説明

圧力容器の支持方法

【課題】圧力容器の支持方法において、圧力容器の変形を抑制して適正に支持すること。
【解決手段】内部構造体としての下部水室鏡32、上部水室鏡33、複数の伝熱管34などが収容された蒸発器17を支持して搬送する方法であって、蒸発器17の内部に不活性ガスを充填して大気圧より高く加圧し、密閉した状態で支持する。従って、圧力容器は、内部が加圧された密閉状態で支持されることとなり、外部からの押圧力に対して変形が抑制され、内部構造体の損傷を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、原子力プラントに熱交換器として使用される蒸気発生器などの圧力容器を支持して搬送可能とする圧力容器の支持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子炉設備の一部として使用される蒸気発生器は、中空形状をなす胴部内に複数の伝熱管が配設され、各伝熱管の端部が管板に支持され、二次冷却材の入口側水室鏡及び出口側水室鏡に連結されている。また、胴部内に、一次冷却材の入口部及び出口部が形成されている。従って、入口側水室鏡を通して複数の伝熱管に二次冷却材が供給される一方、入口部からこの胴部内に一次冷却材が供給される。すると、複数の伝熱管内を流れる二次冷却水と胴部内を循環する一次冷却材との間で熱交換が行われることで、二次冷却材が一次冷却材の熱を吸収して蒸気が生成される。そして、生成された蒸気が出口側水室鏡から排出される一方、温度低下した一次冷却材が出口部から排出される。
【0003】
このように構成された蒸気発生器は、胴部内に伝熱管などの構造物が装着された後に、原子力プラントの設置場所まで搬送される。このような大型機器は専用に作られた搬送用の構造物(スキッド)に固定されるが、搬送時にはスキッドと製品(蒸気発生器)の固定部に荷重が発生する。この場合、製品の胴部が薄板であれば、搬送時に変形して内部の伝熱管などを損傷させてしまうおそれがある。
【0004】
例えば、下記特許文献1の円筒体用支持装置では、中心軸線方向が略水平方向に沿うように円筒体を配置し、支持手段によりこの円筒体を下方から中心軸線周りに回転可能に支持すると共に、押圧手段により円筒体に対して水平方向に働く押圧力を円筒体に付与することにより、円筒体の変形を防止している。
【0005】
例えば、下記特許文献1の円筒体用支持装置では、中心軸線方向が略水平方向に沿うように円筒体を配置し、支持手段によりこの円筒体を下方から中心軸線周りに回転可能に支持すると共に、押圧手段により円筒体に対して水平方向に働く押圧力を円筒体に付与するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−169928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、蒸気発生器の小型軽量化が図られており、特に、高速炉では、胴部の薄板化が図られている。そのため、蒸気発生器の施工時や搬送時に、胴部が変形しやすくなり、内部の伝熱管などを損傷させてしまうおそれがあり、蒸気発生器の搬送方法に工夫が求められている。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、圧力容器の変形を抑制して適正に支持することができる圧力容器の支持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の圧力容器の支持方法は、内部構造体が収容された圧力容器を支持する方法であって、前記圧力容器内を大気圧より高く加圧し、密閉した状態で支持する、ことを特徴とするものである。
【0010】
従って、圧力容器は、内部が加圧された密閉状態で支持されることとなり、外部からの押圧力に対して変形が抑制され、内部構造体の損傷を防止することができる。
【0011】
本発明の圧力容器の支持方法では、前記圧力容器の内部に不活性ガスを充填して加圧することを特徴としている。
【0012】
従って、圧力容器の内部に不活性ガスを充填する場合は、変形を防止するだけではなく、内部構造体の錆などの発生を防止することができる。
【0013】
本発明の圧力容器の支持方法では、前記圧力容器は、内部に複数の伝熱管を収容する熱交換器であって、一次流体が流れる第1流路と、二次流体が流れる前記複数の伝熱管を含む第2流路とが設けられ、前記第1流路を加圧することを特徴としている。
【0014】
従って、熱交換器における第1流路を加圧することで、変形を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧力容器の支持方法によれば、圧力容器内を大気圧より高く加圧し、密閉した状態で支持するので、圧力容器は、内部が加圧された密閉状態で支持されることとなり、外部からの押圧力に対して変形が抑制され、内部構造体の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る圧力容器の支持方法を表す概略図である。
