説明

土壌改質方法及び土壌改質構造

【課題】施工が容易で、施工後の資材撤収やメンテナンスも不要であり、土壌中の塩分を効率良く除去することができる土壌改質技術を提供する。
【解決手段】改質対象である土壌10に複数の溝11を形成し、それぞれの溝11中に、周壁12aに複数の貫通孔12bを有する円管状の排水管12を敷設する工程と、排水管12の敷設後、溝11を埋め戻し、土壌10に改質材13を散布し、十分に混練した後、土壌10の表面10aを均し、そのまま静置する工程と、により、透水領域21を備えた土壌改質構造20を形成する。改質材13として、団粒化剤14と、マグネシウム系固化材15若しくは消石灰16(水酸化カルシウム)と、を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高潮や津波などに伴う海水の浸入などにより土壌中に混入した塩分を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
海水の浸入などによって農業用地の土壌中に塩分が混入すると、農作物の生育状態が悪化したり、農作物の栽培自体ができなくなったりすることがある。このため、従来、土壌中に混入した塩分を除去する様々な土壌改質技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1に記載された「耕作土の塩分除去方法」は、耕作土中に、上部を露出させた状態でパルプ材を所定間隔で埋設し、耕作土の下部から上昇した水分をパルプ材の地上露出部表面から蒸発させることにより、水分中の塩類をパルプ部材内に凝集させる、というものである。
【0004】
特許文献2に記載された「塩害土壌の改良法」は、塩類を含有する塩害土壌に、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を混合することにより、両イオン交換樹脂に塩類を吸着させ、植物育成に良好な改良土壌にする、というものである。
【0005】
特許文献3に記載された「塩類土壌の除塩方法」は、複数の電極壁を所定間隔で地中に並列させ、向かい合う電極壁の一方をアノード、他方をカソードとして、それぞれに所定の電圧を印加し、これにより、両電極壁間に生じる電場で土壌中の塩類のイオンを各々の極性に応じた電極壁側に移動させて集積することにより、塩類のイオンを除去する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−141680号公報
【特許文献2】特開平6−125653号公報
【特許文献3】特開平5−336842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された「耕作土の塩分除去方法」においては、所定濃度以上の塩類がパルプ部材に濃集した時点で耕作土中の塩分除去が完了していない場合、パルプ部材を交換する必要があるため、施工後のメンテナンスに手間を要するだけでなく、新たなパルプ部材を必要とする。
【0008】
特許文献2に記載された「塩害土壌の改良法」においては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が吸着可能な塩類量は限られているため、イオン交換樹脂に吸着された塩類量が上限に達した時点で土壌中の塩類除去が完了していない場合、イオン交換樹脂の補充や再生が必要であり、施工後のメンテナンスに手間を要する。
【0009】
特許文献3に記載された「塩類土壌の除塩方法」においては、複数の電極壁を地中に立設する作業及びこれらの電極壁に電圧を印加するための電源装置が必要であるため、施工の際には、多くの資材と労力を必要とするだけでなく、除塩が完了した後の電極壁及び電源装置などの資材撤収にも手間を要する。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、施工が容易で、施工後の資材撤収やメンテナンスも不要であり、土壌中の塩分を効率良く除去することができる土壌改質技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る土壌改質構造は、改質対象である土壌に改質材を混練することにより当該土壌中に形成された透水領域と、前記透水領域に敷設された排水部材と、を備え、前記改質材として、団粒化剤と、マグネシウム系固化材、消石灰若しくはセメント系固化材と、を用いたことを特徴とする。
【0012】
このような構成とすれば、雨天時などに、改質対象である土壌に降り注いだ雨水は、土壌中に形成された透水領域を通過して排水部材を経由して速やかに排水され、土壌中に含まれる塩分などは透水領域を通過する雨水に溶解して雨水とともに排出されるので、土壌中の塩分を効率良く除去することができる。また、改質対象である土壌中に敷設された排水部材と、土壌に改質材を混練させて形成した透水領域と、によって土壌改質構造を形成することができるため、施工が容易であり、改質後の土壌では、そのまま植物の栽培などが可能であるため、施工後の資材撤収やメンテナンスも不要である。
【0013】
ここで、前記排水部材として、透水性の周壁を有する管状体若しくは筒状体を用いることが望ましい。このような構成とすれば、透水領域に浸み込んだ雨水などを効率良く排水することができる。
【0014】
また、前記団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を用いることが望ましい。このような高分子化合物は優れた団粒化作用を発揮するので、雨水などの浸透性及び通過性が良好な透水領域を形成することができる。
【0015】
次に、本発明に係る土壌改質方法は、改質対象である土壌中に排水部材を敷設する工程と、前記土壌に改質材を混練させ当該土壌中に透水領域を形成する工程と、を備え、前記改質材として、団粒化剤と、マグネシウム系固化材、消石灰若しくはセメント系固化材と、を用いたことを特徴とする。
【0016】
