説明

土壌改良資材の製造方法

【課題】
生態系が崩れた土壌に、本来の土壌生態系を回復するため、バチルス菌を用いて自活性線虫の増殖を促すための土壌改良資材を提供する。
【解決手段】
バチルス菌及びシリカ質を含む汚泥と、自活性線虫が生息するとともに少なくとも窒素、リン、カリウムのいずれかの栄養素を含むセルロースと、を混合して20℃〜45℃で発酵させることによりバチルス菌を優占化するとともに自活性線虫の増殖を促したことを特徴とする土壌改良資材の製造方法を提供し、併せて当該混合物中にバチルス菌が10〜10個/1g存在するとともに自活性線虫が5千〜12万匹/10g存在することを特徴とする土壌改良資材を提供することによって、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌を改良するための土壌改良資材の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品作物の栽培が盛んな地域は、同時に連作障害が多い地域といわれる。連作障害とは同じ作物を同じ場所で連作することにより、土壌生態系のバランスが崩れ、作物に病気や栄養障害などの障害が発生することである。例えば、一定期間、高等植物に寄生して生活する寄生性線虫によって生じる線虫由来のものと、病原菌を要因とするものとがある。
【0003】
この連作障害を抑止するために、一般的には土壌に化学農薬や農薬、ボルドー液(硫酸銅・石灰の混合液)を用いて殺菌することが行われている。しかしながら、消毒によって土壌生態系を破壊するとともに、1年目に使用した農薬は生態系の偏りを生じさせるため、2年目以降は効果が半減するとも言われる。そして、土壌はこれらの消毒物質を吸収し凝集する性質があるため、長期にわたる農薬散布で土壌中に農薬が蓄積されて土地が痩せ、不毛な土地となってしまうこともある。さらに残留農薬の河川への流出による被害も懸念されているばかりではなく、農業従事者の健康被害も心配されている。
【0004】
この連作障害を解消するためにバチルス菌を優先化した土壌改良資材が発明されている。例えば特許文献1ではバチルス菌が優先化された微生物処理汚泥と汚泥とを混合し、発酵してなる土壌改良資材が開示されている。バチルス菌とはバチルス属の芽胞形成性の菌体である。中でも枯草菌は有機物に対する分解性を示し、農作物の有害微生物の殺菌農薬性を示す。この意味で発酵生成物は土壌改良資材や微生物殺菌剤として機能することにより、連作障害を防止することができる。
【0005】
ところで、線虫は地力の指標ともいわれ、土壌微生物の食餌関係において、ミミズよりもはるかに複雑で多様な関係をつくる。線虫には前記寄生性線虫のほか、他の線虫等を捕食する捕食性線虫と、動植物の遺骸を食べて生活する腐生性線虫がおり、捕食性線虫と腐生性線虫をあわせて自活性線虫という。
【0006】
自活性線虫と腐生性線虫の相違は口針の有無で容易に見分けがつく。寄生線虫は口針の巨大なものが大きく、三大寄生性線虫として根瘤線虫類、シスト線虫類、根腐れ線虫類がいる。線虫の大きさは様々で、体長0.5〜1.5mm程度である。
【0007】
自活性線虫のうち、捕食性線虫は、寄生性線虫を食べる種も存在することが知られている。有機物に富み微生物が豊かな良い土には、自活性線虫はたくさん存在しており、線虫の数を測定することで、土壌改良資材による土壌生態系の形成効果を知る指標ともなるものである。
【0008】
一般的には自活性線虫が土壌中には圧倒的に多いものの、これまでは害を及ぼす寄生性線虫の抑制に主眼が置かれて調査研究されてきており、自活性線虫に対する研究は多くなされてこなかったのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開2006−274205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
寄生性線虫は一般的に宿主となる作物が決まっており、その作物が連作されると次第にその寄生性線虫が増えていく。そして農薬等で土壌の消毒等が行われると、本来、存在しているはずの自活性線虫も減少する事態となり、土壌生態系が崩れていく。
【0011】
そこで、本願発明では、上記のような事情で土壌生態系が崩れた土壌に、本来の土壌生態系を回復するため、バチルス菌を用いて自活性線虫の増殖を促すための土壌改良資材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
下記の手段によって、前記課題を解決する。
