説明

土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤

【課題】 植物成分を利用して多少なりとも窒素,燐酸,カリ成分を増加させ、機能向上を図る。
【解決手段】 リンゴの搾り滓に対し水分の存在下で酸化カルシウムを加えて反応させ、この反応によって得られたカルシウム化合物をリンゴの繊維と混合させた土壌改良剤の製造方法において、リンゴを搾汁して得られた搾汁液を用い、この搾汁液を処理液とし、リンゴの搾り滓に処理液を混合する混合工程と、処理液を混合したリンゴの搾り滓に酸化カルシウムを加えて反応させる反応工程とを備えた。混合工程において、乾燥したリンゴの搾り滓を用い、乾燥したリンゴの搾り滓と処理液との混合重量比を、1:(3〜5)にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤に係り、特に、廃棄処理される果実や野菜等の植物を利用して作ることのできる土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の土壌改良剤としては、例えば、本願出願人が先に提案し、特開平6−264057号公報(特許文献1)に掲載されているものが知られている。これは、植物の細状体としてリンゴの搾り滓を用い、このリンゴの搾り滓に水を加えるとともに、酸化カルシウムを加えて反応させ、反応によって得られたカルシウム化合物をリンゴの搾り滓の繊維と混合させ分散させたものである。これにより、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の繊維と混合し、窒素,燐酸,カリ成分が比較的少なく、アルカリ性の性質を呈する。アルカリ性の性質が発揮されて、酸性土壌を確実に中性,アルカリ化していくとともに、消毒作用により植物に悪影響を及ぼす細菌やバクテリアの繁殖を抑制し、土壌を良質なものに改変していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−264057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の土壌改良剤においては、窒素,燐酸,カリ成分が比較的少なく、アルカリ性の性質を呈するが、多少なりとも窒素,燐酸,カリ成分を増加させたいという要望がある。これを解消するために、別途これらの成分を添加することも考えられるが、自然の良さが損なわれることが懸念される。
一方、植物として、例えばリンゴの場合には、リンゴを搾汁して搾汁液を得るが、この搾汁液は、飲料用のジュースとして使用されるものもあるが、廃棄処分されるものも相当量あり、その利用法が検討されているという実情もある。
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、植物成分を利用して多少なりとも窒素,燐酸,カリ成分を増加させ、機能向上を図った土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するための本発明の土壌改良剤の製造方法は、植物の細状体に対し水分の存在下で酸化カルシウムを加えて反応させ、該反応によって得られたカルシウム化合物を当該植物の繊維と混合させた土壌改良剤の製造方法において、
上記細状体の植物と同種若しくは異種の植物を搾汁して得られた搾汁液を用い、該搾汁液を処理液とし、上記植物の細状体に上記処理液を混合する混合工程と、該処理液を混合した細状体に酸化カルシウムを加えて反応させる反応工程とを備えた構成としている。
【0006】
これによれば、混合工程で用いる処理液は、植物の搾汁液を用いるので、植物として、例えばリンゴの場合には、リンゴを搾汁して搾汁液を得るが、この搾汁液は、飲料用のジュースとして使用されるものもあるが、廃棄処分されるものも相当量あり、この廃棄処分するリンゴの搾汁液をそのまま利用することができるようになり、原材料調達が容易になるとともに無駄を防止することができる。
【0007】
そして、混合工程においては、処理液を添加すると、植物の細状体に更に植物の搾汁液が加わるので、水分が植物成分とともに増加させられる。次に、反応工程で、処理液を混合した細状体に酸化カルシウムを加えると、酸化カルシウムと水分との反応により水酸化カルシウムが生成されるとともに、水中や空気中等の二酸化炭素との反応により炭酸カルシウムが生成される。また、各種の有機カルシウムが生成され、特に、植物として、例えばリンゴの場合には、酸化カルシウムとリンゴに含まれるリンゴ酸,酢酸,コハク酸,クエン酸等の有機酸とが反応して、リンゴ酸カルシウムや酢酸カルシウム等の有機酸カルシウムが生成される。そして、これらの生成物は、植物の搾り滓の繊維と良く混合していく。特に、酸化カルシウムが高い凝固性を有するにもかかわらず、微細に分散して均一な流動状の反応物となるのである。この反応物をそのまま製品としても良く、また、乾燥して製品としても良い。