このような構成とすれば、施工後の資材撤収やメンテナンスが不要であり、土壌中の塩分を効率良く除去することができる土壌改質構造を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、施工が容易で、施工後の資材撤収やメンテナンスも不要であり、土壌中の塩分を効率良く除去することができる土壌改質技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である土壌改質方法の施工手順を示す工程図である。
【図2】図1に示す土壌改質方法によって形成された土壌改質構造を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態である土壌改質方法は、例えば、図1に示すような施工手順に沿って施工することができる。まず、図1(a)に示すように、改質対象である土壌10に複数の溝11を形成し、それぞれの溝11中に排水管12を敷設する。排水管12は、図2に示すように、周壁12aに複数の貫通孔12bを有する円管状の資材である。
【0020】
排水管12の敷設が完了したら、溝11を埋め戻し、図1(b)に示すように、土壌10に改質材13を散布し、十分に混練する。改質材13として、団粒化剤14と、マグネシウム系固化材15若しくは消石灰16(水酸化カルシウム)と、を用いている。なお、団粒化剤14は、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物の一つである、有限会社グローバル研究所の「GB−2000:商品名」を使用している。なお、マグネシウム固化材15や消石灰16の代わりにセメント系固化材(図示せず)を用いることもできる。
【0021】
ここで、土壌10に対する改質材13の散布量などは限定するものではないが、本実施形態では、1m3の土壌10に対し、改質材13として、2〜5Lの団粒化剤14と、20〜80kgのマグネシウム系固化材15若しくは10〜40kgの消石灰16(水酸化カルシウム)と、を散布し、土壌10と混練させている。
【0022】
改質材13が土壌10中に均等に混練されたら、図1(c)に示すように、土壌10の表面10aを均し、そのまま静置すると、図2に示すように、透水領域21を備えた土壌改質構造20が形成される。
【0023】
図2に示すように、雨天時などに土壌改質構造20上に降り注いだ雨水は、土壌改質構造20中に浸み込み、透水領域21を通過して速やかに下方へ移動し、排水管12の貫通孔12bを通過して当該排水管12中へ流れ込んだ後、排水管12内を通過して所定場所へ排水される。このような雨水排水過程において、土壌10中に含まれている塩分などは透水領域21を通過する雨水に溶解して雨水とともに排出されるので、土壌10中の塩分を効率良く除去することができる。
【0024】
また、土壌改質構造20は、改質対象である土壌10中に排水管12敷設し、土壌10に改質材13を混練させて透水領域21を形成するだけ施工することができるため、施工が容易であり、改質後の土壌10では、そのまま植物の栽培などが可能であるため、施工後の資材撤収やメンテナンスも不要である。
【0025】
本実施形態では、周壁12aに複数の貫通孔12bを有する排水管12を土壌10中に敷設して土壌改質構造20を形成しているため、土壌10中の塩分を、透水領域21に浸み込んだ雨水などと共に効率良く排出することができる。
【0026】
また、団粒化剤14として使用している「アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物」は、土壌10と混練することにより、優れた団粒化作用を発揮するので、雨水などの浸透性及び通過性が良好な透水領域21を形成することができる。
【0027】
なお、図1,図2に基づいて説明した土壌改質方法及び土壌改質構造20は本発明の実施形態の一例を示すものであり、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る土壌改質技術は、海水の浸入などにより土壌中に混入した塩分を除去する技術として農業あるいは土木建設業などの分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 土壌
10a 表面
11 溝
12 排水管
12a 周壁
12b 貫通孔
13 改質材
14 団粒化剤
15 マグネシウム系固化材
16 消石灰
20 土壌改質構造
21 透水領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質対象である土壌に改質材を混練させることにより当該土壌中に形成された透水領域と、前記透水領域に敷設された排水部材と、を備え、前記改質材として、団粒化剤と、マグネシウム系固化材、消石灰若しくはセメント系固化材と、を用いたことを特徴とする土壌改質構造。
【請求項2】
前記排水部材として、透水性の周壁を有する管状体若しくは筒状体を用いた請求項1記載の土壌改質構造。
【請求項3】
前記団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を用いた請求項1または2記載の土壌改質構造。
【請求項4】
改質対象である土壌中に排水部材を敷設する工程と、前記土壌に改質材を混練して当該土壌中に透水領域を形成する工程と、を備え、前記改質材として、団粒化剤と、マグネシウム系固化材、消石灰若しくはセメント系固化材と、を用いたことを特徴とする土壌改質方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−81398(P2013−81398A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222168(P2011−222168)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(500305380)株式会社シーマコンサルタント (30)
【Fターム(参考)】