(1)バチルス菌及びシリカ質を含む汚泥と、自活性線虫が生息するとともに少なくとも窒素、リン、カリウムのいずれかの栄養素を含むセルロースと、を混合して20℃〜45℃で発酵させることによりバチルス菌を優先化するとともに自活性線虫の増殖を促したことを特徴とする土壌改良資材の製造方法。
(2)前記汚泥が上水汚泥であるとともに、前記セルロースが、少なくとも剪定枝と廃菌床との混合物であることを特徴とする(1)に記載の土壌改良資材の製造方法。
(3)バチルス菌を含む汚泥と、自活性線虫が生息するセルロースと、を混合して20℃〜45℃で発酵させることによりバチルス菌を優先化するとともに自活性線虫の増殖を促すことによって、当該混合物中にバチルス菌が10〜10個/1g存在するとともに自活性線虫が5千〜12万匹/10g存在することを特徴とする土壌改良資材。
(4)(3)に記載の土壌改良資材を10〜90重量部と土壌とを10〜90重量部混合したことを特徴とする土壌。
【発明の効果】
【0013】
本発明の土壌改良資材はバチルス菌の優先化に伴い、自活性線虫も増殖させ、これにより土壌生態系を効果的に復元し、土壌を改良することができる。
【0014】
さらに、前記汚泥に、少なくとも上水汚泥を用いた場合、バチルス菌の優先化に好適な環境を提供することができる。
【0015】
また、前記セルロースとして剪定枝を用いることによって、発酵温度の上昇を軽減させることができるため、自活性線虫を死滅させる温度まで至らず、過剰な乾燥を抑止することができ、自活性線虫を存続させたまま土壌改良資材を提供することができる。
【0016】
加えて、本願発明の方法で土壌改良資材を製造すると、バチルス菌が10〜10個/1g存在するとともに自活性線虫が5千〜12万匹/10g存在することを特徴とする土壌改良資材を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本願発明は、汚泥と、セルロースと、を混合して20℃〜45℃で発酵させることにより、汚泥に含まれるバチルス菌を優先化し、それに伴い、セルロースに含まれる線虫がバチルス菌を捕食し、増殖することを基本的な特徴とする。
【0018】
前記汚泥にはバチルス菌が含まれている。バチルス菌は枯草菌(Bacillus subtilis)であり、稲藁などに付着する菌である。バチルス菌はカビや細菌など、植物の病気を引き起こす28種の病原菌を殺す能力を持つことが知られている。中でもBacillus. Thuringiensisは蛾や蝶の幼虫に対して殺虫効果があると言われ、微生物農薬としても知られている。なお、無論、バチルス菌を汚泥由来のものとせず、市販されている液体バチルス(液体中にバチルス菌を培養させたもの)でも構わない。このとき、特定非営利法人エコクリーンアップサービス21が枯草菌、納豆菌、乳酸菌、酵母を基礎に培養育成した「メーク・クリーン」:資料番号BIOMを使用してもよい。
【0019】
汚泥としては上水汚泥、下水汚泥等を用いることができる。汚泥にはシリカ質が含まれていることが好ましい。これは、シリカ質が、バチルス菌が芽胞を形成する際に必要な栄養素であるためである。上水汚泥はシリカを含むシルト・粘土質が主成分であり、本願発明で好適に用いられる。さらに、上水汚泥にはミネラル分も多く含まれており、前記シリカと相俟って、バチルス菌の優先化に好適な条件となる。上水汚泥と下水汚泥を混合したものを用いてもよいし、シリカ質は後で添加剤として加えてもよい。
【0020】
尚、これまで上水汚泥は凝集剤としてアルミニウムが用いられることが多く、これが土中のリンと化合し、土壌のリン飢餓を招くため、廃棄物として処理されることが多かったが、バチルス菌を優先化させるために汚泥やセルロースとともに発酵を行った結果、含まれる上水汚泥中のアルミニウムが若干のリン酸イオンと化合しても、余剰のリン酸が下水汚泥や廃菌床から供給されるため、リン酸飢餓を抑止できる。
【0021】
前記セルロースは剪定枝、キノコの菌床栽培から出たキノコ廃菌床、腐葉土、おがくず、もやし滓、木炭や竹炭等の炭のほか、フスマ、米糠、トウモロコシ糠、大豆粕、オカラ、ビール粕、ウイスキー粕、焼酎粕、綿花粕、ダンボール等紙類の粉砕物に自活性線虫を繁殖させたもの等を用いることもできる。これらを単独として用いても、混合して用いても差し支えない。ただし、種によっては発酵温度が高温になるものもあるので、剪定枝などの低温で発酵するものと混合して用いることが好ましい。なお、セルロースは3mmから1cm、好ましくは5mm程度の大きさにすることができる。また、粉砕することも可能である。
【0022】
