説明

土除去装置およびスクレーパ

【課題】ディスクに付着した土が大きな土塊となって落下することを防止する。
【解決手段】土除去装置56は、圃場の土の移動を行うディスクに付着した土を掻き落とす装置である。土除去装置56は、第1掻き取り刃162aを有する第1スクレーパ162と、第2掻き取り刃164aを有する第2スクレーパ164とが、第3中耕ディスク16の径方向に並設されている。そして、第1掻き取り刃162aの第2スクレーパ164に近接する先端部162dが、第2掻き取り刃164aの第1スクレーパ162に近接する先端部164cとディスク回転軸186とを通る直線上に位置しないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中耕除草機、播種機などの農作業機のディスクに付着した土を除去する土除去装置およびスクレーパに関する。
【背景技術】
【0002】
中耕除草は、作物の播種または移植後に、条間の表土を耕耘して、作物および土壌中の微生物が必要とする空気や水分を透通しやすくし、また、条間に自生繁茂する雑草を除去することを目的に行われる管理作業である。このような中耕除草のための作業機としては、チゼル爪をけん引する方式のカルチベータと、ロータリ爪を原動機で回転駆動する方式のロータリカルチベータが一般に知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
また、最近では、中耕除草用の作業機として、複数のディスク対を用いて圃場の中耕を行うディスク方式の中耕除草機が提案されている(例えば、特許文献3)。このディスク方式の中耕除草機は、土をディスクでほぐしながら移動させるため、湿潤な土壌条件でも高精度な作業ができる。また、作業速度を高めても連続して土の移動ができるため、作業能率を高めることができる。
【特許文献1】実開昭54−27031号公報
【特許文献2】実開昭61−152205号公報
【特許文献3】特開2004−208645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献3に記載されたようなディスクを使用して圃場の土の移動を行う農作業機では、ディスクに付着した土を除去するために土除去装置が設けられることがある。この土除去装置によってディスクから剥ぎ取られた土が大きな土塊となって圃場に落下すると、作物を損傷させてしまうことがあった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディスクに付着した土が大きな土塊となって落下することを防止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の土除去装置は、圃場の土の移動を行うディスクに付着した土を掻き落とす土除去装置であって、第1掻き取り刃を有する第1スクレーパと、第2掻き取り刃を有する第2スクレーパとがディスクの径方向に並設されている。
【0007】
この態様によると、第1スクレーパと第2スクレーパとをディスクの径方向に並設
して土除去装置を構成したことにより、第1スクレーパによって掻き落とされる土と、第2スクレーパによって掻き落とされる土とで、落下する時間に時間差を発生させることができるため、土が大きな土塊となって圃場に落下することを防止できる。
【0008】
土除去装置は、第1掻き取り刃の第2スクレーパに近接する先端部が、第2掻き取り刃の第1スクレーパに近接する先端部とディスクの回転軸とを通る直線上に位置しないよう構成されてもよい。この場合、より効果的に大きな土塊が圃場に落下することを防止できる。
【0009】
第1スクレーパおよび第2スクレーパの少なくとも一方が、互いに隣接する側部に、第1掻き取り刃および第2掻き取り刃によって掻き取られた土を切断する切断刃を備えてもよい。この場合、掻き取られた土が切断刃によって切断されるので、より効果的に大きな土塊が圃場に落下することを防止できる。
【0010】
第1スクレーパおよび第2スクレーパのディスクに対する取り付け高さが変更可能に構成されていてもよい。この場合、掻き落とした土が圃場に落下する位置を調整することができる。
【0011】
本発明の別の態様は、スクレーパである。このスクレーパは、圃場の土の移動を行うディスクに付着した土を掻き落とすスクレーパであって、当該スクレーパの掻き取り刃によって掻き取られた土を切断する切断刃を備える。
【0012】
