説明

圧力容器下鏡内壁部への補修用機器の設置方法

【課題】 圧力容器の下鏡内壁部補修用の補修用機器を設置する際に、設置個所近傍の構造物との接触を防いで接触による破損事故をなくすと共に、設置作業の能率化を図る。
【解決手段】 圧力容器1の下鏡1a内壁部を補修するときに、圧力容器1の下方に上下方向に延びる案内パイプ11を搬入する。案内パイプ11は上端部を下鏡1aの点検口6内に挿入した状態として固定設置する。補修装置10の動力伝達用ロッド9の上端に備えられた補修用機器7を案内パイプ11内に挿入し、案内パイプ11内をガイドとして押し上げて圧力容器1の下鏡1a内まで送り込む。案内パイプ11を基準として補修用機器7の位置決めセットを行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は石油、化学、エネルギー、その他一般工業分野において用いられる圧力容器における下鏡内壁部への補修用機器の設置方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種のプラントで用いられている圧力容器の中には、図5に一例を示す如く、上下方向に長い形状とし、内部に配管等の構造物が収納される型式の圧力容器1があり、更に、該圧力容器1を、ベース2上に構築した架構3によりベース2から所要高さ持ち上げた位置に据え付け、圧力容器1の下方に形成された空間部に、各種の配管4や支持フレーム5、その他必要な構造物を配置するように設計する場合がある。
【0003】上記圧力容器1においては、たとえば、下鏡1aの内壁部に溶接等の補修工事を実施することがあるが、内部に収納されている配管等の構造物が邪魔になって圧力容器1の内部上方から補修工事を行うことができない場合には、二点鎖線で示す如く、下鏡1aに穿設されている点検口6を利用して補修用機器7を下方から挿入することが行われている。すなわち、主駆動部8を下端に有する動力伝達用ロッド9の上端に補修用機器7を装備してなる補修装置10を、圧力容器1の下方に搬入し、上記補修用機器7を点検口6を通して下鏡1aの内壁部に位置させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記圧力容器1の下側空間部は、支持フレーム5や配管4の如き構造物が複雑に入り組んでいて狭隘部となっているため、補修装置10の補修用機器7を点検口6に下方から挿入するためには、各種構造物間の隙間を通して補修用機器7を押し上げなければならず、他方、補修工事が完了して補修用機器7を回収する際にも各種構造物間の隙間を通して降すようにしなければならないので、補修用機器7やロッド9等が近傍の構造物と接触して損傷してしまう虞があり、そのため、細心の注意を払って補修用機器7を点検口6に通して下鏡1aの内壁部まで挿入すると共に回収することが必要であり、作業場所への補修用機器7の挿入設置作業及び回収作業が大変であり、作業効率が悪い、という問題があり、又、下鏡1aの傾斜部に設けられた点検口6での補修用機器7の芯出しは、傾斜の上方側の点検口下端部と傾斜の下方側の点検口上端部を結ぶ僅かなかがり代で行うことになるため、補修部位に対する芯出しが精度よく行えない、という問題もある。
【0005】そこで、本発明は、圧力容器下鏡内壁部に補修用機器を挿入して設置及び回収するときに、上記圧力容器下鏡下方にある他の構造物との接触を防いで接触による破損事故をなくすと共に、補修用機器の設置作業の能率化を図ろうとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、圧力容器の下鏡に内外方向へ貫通して設けてある点検口に、下鏡内壁部の補修工事を行うための補修用機器を上下方向に案内するための案内パイプの上端を挿入し、上端に補修用機器を変位可能に且つ一体に回転できるように備えた動力伝達用のロッドの下端を補修装置の主駆動部に連結させて、上記案内パイプ内をガイドとして、上記補修用機器とロッドの上端を、案内パイプの下方より上端まで押し上げて圧力容器の下鏡内に挿入し、下鏡内壁部に補修用機器をセットさせるようにする圧力容器下鏡内壁部への補修用機器の設置方法とする。
【0007】したがって、圧力容器の下鏡に内外方向へ貫通して設けてある点検口に上端を連通させるように案内パイプを設置して、この案内パイプの下端部内に動力伝達用ロッドの上端の補修用機器を挿入し、案内パイプ内をガイドとして補修用機器を押し上げることにより圧力容器の下鏡内へ挿入するようにすると、補修用機器が圧力容器の下側に位置する構造物と接触して損傷してしまうことを未然に防止でき、しかも、上記案内パイプを基準として利用することによって補修部位に対する補修用機器の芯を出すことができる。