本発明で「剪定枝」と用いる場合、樹木の剪定枝のほか、樹木の幹や根株及び刈草、草、草花や樹木の葉を含むものである。そして造園の際に発生する伐採樹木や根株及び除草作業によって発生した草や芝刈りの芝なども含まれ、山地、公園や道路の草花や樹木、家庭で剪定されたものなどを使用することができる。このとき、剪定枝は5mm〜1cm程度に粉砕されることが好ましい。葉が多い場合は発酵しやすく、枝が多い場合は発酵の際に分解しにくくなるため、発酵のスピードに併せて適宜調整することも可能である。
【0023】
キノコの菌床栽培から出たキノコ廃菌床を用いる場合、原木栽培で用いられるナラ、クヌギ、サクラ等の原木を3mm〜1cm程度に細かく粉砕したものや、菌床栽培で用いられる広葉樹や針葉樹、堆肥栽培で用いられる馬糞と藁を混合させたものなどが用いられる。
【0024】
このように上水汚泥のみならず、セルロースとしても剪定枝や廃菌床など、本来廃棄物として処理されるものを用いることによって、本発明では廃棄物を有効利用することができる。
【0025】
なお、前記セルロースには、自活性線虫が20匹/10g程度しか存在していなくても、本発明の条件で発酵することによって1万匹以上の自活性線虫を増殖させることができる。線虫が多いということは、その土壌が極めて健全な土壌で栄養のある良い土壌であることを意味している。そのため、線虫が多い土壌で育つ農作物の生育は良好になるのである。
【0026】
さらに、前記セルロースには、少なくとも窒素、リン、カリウムのいずれかの栄養素を含むものであることが好ましい。これによって、バチルス菌の優先化の際に良好な影響を与えるためである。このように、バチルス菌はセルロースに含まれる栄養源によって優先化が可能になる。無論、栄養剤として窒素、リン、カリウムを添加することも可能である。
【0027】
セルロースと汚泥の重量比は5:5でもかまわないが、好ましくは汚泥2〜4:セルロース6〜8、より好ましくは汚泥3:セルロース7である。この配合比率はセルロースの種により異なる。なお、線虫はセルロースがないと増殖できないため、汚泥よりもセルロースを多くすることが好ましい。
【0028】
これらのものを混合し、中低温で発酵させることによってバチルス菌が優先化し、10〜10個/1g程度存在するようにする。そしてそれに伴い、セルロース内の自活性線虫は優先化されたバチルス菌をエサとし、増殖する。この際、好適な発酵温度は20〜45℃、さらに好ましくは20℃〜40℃である。これ以上となると、高温のために生息不能となり、自活性線虫は死滅するためである。さらにこのような中低温で発酵することにより、図7に示すように数種のバチルス属細菌種が発生するため、土壌生態系の復元及び連作障害抑制のためには大いに効果が期待されるところである。
【0029】
20〜45℃が線虫の生息環境の限界値であることを示す実験結果を図1ならびに表1、2に示す。図1は試料毎の発酵温度を示すグラフ、表1はその配合条件、表2は第1週及び2週目の線虫の数である。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
ここから、最も温度が高くなった(45℃程度)試料Dでも2800程度の線虫が確認できたことから、この温度が限界値であると考えられる。その後、発酵温度が40℃以下となると、次第に線虫は増加し、第2週目には9000程度となった。それに対し、第1週から線虫が多く存在したのは45℃以下で発酵した試料A,B,Eであった。なお、試料Cに線虫が少ないのは、線虫の増殖に必要なセルロースが汚泥に対して少なかったためと考えられる。試料A、Bは第2週目には線虫が減少しているのに対し、試料Eは線虫が増加している。
【0033】
これまでは汚泥とセルロースを20〜50℃程度で発酵する技術は開示されていたが、本願発明では45℃以下、好ましくは40℃以下で発酵することを特徴とする。これにより、線虫が死滅しないという有利な効果があることを本願の発明者らが見出したためである。通常では堆肥を用いるために、発酵が高温(50以上。尚、60℃以上となる)となり、その状態で継続されるために線虫が死滅するため、線虫による健全な土壌生態系の形成効果は期待できない。しかしながら、本発明では45℃以上で発酵しないようにするために、セルロースとして剪定枝を加えており、これが従来技術とは異なる有効な点である。剪定枝は発酵の温度が低く、発酵温度を45℃以下に保つのが容易であるという特徴をもつ。これはセルロース分が強く、分解が進みにくいことがその理由である。
【0034】
セルロースと汚泥の混合物を発酵させたものの含水率は概ね20%以上であり、好ましくは20〜60%程度であることが好ましい。20%以下の場合、水分が不足し、線虫の生息環境が悪化するため、発酵中は上記含水率を維持することが重要である。