【図2】図2は、実施例1の圧力容器の支持方法を表す概略図である。
【図3】図3は、実施例1の圧力容器の支持方法を表す概略図である。
【図4】図4は、実施例1の圧力容器の移送方法を表す概略図である。
【図5】図5は、実施例1の圧力容器が適用された原子力発電プラントの概略構成図である。
【図6】図6は、実施例1の圧力容器が適用された蒸発器を表す概略図である。
【図7】図7は、本発明の実施例2に係る圧力容器の支持方法を表す圧力容器の支持構造の正面図である。
【図8】図8は、実施例2の圧力容器の支持構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る圧力容器の支持方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る圧力容器の支持方法を表す概略図、図2は、実施例1の圧力容器の支持方法を表す概略図、図3は、実施例1の圧力容器の支持方法を表す概略図、図4は、実施例1の圧力容器の搬送方法を表す概略図、図5は、実施例1の圧力容器が適用された原子力発電プラントの概略構成図、図6は、実施例1の圧力容器が適用された蒸発器を表す概略図である。
【0019】
本実施例の原子炉は、使用した燃料よりもさらに多くの燃料を生み出す高速増殖炉(FBR:Fast Breeder Reactor)である。
【0020】
本実施例の高速増殖炉を有する原子力発電プラントにおいて、図5に示すように、原子炉格納容器11は、内部に原子炉容器12、一次主冷却系中間熱交換器13、一次主冷却系循環ポンプ14が格納されており、これらはガードベッセル(保護容器)により保護されている。そして、この原子炉容器12と一次主冷却系中間熱交換器13と一次主冷却系循環ポンプ14とは、一次主冷却系配管15a,15b,15cにより連結されている。従って、この原子炉容器12、一次主冷却系中間熱交換器13、一次主冷却系循環ポンプ14、各一次主冷却系配管15a,15b,15cにより一次系ナトリウムループが形成されており、一次主冷却系循環ポンプ14によりナトリウムが循環することで、原子炉容器12の炉心で発生した熱がナトリウムにより吸収される。
【0021】
原子炉格納容器11の外部には、蒸気発生器を構成する過熱器16、蒸発器17、二次主冷却系循環ポンプ18が配置されている。そして、この過熱器16と蒸発器17と二次主冷却系循環ポンプ18とは、二次主冷却系配管19a,19b,19cにより連結されており、二次主冷却系配管19aが原子炉格納容器11内に侵入し、一部が一次主冷却系中間熱交換器13内に配設されている。従って、この過熱器16、蒸発器17、二次主冷却系循環ポンプ18、各二次主冷却系配管19a,19b,19cにより二次系ナトリウムループが形成されており、二次主冷却系循環ポンプ18によりナトリウムが循環することで、一次主冷却系中間熱交換器13で一次系のナトリウムの熱が二次系のナトリウムにより吸収されて冷却される。
【0022】
なお、この二次系ナトリウムループにおける二次主冷却系配管19aの一部に沿って空気冷却器20による空気冷却配管21が付設されている。
【0023】
過熱器16及び蒸発器17内を挿通するように三次冷却系配管22が配置されている。この三次冷却系配管22は、一端部が蒸気タービン23と連結されており、この蒸気タービン23は発電機24が接続されている。また、蒸気タービン23は、復水器25を有しており、この復水器25には冷却水(例えば、海水)を給排する取水管26及び排水管27が連結されている。この取水管26は、循環水ポンプ28を有し、排水管27と共に他端部が海中に配置されている。そして、この復水器25は、三次冷却系配管22の他端部に連結されており、この三次冷却系配管22に給水ポンプ29が設けられている。従って、この三次冷却系配管22、蒸気タービン23、復水器25により三次系水ループが形成されており、給水ポンプ29により水が循環することで、過熱器16及び蒸発器17で二次系のナトリウムの熱が水により吸収されて冷却される。
【0024】
即ち、蒸気発生器としての過熱器16及び蒸発器17にて、二次系の高温ナトリウムと熱交換を行って生成された蒸気は、三次冷却系配管22を通して蒸気タービン23に送られ、この蒸気により蒸気タービン23を駆動して発電機24により発電を行う。そして、蒸気タービン23を駆動した蒸気は、復水器25で海水を用いて冷却されて復水となり、給水ポンプ29により過熱器16及び蒸発器17に戻される。
【0025】