この態様によると、スクレーパによって掻き取られた土が切断刃によって切断されるので、大きな土塊が圃場に落下することを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ディスクに付着した土が大きな土塊となって落下することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態を示す図面中の矢印Fは機体進行方向を示す。明細書中の「左」または「右」の記載は、機体後部から機体進行方向を向いた場合の方向を意味する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る中耕除草機10の側面図である。図2は、本発明の実施の形態に係る中耕除草機10の平面図である。この中耕除草機10は、トラクタの後部に連結され、作物の条間を進行しながら、複数のディスクによって条間の土を中耕することで除草を行うことができる。また、中耕除草機10は、ディスクの位置や方向を変えることにより、条間の土を作物の茎周辺に移動させる培土作業を行うことができる。
【0016】
図1、図2に示すように、中耕除草機10は、機体進行方向に直交する方向に伸びるツールバー54に、連結機構70、耕深調整機構110およびフレーム機構120が取り付けられた構造となっている。そしてフレーム機構120には、圃場の中耕を行う中耕機構30が取り付けられている。なお、本実施の形態に係る中耕除草機10は、3条の条間分の中耕を行うことができる中耕除草機であるが、図2では、1条間分の中耕機構30のみを示している。実際の中耕除草機10では、図2に示した中耕機構30の左右にそれぞれ中耕機構30と同様の構成の中耕機構が備えられる。
【0017】
連結機構70は、トラクタの後部に装備された3点リンクヒッチ機構に連結するための機構である。連結機構70は、アッパリンク連結部102と、ロアリンク連結部104と、を備える。アッパリンク連結部102は、一端部がツールバー54の中央部に接続され、他端部が3点リンクヒッチ機構のアッパリンクに接続される。ロアリンク連結部104は、一端部がツールバー54に接続され、他端部が3点リンクヒッチ機構のロアリンクに接続される。ロアリンク連結部104は、アッパリンク連結部102を挟んで左右対称に設けられている。
【0018】
耕深調整機構110は、中耕の耕深を調整するための機構である。図1に示すように、耕深調整機構110は、定規輪32と、定規輪支持ロッド34と、定規輪調整支持部78と、定規輪アーム106と、を備える。定規輪アーム106は、一端部がツールバー54に接続され、他端部には定規輪調整支持部78が設けられている。定規輪調整支持部78には、定規輪32を支持する定規輪支持ロッド34が、高さ調整可能に取り付けられている。定規輪支持ロッド34に設けた孔34aを定規輪調整支持部78に設けた孔78aに合わせ、ピンで固定することによって定規輪32の高さ調整を行うことができる。耕深調整機構110は、ツールバー54の左右両端部に設けられる。
【0019】
フレーム機構120は、中耕機構30を支持するための機構である。フレーム機構120は、第1フレーム122と、第2フレーム124と、フレーム連結部材126と、支持フレーム50と、中耕機構支持ロッド28と、を備える。第1フレーム122は、ツールバー54から機体下方に延設されている。この第1フレーム122は、リンク機構を有するフレーム連結部材126を介して第2フレーム124に接続されている。支持フレーム50は、ツールバー54から機体の後斜め上方に延設されている。支持フレーム50の先端は、中耕機構支持ロッド28に接続されている。中耕機構支持ロッド28の一端部は、第2フレーム124に接続されている。中耕機構支持ロッド28には、衝撃吸収用バネ48が外嵌されている。このように構成されたフレーム機構120は、中耕機構30を支持するとともに、中耕機構30の上下動を吸収する懸架装置として機能する。
【0020】
本実施の形態に係る中耕除草機10は、中耕機構30として第1ディスク対42と第2ディスク対44の2つのディスク対を備えた2連の中耕除草機である。この2連の中耕除草機10は、作物の条間を進行したときに、第1ディスク対42によって移動した土をさらに第2ディスク対44によって移動させるなどの作業を行うことができる。
【0021】