【0035】
本願発明の改良剤は連作障害を防止できるほか、健全な土壌生態系を取り戻し、さらには肥料として農作物にも栄養を与えることができるので、極めて良い効果を与えるものとなり得る。
【0036】
図2は剪定枝と廃菌床を5:5の割合で混合し、液体バチルスを加えて発酵させた場合の発酵温度の変化を示した図である。この図より、セルロースとして剪定枝を加えた場合、35℃以下(20〜35℃)で発酵を安定させることが可能であることが分かる。
【0037】
このときのバチルス菌(バチルスコロニー)の数を示したものが図3である。この結果から、バチルス菌数にはばらつきが見られるものの、10〜10個/1g程度で推移しており、図4に示すように、バチルス菌を優先化できていることが明らかである。なお、優先化とは菌体に占めるバチルス菌の占有割合のことをいう。そして、発酵の早い段階で優先化できていることも明らかであることから、剪定枝と廃菌床との組み合わせがバチルス菌にとって優先化しやすい環境であることが分かる。
【0038】
そして図5はこのときの線虫の数を示す図である。2週目でピークを迎え12万匹/10g近く生息したが、4週目以降は5千〜2万匹で安定した。通常の土壌で線虫は0〜300匹/10g程度であり、樹皮発酵堆肥でも3千〜4千程度であるから、本願発明の線虫数は極めて大きいものといえる。さらに、通常の堆肥は発酵が進み高温になるので、線虫数は次第に減少していく傾向にある。しかし、本発明は発酵温度が中低温なので、線虫が温度上昇により死滅することはないのである。
【0039】
以上より、バチルス菌を優先化し、特定の条件下でセルロースを発酵することによって通常よりも多く線虫を増殖せしめることができることが明らかである。
【0040】
なお、バチルス数及び線虫数は発酵開始から1週程度で安定し、2週目以降でピークを迎えるので、土壌改良資材としてはそれ以後のものを使用することが好ましい。
【0041】
本発明では、バチルス菌の優先化にセルロースに含まれる栄養素が有効に作用する一方で、セルロースに含まれる線虫はバチルス菌をエサとしつつ、特定の条件下で増殖していくため、これらの組み合わせが非常に有効であることが判明したのである。
【0042】
次に、汚泥として少なくとも上水汚泥を用い、セルロースとして少なくとも剪定枝を用いることが好ましいことを証明する。データとして表3は汚泥と数種のセルロースを発酵させ、バチルス菌を優先化させた場合に含まれるバチルス菌の数を示している。RUN Aは下水汚泥1kg、上水汚泥4kg、廃菌床等5kgの割合で発酵させたもの、RUN Bは下水汚泥1kg、上水汚泥5kg、もやし滓等4kgの割合で発酵させたもの、RUN Cは下水汚泥1kg、上水汚泥4kg、剪定枝等5kgの割合で発酵させたもの、RUN Dは下水汚泥1kg、剪定枝等9kgの割合で発酵させたものである(表4参照)。なお、上記配合比は乾燥質量での比率である。
【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
この結果より、もやし滓を用いたRUN Bは混合発酵初期のバチルス菌優先化が早く、カビも発生せず、有効であったが、発酵による発熱で乾燥傾向にあり、コロニー数が安定しなかった。剪定枝を用いたRUN Cは優先化までの期間は長いものの、最終的にコロニー数は108個/g以上存在し、廃菌床を用いたRUN Aを上回る結果となった。RUN Dは終始カビが蔓延しており、コロニー数の増加も確認できなかった。表2の優先化欄の△は雑菌が多くバチルス菌の優先化率が50%以下の状態、○はバチルス菌が全体の菌の50%〜90%程度存在している状態、◎は雑菌がほとんど見られずにバチルス菌が90%以上優先化している状態を示している。また、カビ欄の++はカビが50%以上、+は10%〜50%、-は10%以下でほとんど確認されない状態を示している。
【0046】
以上の事実より、剪定枝は発酵温度が上昇せず、緩やかに発酵が進むため、線虫を死滅させない程度の温度上昇に抑える点で効果的である。そして、RUN CとRUN Dの結果を比較し、上水汚泥を使用することが好ましいことが判明した。これは上水汚泥にはシリカが多く含まれているが、これはバチルス菌が芽胞を形成する際に必要な栄養素であるため、上水汚泥を含まないRUN Dはバチルス菌が増加しても減少する可能性が高く、増加も減少もしなかったと推察される。
【0047】
