説明

土壌加熱装置

【課題】土壌全体を均一に加熱することができる土壌加熱装置を提供する。
【解決手段】土壌21に埋設されるポリアミド樹脂製のコルゲート管1に、通電により発熱する帯状の発熱体を通す。コントローラ5によって発熱体への通電を制御する。発熱体として、ステンレススチール製帯状薄膜と、このステンレススチール製帯状薄膜の両端部に形成された電極とを有するものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば農作物栽培用の土壌を加熱する土壌加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプとタンクとボイラと面状発熱体と吐出ポンプと加熱装置とを備える土壌加熱装置が本願出願人によって出願された(下記特許文献1参照)。
【0003】
パイプは土壌に埋設されている。タンクにはパイプの両端が接続されている。タンクにはオイルが充填されている。ボイラはタンクの下に配置され、タンク内のオイルを加熱する。面状発熱体はタンクの外周面に巻き付けられ、通電により発熱し、タンク内のオイルを加熱する。吐出ポンプはタンク内で加熱されたオイルをパイプに吐出してオイルを循環させる。加熱装置はパイプの所定箇所に装着されている。加熱装置は通電により発熱する面状発熱体を有する。
【0004】
ボイラ及び面状発熱体で加熱されたタンク内のオイルは吐出ポンプによってパイプの一端から送り出され、パイプの他端からタンクに戻される。このオイルの循環により土壌が加熱される。
【0005】
ボイラ等で加熱されたオイルはパイプ内を流れる間に放熱して冷めるが、冷めたオイルは加熱装置の面状発熱体によって再度加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−263877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記土壌加熱装置では、加熱されたオイルはパイプを流れる間に放熱して冷めるので、ボイラや加熱装置の近くのところとボイラや加熱装置から離れたところとではオイルの温度が異なる。このため、パイプを埋設した場所を均一に加熱することが困難であった。
【0008】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は加熱しようとする場所を均一に加熱することができる土壌加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明の土壌加熱装置は、土壌に埋設される可撓性を有する管と、この管に通され、通電により発熱する帯状の発熱体と、この発熱体への通電を制御するコントローラとを備え、前記発熱体が、ステンレススチール製帯状薄膜と、このステンレススチール製帯状薄膜の両端部に形成された電極とを有することを特徴とする。
【0010】
上述のように、土壌に埋設される可撓性を有する管に通電により発熱する帯状の発熱体が通され、発熱体は、ステンレススチール製帯状薄膜を有し、このステンレススチール製帯状薄膜に通電したときその薄膜の温度分布は均一である。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の土壌加熱装置において、前記管がポリアミド樹脂製のコルゲート管であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の土壌加熱装置において、前記コルゲート管の断面形状が楕円形であることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明の土壌加熱装置は、通電により発熱する帯状の発熱体と、この発熱体が巻きつけられる芯材と、この芯材に巻きつけられた前記発熱体を土壌に埋設するために前記発熱体を被覆する絶縁被覆部と、前記発熱体への通電を制御するコントローラとを備え、前記発熱体が、ステンレススチール製帯状薄膜と、このステンレススチール製帯状薄膜の両端部に形成された電極とを有することを特徴とする。
【0014】
上述のように、芯材に巻きつけられた発熱体は土壌に埋設するために絶縁被覆部で被覆され、ステンレススチール製帯状薄膜を有し、このステンレススチール製帯状薄膜に通電したときその薄膜の温度分布は均一である。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の土壌加熱装置において、前記ステンレススチール製帯状薄膜の表裏面を覆う絶縁シートを有することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の土壌加熱装置において、前記ステンレススチール製帯状薄膜の裏面を覆う断熱材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、加熱しようとする場所を均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態の土壌加熱装置の使用状態を示す概念図である。
【図2】図2は図1に示す土壌加熱装置のコルゲート管の斜視図である。
【図3】図3は図1に示す土壌加熱装置の発熱体の平面図である。
【図4】図4は図1に示す土壌加熱装置のコルゲート管及び発熱体の断面図である。
【図5】図5は図3に示す発熱体と公知の発熱体との温度特性を比較した図である。
【図6】図6はこの発明の第2実施形態の土壌加熱装置のコルゲート管及び発熱体の断面図である。
【図7】図7はこの発明の第3実施形態の土壌加熱装置のコルゲート管及び発熱体の断面図である。
【図8】図8はこの発明の第4実施形態の土壌加熱装置の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