【0008】又、案内パイプを複数のパイプ本体からなる分割構造とし、且つ各分割部をいんろう継手と連結フランジにて連結できるようにすると、圧力容器の下方にわずかなスペースしかないような場合であっても容易に搬入でき、パイプ体同士を順次継ぎ足して一本物の案内パイプとすることにより何ら支障なく案内パイプを設置することができ、しかもこの際、パイプ体同士の連結部はいんろう継手としてあることから、案内パイプの芯出しを容易に行うことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】図1乃至図4は本発明の実施の一形態を示すもので、図5に示したと同様に、ベース上から所要高さ持ち上げられた位置に圧力容器1が架構3によって据え付けられ、該圧力容器1の下側に支持フレーム5や各種の配管等の構造物が位置させられている構成において、上記圧力容器1における下鏡1aの内壁部の補修工事を行うに際し、予め、圧力容器1の下方に、下鏡1aに内外方向へ貫通して設けてある点検口6と連通するように上下方向に延びる案内パイプ11を設置する。この際、案内パイプ11は、蓋12を取り外した後の点検口6に上端を差し込み、下端を、既設の支持構造物13を介して支持フレーム5等の付近の構造物に固定させるようにする。
【0011】しかる後、上端に補修用機器7を装備させた動力伝達用ロッド9上端を、補修用機器7とともに上記案内パイプ11内に下から上へ向けて挿入して該案内パイプ11内をガイドとして下方より上端まで押し上げて行き、補修用機器7を圧力容器1の下鏡1a内に挿入し、主駆動部8を案内パイプ11の下端に固定する。次いで、下鏡1aの内壁部所定個所に補修用機器7を位置決めセットさせた後、下鏡1aの傾斜部にある点検口6の場合には、傾斜面の補修部位に合わせて動力伝達用ロッド9を案内パイプ11に沿い昇降と旋回を行わせ、且つ補修用機器7の変位動作を行わせて補修を行わせるようにする。
【0012】本発明で用いる上記案内パイプ11は、3本の単管であるパイプ体11aからなる3分割構造としてあり、図2に拡大して示す如く、それぞれのパイプ体11aの一端内径部にリング状の凸部14を形成すると共に他端内径部には該凸部14と対応する凹部15を形成して、各パイプ体11aの互いの凸部14と凹部15とを嵌合させるようにしたいんろう継手16としてあり、且つそれぞれのパイプ体11aの端部外周に設けた連結フランジ17をボルトにて締め付けることにより、上記いんろう継手16の作用によって各パイプ体11aを芯出ししながら一体化できるようにしてある。
【0013】又、上記補修装置10は、従来用いられているものと同じであるが、主駆動部8は、図3の(イ)(ロ)に拡大して示す如く、案内パイプ11の下端に固定するようにした上部プレート18とその下方に配置した下部プレート19との間の四隅を上下方向のガイドロッド20で連結して駆動架台を構成し、該駆動架台には、ガイドロッド20に沿って昇降自在となるようにスライドプレート21を設け、該スライドプレート21上に、旋回駆動装置22によって旋回できるようにした旋回テーブル23を設けると共に、該旋回テーブル23上に動力伝達用のロッド9の下端を取り付けて、旋回駆動装置22により旋回テーブル23を旋回させることによりロッド9とともに補修用機器7を旋回させることができるようにしてあり、且つ上記下部プレート19上の中央部に昇降用スクリュージャッキ24を設置し、該昇降用スクリュージャッキ24の上下方向に延びるスクリュー軸25を、上記スライドプレート21を貫通螺着させた後、旋回テーブル23に遊嵌状態に貫通させてロッド9の軸心部に回転自在に挿入し、昇降用スクリュージャッキ24の駆動力でスクリュー軸25を回転させてスライドプレート21をガイドロッド20に沿わせ昇降させることにより、旋回テーブル23を介しロッド9と補修用機器7を昇降させるようにしてある。
【0014】更に、上記補修装置10の補修用機器7は、図4に拡大して示す如く、動力伝達用のロッド9の上端に固定した支持プレート26上に、モータ27にて回転駆動される水平方向のスライド用ロッド28を設けて、該スライド用ロッド28に螺合させ且つ図示しないガイドレール沿いスライドできるようにしたスライドブロック29上に、前後方向へ回動できるように支持台を載置し、該支持台上に、左右方向へ回動するようにしたリンクを介して溶接トーチ30を備えた構成としてある。なお、補修用機器7は主駆動部8側にて遠隔操作されるようにしてある。