このように構成された原子力発電プラントに適用される過熱器16及び蒸発器17はほぼ同様の構成となっている。蒸発器17において、図6に示すように、胴部31は、密閉された中空円筒形状をなしており、下端部に下部水室鏡32が形成される一方、上端部に上部水室鏡33が形成されており、この下部水室鏡32と上部水室鏡33を連結するように複数の伝熱管34が配設されている。そして、各伝熱管34は、胴部31内に上下方向に所定間隔で固定された複数のバッフルプレート39による支持されている。この場合、各伝熱管34は、このバッフルプレート39に形成された穴を接触することなく貫通している。
【0026】
そして、下部水室鏡32の下部に給水口35が形成される一方、上部水室鏡33の上部に蒸気出口36が形成されている。また、胴部31は、上部にナトリウム(Na)の供給口37が形成される一方、下部にナトリウム(Na)の排出口38が形成されている。この場合、下部水室鏡32の給水口35は、復水器25側の三次冷却系配管22が連結され、上部水室鏡33の蒸気出口36は、過熱器16側の三次冷却系配管22が連結されている。また、ナトリウムの供給口37は、二次主冷却系配管19aが連結され、ナトリウムの排出口38は、二次主冷却系配管19cが連結されている。
【0027】
従って、高温のナトリウムが供給口37から胴部31内に供給される一方、冷却水が給水口35から下部水室鏡32に給水されて複数の伝熱管34に送られる。このとき、胴部31内を降下する高温のナトリウムと各伝熱管34内を流れる冷却水との間で熱交換が行われる。即ち、胴部31内で、高温のナトリウムと冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされたナトリウムは排出口38から排出される一方、高温のナトリウムと熱交換を行って高圧高温の冷却水、つまり、蒸気は、上部水室鏡33の蒸気出口36から排出される。
【0028】
このように構成された蒸気発生器としての蒸発器17(過熱器16)は、胴部31を上部胴と下部胴とに分割し、上部胴や下部胴内に、下部水室鏡32、上部水室鏡33、複数の伝熱管34などを収容してから、この上部胴と下部胴とを溶接により接合して組み立てている。そして、組み立てられた蒸発器17は、台車やクレーンなどを用いて設置場所まで搬送される。
【0029】
実施例1の圧力容器の支持方法は、圧力容器(熱交換器)としての蒸発器17を支持して搬送するものであって、内部構造体としての下部水室鏡32、上部水室鏡33、複数の伝熱管34などが収容された状態で支持して搬送する方法である。
【0030】
即ち、実施例1では、蒸発器17内を大気圧より高く加圧し、密閉した状態で支持し、この支持状態で搬送するようにしている。この場合、蒸発器17の内部にはガス(窒素ガスなどの不活性ガス)を充填して加圧するようにしている。
【0031】
具体的に、蒸発器17は、内部に下部水室鏡32、上部水室鏡33、複数の伝熱管34などが収容されることで、ナトリウム(一次流体)が流れる第1流路と、冷却水(二次流体)が流れる複数の伝熱管34を含む第2流路とが設けられており、このうち第1流路を加圧するようにしている。
【0032】
このとき、複数の伝熱管34は、管板を構成する端部が下部水室鏡32及び上部水室鏡33を介して胴部31の内壁面に支持され、下部水室鏡32及び上部水室鏡33に対応した胴部31の外壁面が支持された状態で、この胴部31(第1流路)を加圧するようにしている。そして、この胴部31を加圧した後、下部水室鏡32及び上部水室鏡33に対応した外壁面以外の複数個所の外壁面を接触させて支持するようにしている。
【0033】
ここで、実施例1の圧力容器の支持方法について詳細に説明する。蒸発器17は、図1に示すように、内部に下部水室鏡32、上部水室鏡33、伝熱管34などが収容されることで、ナトリウムが流れる第1流路と、冷却水が流れる第2流路とが設けられている。この場合、第1流路と第2流路は、完全に区画されており、第1流路は、ナトリウムの供給口37と排出口38を通して外部に開放され、第2流路は、冷却水の給水口35と蒸気出口36を通して外部に開放されている。
【0034】
この状態で、ナトリウムの供給口37に窒素供給装置(図示略)を連結する一方、排出口38に真空吸引機(図示略)を連結する。そして、この窒素供給装置と真空吸引機を作動することで、ナトリウムの供給口37から窒素を供給する一方、排出口38から内部の空気を吸引する。すると、図2に示すように、ナトリウムが流れる第1流路内の空気が排出され、窒素で満たされることとなり、ここで、排出口38から真空吸引機を取り外し、この排出口38に蓋部材41を装着する。
【0035】
そして、この状態で、継続して窒素供給装置を作動することで、ナトリウムの供給口37から窒素を更に供給する。すると、図3に示すように、ナトリウムが流れる第1流路内が大気圧より加圧されることで、窒素充填率が上昇する。ここで、ナトリウムの供給口37から窒素供給装置を取り外し、この供給口37に蓋部材42を装着する。このようにして蒸発器17の胴部31内が加圧状態となる。なお、この蒸発器17における胴部31(第1流路)内の圧力は、蒸発器17が実際に使用され、流れるナトリウムの圧力よりも低い圧力である。