【0008】
この製造方法によって製造された土壌改良剤によれば、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の成分と混合し、異臭がなく、脂肪や塩分をほとんど含まず、アルカリ性の性質を呈する。また、植物の搾汁液が加わるので、植物の成分が多く取り入れられ、それだけ、植物に由来した窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加させられ、機能向上が図られる。
このため、この製造方法によって製造された土壌改良剤を土壌に施肥した場合には、カルシウム化合物が、良く土壌に分散し、アルカリ性の性質が発揮されて、酸性土壌を確実に中性,アルカリ化していくとともに、消毒作用により植物に悪影響を及ぼす細菌やバクテリアの繁殖を抑制し、植物繊維の混合物なので繊維間に空気を取り込み、土壌を良質なものに改変していく。この場合、本土壌改良剤は、窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加させられているので、機能向上が図られる。
【0009】
また、必要に応じ、上記混合工程において、上記処理液として、上記細状体の植物と同種若しくは異種の植物を搾汁して得られた搾汁液の濃縮液を用いる構成としている。
この場合、上記処理液として、上記搾汁液の濃縮液に水を加えて希釈したものを用いることができる。
これによれば、植物の搾汁液の濃縮液を用いているので、濃縮液は保存性が良いことから、植物の収穫期のみならずいつでも濃縮液を原材料として用いることができ、そのため、汎用性が増す。また、植物の搾汁液の濃縮液においても、植物に由来して、それだけ、窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加させられ、機能向上が図られる。
【0010】
そしてまた、必要に応じ、上記混合工程において、植物の細状体として、乾燥した植物の細状体を用いる構成としている。これによれば、乾燥した植物の細状体を用いるので、乾燥した細状体は保存性が良いことから、植物の収穫期のみならずいつでも植物の細状体を原材料として用いることができ、そのため、汎用性が増す。
【0011】
この場合、必要に応じ、上記乾燥した植物の細状体と処理液との混合重量比を、1:(3〜5)にした構成としている。
これによれば、植物の細状体が流状化し、反応工程での酸化カルシウムとの反応が確実に行われる。
【0012】
また、必要に応じ、上記反応工程において、上記酸化カルシウムと上記処理液を混合した細状体との混合重量比を、1:(7〜15)にした構成としている。
反応工程での酸化カルシウムとの反応が確実に行われ、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の成分と混合できるようになる。
【0013】
更に、必要に応じ、上記処理液に、植物の繊維質を含む構成としている。植物の搾汁液をろ過することなく使用する。あるいは、ろ過するとしても粗い目の濾材を通し、繊維質が残るようにする。例えば、搾汁液100g中に0.1〜1重量%の繊維質(パルプ)が残るようにする。これにより、植物の細状体の繊維質に加えて、処理液中の極めてきめ細かなパルプにも生石灰がからむことになり、即ち、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の繊維と混合し、植物繊維の混合物なので繊維間に空気を取り込み、土壌を良質なものに改変していく。
【0014】
更に、本発明の土壌改良材は、上記の製造方法によって製造された土壌改良剤にある。上記と同様の作用,効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、処理液として植物の搾汁液を用いるので、植物として、例えばリンゴの場合には、リンゴを搾汁して搾汁液を得るが、この搾汁液は、飲料用のジュースとして使用されるものもあるが、廃棄処分されるものも相当量あり、この廃棄処分するリンゴの搾汁液をそのまま利用することができるようになり、原材料調達が容易になるとともに無駄を防止することができる。