この発明の第1実施形態の土壌加熱装置を図1〜図5に基づいて説明する。図1〜図4に示すように、この土壌加熱装置はコルゲート管1と発熱体3とコントローラ5とを備えている。
【0021】
コルゲート管(管)1はポリアミド製であり、蛇腹状に形成され、自在に曲げることができる(図2参照)。コルゲート管1の断面形状は円形である(図4参照)。コルゲート管1は図示しないビニールハウス内の土壌21に埋設される。ビニールハウスのほぼ中央部には寒暖計22が設置される。
【0022】
発熱体3は通電により発熱する。発熱体3はコントローラ5に接続されている。
【0023】
コントローラ5は発熱体3への通電を制御して、発熱体3で発生する熱量を制御する。また、コントローラ5は、発熱体3が断線したことを検出する検出部と、この検出部の検出結果を表示する表示部とを有する。コントローラ5にはコルゲート管温度計11及び土壌温度計12が接続されている。コルゲート管温度計11はコルゲート管1の温度を測定する。土壌温度計12は土壌加熱装置によって加熱された土壌21の温度を測定する。
【0024】
図3、図4に示すように、発熱体3は、ステンレススチール製の帯状薄膜(ステンレススチール製帯状薄膜)31aと、電極31b,31cと、2枚のPEN(ポリエチレンナフタレート)シート(絶縁シート)32とを有する。
【0025】
帯状薄膜31aは帯状である。帯状薄膜31aは100V用であり、帯状薄膜31aの長さは約20m、幅は28mm、厚さは30μmである。帯状薄膜31aは50℃〜60℃の熱を発生する。ハウス内の気温が−3℃で、帯状薄膜31aが50℃〜60℃の熱を発生したとき、コルゲート管1の表面温度は38℃〜40℃になり、コルゲート管1の周りの土壌21の温度は15℃〜20℃になる。
【0026】
電極31b,31cはステンレス製であり、帯状薄膜31aの両端部に一体に形成されている。電極31b,31cはPENシート32の一端から突出している。電極31b,31cには、図示しないパイプ状の結線部にリード線の導線を圧着した端子のリング状部がハトメによって固定されている。ハトメの上端部及び下端部は図示しないPENシートで覆われ、絶縁される。
【0027】
2枚のPENシート32は同じ形状及び大きさを有する。2枚のPENシート32は帯状薄膜31aを挟んだ状態で接着剤を用いて互いに接着される。PENシート32は透明であるので、図3に示すように、帯状薄膜31aが透けて見える。PENシート32は帯状であり、長さが約20m、幅が33mm、厚さが50μmである。
【0028】
次に、この実施形態の発熱体3の温度特性を公知の発熱体と比較して説明する。
【0029】
図5はこの実施形態の発熱体3と公知の発熱体との温度特性を比較した図である。図5において縦軸及び横軸はそれぞれ温度(単位:℃)及び時間(単位:秒)を示す。また、実線aはこの実施形態の発熱体3の温度特性を示し、破線bは公知の発熱体の温度特性を示す。
【0030】
公知の発熱体は、カーボン粉末にバインダー(インク又は塗料状の有機化学系粘着物)を混錬したものをフィルムにシルク印刷したものである。温度特性の比較の実験に用いた公知の発熱体とこの実施形態の発熱体3との形状、大きさは同じである。実験時の環境温度は22℃である。公知の発熱体に供給された電力は2,6W(100V、26mmA)である。
【0031】
この実施形態の発熱体3に供給された電力は0,0324W(24V、12,01mmA)である。
【0032】
図5に示すように、公知の発熱体では、30℃に達するまでに約23秒、40℃に達するまでに約70秒、45℃に達するまでに約130秒かかった。
【0033】
この実施形態の発熱体3では、30℃に達するまでに約6秒、40℃に達するまでに約12秒、45℃に達するまでに約15秒かかった。
【0034】
この実験結果から、公知の発熱体に較べ、この実施形態の発熱体3の方が少ない電力で迅速に加熱され、しかも高温になることがわかる。
【0035】
次に、上述の土壌加熱装置の設置作業について説明する。
【0036】
土壌加熱装置を土壌21に設置するには、発熱体3を通したコルゲート管1を配置するための溝(図示せず)を土壌21に予め掘っておく。
【0037】
次に、土壌21に掘った溝に発熱体3を通したコルゲート管1を配置する。このとき、コルゲート管1の両端部を近づけて並べ、溝から出しておく。図1は概念図であり、コルゲート管1は四角形を描くように配置されているが、実際上、コルゲート管1は蛇行するように配置される。
【0038】
その後、コルゲート管1の両端部を除いてコルゲート管1に土を被せ、コルゲート管1を土に埋める。通常、土に埋められたコルゲート管1の上方に農作物が植えられる。
【0039】
最後に、電極31b,31cに接続された電線33,34をコントローラ5に接続する。
【0040】
次に、上述の土壌加熱装置の動作について説明する。
【0041】
図示しない交流電源から発熱体3の電極31b,31cを介して帯状薄膜31aに電力を供給すると、帯状薄膜31aは約50℃の熱を発生する。この熱はコルゲート管1を介して土壌21に伝わる。その結果、コルゲート管1が埋められた場所はほぼ均一に暖められ、約20℃になる。なお、発熱体3へ供給する電力をコントローラ5で制御することにより土壌21を最適な温度に維持することが可能である。
【0042】
また、発熱体3が断線したとき、コントローラ5は発熱体3が断線したことをコントローラ3の表示部に表示する。
【0043】
第1実施形態の土壌加熱装置によれば、コルゲート管1が埋められた場所を均一に加熱することができる。
【0044】
また、発熱体3がステンレススチール製の帯状薄膜31aを有するので、少ない電力で効率良く土壌21を加熱することができる。
【0045】
