱の出力箇所を複数備えているので、多様なデータ取得が可能となる。そのため、熱伝達率の算出において、土壌の場所(たとえば水平方向)による変化などを把握することができる。
【0018】
(発明のバリエーション4)
第一の発明は、前記の温度計測装置(20)にペーハーセンサ(40)を備えることとしてもよい。
ペーハーセンサ(40)によって、温度と同時に土壌のpHを把握できる。
【0019】
(発明のバリエーション5)
第一の発明は、前記の温度計測装置(20)に酸素濃度センサ(50)を備えることとしてもよい。
酸素濃度センサ(50) によって、温度と同時に土壌の酸素濃度を把握できる。
【発明の効果】
【0020】
本願発明によれば、土中の熱伝達率を算出できる技術を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第一の実施形態を示す側断面図である。
【図3】第一の実施形態における取得データの例である。
【図4】第二の実施形態を示す側断面図である。
【図5】第二の実施形態における取得データの例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳しく説明する。ただし、本発明は、実施形態の態様に限られるものではない。 以下で使用する図面は、図1から図5である。
【0023】
(図1、図2)
図1および図2には、農作物に対する加温とその加温による影響を測定するため、ひいては適切な加温状態を探るため、その農作物が生えている土壌の熱伝達率を算出するための装置群が示されている。
まず、対象となる農作物から所定距離を離した土中へ、ヒータ装置10が埋設されている。このヒータ装置10は、長方形の平板状をなすヒータ固定板16の上面に、円盤状のヒータ11,12,13,14,15を固定したものである。
【0024】
そのヒータ装置10の地表面には、制御用の基板17があり、電源とヒータ11,12,13,14,15とを接続している。また、この基板17は、パソコンケーブル18を介してパーソナルコンピュータ30に接続されており、ヒータ11,12,13,14,15がどのような設定温度になっているか、といったデータをパーソナルコンピュータ30へ送り込んでいる。
【0025】
農作物を挟んだ反対側には、棒状をなす温度計測装置20が、その長手方向が垂直となるように埋設されている。 この温度計測装置20は、等間隔に7つの熱電対21,22,23,24,25,26,27が固定されており、パソコンケーブル28を介してパーソナルコンピュータ30に接続されている。そして、熱電対21,22,23,24,25,26,27がどのような温度を測定したのか、といったデータをパーソナルコンピュータ30へ送り込んでいる。
【0026】
パーソナルコンピュータ30には、ヒータ装置10および温度計測装置20がどのくらいの距離にあるのかという距離データを、キーボードなどを用いて入力する。 そして、その距離データおよびヒータ装置10から入力される出力温度データと、前記の温度計測装置20が計測した土中温度データとを用いて当該土壌の熱伝達率を算出する。
【0027】
温度計測装置20は、棒状をなす温度計測装置の長さ方向の先端部20aを尖らせ、他端を他の部位よりも面積が大きくなるように平板部20bとして形成している。 これによって、尖らせた先端部20aを土壌の表面に突き立て、平板部20bをハンマーなどで打ち込むことで、温度計測装置20を埋設しやすくしている。
【0028】
(図3)
図3は、パーソナルコンピュータ30内に取り込まれるデータについて、データベース化された状態を可視化したものである。
ヒータ装置10による設定温度、温度計測装置20における深さ領域、ヒータ番号(11,12,13,14,15)、基準点からの距離、消費電力などを記録するとともに、土壌の熱伝達率を細かく算出できる。
【0029】
(図4)
図4に示すのは、温度計測を計測して土壌の熱伝達率を算出する第一の実施形態に加え、pHおよび酸素濃度についても計測できるようにした実施形態である。
すなわち、温度計測装置20に隣接させてペーハーセンサ40と、酸素濃度センサ50とを埋設している。
【0030】
(図5)
図5は、図4に示す第二の実施形態においてパーソナルコンピュータ30内に取り込まれるデータについて、データベース化された状態を可視化したものである。 すなわち、前述したペーハーセンサ40および酸素濃度センサ50が取得したデータも、パーソナルコンピュータ30に取り込まれる。
これらのデータによって、適切な加温とpHとの関係、適切な加温と酸素濃度との関係などについて探るためのデータが取得できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ヒータ装置や温度計測装置の製造業、農業試験場などにおいて計測サービスや計測に伴うメンテナンス業、計測データを処理するデータサービス業などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0032】
10 ヒータ装置
11,12,13,14,15 ヒータ
16 ヒータ固定板
17 基板
18 パソコンケーブル
20 温度計測装置 20a 先端部
20b 平板部
21,22,23,24,25,26,27 熱電対
28 パソコンケーブル
30 パーソナルコンピュータ(算出装置)
L 対象植物までの距離(L1,L2,L3,・・Ln)
40 ペーハーセンサ
50 酸素濃度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中の加温データから当該土壌の熱伝達率を算出するための装置であって、
所望する温度となる熱を出力することができる制御機構を備えて土中へ埋設したヒータ装置と、
そのヒータ装置から所定の距離となるように土中へ埋設して土中温度データを計測可能な温度計測装置と、
当該土壌の熱伝達率を算出する算出装置と、を備え、
その算出装置は、前記のヒータ装置および前記の温度計測装置の距離データと、 当該ヒータ装置が出力する出力温度データとを入力するデータ入力部を備えるとともに、 算出した熱伝達率を出力する出力部を備え、
前記データ入力部に入力された距離データおよび出力温度データと、前記の温度計測装置が計測した土中温度データとを用いて当該土壌の熱伝達率を算出することとした熱伝達率算出装置。
【請求項2】
前記の温度計測装置は、棒状をなし、その長手方向に複数の温度計測が可能であるように構成した請求項1に記載の熱伝達率算出装置。
【請求項3】
棒状をなす温度計測装置の長さ方向の一端を尖らせるとともに、他端を他の部位よりも面積が大きくなるように形成した請求項2に記載の熱伝達率算出装置。
【請求項4】
前記のヒータ装置は、熱の出力箇所を複数備えることとした請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱伝達率算出装置。
【請求項5】
前記の温度計測装置には、ペーハーセンサを備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱伝達率算出装置。
【請求項6】
前記の温度計測装置には、酸素濃度センサを備えた請求項1から請求項5のいずれかに記載の熱伝達率算出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200194(P2012−200194A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67126(P2011−67126)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】