第1ディスク対42は、第3中耕ディスク16と、第4中耕ディスク18と、を有する。第2ディスク対44は、第1中耕ディスク12と、第2中耕ディスク14と、を有する。図1に示すように、第3中耕ディスク16は、第1中耕ディスク12より機体進行方向前方に設けられ、第4中耕ディスク18は、第2中耕ディスク14より機体進行方向前方に設けられる。また、図2に示すように、第1中耕ディスク12および第3中耕ディスク16は、中耕機構30の中央線Cよりも左側に設けられ、第2中耕ディスク14および第4中耕ディスク18は、中央線Cよりも右側に設けられる。
【0022】
各ディスクは、ディスク中央部が窪んだ浅皿状に形成されている。ディスクの窪んだ側の面を凹面と、窪んだ側の面と反対側の面を凸面と呼ぶ。中耕除草や培土を行う際には、ディスクの凹面が条間の土を移動する作用面として機能する。第1ディスク対42は、中耕除草作業時、培土作業時ともに、ディスクの凹面が機体外側を向くように定められる。一方、第2ディスク対44は、培土作業時にはディスクの凹面が機体外側を向くように定められ、中耕除草作業時にはディスクの凹面が機体内側を向くように定められる。各ディスクには、作業時にディスクに付着した土を掻き落とすための土除去装置56が設けられる。
【0023】
図1に示すように、第1ディスク対42は、第1ディスク対支持機構74を介して第1ディスク対支持ロッド46に接続されている。この第1ディスク対支持ロッド46は、第2フレーム124から機体上方に延設された第1ディスク対支持部47に固定される。第1ディスク対支持ロッド46に設けた孔46aを第1ディスク対支持部47に設けた孔47aに合わせ、ピンで固定することによって、第1ディスク対42の高さ調整を行うことができる。
【0024】
図3(a)、(b)は、第1ディスク対支持機構74の構成を示す平面図である。図3(a)は、第3中耕ディスク16および第4中耕ディスク18の機体進行方向に対するディスクの角度θ(以下、ディスク角θと呼ぶ)が最小の状態を示している。図3(b)は、第3中耕ディスク16および第4中耕ディスク18のディスク角θが最大の状態を示している。
【0025】
第1ディスク対支持機構74は、第3中耕ディスク16に接続された第3ディスク角調整板144と、第4中耕ディスク18に接続された第4ディスク角調整板146と、支持フレーム150と、第1ディスク対支持ロッド取付部148と、を備える。
【0026】
第3ディスク角調整板144は、中耕機構30の中心軸Cに沿って設けられた支持フレーム150の一端部に、第3ディスク回動軸140を中心として回動可能に連結されている。第4ディスク角調整板146は、支持フレーム150の他端部に、第4ディスク回動軸142を中心として回動可能に連結されている。第3ディスク角調整板144、第4ディスク角調整板146には、それぞれ長孔144a、長孔146aが開けられており、これらの長孔に固定ボルト152を挿入することによってディスク角θを固定することができるようになっている。第3中耕ディスク16、第4中耕ディスク18は、凹面がともに機体外側を向くように設けられる。
【0027】
本実施の形態に係る中耕除草機10では、第3中耕ディスク16と第4中耕ディスク18とは、機体進行方向において互いにずれて設けられている。すなわち、第3中耕ディスク16は、第4中耕ディスク18よりも機体後方に位置している。第3中耕ディスク16と第4中耕ディスク18をずらさずに機体進行方向に設けた場合には、ディスク同士が接触するのでディスク角θの可変範囲が狭くなる。第3中耕ディスク16と第4中耕ディスク18を互いにずらして配設することにより、ずらさずに配設した場合よりもディスク角θの可変範囲を広げることができる。
【0028】
第3中耕ディスク16および第4中耕ディスク18は、それぞれのディスクの先端部16a、18aを、出来るだけ中耕機構30の中心線Cに近接するように位置させることが好ましい。第3中耕ディスク16、第4中耕ディスク18を中心線Cに近接した位置に配置することにより、中耕機構30の中心線Cの近傍に存在する土も残すことなく中耕することができる。
【0029】
本実施の形態に係る中耕除草機10によれば、第3中耕ディスク16と第4中耕ディスク18とが、機体進行方向において互いにずれて設けられているので、それぞれのディスクの先端部を出来るだけ中耕機構30の中心線Cに近接させつつ、ディスク角θの可変範囲を広くとることができる。第3中耕ディスク16と第4中耕ディスク18の機体進行方向におけるずれ量は、ディスク直径の1/4〜2/3程度とすることが好ましい。
【0030】