【0036】
また、蒸発器17を支持しながら内部を加圧する方法について説明する。蒸発器17は、図4に示すように、横倒し状態でスキッド(支持装置)51に支持されている。このスキッド51は、蒸発器17の外周を囲うように配置される枠体52と、蒸発器17の外壁面を支持する複数のサポート部材53a,53bとを有しており、サポート部材53a,53bは蒸発器17の外壁面に対して接近離反可能となっている。
【0037】
この状態で、まず、サポート部材53aだけを作動し、下部水室鏡32及び上部水室鏡33の管板32a,33aに対応した胴部31の外壁面を支持する。そして、前述したように、ナトリウムの供給口37から窒素を供給する一方、排出口38から内部の空気を吸引し、ナトリウムが流れる第1流路内の空気を排出して窒素で満たし、排出口38に蓋部材41を装着する。そして、ナトリウムの供給口37から窒素を更に供給し、ナトリウムが流れる第1流路を所定圧力まで加圧し、この供給口37に蓋部材42を装着する。このように蒸発器17の胴部31内が所定の加圧状態となったら、残りのサポート部材53bを作動し、管板32a,33aに対応していない胴部31の外壁面を支持する。この場合、各サポート部材53bは、胴部31の外壁面に対して隙間なく接触しているだけで、胴部31の荷重を支持するような位置にはない。
【0038】
そして、横倒し状態の蒸発器17がスキッド51に支持され、内部が所定圧力に加圧されて密閉されると、このスキッド51を複数のロープ54を介して吊り具55に連結し、クレーン(図示略)から垂下されたフック56に吊り具55に連結された吊りロープ57を連結する。この状態で、クレーンを作動することで、スキッド51に支持された蒸発器17を搬送することができる。
【0039】
このとき、蒸発器17は、ほとんどの荷重がスキッド51における各サポート部材53aに支持されることで、胴部31の変形が抑制される。また、蒸発器17は、外壁面が各サポート部材53aだけでなくサポート部材53bに支持されることで、胴部31の振動が抑制され、結果として変形が防止される。更に、蒸発器17は、内部が加圧されることで、胴部31の剛性が高まることから、全体としての変形が抑制される。即ち、蒸発器17は、胴部31に外圧が作用しても、各バッフルプレート39が伝熱管34を押圧することがなく、この伝熱管34に損傷が防止される。
【0040】
このように実施例1の圧力容器の支持方法にあっては、内部構造体としての下部水室鏡32、上部水室鏡33、複数の伝熱管34などが収容された蒸発器17を支持して搬送する方法であって、蒸発器17内を大気圧より高く加圧し、密閉した状態で支持するようにしている。
【0041】
従って、蒸発器17は、内部が加圧されることで全体の剛性が高まり、剛性が高まった蒸発器17を密閉状態で支持するため、外部からの押圧力に対して蒸発器17の変形が抑制されることとなり、内部構造体の損傷を防止することができる。
【0042】
また、実施例1の圧力容器の支持方法では、蒸発器17の内部に窒素ガスを充填して加圧するようにしている。従って、蒸発器17の内部に窒素ガスを充填することで、この蒸発器17を加圧して剛性を高めるだけでなく、内部構造体の錆などの発生を防止することができる。
【0043】
また、実施例1の圧力容器の支持方法では、蒸発器17の内部をナトリウムが流れる第1流路と、冷却水が流れて複数の伝熱管34を含む第2流路とに区画し、第1流路を加圧するようにしている。従って、蒸発器17における第1流路を加圧することで、第2流路として構成される複数の伝熱管34が外側から加圧窒素により押圧支持されることとなり、搬送時における振れを抑制することができる。
【0044】
また、実施例1の圧力容器の支持方法では、複数の伝熱管34は、各端部が管板32a,33aを介して胴部31の内壁面に支持され、管板32a,33aに対応した胴部31の外壁面がサポート部材53aに支持された状態で内部を加圧するようにしている。従って、管板32a,33aに対応した胴部31の外壁面を支持した状態で内部を加圧することで、蒸発器17の変形を防止することができる。
【0045】
また、実施例1の圧力容器の支持方法では、蒸発器17を加圧した後、管板32a,33aに対応した外壁面以外の複数個所の外壁面にサポート部材53bを接触させて支持するようにしている。従って、加圧した後に管板32a,33aに対応していない胴部31の外壁面を支持することで、蒸発器17の変形を防止しながらも、全体を効率的に支持することができる。
【実施例2】
【0046】
図7は、本発明の実施例2に係る圧力容器の支持方法を表す圧力容器の支持構造の正面図、図8は、実施例2の圧力容器の支持構造の側面図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