更に、上述のカーボン粉末にバインダーを混錬したものをフィルムにシルク印刷して形成した発熱体をポリアミド樹脂製のコルゲート管に通して構成された土壌加熱装置では、コルゲート管の埋設作業のとき等に発熱体が断線する虞があるが、この実施形態では、発熱体3の帯状薄膜31aはステンレススチール製であるので、コルゲート管の埋設作業のとき等に帯状薄膜31aが断線する虞が少ない。
【0046】
この発明の第2実施形態の土壌加熱装置を図6に基づいて説明する。第1実施形態と共通する部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
第1実施形態の土壌加熱装置のコルゲート管1の断面形状(コルゲート管1の長手方向と直交する方向の断面形状)は円形であるが、第2実施形態の土壌加熱装置のコルゲート管201の断面形状(コルゲート管201の長手方向と直交する方向の断面形状)は楕円形である。
【0048】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、コルゲート管201の断面形状が楕円形であるので、発熱体3の上方にある土壌を効率よく、加熱することができる。
【0049】
この発明の第3実施形態の土壌加熱装置を図7に基づいて説明する。第1実施形態と共通する部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
第1実施形態の土壌加熱装置のコルゲート管1の断面形状(コルゲート管1の長手方向と直交する方向の断面形状)は円形であるが、第3実施形態の土壌加熱装置のコルゲート管301の断面形状(コルゲート管301の長手方向と直交する方向の断面形状)は第2実施形態と同様に楕円形である。
【0051】
また、第3実施形態の土壌加熱装置では、発熱体3の下面に断熱材35が貼り付けられている。
【0052】
第3実施形態によれば、第1、第2実施形態と同様の効果を奏するとともに、コルゲート管301の断面形状が楕円形で、しかも発熱体3の下面に断熱材35が貼り付けられているので、発熱体3の上方にある土壌をより効率よく、加熱することができ、加熱する必要のない場所を加熱しないで済み、電力の消費を低減することができる。
【0053】
この発明の第4実施形態の土壌加熱装置を図8に基づいて説明する。第1実施形態と共通する部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0054】
第1〜3実施形態の土壌加熱装置の発熱体3はコルゲート管1,201,301に通されているが、第4実施形態の土壌加熱装置では、発熱体3は可撓性を有する合成樹脂製の芯材7に巻きつけられ、芯材7に巻きつけられた発熱体3はシート状の絶縁被覆部によって被覆されている。
【0055】
第4実施形態によれば、第1〜第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
なお、第1〜第3実施形態では、管としてポリアミド樹脂製のコルゲート管1,201,301が用いられているが、管としてはポリアミド樹脂製のコルゲート管1,201,301に限られず、可撓性を有する管であればよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、帯状薄膜31aはPENシート32で覆われているが、帯状薄膜31aをPENシート32で覆わなくてもよい。
【0058】
なお、帯状薄膜31aは直線状に真っ直ぐ延びているが、帯状薄膜31aをジグザグ状に形成してもよい。
【0059】
なお、上述の実施形態は発熱体3の断線を検出する検出部を有するが、断線の検出部はなくてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態の変形例として、発熱体3にサーモスタットを接続して、発熱体3の過熱を防ぐようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,201,301 コルゲート管(管)
3 発熱体
31a ステンレススチール製の帯状薄膜(ステンレススチール製帯状薄膜)
31b 電極
31c 電極
32 PENシート(絶縁シート)
5 コントローラ
7 芯材
9 絶縁被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に埋設される可撓性を有する管と、
この管に通され、通電により発熱する帯状の発熱体と、
この発熱体への通電を制御するコントローラと
を備え、
前記発熱体が、ステンレススチール製帯状薄膜と、このステンレススチール製帯状薄膜の両端部に形成された電極とを有する
ことを特徴とする土壌加熱装置。
【請求項2】
前記管がポリアミド樹脂製のコルゲート管であることを特徴とする請求項1記載の土壌加熱装置。
【請求項3】
前記コルゲート管の断面形状が楕円形であることを特徴とする請求項2記載の土壌加熱装置。
【請求項4】
通電により発熱する帯状の発熱体と、
この発熱体が巻きつけられる芯材と、
この芯材に巻きつけられた前記発熱体を土壌に埋設するために前記発熱体を被覆する絶縁被覆部と、
前記発熱体への通電を制御するコントローラと
を備え、
前記発熱体が、ステンレススチール製帯状薄膜と、このステンレススチール製帯状薄膜の両端部に形成された電極とを有する
ことを特徴とする土壌加熱装置。
【請求項5】
前記ステンレススチール製帯状薄膜の表裏面を覆う絶縁シートを有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の土壌加熱装置。
【請求項6】
前記ステンレススチール製帯状薄膜の裏面を覆う断熱材を有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の土壌加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate