説明

土壌浄化装置及び土壌浄化方法

【課題】高濃度酸素含有水を安定して製造でき、栄養液との混合物を土壌中に安定注入することができる。
【解決手段】土壌中に存在する菌を用いて前記土壌中の汚染物質を浄化する土壌浄化装置であって、水に酸素を溶解させながら常に前記水を循環させる循環系と、前記循環系内を循環する前記水である循環水の温度を調節する水温制御系と、前記循環系から前記循環水を一部供給され、供給された前記循環水と、前記菌の栄養源になる栄養剤を含んだ栄養液と、を混合し、前記土壌中に注入する注入系と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された土壌を浄化する土壌浄化装置及び土壌浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)などの有機化学物質によって汚染された土壌を微生物や菌類を利用して浄化するバイオレメデーションと呼ばれる浄化方法が知られている。
【0003】
例えば、引用文献1には、液体供給パイプの径方向内側に空気供給パイプを配置して地盤中に埋設し、前記液体供給パイプの先端部にて液体と空気とを混合することにより、大きさが1〜10000μmである微細な気泡を含む液体を地盤中に注入又は浸透し、これによって地盤中に含まれる汚染物質の分解微生物の増殖乃至活動を活性化させて土壌を分解浄化する土壌及び地下水の浄化方法について記載されている。
【0004】
これにより、地盤中の浄化すべき領域に空気を均一に注入又は浸透させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4375592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の方法では、液体中の酸素濃度を高くできないため、好気性菌に必要な酸素を土壌中に十分かつ均等に供給することができなかった。
【0007】
また、微細な空気の気泡としてでは、気泡が液体の上に上がってしまうため、やはり、土壌中に、特に、土壌の下部領域には十分に酸素を供給することができなかった。更に、空気の供給だけでは、好気性菌を十分に活性化できなかった。
【0008】
上記理由により、特許文献1に記載された従来の方法では、菌が十分に活性化されないため、土壌中の汚染物質の分解速度が遅く、土壌の浄化に長時間必要であるとともに、土壌の汚染範囲全体に均等な浄化処理ができなかった。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑み、菌に十分な栄養源と酸素とを供給することによって、BTEX等の有機化学物質による土壌の汚染の浄化を短時間に均等に処理できる土壌浄化装置及び土壌浄化方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、下記の発明によって解決することができる。
【0011】
即ち、本発明の土壌浄化装置は、土壌中に存在する菌を用いて前記土壌中の汚染物質を浄化する土壌浄化装置であって、水に酸素を溶解させながら常に前記水を循環させる循環系と、前記循環系内を循環する前記水である循環水の温度を調節する水温制御系と、前記循環系から前記循環水を一部供給され、供給された前記循環水と、前記菌の栄養源になる栄養剤を含んだ栄養液と、を混合し、前記土壌中に注入する注入系と、を備え、前記循環系は、外部から水を該循環系内に供給するための水供給管と、前記循環水を貯留する2つの貯留槽である受水槽及びバッファ槽と、該循環系内に酸素を供給するための酸素供給手段と、該循環系内の水に前記酸素を溶解させるラインミキサと、前記循環水を循環させるためのポンプと、を有し、前記受水槽と前記バッファ槽とは配管で接続されて、前記循環水は、前記受水槽と前記バッファ槽との間を前記ポンプの動力によって循環し、前記注入系は、前記栄養液を供給するための栄養剤供給器と、前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製する混合手段と、前記栄養混合液を地中に注入する1以上の注入手段と、を有し、前記注入手段は、地面に形成された穴と、前記穴に挿入された前記栄養混合液を注入するための注入管とを有し、前記水温制御系は、前記循環水の水温を所定の範囲に調整するためのチラーを有していることを主要な特徴にしている。
【0012】
これにより、酸素を含ませながら水を循環させているので水は常に高濃度の酸素が溶解した状態になっている。また、循環させながら温度調整しているので、水の温度が一定に保たれ、水中の酸素濃度を高濃度に維持することができる。
【0013】
更に、受水槽とバッファ槽とを備えており、その2つの槽の間を水が循環しているので、水の使用量の大きな変動にも十分対応することができ、高濃度酸素を含んだ水を大量に供給することもできる。
【0014】
更にまた、高濃度の酸素を含む水に汚染物質を分解する菌の栄養源を混合して土壌中に注入するので、菌の活性化を十分に行うことができ。これにより、土壌の浄化を短時間に行うことができる。
【0015】
また、高濃度の酸素と栄養源の土壌中に均等に供給することができるので、汚染された土壌全体にわたって均等に浄化処理を行うことができる。
【0016】
また、本発明の土壌浄化装置は、前記水温制御系は、前記循環水の温度を15℃〜20℃になるように制御することを主要な特徴にしている。
【0017】
これにより、循環水の水温が15℃〜20℃に保たれているので、循環水中の酸素濃度を高濃度に維持することができる。
【0018】
更に、本発明の土壌浄化装置は、前記混合手段に送液する循環水及び栄養液の送液タイミングを制御するための制御手段を更に有し、前記制御手段により前記栄養液が土壌中に間欠注入されるように制御されることを主要な特徴にしている。
【0019】
これにより、菌は、栄養液の量が多すぎるとかえって活性を失ってしまうが、栄養液の注入を間欠に行うので、多量の栄養液を土壌中に注入することがなく、菌が活性を失うことを防ぐことができる。また、栄養液は間欠に注入しても、酸素を含んだ水は間欠ではなく注入するので、酸素を菌に十分供給することができ、菌の活性を高めることができる。
【0020】
更にまた、本発明の土壌浄化装置は、前記注入手段は、前記栄養混合液を自然流下によって土壌中に注入することを主要な特徴にしている。
【0021】
これにより、地中に圧力をかけることがないので、地中に圧力をかけることにより発生する、地層破壊を防ぐことができる。地層が圧力により破壊されると、気体、または、液体の逃げ道が形成され、地中全体に栄養混合液や、酸素含有水を供給することができなくなるが、それを防ぐことができる。
【0022】
また、本発明の土壌浄化装置は、前記穴に設置された水位センサと、前記水位センサにより検知された水位に基づいて前記注入手段による注入動作のON、OFFを制御する制御装置と、を更に有することを主要な特徴にしている。
【0023】
これにより、常に適量の水を注入することができる。
【0024】
更に、本発明の土壌浄化方法は、上記記載の土壌浄化装置を用いて土壌を浄化する土壌浄化方法であって、前記ポンプが、前記循環水を前記受水槽と前記バッファ槽との間で循環させる工程と、前記チラーが、前記循環水の温度を所定の範囲に調整する工程と、前記酸素供給手段が、酸素を供給する工程と、前記ラインミキサが、前記酸素を前記循環水に溶解させる工程と、前記栄養剤供給器が、前記栄養液を前記混合手段に供給する工程と、前記混合手段が、前記循環系から供給された前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製し、前記栄養混合液を前記注入手段に供給する工程と、前記注入手段が、前記栄養混合液を地面に形成された穴に注入する工程と、を備えたことを主要な特徴にしている。
【0025】
これにより、酸素を含ませながら水を循環させているので水は常に高濃度の酸素が溶解した状態になっている。また、循環させながら温度調整しているので、水の温度が一定に保たれ、水中の酸素濃度を高濃度に維持することができる。
【0026】
更に、受水槽とバッファ槽とを備えており、その2つの槽の間を水が循環しているので、水の使用量の大きな変動にも十分対応することができ、高濃度酸素を含んだ水を大量に供給することもできる。
【0027】
更にまた、高濃度の酸素を含む水に汚染物質を分解する菌の栄養源を混合して土壌中に注入するので、菌の活性化を十分に行うことができ。これにより、土壌の浄化を短時間に行うことができる。
【0028】
また、高濃度の酸素と栄養源の土壌中に均等に供給することができるので、汚染された土壌全体にわたって均等に浄化処理を行うことができる。
【0029】
また、本発明の土壌浄化方法は、前記チラーが、前記循環水の温度が15℃〜20℃になるように制御する工程を更に有することを主要な特徴にしている。
【0030】
これにより、循環水の水温が15℃〜20℃に保たれているので、循環水中の酸素濃度を高濃度かつ安定に維持することができる。
【0031】
更に、本発明の土壌浄化方法は、上記記載の土壌浄化装置を用いて土壌を浄化する土壌浄化方法であって、前記ポンプが、前記循環水を前記受水槽と前記バッファ槽との間で循環させる工程と、前記チラーが、前記循環水の温度を所定の範囲に調整する工程と、前記酸素供給手段が、酸素を供給する工程と、前記ラインミキサが、前記酸素を前記循環水に溶解させる工程と、前記栄養剤供給器が、前記栄養液を前記混合手段に供給する工程と、前記混合手段が、前記循環系から供給された前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製し、前記栄養混合液を前記注入手段に供給する工程と、前記注入手段が、前記栄養混合液を地面に形成された穴に注入する工程と、前記制御手段が、前記栄養液が土壌中に間欠注入されるように制御する工程と、を備えたことを主要な特徴にしている。
【0032】
これにより、菌は、栄養液の量が多すぎるとかえって活性を失ってしまうが、栄養液の注入を間欠に行うので、多量の栄養液を土壌中に注入することがなく、菌が活性を失うことを防ぐことができる。また、栄養液は間欠に注入しても、酸素を含んだ水は間欠ではなく注入するので、酸素を菌に十分供給することができ、菌の活性を高めることができる。
【0033】
更にまた、本発明の土壌浄化方法は、上記記載の土壌浄化装置を用いて土壌を浄化する土壌浄化方法であって、前記ポンプが、前記循環水を前記受水槽と前記バッファ槽との間で循環させる工程と、前記チラーが、前記循環水の温度を所定の範囲に調整する工程と、前記酸素供給手段が、酸素を供給する工程と、前記ラインミキサが、前記酸素を前記循環水に溶解させる工程と、前記栄養剤供給器が、前記栄養液を前記混合手段に供給する工程と、前記混合手段が、前記循環系から供給された前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製し、前記栄養混合液を前記注入手段に供給する工程と、前記注入手段が、前記栄養混合液を地面に形成された穴に自然流下により注入する工程と、を備えたことを主要な特徴にしている。
【0034】
これにより、地中に圧力をかけることがないので、地中に圧力をかけることにより発生する、地層破壊を防ぐことができる。地層が圧力により破壊されると、気体、または、液体の逃げ道が形成され、地中全体に栄養混合液や、酸素含有水を供給することができなくなるが、それを防ぐことができる。
【0035】
また、本発明の土壌浄化方法は、上記記載の土壌浄化装置を用いて土壌を浄化する土壌浄化方法であって、前記ポンプが、前記循環水を前記受水槽と前記バッファ槽との間で循環させる工程と、前記チラーが、前記循環水の温度を所定の範囲に調整する工程と、前記酸素供給手段が、酸素を供給する工程と、前記ラインミキサが、前記酸素を前記循環水に溶解させる工程と、前記栄養剤供給器が、前記栄養液を前記混合手段に供給する工程と、前記混合手段が、前記循環系から供給された前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製し、前記栄養混合液を前記注入手段に供給する工程と、前記注入手段が、前記栄養混合液を地面に形成された穴に注入する工程と、前記制御装置が、前記水位センサにより検知された水位に基づいて、前記注入手段による注入動作のON、OFFを制御する工程と、を備えたことを主要な特徴にしている。
【0036】
これにより、常に適量の水を注入することができる。
【発明の効果】
【0037】
高濃度酸素含有水を安定して製造でき、栄養液との混合物を土壌中に安定注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の土壌浄化装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】栄養液注入器の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0040】
<土壌浄化装置の構成>
本発明の土壌浄化装置の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の土壌浄化装置の構成を示す概略構成図である。図1に示すように、土壌浄化装置10は、水に酸素を含ませながらその酸素を含んだ水を循環させる循環系20と、循環系20内を循環する水の温度を制御する水温制御系30と、循環系20内の水の一部に土壌中の汚染物質を分解する微生物のための栄養剤を加えて土壌中に注入する注入系40とを主に備えて構成される。
【0041】
<循環系>
循環系20は、外部から水を受水し貯留する受水槽22と、酸素を発生させる酸素発生器23と、水を循環させつつ酸素発生器23で発生させた酸素を水に混合する気液混合ポンプ24と、水中の酸素の気泡を水に溶解させるラインミキサ26と、酸素が溶解した水を貯留するバッファ槽28と、バッファ槽28内の酸素溶解水を受水槽22に戻す配管29と、受水槽22に外部から水を供給するための水供給管27とを主に含んで構成される。
【0042】
受水槽22内には一定量の水が保たれ、この水は、水温制御系により15℃〜20℃の水温に調整される。ここで、図1では、水温制御系は、受水槽22内の水の温度を調整するように記載されているが、これに限定されるものではなく、循環系20のどの部分の水の温度を調整しても良い。
【0043】
気液混合ポンプ24は、受水槽22内の水と、酸素発生器23で発生した酸素とを混合し、ラインミキサ26に送る。ラインミキサ26では、酸素の気泡を水に溶解させる。このとき、酸素を十分に供給することにより、酸素飽和水にすることが好ましい。
【0044】
酸素発生器23としては、市販の様々な酸素発生器を使用することができるが、PSA(Pressure Swing Absorption)方式の酸素発生器を好適に使用することができる。PSA方式では、簡単に高濃度(90%)酸素を作ることができるからである。また、酸素発生器23の代わりに、酸素ボンベを使用することもできるが、コスト等を考慮するとPSA方式の酸素発生器の方が望ましい。
【0045】
また、ラインミキサ26も市販の様々なラインミキサを使用することができるが、例えば、OHRラインミキサー(株式会社OHR流体工学研究所製)を好適に使用することができる。
【0046】
ラインミキサ26によって酸素が十分に溶解した酸素溶解水は、バッファ槽28に送られ、バッファ槽28内に一定量貯水される。バッファ槽28内の酸素溶解水は、配管29によって受水槽22に戻される。配管29は、注入系40にも接続されており、酸素溶解水の一部は、注入系40に供給される。注入系40に供給されることによって減少した水は、水供給管27から受水槽22に供給されることができる。
【0047】
水供給管27からの水の供給は、受水槽22に設置された図示しない水量検知器によって受水槽22内の水量が一定量以下になったことが検知されたときに、水量が設定量になるまで行われる。
【0048】
<水温制御系>
水温制御系30は、ポンプ32と、チラー34とを主に含んで構成される。ポンプ32は、受水槽22内の水をチラー34に送り、チラー34は、水温を15℃〜20℃に調整して受水槽22に水を戻す。
【0049】
これにより、受水槽22内の水は、15℃〜20℃の範囲で一定に保たれ、循環系20によって水は常に循環しているので、循環系20内を循環する水も常に15℃〜20℃に保たれることになる。
【0050】
ここで、水温制御系30は、必ずしも受水槽22内の水を温調することに限定されるものではなく、循環系20内のどの部分の水の温調をしても良い。循環系20によって、水は常に循環しているので、どの部分の水に温調をかけても結局、循環系20内の全ての水の温度が調整されるからである。
【0051】
このように、水温制御系30によって循環系20内の水の温度が常に一定(15℃〜20℃)に保たれているので、循環系20内の水に含まれる酸素の濃度も高濃度の状態(飽和状態)かつ安定な状態(濃度の変動幅の小さい状態)に保つことができ、水に含まれる酸素の量を多い状態に保つことができる。
【0052】
水温調節をしない場合は、ポンプ等の熱等によって水温が上昇し、水温が上昇すると水に対する酸素の溶解度も低下するので、水に含まれる酸素の溶解量が低下することになる。本発明においては、水温制御系30を備えているので、水温の上昇を防いで、上記溶解度の低下、水に含まれる酸素量の低下を防ぐことができる。
【0053】
<注入系>
注入系40は、土壌中の汚染物質を分解する微生物のための栄養剤を供給する栄養剤供給器42と、循環系20からの水と前記栄養剤とを混合して栄養剤混合液を作製するラインミキサ44と、栄養剤混合液を地面中に注入する栄養液注入器とを主に備えて構成される。
【0054】
栄養剤は、主に液体として調製されて栄養液として栄養剤供給器42中に貯留され、図示しない制御装置により所定のタイミングでラインミキサ44に送られる。これは、例えば、制御装置により制御されたポンプ(不図示)により空気を栄養剤供給器42に送り、その空気の圧力で栄養剤供給器42中の栄養液をラインミキサ44に送液することができる。または、栄養剤供給器42からラインミキサ44に栄養液を送るための配管の途中にバルブ(不図示)が設置され、そのバルブの開度を制御装置(不図示)が制御することにより、栄養液の送液タイミング、送液量を調整しても良い。
【0055】
更に、この制御装置は、循環系20からラインミキサ44に送液される酸素溶解水の量、送液タイミングを制御することもできる。これにより、地中に注入される酸素含有水中の栄養液の割合を調整することができ、注入タイミングを調製することもできる。
【0056】
ラインミキサ44は、送液された栄養液と、循環系20からの酸素を含んだ水(以後、酸素含有水と称すると称する場合がある)とを混合し、栄養液注入器46に送る。ここで、栄養液と酸素含有水とは、所定の割合で混合されるように図示しない制御装置によってラインミキサ44に送液される栄養液と酸素含有水との量が調整される。
【0057】
酸素含有水の量の調整は、例えば、循環系20と注入系40とを接続する配管にバルブ(不図示)を設け、そのバルブの開度を調整することによって行っても良い。また、そのバルブの開度の調製は、不図示の制御装置によって行われても良い。
【0058】
ラインミキサ44によって栄養液と酸素含有水とを混合した栄養混合液は、栄養液注入器46によって、地中に注入される。栄養液注入器46は、複数あることが望ましく、複数の栄養液注入器46は、互いに直列に、または並列にラインミキサ44に接続されている。
【0059】
栄養液注入器46について、更に詳しく図面を参照して説明する。図2は、栄養液注入器46の一例を示す概略図である。図2に示すように、栄養液注入器46は、注入管50と、注入孔52と、蓋54と、圧力調整機構56とを主に含んで構成される。
【0060】
ラインミキサ44に接続された注入管50は、注入孔52内に挿入されている。注入孔52は、地面中に形成された穴であり、例えば、深さD1=10m、直径T=50mmの円筒形状に形成することができる。
【0061】
注入孔52の上部は蓋54で密封されており、蓋54には、注入孔52内の圧力を調整するための圧力調整機構56が設置されている。圧力調整機構56は、例えば、蓋54を突き抜けて配置された配管とその配管に接続された弁とで構成することができる。注入孔52は、蓋54を突き抜けて、注入孔52の途中まで、例えば、D2=6mの深さまで挿入される。
【0062】
ここで、注入孔52内に、圧力センサ(不図示)や水位センサ(不図示)を設けることもできる。圧力センサを設けることにより、注入孔52内に栄養混合液を注入することにより高まった注入孔52内の圧力を検知することができる。これにより、検知された圧力に応じて圧力調整機構56を作動させて内部の圧力を抜き、注入孔52内の圧力を調整することができる。
【0063】
また、水位センサを設けることにより、注入孔52内に溜まった注入管50から注入された栄養混合液58の水位を検知することができる。これにより、検知された水位に応じて、栄養混合液の注入のON、OFFまたは注入量を制御することができる。これらの制御は、複数の栄養液注入器46の一つずつに対して個別に行っても良いし、任意のグループごとに行っても良いし、全体同時に行っても良い。
【0064】
<土壌浄化装置の作動>
次に、土壌浄化装置10の作動について説明する。図1を参照して、本発明の土壌浄化装置10は、水温制御系30によって温度調節された酸素含有水を循環系20によって循環させ、注入系によって、循環している酸素含有水の一部と、栄養液とを混合して地中に注入する。
【0065】
循環系20においては、受水槽22とバッファ槽28とを水が循環している。この循環している水は、水温制御系30によって水温の調整がされている。また、この循環している水には、酸素発生器によって発生した酸素を溶解させている。
【0066】
このように、常に循環している水に温度調整を行いつつ、常に酸素を溶解させているので、酸素飽和状態の水を常に準備することができる。また、受水槽22とバッファ槽28とを備えているので、酸素含有水の要求量が急激に増加しても、安定に供給することができる。
【0067】
注入系40は、循環系20から供給される酸素含有水と、栄養剤供給器42から供給される栄養液とを混合した栄養混合液を、または、循環系20から供給される酸素含有水のみを栄養液注入器46から地中に注入する。このとき、栄養混合液は、間欠的に地中に注入することが好ましい。即ち、栄養混合液を地中に注入した後は、しばらくは、酸素含有水のみを地中に注入し、その後再び栄養混合液を注入し、また、しばらく酸素含有水のみを注し、を繰り返すことが好ましい。地中に存在する、汚染物質を分解する菌は、栄養を与えすぎると活性が低下するからである。本発明においては、上述したように、栄養混合液を間欠的に地中に注入することを間欠注入と称する。
【0068】
図2を参照して、注入管50から注入孔52内への栄養混合液の供給は、加圧で行うこともできるが、自然流下が好ましい。その理由は、加圧で行った場合、加圧しすぎると、地層を破壊し、気体、または、液体の逃げ道が形成され、地中全体に栄養混合液や、酸素含有水を供給することができなくなるからである。
【0069】
注入孔52内に、栄養混合液や酸素含有水を供給することにより、これら栄養混合液や酸素含有水は、地中に浸透し、または、地下水の流れに乗って、地中に広く行き渡る。これにより、地中の菌が活性化され、地中の土壌中のBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)等が、活性化された菌によって分解されて、土壌の汚染が浄化される。
【0070】
また、注入孔52には蓋54が設置されているので、注入孔52内からの悪臭の漏れ出しや、注入孔52内へのゴミの進入を防ぐことができる。注入孔52の寸法、位置、数量は、浄化すべき汚染物質の種類、量、汚染場所、その他のパラメータに応じて適切な値を採用することができる。
【0071】
更に、本発明の土壌浄化装置10において、酸素含有水や栄養混合液の供給、量の調整は、循環系20、注入系40内の配管に配置された1以上の流量バルブ(不図示)によって、適宜行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
10…土壌浄化装置、20…循環系、22…受水槽、23…酸素発生器、24…気液混合ポンプ、26…ラインミキサ、27…水供給管、28…バッファ槽、29…配管、30…水温制御系、32…ポンプ、34…チラー、40…注入系、42…栄養剤供給器、44…ラインミキサ、46…栄養液注入器、50…注入管、52…注入孔、54…蓋、56…圧力調整機構、58…栄養混合液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中に存在する菌を用いて前記土壌中の汚染物質を浄化する土壌浄化装置であって、
水に酸素を溶解させながら常に前記水を循環させる循環系と、
前記循環系内を循環する前記水である循環水の温度を調節する水温制御系と、
前記循環系から前記循環水を一部供給され、供給された前記循環水と、前記菌の栄養源になる栄養剤を含んだ栄養液と、を混合し、前記土壌中に注入する注入系と、
を備え、
前記循環系は、
外部から水を該循環系内に供給するための水供給管と、
前記循環水を貯留する2つの貯留槽である受水槽及びバッファ槽と、
該循環系内に酸素を供給するための酸素供給手段と、
該循環系内の水に前記酸素を溶解させるラインミキサと、
前記循環水を循環させるためのポンプと、
を有し、
前記受水槽と前記バッファ槽とは配管で接続されて、前記循環水は、前記受水槽と前記バッファ槽との間を前記ポンプの動力によって循環し、
前記注入系は、
前記栄養液を供給するための栄養剤供給器と、
前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製する混合手段と、
前記栄養混合液を地中に注入する1以上の注入手段と、
を有し、
前記注入手段は、地面に形成された穴と、前記穴に挿入された前記栄養混合液を注入するための注入管とを有し、
前記水温制御系は、前記循環水の水温を所定の範囲に調整するためのチラーを有している土壌浄化装置。
【請求項2】
前記水温制御系は、前記循環水の温度を15℃〜20℃になるように制御する請求項1に記載の土壌浄化装置。