【0015】本発明の圧力容器下鏡内壁部への補修用機器の設置方法は、圧力容器1の下鏡1aに穿設されている点検口6に、予め案内パイプ11を設置した後、動力伝達用のロッド10の上端に取り付けてある補修用機器7を、上記案内パイプ11内へ下端部より挿入して該案内パイプ11内をガイドとして押し上げて圧力容器1の下鏡1a内まで送り込むようにするので、設置時に補修用機器7やロッド9が近傍の構造物5に接触して損傷してしまうことを未然に防止できると共に、下鏡1a内壁部の補修工事が完了した際にも案内パイプ11内をガイドとして補修用機器7を回収する際にも補修用機器7を案内パイプ11内を下降させて撤収できることから、補修用機器7の保護を確実に行うことができる。更に、上記案内パイプ11は、3本のパイプ体11aがいんろう継手16で接続されて一体化されており、且つ上端が点検口6に嵌入されて位置決めされているので、補修用機器7を遠隔操作して下鏡1aの内壁部を補修する際の位置決め基準として利用することができ、圧力容器1自体の傾斜や下鏡1aの曲率にかかわらず補修部位に対する芯を出すことができる。
【0016】又、上記において、案内パイプ11は3本のパイプ体11aからなる3分割構造としてあるため、圧力容器1の下方にわずかな隙間スペースしかないような場合であっても容易に搬出入でき、継ぎ足して1本物とすることにより何ら支障なく設置することができる。この際、パイプ体11a同士の連結部はいんろう継手16としてあることから、芯出ししながら精度よく継ぎ足して行くことができる。
【0017】更に、下鏡1aの最下部に位置する点検口6より補修用機器7を挿入しようとする場合には、図1において二点鎖線で示す如く、たとえば、他の2本のパイプ体11aよりも短尺なパイプ体11bを含む組合わせとして一体化した案内パイプ11を用いるようにしてもよい。
【0018】なお、上記実施の形態では案内パイプ11を3分割構造とした場合を示したが、分割数は任意に選定することができること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0019】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明の圧力容器下鏡内壁部への補修用機器の設置方法によれば、圧力容器の下鏡に設けられている点検口に、上下方向に延びる案内パイプの上端を挿入して固定設置し、動力伝達用ロッドの上端の補修用機器を上記案内パイプ内をガイドとして押し上げて圧力容器の下鏡内まで挿入するようにするので、補修用機器を下方から点検口に挿入するとき圧力容器の下側に位置する構造物と接触して損傷してしまうことを未然に防止できて補修用機器の保護を確実に行うことができると共に、案内パイプの上端を点検口に嵌着して位置決めすることから、案内パイプを基準として利用することによって補修部位に対して補修用機器の芯を出すことができて、補修用機器の設置作業を能率的に行うことができ、又、案内パイプを複数分割構造とすることにより、狭いスペースで案内パイプを設置することができ、しかも分割部にいんろう継手を用いることにより連結時の芯出しを容易に行うことができる、という優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧力容器下鏡内壁部への補修用機器の設置方法の実施の一形態を示す全体図である。
【図2】案内パイプを構成するパイプ体同士の連結部を示す拡大断面図である。
【図3】補修装置の主駆動部を示すもので、(イ)は一部切断正面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【図4】補修装置の補修用機器を示す概要図である。
【図5】圧力容器の設置例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 圧力容器
1a 下鏡
6 点検口
7 補修用機器
8 主駆動部
9 ロッド
10 補修装置
11 案内パイプ
11a パイプ体
16 いんろう継手
17 連結フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧力容器の下鏡に内外方向へ貫通して設けてある点検口に、下鏡内壁部の補修工事を行うための補修用機器を上下方向に案内するための案内パイプの上端を挿入し、上端に補修用機器を変位可能に且つ一体に回転できるように備えた動力伝達用のロッドの下端を補修装置の主駆動部に連結させて、上記案内パイプ内をガイドとして、上記補修用機器とロッドの上端を、案内パイプの下方より上端まで押し上げて圧力容器の下鏡内に挿入し、下鏡内壁部に補修用機器をセットさせるようにすることを特徴とする圧力容器下鏡内壁部への補修用機器の設置方法。
【請求項2】 案内パイプを、複数のパイプ体からなる分割構造とし、且つ各分割部をいんろう継手と連結フランジにて連結できるようにした請求項1記載の圧力容器下鏡内壁部への補修用機器の設置方法。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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