そして、植物の細状体に処理液を添加すると、植物の細状体に更に植物の搾汁液が加わるので、水分が植物成分とともに増加させられる。そのため、処理液を混合した細状体に酸化カルシウムを加えると、酸化カルシウムと水分との反応により水酸化カルシウムが生成されるとともに、水中や空気中等の二酸化炭素との反応により炭酸カルシウムが生成される。また、各種の有機カルシウムが生成され、特に、植物として、例えばリンゴの場合には、酸化カルシウムとリンゴに含まれるリンゴ酸,酢酸,コハク酸,クエン酸等の有機酸とが反応して、リンゴ酸カルシウムや酢酸カルシウム等の有機酸カルシウムが生成される。そして、これらの生成物は、植物の搾り滓の繊維と良く混合していく。特に、酸化カルシウムが高い凝固性を有するにもかかわらず、微細に分散して均一な流動状の反応物となる。この場合、植物の搾汁液が加わるので、植物の成分が多く取り入れられ、それだけ、植物に由来した窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加することから、機能向上を図ることができる。
この結果、本発明の土壌改良剤を土壌に施肥した場合には、カルシウム化合物が、良く土壌に分散し、アルカリ性の性質が発揮されて、酸性土壌を確実に中性,アルカリ化していくとともに、消毒作用により植物に悪影響を及ぼす細菌やバクテリアの繁殖を抑制し、植物繊維の混合物なので繊維間に空気を取り込み、土壌を良質なものに改変していく。この場合、本土壌改良剤は、窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加させられているので、機能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を実施するためのシステムの一例を示す図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の第三の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を示す工程図である。
【図5】本発明の第三の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を実施するためのシステムの一例を示す図である。
【図6】本発明の第四の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を示す工程図である。
【図7】本発明の実施例及び比較例についての成分分析結果を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法及び土壌改良剤について詳細に説明する。
図1及び図2には、本発明の第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を示している。本発明の第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法は、植物としてリンゴの果実を用いて製造するものであり、植物の細状体としてリンゴの搾り滓を用いるとともに、リンゴを搾汁して得られた搾汁液をそのまま用いる。
【0018】
リンゴの搾り滓は、リンゴジュースを採取した後に残る残滓である。リンゴジュースは、一般に、リンゴ果実をクラッシャーで砕いた後、圧搾して採取する。そのため、一般に、リンゴの搾り滓は、3mm〜4mmの細状体に破砕されている。リンゴの搾り滓の成分は、水分70〜80%の他、炭水化物としてのセルロースがほとんどであり、その他に、リンゴ酸,酢酸,コハク酸,クエン酸等の有機酸、鉄やナトリウム等のミネラル分、カロチンやビタミン等を有している。
実施の形態では、乾燥した植物の細状体を用いる。即ち、リンゴの搾り滓を乾燥器あるいは天日などで乾燥させる。乾燥した植物の細状体としてリンゴの搾り滓を用いるので、乾燥したリンゴの搾り滓は保存性が良いことから、リンゴの収穫期のみならずいつでもリンゴの搾り滓を原材料として用いることができ、そのため、汎用性が増す。
【0019】
リンゴの搾汁液は、飲料用のジュースとして使用されるものもあるが、廃棄処分されるものも相当量あり、この廃棄処分するリンゴの搾汁液をそのまま利用することができる。尚、多少水で希釈することもできるが、そのまま用いることが望ましい。原材料調達が容易になるとともに無駄を防止することができる。
【0020】
この搾汁液を処理液とする。処理液には、植物としてのリンゴ果実の繊維質を含む。リンゴの搾汁液をろ過することなく使用する。あるいは、ろ過するとしても粗い目の濾材を通し、繊維質が残るようにする。例えば、搾汁液100g中に0.1〜1重量%の繊維質(パルプ)が残るようにする。実施の形態では0.2重量%含む。尚、実施の形態においては、処理液として、搾汁液の原液を用いるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、水を添加して水分調整を行っても良い。
【0021】