【請求項3】
前記混合手段に送液する循環水及び栄養液の送液タイミングを制御するための制御手段を更に有し、前記制御手段により前記栄養液が土壌中に間欠注入されるように制御される請求項1または2に記載の土壌浄化装置。
【請求項4】
前記注入手段は、前記栄養混合液を自然流下によって土壌中に注入する請求項1から3のいずれか一つに記載の土壌浄化装置。
【請求項5】
前記穴に設置された水位センサと、
前記水位センサにより検知された水位に基づいて前記注入手段による注入動作のON、OFFを制御する制御装置と、
を更に有する請求項1から4のいずれか一つに記載の土壌浄化装置。
【請求項6】
請求項1に記載の土壌浄化装置を用いて土壌を浄化する土壌浄化方法であって、
前記ポンプが、前記循環水を前記受水槽と前記バッファ槽との間で循環させる工程と、
前記チラーが、前記循環水の温度を所定の範囲に調整する工程と、
前記酸素供給手段が、酸素を供給する工程と、
前記ラインミキサが、前記酸素を前記循環水に溶解させる工程と、
前記栄養剤供給器が、前記栄養液を前記混合手段に供給する工程と、
前記混合手段が、前記循環系から供給された前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製し、前記栄養混合液を前記注入手段に供給する工程と、
前記注入手段が、前記栄養混合液を地面に形成された穴に注入する工程と、
を備えた土壌浄化方法。
【請求項7】
前記チラーが、前記循環水の温度が15℃〜20℃になるように制御する工程を更に有する請求項6に記載の土壌浄化方法。
【請求項8】
請求項3に記載の土壌浄化装置を用いて土壌を浄化する土壌浄化方法であって、
前記ポンプが、前記循環水を前記受水槽と前記バッファ槽との間で循環させる工程と、
前記チラーが、前記循環水の温度を所定の範囲に調整する工程と、
前記酸素供給手段が、酸素を供給する工程と、
前記ラインミキサが、前記酸素を前記循環水に溶解させる工程と、
前記栄養剤供給器が、前記栄養液を前記混合手段に供給する工程と、
前記混合手段が、前記循環系から供給された前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製し、前記栄養混合液を前記注入手段に供給する工程と、
前記注入手段が、前記栄養混合液を地面に形成された穴に注入する工程と、
前記制御手段が、前記栄養液が土壌中に間欠注入されるように制御する工程と、
を備えた土壌浄化方法。
【請求項9】
請求項4に記載の土壌浄化装置を用いて土壌を浄化する土壌浄化方法であって、
前記ポンプが、前記循環水を前記受水槽と前記バッファ槽との間で循環させる工程と、
前記チラーが、前記循環水の温度を所定の範囲に調整する工程と、
前記酸素供給手段が、酸素を供給する工程と、
前記ラインミキサが、前記酸素を前記循環水に溶解させる工程と、
前記栄養剤供給器が、前記栄養液を前記混合手段に供給する工程と、
前記混合手段が、前記循環系から供給された前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製し、前記栄養混合液を前記注入手段に供給する工程と、
前記注入手段が、前記栄養混合液を地面に形成された穴に自然流下により注入する工程と、
を備えた土壌浄化方法。
【請求項10】
請求項5に記載の土壌浄化装置を用いて土壌を浄化する土壌浄化方法であって、
前記ポンプが、前記循環水を前記受水槽と前記バッファ槽との間で循環させる工程と、
前記チラーが、前記循環水の温度を所定の範囲に調整する工程と、
前記酸素供給手段が、酸素を供給する工程と、
前記ラインミキサが、前記酸素を前記循環水に溶解させる工程と、
前記栄養剤供給器が、前記栄養液を前記混合手段に供給する工程と、
前記混合手段が、前記循環系から供給された前記循環水と、前記栄養液とを混合して栄養混合液を作製し、前記栄養混合液を前記注入手段に供給する工程と、
前記注入手段が、前記栄養混合液を地面に形成された穴に注入する工程と、
前記制御装置が、前記水位センサにより検知された水位に基づいて、前記注入手段による注入動作のON、OFFを制御する工程と、
を備えた土壌浄化方法。

【図1】
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【図2】
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