図1および図2に戻り、中耕機構30についてさらに説明する。図2に示すように、中耕機構30は、第1アーム24と、第2アーム26と、を備える。第1アーム24と第2アーム26は中心線Cを挟んで設けられている。第1アーム24は、その基端部が第2フレーム124に回動可能に連結されている。すなわち、第1アーム24は、第1アーム回動軸64を中心として回動可能である。第2アーム26は、その基端部が第2フレーム124に回動可能に連結されている。すなわち、第2アーム26は、第2アーム回動軸66を中心として回動可能である。第1アーム回動軸64と第2アーム回動軸66は、機体進行方向に直交する同一直線上に配設されている。
【0031】
図2に示すように、第1アーム24、第2アーム26には、アームの中間部にそれぞれアーム角調整孔112が設けられている。このアーム角調整孔112を、第2フレーム124に固定されたアーム角調整板62に設けられた調整孔62aに合わせ、固定ピンを挿入することによって機体進行方向に対するアームの角度θ(以下、アーム角θと呼ぶ)を調整することができる。図2では、アーム角θは0°である。アーム角調整板62には、アーム角θを変えられるように複数の調整孔62aが設けられている。
【0032】
第1アーム24のアーム角調整孔112より後方部には、第1中耕ディスク支持ロッド20を介して第1中耕ディスク12が設けられる。この第1中耕ディスク12は、第1アーム回動軸64から所定の第1間隔L1だけ離間した位置に設けられる。また、第2アーム26のアーム角調整孔112より後方部には、第2中耕ディスク支持ロッド22を介して第2中耕ディスク14が設けられる。この第2中耕ディスク14は、第2アーム回動軸66から所定の第2間隔L2だけ離間した位置に設けられる。
【0033】
図4は、図2に示す第1中耕ディスク12の取付部のA−A断面図である。以下の説明では第1中耕ディスク12の取付部について説明するが、第2中耕ディスク14の取付部も同様の構成である。なお、図4に示すディスク固定ボルト76は実際のA−A断面図では表れないが、説明の便宜上図示している。
【0034】
図4に示すように、第1中耕ディスク支持ロッド20は、円筒部材84に外嵌された状態で第1中耕ディスク支持ロッド挿入孔86に挿入されている。円筒部材84は、ディスク角調整板58と溶接され、ディスク角調整部材88として一体に形成されている。ディスク角調整部材88と第1中耕ディスク支持ロッド20は、ディスク固定ボルト76を締めることによって固定することができる。ディスク角調整板58には、複数のディスク角調整孔58aが設けられており、ディスク角調整孔58aを第1アーム24に設けられたピン挿入孔82に合わせ、ディスク固定ピン80を挿入することによって第1中耕ディスク支持ロッド20が第1アーム24に固定されるようになっている。
【0035】
第1中耕ディスク12のディスク角θを図2に示す培土仕様から、図5〜図7に示す中耕除草仕様に変更するとき、あるいはその逆の変更を行う場合には、まずディスク固定ボルト76を緩めて第1中耕ディスク支持ロッド20を回転させる。そしてほぼ目標の位置に合わせた段階でディスク固定ボルト76を締めてディスク角調整部材88と第1中耕ディスク支持ロッド20を固定する。その後、ディスク角θの微調整が必要な場合には、第1中耕ディスク12をディスク角調整板58とともに回転させ、適切なディスク角調整孔58aにピン挿入孔82を合わせてディスク固定ピン80で固定する。図2に示すディスク角調整板58には、約7.5°刻みでディスク角θが変えられるようにディスク角調整孔58aが設けられている。このように、本実施の形態に係る中耕除草機10は、ディスク角調整板58を用いることにより、第1中耕ディスク12および第2中耕ディスク14のディスク角θを容易に微調整することができる。
【0036】
第1アーム回動軸64から第1中耕ディスク12までの第1間隔L1と、第2アーム回動軸66から第2中耕ディスク14までの第2間隔L2は、異なった間隔に設定されることが好ましい。第1間隔L1と第2間隔L2を同じ間隔に設定した場合には、アーム角θが小さいときに、ディスク同士が接触することにより、ディスク角θの可変範囲が狭くなる。第1間隔L1と第2間隔L2を異なった間隔に設定することにより、第1間隔L1と第2間隔L2を同じ間隔に設定した場合よりもディスク角θの可変範囲を広くすることができる。また、中耕機構30の中心線Cの近傍に存在する土も残すことなく中耕することができる。第1間隔L1と第2間隔L2は、ディスク直径の1/4〜2/3程度異なっていることが好ましい。
【0037】
第2フレーム124には、チゼル支持アーム36、チゼル取付部37を介してチゼル38が設けられている。チゼル38は、土中に貫入して土を膨軟にする。このチゼル38は、第1ディスク対42、第2ディスク対44よりも機体進行方向前方に設けられているので、チゼル38が膨軟にした土を各ディスクによって中耕することができる。図2に示す中耕除草機10は、3本のチゼル38を備えているが、チゼル38は1本または2本であってもよい。
【0038】
以上のように構成された中耕除草機10の動作について説明する。図2は、培土作業を行うときの中耕除草機10の状態を示している。培土作業を行うとき、図2に示すように第2ディスク対44は、ハの字型に定められる。このとき、第1中耕ディスク12、第2中耕ディスク14の凹面は、ともに機体外側を向くように定められる。
【0039】
このように設定された中耕除草機10が作物の条間を進行すると、チゼル38によって膨軟にされた条間の土は、第1ディスク対42によって左右方向に移動され、培土がなされる。また、第1ディスク対42による培土後に、第2ディスク対44によっても土が左右方向に移動され、培土が繰り返しなされるので、培土作業の効率を向上することができる。
【0040】
この様な培土作業を行う場合、土壌状態や条間距離に応じて第2ディスク対44の第1中耕ディスク12、第2中耕ディスク14の左右方向の位置を適切に設定する必要がある。本実施の形態に係る中耕除草機10は、回動可能な第1アーム24、第2アーム26に、第1中耕ディスク12、第2中耕ディスク14をそれぞれ設けたので、アームの開度を調整するだけで第1中耕ディスク12と第2中耕ディスク14の位置を容易に調整することができる。例えば、条間距離が狭い場合には、アーム角θを小さく設定する。逆に、条間距離が広い場合には、アーム角θを大きく設定する。
【0041】
また、本実施の形態に係る中耕除草機10は、ディスク角θを変化させることができるので、各ディスクによる土の移動量を調整することができる。例えば、培土を行う土の量を多くする場合には、ディスク角θを大きく設定し、培土を行う土の量を少なくする場合には、ディスク角θを小さく設定する。このように、本実施の形態に係る中耕除草機10は、ディスク角θおよびアーム角θを変更することで、様々な条件の培土作業に対応できる。
【0042】
図5は、中耕除草を行うときの中耕除草機10の状態の一例を示す。中耕除草を行うとき、図5に示すように、第2ディスク対44は逆ハの字型に定められる。このとき、第1中耕ディスク12、第2中耕ディスク14の凹面は、ともに機体内側、すなわち中央線C側を向くように定められる。
【0043】
このように設定された中耕除草機10が作物の条間を進行すると、チゼル38によって膨軟にされた条間の土は、第1ディスク対42によって左右方向に移動される。第1ディスク対42によって移動された土は、その後、第2ディスク対44によって中耕機構30の中央線Cの方向に移動される。これにより、第1ディスク対42によって除草された雑草を、第2ディスク対44によって土の下に埋没させ、雑草が活着することを防ぐことができる。
【0044】
このような中耕除草作業を行う場合も、土壌状態や条間距離に応じて第2ディスク対44の第1中耕ディスク12、第2中耕ディスク14の位置を適切に変える必要がある。本実施の形態に係る中耕除草機10は、回動可能な第1アーム24、第2アーム26に、第1中耕ディスク12、第2中耕ディスク14をそれぞれ設けたので、アームの開度を調整するだけで第1中耕ディスク12と第2中耕ディスク14の位置を容易に調整できる。
【0045】
図5では、アーム角θを最大にした状態を示している。アーム角θを最大に設定するとき、アーム角調整孔112はアーム角調整板62の最外に設けられた調整孔62aに合わせられ、固定ピンを挿入することによって固定される。このように、本実施の形態に係る中耕除草機10は、アーム角θを大きくすることによって、条間距離が広い場合でも適切に中耕除草を行うことができる。
【0046】
図6は、中耕除草を行うときの中耕除草機10の状態の他の例を示す。図6に示す中耕除草機10は、図5に示した中耕除草機10よりもアーム角θを小さく設定している。例えば、条間距離が狭いときには、このようなアーム角θに設定する。また、図6に示す中耕除草機10では、ディスク角θを最小に設定している。ディスク角θを最小に設定することで、第2ディスク対44による土の移動量を最小にすることができる。
【0047】
図7は、中耕除草を行うときの中耕除草機10の状態の他の例を示す。図7に示す中耕除草機10は、図6に示した中耕除草機10とアーム角θは等しいが、ディスク角θを最大に設定している。ディスク角θを最大に設定することで、第2ディスク対44による土の移動量を最大にすることができる。
【0048】
本実施の形態に係る中耕除草機10では、上述したように第1アーム回動軸64から第1中耕ディスク12までの第1間隔L1と、第2アーム回動軸66から第2中耕ディスク14までの第2間隔L2は、異なった間隔に設定されている。第1間隔L1と第2間隔L2とが同じ間隔に設定されている場合には、第1中耕ディスク12と第2中耕ディスク14が接触してしまうため、図7に示すようなディスク角θに設定することは不可能である。本実施の形態に係る中耕除草機10は、第1間隔L1と第2間隔L2が異なる間隔に設定されているので、第1間隔L1と第2間隔L2を同じ間隔に設定した場合よりもディスク角θの可変範囲を広くとることができる。
【0049】
次に、図8〜図10を用いて、本実施の形態に係る土除去装置56について説明する。ここでは、第1ディスク対42の第3中耕ディスク16に土除去装置56を装着した場合を例にとって説明する。図8は、第3中耕ディスク16の凹面166を示す図である。図9は、第3中耕ディスク16の凸面168を示す図である。図10は、第3中耕ディスク16の底面図である。
【0050】
図8〜図10に示すように、土除去装置56は、第1スクレーパ162と、第2スクレーパ164と、スクレーパ支持フレーム172と、スクレーパ支持フレーム固定板174と、を備える。なお、第1ディスク対42を構成する第4中耕ディスク18も、図8〜図10に示すのと同様の土除去装置を有する。また、図8、図9において、矢印Gは、中耕除草機10が機体進行方向に進んだ際に第3中耕ディスク16が回転する方向を示す。
【0051】
スクレーパ支持フレーム172は、第1スクレーパ162および第2スクレーパ164を支持するためのフレームである。スクレーパ支持フレーム172の一端部は、凸面168側のディスク回転軸186に取り付けられている。スクレーパ支持フレーム172は、ディスク回転軸186から凸面168に沿って第3中耕ディスク16の外縁部まで張り出し、そこから凹面166側のディスク内周方向に折り曲げられている。凹面166側に位置するスクレーパ支持フレーム172の他端部には、第1スクレーパ162、第2スクレーパ164が取り付けられている。
【0052】
図8に示すように、第1スクレーパ162、第2スクレーパ164は、ともに略平行四辺形状の金属板を折り曲げることによって形成されている。第1スクレーパ162、第2スクレーパ164は、一短辺側にフレーム取付部162b、164bを有しており、スクレーパ固定ボルト184によってスクレーパ支持フレーム172に固定されている。また、第1スクレーパ162、第2スクレーパ164は、他方の短辺側に、ディスクに付着した土を掻き落とす第1掻き取り刃162a、第2掻き取り刃164aを有する。第1スクレーパ162、第2スクレーパ164は、第1掻き取り刃162a、第2掻き取り刃164aが第3中耕ディスク16の凹面166に近接しまたは接触するように設けられる。
【0053】
本実施の形態に係る土除去装置56において、第1スクレーパ162と第2スクレーパ164は、第3中耕ディスク16の径方向に並設されている。第1スクレーパ162は、第3中耕ディスク16の内周側に配設され、第2スクレーパ164は第3中耕ディスク16の外周側に配設される。
【0054】
土除去装置56において、第1掻き取り刃162aの第2スクレーパ164に近接する先端部162dが、第2掻き取り刃164aの第1スクレーパ162に近接する先端部164cとディスク回転軸186とを通る直線上に位置しないように構成されている。
【0055】
また、第1スクレーパ162は、第1掻き取り刃162aの先端部162dとディスク回転軸186を結んだ直線と、ディスク回転軸186からの鉛直線Vのなす角θが、第1掻き取り刃162aの最内周側に位置する先端部162cとディスク回転軸186を結んだ直線と、鉛直線Vのなす角θよりも大きくなるように形成されている。また、第2スクレーパ164は、第2掻き取り刃164aの最外周側に位置する先端部164dとディスク回転軸186を結んだ直線と鉛直線Vのなす角θが、第2掻き取り刃164aの先端部164cとディスク回転軸186を結んだ直線と鉛直線Vのなす角θよりも大きくなるように形成されている。また、第1スクレーパ162と第2スクレーパ164は、θがθよりも大きくなるように形成されている。