図2には、本発明の第一の実施の形態に係る土壌改良剤を製造する製造システムを示している。1は乾燥したリンゴの搾り滓と処理液が投入されこれらを撹拌混合する混合器、2は混合器1で混合された流動状リンゴの搾り滓を搬送するスクリューコンベア、3はスクリューコンベア2で搬送されたリンゴの搾り滓を略均一の細状体に破砕するクラッシャー、4はクラッシャー3で破砕された流動状リンゴの搾り滓を一時貯留する貯留槽、5は貯留槽4内の流動状リンゴの搾り滓を搬送するスクリューコンベアである。クラッシャー3には、必要に応じて、流動状リンゴの搾り滓に上記の処理水あるいは水を供給して混合させる供給管12が設けられている。
【0022】
また、6は酸化カルシウムの粉体が入れられるタンク、7はタンク6内の酸化カルシウムを搬送するスクリューコンベア、8は上記スクリューコンベア5により搬送された流動状リンゴの搾り滓と上記スクリューコンベア7により搬送された酸化カルシウムとを撹拌して反応させ流動状にする反応槽、9は反応槽8で反応させられた流動状の反応物を一時貯留する貯留タンク、10は貯留タンク9の反応物を送出する送出ポンプ、11は送出ポンプ10により送出された反応物を広げて乾燥させ製品とするための乾燥エリアである。
【0023】
次に、上記の製造システムを用いて本発明の第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を実施する場合について説明する。図1に示すように、第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法は、リンゴの搾り滓に処理液を混合する混合工程と、処理液を混合したリンゴの搾り滓に酸化カルシウムを加えて反応させる反応工程と、この反応物を乾燥する乾燥工程とを備えている。以下各工程について説明する。
【0024】
<混合工程>
混合器1に、乾燥したリンゴの搾り滓と処理液とを投入して混合する。この混合工程においては、処理液を添加すると、リンゴの搾り滓にリンゴの搾汁液が加わるので、水分が植物成分とともに増加させられ、流動状態になる。
この場合、処理液としてのリンゴの搾汁液は、飲料用のジュースとして使用されるものもあるが、廃棄処分されるものも相当量あり、この廃棄処分するリンゴの搾汁液をそのまま利用することができるようになり、原材料調達が容易になるとともに無駄を防止することができる。
【0025】
そして、混合器1で混合された流動状リンゴの搾り滓は、スクリューコンベア2によってクラッシャー3に搬送され、このクラッシャー3において、リンゴの搾り滓は、略均一の細状体に破砕される。この場合、必要に応じて、供給管12から流動状リンゴの搾り滓に上記の処理水あるいは水を供給して混合してよい。クラッシャー3で破砕された流動状リンゴの搾り滓は、貯留槽4に一時貯留される。この貯留槽4において、乾燥したリンゴの搾り滓と処理液との混合重量比は、1:(3〜5)になるようにする。実施の形態では、1:4になるようにした。
尚、供給管12から処理水を供給しない場合には、混合器1における混合において、乾燥したリンゴの搾り滓と処理液との混合重量比は、1:(3〜5)になるようにする。実施の形態では、1:4になるようにする。
尚また、供給管12から水を供給する場合には、水分量が増加させられ、水分調整が行われる。
【0026】
<反応工程>
次に、貯留槽4内の流動状リンゴの搾り滓はスクリューコンベア5により反応槽8に搬送される。一方、タンク6からはスクリューコンベア7によって酸化カルシウムの粉体が搬送されて反応槽8に投入される。反応槽8では、流動状リンゴの搾り滓と酸化カルシウムとが撹拌されて反応させられ流動状の反応物になる。この反応物は、貯留タンク9に一時的に貯留される。この反応工程において、酸化カルシウムと処理液を混合した流動状リンゴの搾り滓との混合重量比は、1:(7〜15)になるようにする。実施の形態では、1:9になるようにした。
【0027】
この場合、反応工程で、処理液を混合した流動状リンゴの搾り滓に酸化カルシウムを加えると、酸化カルシウムと水分との反応により水酸化カルシウムが生成されるとともに、水中や空気中等の二酸化炭素との反応により炭酸カルシウムが生成される。また、各種の有機カルシウムが生成され、特に、酸化カルシウムとリンゴに含まれるリンゴ酸,酢酸,コハク酸,クエン酸等の有機酸とが反応して、リンゴ酸カルシウムや酢酸カルシウム等の有機酸カルシウムが生成される。そして、これらの生成物は、植物の搾り滓の繊維と良く混合していく。特に、酸化カルシウムが高い凝固性を有するにもかかわらず、微細に分散して均一な流動状の反応物となるのである。
また、処理液のリンゴの搾汁液100g中に0.1〜1重量%の繊維質(パルプ)が残るようにしているので、リンゴの搾り滓の繊維質に加えて、処理液中の極めてきめ細かなパルプにも生石灰がからむことになり、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等がより一層渾然となって植物の繊維と混合することになる。