そして図6はRUN A〜RUN Dが擁する線虫の数を示した図である。RUN CはRUN Dほどではないが一定してRUN AやRUN Bよりも多い線虫が見出されている。なお、線虫はカビや細菌を捕食するため、それらが減少すると、線虫も減少することがわかる。
【0048】
以上より、汚泥として上水汚泥を用いることが効果的であるとともに、セルロースとして、剪定枝を用いることが効果的であることが判明した。これらを混合して中低温で発酵させることにより、土壌改良資材を製造すると、当該混合物中にバチルス菌が10〜10個/1g存在するとともに自活性線虫が5千〜12万匹/10g存在するようになる。
【0049】
この土壌改良資材をそのまま用いても農作物を栽培しても構わないが、土壌改良資材を10〜90重量部と土壌とを10〜90重量部混合することによって、生態系が崩れた土壌を健全な状態へ復元することができる。土壌を改良した後、農作物を栽培すれば、同様の効果が表れる。そして作物の生育上、栄養の豊富な土壌で栽培を可能にせしめる。
【実施例1】
【0050】
セルロースとして剪定枝と廃菌床を混合する場合の比率について、剪定枝を1〜9:剪定枝1〜9の重量比で混合することができる。配合比に幅があるのは、用いる剪定枝の種類によって発酵温度に差があるためである。枝の部分は分解が進みにくく、発酵温度は低いが、葉の部分は分解しやすいので、枝の部分よりも分解は進みやすい。したがって、用いる種に応じて分量を適宜変更するのが好ましいのである。このとき、重量比にして汚泥はセルロース6〜8に対して2〜4用いることが好ましい。
【0051】
尚、汚泥をセルロースと混合して発酵する際に、汚泥を段階的に投入させることができる。このように順次汚泥をセルロースに加えることによって、バチルス菌や線虫を効果的に培養せしめることができる。この方法の場合、段階的に投入せずに1段階で混合・発酵させる場合よりも、セルロースに比して汚泥の割合を多くすることができ、例えば汚泥(先投入)5(後投入)5:剪定枝0.6:廃菌床3の割合でも可能であり、この場合は汚泥5:セルロース1.8〜3という重量比で配合することが可能となる。このような配合比で土壌改良資材が提供できれば、より安く製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】汚泥及びセルロースの種類に応じた発酵温度の変化を示す図
【図2】剪定枝と廃菌床の混合物を発酵させた場合の温度変化を示す図
【図3】剪定枝と廃菌床の混合物を発酵する際のバチルス菌の数の変化
【図4】剪定枝と廃菌床の混合物を発酵する際のバチルス菌の優先化率の変化
【図5】剪定枝と廃菌床の混合物を発酵する際の線虫の数の変化
【図6】汚泥及びセルロースの種類に応じた線虫の数の相違を示した図
【図7】バチルス菌種とコロニー形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス菌及びシリカ質を含む汚泥と、自活性線虫が生息するとともに少なくとも窒素、リン、カリウムのいずれかの栄養素を含むセルロースと、を混合して20℃〜45℃で発酵させることによりバチルス菌を優先化するとともに自活性線虫の増殖を促したことを特徴とする土壌改良資材の製造方法。
【請求項2】
前記汚泥が上水汚泥であるとともに、前記セルロースが、少なくとも剪定枝と廃菌床との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の土壌改良資材の製造方法。
【請求項3】
バチルス菌を含む汚泥と、自活性線虫が生息するセルロースと、を混合して20℃〜45℃で発酵させることによりバチルス菌を優先化するとともに自活性線虫の増殖を促すことによって、当該混合物中にバチルス菌が10〜10個/1g存在するとともに自活性線虫が5千〜12万匹/10g存在することを特徴とする土壌改良資材。
【請求項4】
請求項3に記載の土壌改良資材を10〜90重量部と土壌とを10〜90重量部混合したことを特徴とする土壌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−263559(P2009−263559A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116906(P2008−116906)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【特許番号】特許第4226065号(P4226065)
【特許公報発行日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(506177051)有限会社里源 (2)
【Fターム(参考)】