【0056】
このように構成された土除去装置56の作用について説明する。中耕除草作業や培土作業を行う際、第3中耕ディスク16は矢印Gの方向に回転する。このとき第3中耕ディスク16の凹面166に内周側から外周側まで土が付着したとすると、ディスクに付着した土はまず最初に、第1掻き取り刃162aの先端部162cによって掻き落とされる。そして、ディスクの回転と共に第1掻き取り刃162aによって徐々に土が掻き落とされていく。その後、ディスクに付着した土が第2掻き取り刃164aの先端部164cに達すると、ディスクの回転と共に今度は第2掻き取り刃164aによって土が徐々に掻き落とされていく。
【0057】
このように、本実施の形態に係る土除去装置56では、ディスクに付着した土がディスク内周側と外周側とで時間差をもって徐々に掻き落とされていくので、土が大きな土塊となって圃場に落下することを防止できる。その結果、大きな土塊によって圃場の作物が損傷する事態を回避することが可能となる。
【0058】
図9に示すように、第3中耕ディスク16の凸面168にも、凸面168に付着した土を掻き落とすためのスクレーパ188が設けられる。凸面168は作用面である凹面166ほど多くの土が付着しないので、単一のスクレーパ188で土除去装置を構成している。なお、凹面166と同じように、2つのスクレーパで土除去装置を構成してもよい。
【0059】
スクレーパ支持フレーム固定板174は、第1スクレーパ162および第2スクレーパ164の第3中耕ディスク16に対する取り付け高さを変更可能とするための部材である。スクレーパ支持フレーム固定板174は、凸面168のディスク回転軸186付近に取り付けられており、高さ調整用長孔178が開けられている。この高さ調整用長孔178とスクレーパ支持フレーム172に設けられた孔を合わせ、スクレーパ高さ調節ボルト176で固定することにより、第1スクレーパ162および第2スクレーパ164の第3中耕ディスク16に対する取り付け高さを変更することができる。
【0060】
この高さ調整機能を利用することによって、掻き落とした土が圃場に落下する位置を調整することができる。例えば、本実施の形態のように、中耕除草や培土を行う中耕除草機10に土除去装置56を装着した場合には、圃場の作物に土がかからないようにディスクの近傍に土を落下させることが好ましい。このような場合には、第1スクレーパ162および第2スクレーパ164の高さを低く設定すればよい。一方、ディスクによって作溝した溝に種子を蒔いていく播種機に土除去装置56を適用した場合には、種子の出芽に悪影響を与えないように、ディスクから離れた位置に土を落下させることが好ましい。このような場合には、第1スクレーパ162および第2スクレーパ164の高さを高く設定すればよい。
【0061】
次に、図11〜図13を用いて、第2ディスク対44の第1中耕ディスク12に土除去装置を装着した場合について説明する。図11は、第1中耕ディスク12の凹面166を示す図である。図12は、第1中耕ディスク12の凸面168を示す図である。図13は、第1中耕ディスク12の底面図である。
【0062】
図11に示すように、第1中耕ディスク12は、第1土除去装置190と、第2土除去装置192の2つの土除去装置を備える。第1土除去装置190は、図8〜図10において示した土除去装置56と同様の構成である。第2土除去装置192は、ディスク回転軸186を通る鉛直線Vを挟んで第1土除去装置190と対称位置に設けられている。第1ディスク対42を構成する第2中耕ディスク14も、図11〜図13に示すのと同様に、2つの土除去装置を備える。
【0063】
このように、第1ディスク対42の第1中耕ディスク12、第2中耕ディスク14に2つの土除去装置が設けられるのは、上述したように、培土作業を行うときと、中耕除草作業を行うときとで、ディスクの凹面166の向きを変えるためである。培土作業の際には、第1中耕ディスク12の凹面166が機体外側を向くようにディスクを固定するので、第1中耕ディスク12は図11の矢印Gの方向に回転する。また、中耕除草作業の際には、第1中耕ディスク12の凹面166が機体内側を向くようにディスクを固定するので、第1中耕ディスク12は図11の矢印Hの方向に回転する。ディスクがどちらの方向に回転した場合でも土を掻き落とすことができるように、土除去装置が2つ設けられている。