【0028】
<乾燥工程>
その後、貯留タンク9から送出ポンプ10により反応物が乾燥エリア11に送出され、乾燥エリア11で反応物が撹拌されながら乾燥させられ、製品となる。乾燥前の流動状の反応物は、そのまま乾燥すると塊となるが、リンゴの繊維が混合していることから、脆くなっており、すぐにぼろぼろに砕けてしまう。本実施例では、撹拌しながら乾燥するので、製品は、おがくず状の細かい粒状になる。この製品は水酸化カルシウム等によってアルカリ性を呈する(例えば、PH10.4)。即ち、この製造方法によって製造された土壌改良剤によれば、カルシウム化合物は、酸化カルシウム(CaO)と処理液の水分との反応により生成される水酸化カルシウム(Ca(OH)2 )、液中や空気中等の二酸化炭素との反応により生成される炭酸カルシウム(CaCO3 )、リンゴに含まれるリンゴ酸,酢酸,コハク酸,クエン酸等の有機酸との反応により生成されるリンゴ酸カルシウムや酢酸カルシウム等の有機酸カルシウムをはじめとする各種の有機カルシウム等から構成され、これらの水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機カルシウム等が、渾然となってリンゴの成分と混合し、異臭がなく、脂肪や塩分をほとんど含まず、アルカリ性の性質を呈する。
【0029】
この土壌改良剤を、土壌に施肥するときは、土壌中に適宜量混入させる。この場合、土壌改良剤は、リンゴの搾り滓を用いているので、石灰の匂が多少あるものの、異臭がなく使用時に不快になる事態が防止される。また、製品は、リンゴの繊維とカルシウム化合物とが混合し、しかも、撹拌しながら乾燥させているので、おがくず状のさらさらしたものになっており、人体や衣服を汚してしまうという事態が防止される。
【0030】
また、この土壌改良剤が施肥された状態では、リンゴの搾り滓が繊維質であることから、弾力性もあり、土壌に混入されると繊維間に空気を取り込み易くなり、そのため、酸素の吸収効率が良くなって、土壌の活性化が促進される。更に、水に対しては炭酸カルシウムが水に溶けにくいこともあって透水性(水はけ)が良くなり、その一方において繊維質であることから保水性(湿り気)も良くなり、土壌が両面性を有した良質なものに改変される。
【0031】
更に、水酸化カルシウム等によりアルカリ性を呈することから、酸性土壌が中性化,アルカリ化し、活性化される。しかも、炭酸カルシウムは水に溶けにくい等の理由により、持続的に土壌の中性化が図られる。また、水酸化カルシウムの消毒作用により、植物に悪影響を及ぼす細菌やバクテリアの繁殖が抑制され、植物に有益なバクテリア等の温床となる。例えば、油菜科野菜の根瘤に効果があることが実験により確認されている。
【0032】
更にまた、有機酸カルシウムを含むことから、野菜や果物等の作物へのカルシウムの吸収効率が向上させられる。即ち、有機酸カルシウムは、作物の根から排出される根酸等によって溶解されて吸収され易く、また、植物の葉で作られた澱粉等を果実に運んでいく重要な役目をすること等が知られており、そのため、病気に強くなる等成長効率が向上させられ、作物の葉の色つやを良くしたり味を良くしたりする等の品質向上が図られる。例えば、リンゴの栽培に使用した実験では、食味及び香りの向上が確認されている。
【0033】
また、窒素,燐酸,カリ成分は、比較的少ないものの、従来に比較して、リンゴの搾汁液が加わるので、リンゴの成分が多く取り入れられ、それだけ、植物に由来した窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加させられ、機能向上が図られる。また、処理液100g中に0.1〜1重量%の繊維質(パルプ)が残るようにしているので、極めてきめ細かなパルプに生石灰がからむことになり、即ち、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等が渾然となって植物の繊維と混合し、植物繊維の混合物なので繊維間に空気を取り込み、土壌を良質なものに改変していくことができる。
【0034】
次に、本発明の第二の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法について説明する。図3に示すように、この第二の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法は、上記第一の実施の形態に係る製造方法とほぼ同様であり、上記製造システム(図2)を用いて製造するが、用いる処理液の構成が異なっている。即ち、処理液として、リンゴの搾汁液の濃縮液を用い、この搾汁液の濃縮液に水を加えて希釈したものを用いている。水の添加により、原料の搾汁液とほぼ同じ濃度に戻す。これによれば、リンゴの搾汁液の濃縮液を用いているので、濃縮液は保存性が良いことから、植物の収穫期のみならずいつでも濃縮液を原材料として用いることができ、そのため、汎用性が増す。また、リンゴの搾汁液の濃縮液においても、植物に由来して、それだけ、窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加させられ、機能向上が図られる。他の作用,効果は上記と同様である。
