説明

土壌の保水量改善方法

【課題】 近時、ビルの屋上やベランダの緑化が叫ばれてきている。この屋上緑化では、ビルの荷重の問題から、土壌層を深くすることはできない。よって、通常は水が不足するため、定期的に散水しなければならない。この定期的に散水することが非常な手間である。機械化するには費用がかかり、人間が行なう場合には人件費がかかるだけでなくどうしてもミスすることがある。そこで、本発明では、簡単で安価に実行できる土壌の保水量改善方法を提供する。
【解決手段】 補強のための樹脂を含有する紙を裁断した小片を土壌に混合するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の保水量改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物を植える土壌においては、その保水量が問題となる。ここでいう保水量は重力水のように重力によって下方に排除されるものや、植物に利用できない水分ではなく、植物が有効に利用できる水分量をいう。保水量が一定以下になると植物は枯れてしまう。人間の手が加わっていない原野等では、元々保水量が多く雨水だけで十分な場合が多い。
しかし、土壌部分が浅い場合、周囲が舗装されて地中への雨水の浸透が少ない場合等は人間が給水しなければ水分が不足し、植物は枯れる。
【0003】
近時、ビルの屋上やベランダの緑化が叫ばれてきている。これは、屋上等を緑化することによって、屋上の断熱性向上による冷房費等の削減と、植物を植えることによる二酸化炭素の吸収、更には土壌が保持する水分の蒸発潜熱等による温度変化の軽減等である。
政府もこれを促進するため、種々の便宜を図っている。例えば、建蔽率の見なおし、補助金の供与、減税等である。
【0004】
この屋上緑化では、ビルの荷重の問題から、土壌層を大きくすることはできない。例えば、深さ1mの土壌層などはどのようなビルでもまず無理である。そこで30〜50cm程度の土壌厚み(深さ)になる。勿論、水耕栽培でないためプールのように水を貯めることはできない。即ち、土壌の粒度分布やその土質によって保持できる水分量は決まってしまう。
【0005】
この量では通常は水が不足するため、定期的に散水しなければならない。この定期的に散水することが非常な手間である。機械化するには費用がかかり、人間が行なう場合には人件費がかかるだけでなくどうしてもミスすることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では、簡単で安価に実行できる土壌の保水量改善方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明土壌の保水量改善方法を完成したものであり、その特徴とするところは、補強のための樹脂を含有する紙を裁断した小片を土壌に混合する点にある。
【0008】
ここで土壌とは、植物が栄養をとり自身を支える部分をいい、天然の土壌でも人工の土壌でも、更にはプラスチックの単なる粒子のようなものでもよい。
また、この土壌の場所は上記したビルの屋上に限らず、通常の道路、舗道、庭、プランター、その他植物を植えるところならばどのでもよい。
【0009】
ここでいう紙は、補強のために樹脂成分を加えたものである。これ自体はすでに市販されており、例えば、卵を段ボールに多量の充填する場合、1層ごとに中敷として入れるシート(個々の卵が半分入る凹部を有している)等として使用されている。
【0010】
この種の紙の製造方法の1例としては、古紙を溶解、乾燥し、小片にしそれに接着剤(樹脂)を噴霧して金型に入れて成型する方法、また、パルプ状のときに樹脂を混合する方法等がある。勿論、これ以外に種々の方法が考えられ、またそのような方法はすでに公知である。
【0011】
この樹脂の存在が大きく、これがあるため、土中で比較的長く(例えば、半年〜数年)形状を保持することができる。
【0012】
このような紙は、水分の保持力が優れており、紙100gに対して水が100〜400gも保持することができる。本発明はこのような、長期間形状を保つことと、非常に大きな保水力を利用したものである。
【0013】
更に、この紙として、食料容器の廃材を用いることが望ましい。これは、現在このような紙で作られた食料容器(卵ケースや卵の中間シート等)は、使用後焼却されているため、無駄であるだけでなく、その処分にも費用がかかる。それより、燃焼による二酸化炭素の排出が問題である。
【0014】
本発明でいう小片は、特に限定はしないが、数mm〜数cmが好適である。また、厚みも自由であるが、非常に薄いもの〜数mm程度好適である。食料容器の廃材を使用する場合には、そのままクラッシュ(破砕)するだけでよい。
【0015】
この小片の混合量は、その土壌の元々の保水量や粒度分布によるが、約10cm〜1m程度までの深さに、全重量の5〜30%程度混合するのがよい。
【0016】
また、土壌として通常の土壌ではなく、比較的軽量である天然の多孔質材でもよい。軽石やバーミキュライト、パーライト等である。勿論、通常の土壌にこれらを混合したものでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明土壌の保水量改善方法には次のような効果がある。
(1) 土壌に混合するだけで保水量が増大し、給水の頻度が激減する。雨の多い地域や季節ではほとんど給水の必要がない場合もある。よって、そのための人件費や特別な装置費用等が軽減される。
(2) 保水量が多いため、蒸発潜熱等による効果によって冷房費等の大きな節約になる。
(3) ビルやその他の緑化が進み地球温暖化防止にも寄与する。
(4) 紙として種々の廃材を利用すれば、廃物の焼却が減少し、その分の二酸化炭素も減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面に示す実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、1m2 面積で下方に水抜きの孔1のあいたプランター2に深さ30cmで土壌3を充填した。全体の土壌重量を280kgとし、20%にあたる56kgを紙の小片4とした。ここで使用した紙は、卵の中間シートの廃材を1cm角程度に裁断したものである。
【0020】
よって、全体としては土壌が224kg、紙が56kgである。ここでは土壌としてごく普通の保水量の土壌を用いた。ここでは保水量は100gあたり約20gであった。また、紙の小片は、100gあたり240gの水分を吸収できるものであった。
よって、この土壌には、2.24×20+0.56×240=179.2kgの水分が保持できることになる。これらは、ほぼ植物が利用できると考えられる。
【0021】
通常、1m2 面積では、植物にもよるが毎日5〜10kgの給水が必要といわれている。よって、170kg、余裕を見ても150kg以上保持できれば、理論的には15日から30日は給水が不要ということになる。
日本ではこの間に雨がふることが多いため、ほとんど給水が不要ということも考えられる。
【0022】
勿論、雨水が期待できない場合でも給水頻度が大きく減少するため、種々の経費が節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明方法を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 孔
2 プランター
3 土壌
4 紙の小片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強のための樹脂を含有する紙を裁断した小片を土壌に混合することを特徴とする土壌の保水量改善方法。
【請求項2】
該紙は食料容器の廃材である請求項1記載の土壌の保水量改善方法。
【請求項3】
混合する土壌は、屋上緑化において使用する土壌である請求項1又は2記載の土壌の保水量改善方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−5725(P2008−5725A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177525(P2006−177525)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(594005968)
【Fターム(参考)】