【0064】
図14(a)は、第2スクレーパの変形例を示す左側面図である。図14(b)は、第2スクレーパの変形例を示す背面図である。図14(a)、(b)に示すように、第2スクレーパ196は、第1スクレーパと隣接する側部196aに、切断刃194を備える。
【0065】
図14(a)、(b)に示す第2スクレーパ196を図8に示す第2スクレーパ164と置き換えた場合、この切断刃194は、第1および第2スクレーパによって掻き取られた土を切断する。これにより、大きな土塊の発生をさらに抑制することができる。この切断刃は、第1スクレーパの第2スクレーパと隣接する側部に設けられてもよく、第1スクレーパおよび第2スクレーパの少なくとも一方に設けられていればよい。また、この切断刃は、第1、第2スクレーパの側部以外の位置に設けられてもよい。
【0066】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態に係る中耕除草機の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る中耕除草機の平面図である。
【図3】(a)は、第3中耕ディスク、第4中耕ディスクのディスク角θが最小の状態を示す図である。(b)は、第3中耕ディスク、第4中耕ディスクのディスク角θが最大の状態を示す図である。
【図4】図2に示す第1中耕ディスクの取付部のA−A断面図である。
【図5】中耕除草を行うときの中耕除草機の状態の一例を示す平面図である。
【図6】中耕除草を行うときの中耕除草機の状態の他の例を示す平面図である。
【図7】中耕除草を行うときの中耕除草機の状態の他の例を示す平面図である。
【図8】第3中耕ディスクの凹面を示す図である。
【図9】第3中耕ディスクの凸面を示す図である。
【図10】第3中耕ディスクの底面図である。
【図11】第1中耕ディスクの凹面を示す図である。
【図12】第1中耕ディスクの凸面を示す図である。
【図13】第1中耕ディスクの底面図である。
【図14】(a)は、第2スクレーパの変形例を示す左側面図である。(b)は、第2スクレーパの変形例を示す背面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 中耕除草機、 12 第1中耕ディスク、 14 第2中耕ディスク、 16 第3中耕ディスク、 18 第4中耕ディスク、 24 第1アーム、 26 第2アーム、 30 中耕機構、 38 チゼル、 56 土除去装置、 162 第1スクレーパ、 162a 第1掻き取り刃、 164、196 第2スクレーパ、 164a 第2掻き取り刃、 194 切断刃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の土の移動を行うディスクに付着した土を掻き落とす土除去装置であって、
第1掻き取り刃を有する第1スクレーパと、第2掻き取り刃を有する第2スクレーパとが前記ディスクの径方向に並設されていることを特徴とする土除去装置。
【請求項2】
前記第1掻き取り刃の前記第2スクレーパに近接する先端部が、前記第2掻き取り刃の前記第1スクレーパに近接する先端部と前記ディスクの回転軸とを通る直線上に位置しないよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の土除去装置。
【請求項3】
前記第1スクレーパおよび前記第2スクレーパの少なくとも一方が、互いに隣接する側の側部において、前記第1掻き取り刃および前記第2掻き取り刃によって掻き取られた土を切断する切断刃を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の土除去装置。
【請求項4】
前記第1スクレーパおよび前記第2スクレーパの前記ディスクに対する取り付け高さが変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の土除去装置。
【請求項5】
圃場の土の移動を行うディスクに付着した土を掻き落とすスクレーパであって、
当該スクレーパの掻き取り刃によって掻き取られた土を切断する切断刃を備えることを特徴とするスクレーパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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