【0035】
図4には、本発明の第三の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法を示している。これは、上記とは異なり、リンゴの搾り滓として、乾燥しないものを用いる。リンゴの搾り滓の成分は、水分70〜80%の他、炭水化物としてのセルロースがほとんどであり、その他に、リンゴ酸,酢酸,コハク酸,クエン酸等の有機酸、鉄やナトリウム等のミネラル分、カロチンやビタミン等を有している。
【0036】
図5には、本発明の第三の実施の形態に係る土壌改良剤を製造する製造システムを示している。この製造システムは、上記システム(図2)とほぼ同様に構成されているが、上記と異なって、混合器1に変えて、リンゴの搾り滓が供給されるホッパ20を設けている。そして、上記のクラシャー3において、リンゴの搾り滓に上記の処理水を供給して混合させるようにしている。尚、処理水とともに水を供給することもできる。処理水としては、上記第一の実施の形態と同様に、リンゴを搾汁して得られた搾汁液をそのまま用いる。尚、多少水で希釈することもできるが、そのまま用いることが望ましい。他の構成については、上記と同様であるので、その説明は省略する。
【0037】
この第三の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法では、混合工程は、クラッシャー3で行われる。即ち、ホッパ20からスクリューコンベア2によってクラッシャー3に搬送されたリンゴの搾り滓は、クラッシャー3において、略均一の細状体に破砕されるとともに、処理水が供給されて混合される。
【0038】
従って、反応槽8における反応工程では、処理液を混合した流動状リンゴの搾り滓に酸化カルシウムを加えると、酸化カルシウムと水分との反応により水酸化カルシウムが生成されるとともに、水中や空気中等の二酸化炭素との反応により炭酸カルシウムが生成される。また、各種の有機カルシウムが生成され、特に、酸化カルシウムとリンゴに含まれるリンゴ酸,酢酸,コハク酸,クエン酸等の有機酸とが反応して、リンゴ酸カルシウムや酢酸カルシウム等の有機酸カルシウムが生成される。そして、これらの生成物は、植物の搾り滓の繊維と良く混合していく。特に、酸化カルシウムが高い凝固性を有するにもかかわらず、微細に分散して均一な流動状の反応物となるのである。
【0039】
また、処理液のリンゴの搾汁液100g中に0.1〜1重量%の繊維質(パルプ)が残るようにしているので、リンゴの搾り滓の繊維質に加えて、処理液中の極めてきめ細かなパルプにも生石灰がからむことになり、水酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム等の有機カルシウム等がより一層渾然となって植物の繊維と混合することになる。
【0040】
そして、このようにして製造された土壌改良剤においても、窒素,燐酸,カリ成分は、比較的少ないものの、従来に比較して、リンゴの搾汁液が加わるので、リンゴの成分が多く取り入れられ、それだけ、植物に由来した窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加させられ、機能向上が図られる。
【0041】
次に、本発明の第四の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法について説明する。図6に示すように、この第四の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法は、上記第三の実施の形態に係る製造方法とほぼ同様であり、上記製造システム(図5)を用いて製造するが、用いる処理液の構成が異なっている。即ち、処理液として、リンゴの搾汁液の濃縮液を用い、この搾汁液の濃縮液に水を加えて希釈したものを用いている。水の添加により、原料の搾汁液とほぼ同じ濃度に戻す。これによれば、リンゴの搾汁液の濃縮液を用いているので、濃縮液は保存性が良いことから、植物の収穫期のみならずいつでも濃縮液を原材料として用いることができ、そのため、汎用性が増す。また、リンゴの搾汁液の濃縮液においても、植物に由来して、それだけ、窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加させられ、機能向上が図られる。他の作用,効果は上記と同様である。
【実施例】
【0042】