支持装置61は、図7及び図8に示すように、蒸発器17の胴部31を回転可能に支持するものであって、ベースフレーム62上に4つの支持ユニット63が設けられている。即ち、ベースフレーム62は、上面に蒸発器17の中心軸線C方向に離れた2箇所に、一対の支持ユニット63が蒸発器17を挟持するように配置され、合計4つの支持ユニット63が配置されている。
【0048】
この各支持ユニット63は、同様の構成をなし、蒸発器17の下方に延びる下アーム部64と蒸発器17の側方に延びる横アーム部65とを有するローラ支持部66と、ローラ支持部66を回動可能に支持するピボット部67と、下アーム部64の端部に回転可能に配置された支持ローラ68と、横アーム部65の端部に回転可能に配置された押圧ローラ69とから構成されている。
【0049】
この場合、ピボット部67は、上部にローラ支持部66を回動可能に支持するピボット軸70が設けられている。このピボット軸70は、軸線が蒸発器17の中心軸線Cとほぼ平行に配置され、ローラ支持部66を中心軸線Cに対してほぼ垂直な面内で回動可能に支持している。ローラ支持部66は、下アーム部64と横アーム部65との結合部において、ピボット部67のピボット軸70により支持されている。そのため、例えば、下アーム部64が下方に回動すると、横アーム部65は蒸発器17の方向に回動するように支持されている。
【0050】
従って、蒸発器17は、横向きの状態で支持装置61の上に置かれる。蒸発器17の胴部31は支持ローラ68と接触し、蒸発器17の自重により支持ローラ68及び下アーム部64は下方に押される。押圧ローラ69が蒸発器17の胴部31に接触していない場合、支持ローラ68及び下アーム部64は下方に回動し、押圧ローラ69及び横アーム部65は蒸発器17に向かって回動し、支持ローラ68は蒸発器17の胴部31に接触する。そのため、蒸発器17は、その変形量に応じてアーム部64,65の長さを調節することで、この蒸発器17の変形を押える適正な押圧力を蒸発器17に付与することができる。
【0051】
そして、蒸発器17が支持装置61に支持された状態で、内部に窒素を供給して加圧した後に密閉する。すると、蒸発器17は、内部が加圧されることで、胴部31の剛性が高まることから、全体としての変形が抑制される。
【0052】
このように実施例2の圧力容器の支持方法にあっては、蒸発器17を支持装置61に支持した状態で、この蒸発器17内を大気圧より高く加圧し、密閉した状態で搬送するようにしている。従って、蒸発器17は、内部が加圧されることで全体の剛性が高まり、剛性が高まった蒸発器17を密閉状態で支持するため、外部からの押圧力に対して蒸発器17の変形が抑制されることとなり、内部構造体の損傷を防止することができる。
【0053】
なお、上述した実施例では、本発明の圧力容器を高速増殖炉に蒸気発生器として構成される、蒸発器17としたが、過熱器16であってもよい。また、高速増殖炉に限らず、加圧水型原子炉や沸騰水型原子炉の蒸気発生器として構成してもよい。更に、本発明の圧力容器は、蒸気発生器に限らず、ボイラ設備などの熱交換器としてもよく、熱交換器に限らず、圧力流体を供給する容器であればよい。
【符号の説明】
【0054】
11 原子炉格納容器
12 原子炉容器
13 一次主冷却系中間熱交換器
14 一次主冷却系循環ポンプ
15a,15b,15c 一次主冷却系配管
16 過熱器
17 蒸発器
18 二次主冷却系循環ポンプ
19a,19b,19c 二次主冷却系配管
22 三次冷却系配管
23 蒸気タービン
24 発電機
31 胴部
32 下部水室鏡
33 上部水室鏡
34 伝熱管
35 給水口
36 蒸気出口
37 供給口
38 排出口
41,42 蓋部材
51 スキッド
53a,53b サポート部材
61 支持装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部構造体が収容された圧力容器を支持する方法であって、
前記圧力容器内を大気圧より高く加圧し、密閉した状態で支持する、
ことを特徴とする圧力容器の支持方法。
【請求項2】
前記圧力容器の内部に不活性ガスを充填して加圧することを特徴とする請求項1に記載の圧力容器の支持方法。
【請求項3】
前記圧力容器は、内部に複数の伝熱管を収容する熱交換器であって、一次流体が流れる第1流路と、二次流体が流れる前記複数の伝熱管を含む第2流路とが設けられ、前記第1流路を加圧することを特徴とする請求項1または2に記載の圧力容器の支持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184834(P2012−184834A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50208(P2011−50208)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】