次に、実施例を示す。これは、上記第一の実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法により製造された土壌改良剤である。乾燥したリンゴの搾り滓を180Kg用い、これにリンゴの搾汁液を720Kg加えた。更に、生石灰を100kg加えた。そして、比較例とともにその成分分析を行った。比較例としては、水分80%のリンゴの搾り滓を900Kg用い、これに100Kgの生石灰を加えたものを用いた。
分析結果を図7に示す。この結果から、実施例においては、比較例に比較し、窒素,燐酸,カリ成分が多少なりとも増加させられ、機能向上が図られることが分かる。
【0043】
尚、上記実施の形態においては、植物としてリンゴの果実に適用した例を説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、キウイ、パイナップル、イチゴ、マンゴー、パパイヤ、梨、桃、花梨、メロン、西瓜、サクランボ、葡萄、バナナ、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライチ、ザクロ、イチジク、杏、梅、プラム等どのような果実であっても、本発明を適用することができることは勿論である。また、果実以外の植物にも適用できる。更に、上記実施の形態では、細状体の植物と搾汁液とは同種のリンゴの例を示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、細状体の植物と搾汁液とが異種の植物同士であっても良く、適宜変更して差支えない。また、細状体は異種の植物同士の混合体であっても良いし、搾汁液は異種の植物同士の混合体であっても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 混合器
2 スクリューコンベア
3 クラッシャー
4 貯留槽
5 スクリューコンベア
6 タンク
7 スクリューコンベア
8 反応槽
9 貯留タンク
10 送出ポンプ
11 乾燥エリア
12 供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の細状体に対し水分の存在下で酸化カルシウムを加えて反応させ、該反応によって得られたカルシウム化合物を当該植物の繊維と混合させた土壌改良剤の製造方法において、
上記細状体の植物と同種若しくは異種の植物を搾汁して得られた搾汁液を用い、該搾汁液を処理液とし、上記植物の細状体に上記処理液を混合する混合工程と、該処理液を混合した細状体に酸化カルシウムを加えて反応させる反応工程とを備えたことを特徴とする土壌改良剤の製造方法。
【請求項2】
上記混合工程において、上記処理液として、上記細状体の植物と同種若しくは異種の植物を搾汁して得られた搾汁液の濃縮液を用いることを特徴とする請求項1記載の土壌改良剤の製造方法。
【請求項3】
上記処理液として、上記搾汁液の濃縮液に水を加えて希釈したものを用いることを特徴とする請求項2記載の土壌改良剤の製造方法。
【請求項4】
上記混合工程において、植物の細状体として、乾燥した植物の細状体を用いることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の土壌改良剤の製造方法。
【請求項5】
上記乾燥した植物の細状体と処理液との混合重量比を、1:(3〜5)にしたことを特徴とする請求項4記載の土壌改良剤の製造方法。
【請求項6】
上記反応工程において、上記酸化カルシウムと上記処理液を混合した細状体との混合重量比を、1:(7〜15)にしたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の土壌改良剤の製造方法。
【請求項7】
上記処理液に、植物の繊維質を含むことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の土壌改良剤。
【請求項8】
上記請求項1乃至7何れかに記載の土壌改良剤の製造方法によって製造されたことを特徴とする土壌改良剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−41426(P2012−41426A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183000(P2010−183000)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【特許番号】特許第4745452号(P4745452)
【特許公報発行日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(593051364)株式会社ヤマダイ (2)
【Fターム(参考)】