説明

圧力調理器

【目的】 容体と蓋体との不完全嵌合時昇圧を防止する機構と、容体内の残圧が高い時蓋を開かないようにする開蓋防止機構とを、並設はするが、個々独立して操作可能とさせ、把手内にコンパクトに収納させる。
【構成】 第1と第2の摺動体20、21を、把手8内に並列に納める。蓋体2の完全閉時、第1の摺動体20が容体2の係合片4に当接してパッキン6から離れ、第2の摺動体21の本体23の先端が係合片4の凹部28内に入る。このため、ロックバー25の孔26が、昇圧時、ロックピン12を受け、蓋体2の回動を防止させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、調理物を入れる容体と蓋体とに設けた係合片を重ね合せて内部圧による蓋体の浮き上りを防止し且つ蓋体の内側のパッキンにより内部圧の洩れを防止する圧力調理器に関する。
【0002】
【従来の技術】蓋体により容体内をほぼ密閉状態とさせ、加熱して内部圧を高め調理する圧力調理器は、蓋体と容体との不完全嵌合時容体内の圧力が上昇しないようにする機構、及び内部圧が高い時蓋体が開かないようにする機構が、安全上、欠かせない。
【0003】前者の機構は、たとえば、特公昭62−4124号公報に開示されるが、基本的には、蓋体のロック弁のロックピンが内部圧が高くなると上昇し、前者の機構のロックバーの先端の孔にロックピンが入り、内部圧が高い間ロックピンとロックバーの係合が維持されるので、容体に対し蓋体を回動不能即ち係合片の重なり合いを保ったままとさせる機構となっている。従って、調理後の残圧が高い時に蓋体を開け、調理物を吹出させることはない。
【0004】後者の機構即ち不完全嵌合時昇圧防止機構は、実公昭59−35146号公報の如く容体の係合片に当接している時は半径方向外方へ引込み、係合片間に位置する時は半径方向内方へ押出され、パッキンを部分的に外気に対し開とする摺動体を有する構成となっている。この構成は容体と蓋体との係合片が正しく重なり合っていない状態で加熱しても、パッキンの部分的開となっているところから内部圧が外部へ洩れ、内部圧の上昇を防止させる。
【0005】前述した残圧時開蓋防止機構や不完全嵌合時昇圧防止機構は、圧力調理器に単独に、又、両方共装備されるが、一つの構成で両機能を充足させるものはない。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】本発明は、不完全嵌合時の昇圧防止機能と、残圧時開蓋防止機能とを兼ね備えた簡単な構成を有する圧力調理器を開発することを解決すべき課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述した課題を解決するために、基本的には、対の摺動体を蓋体の把手に組み込み、容体の係合片に両摺動体を当接自在とする手段を用いる。
【0008】具体的には、本発明は、容体の開口周縁に設けた複数個の離間した係合片を、蓋体の周縁に設けた複数個の離間した係合片に重ね合せ、前記蓋体の側壁内側に配したパッキンにより両者を密閉する圧力調理器において、前記蓋体に固定した把手にスプリングの附勢力を受けた第1と第2の摺動体を配し、両前記摺動体が前記容体の係合片に当接して半径方向内外に、個別に移動可能であり、前記第1の摺動体が両前記係合片の非係合時前記パッキンを内方へ押し、前記第2の摺動体が両前記係合片の係合時前記蓋体に固定したロック弁のロックピンに係合することを特徴とする圧力調理器を提供する。
【0009】
【作用】容体に対して蓋体を回動させ、容体の係合片に蓋体の係合片を係合させると、第1の摺動体が容体の係合片に当接して半径方向外方へ位置しパッキンへの押圧を解放し、並列する第2の摺動体が半径方向内方へ移動し、ロックバーにロック弁のロックピンが係合することになる。ロックバーの半径方向外方への移動は、ロックピンが下がる迄不可能であり、その操作は、第2の摺動体のレバーにより手で行なう。
【0010】
【実施例】圧力調理器1は、調理する材料を入れる容体2と、容体2の開口を塞ぎ且つ内部圧を外部へ洩らさない蓋体3とを有す。図2に示す如く、容体2の開口縁に半径方向外方に延出した係合片4を複数個離間して設ける。蓋体3の外周縁に同様に複数個の離間した係合片5を設ける。蓋体3を容体2の開口にのせた時、図2の如く、蓋体3の係合片5が容体2の係合片4間に位置し、蓋体3を回すと、蓋体3の係合片5が容体2の係合片4の下側に移動し、重なり合った状態となる。蓋体3の内周側にパッキン6を配す。パッキン6が加熱による内部圧の上昇を可能にする。即ち、パッキン6は内部圧を外部へ洩らさない働きをする。
【0011】容体2の左右に把手7,7′が付けられ、蓋体3にも把手8,8′が付けられる。使用時、両把手7,8が上下に重なる関係となる。蓋体3に公知の安全弁9を設ける。安全弁9は内部圧が設計値を越えると、内部圧を外部へ放出する働きをする。蓋体3の中央に公知のおもり弁10を配す。おもり弁10は内部圧が必要以上に上昇すると、おもりが浮き上り、不必要な圧のみを外部へ洩らして、内部圧を一定に維持する。蓋体3の把手8にロック弁11を配す。ロック弁11は、図3と図4に示す如く、弁体即ちロックピン12と表示ピン13を有し、内部圧を受けてロックピン12が上昇すると、表示ピン13も上昇し、その先端が把手8より突出し、使用者に内部圧が高いことを知らせる。
【0012】下方には、密接しない為の線状を上面に配する水滴たまり防止用の三角盤座13′付きで、且つ、座13′の角部に傾き防止の為の点状突部13″を配した表示ピン13と表示ピン用孔14との間に隙間15を残す。図5の例では三角形の表示ピン13を用いたが、図6の如く丸棒の表示ピン13に三角形の表示ピン用孔14とし、三隅に隙間15を作ってもよい。さらに、図7R>7の如く、三角形の辺を内側にへこませた形の表示ピン13に三角形のピン用孔14を組合せたものである。
【0013】表示ピン13のおもり弁10側に蓋把手8と一体成形の三角形の壁16(図3、4、8参照)を形成する。この壁16は、おもり弁10から洩れた煮汁が表示ピン13に付着するのを防止する。さらに、図3、図4に示す如く、表示ピン用孔15のまわりであって把手内壁にテフロンの如きフッ素塗膜を内張りし、表示ピン13が把手内壁に付着して自重による落下ができないようにすることを防止する。即ち、内部圧が下がった時表示ピン13が、必ず、弁体即ちロックピン12と共に自重落下するようにする。
【0014】図9に示す如く、把手8の内部に対の摺動体20,21のための孔17,18を設け、孔18は外部へ開口19させる。図10と11を参照する。孔17に第1の摺動体20をスプリング27の付勢力を受けた形で配す。図10の状態は、第1の摺動体20が容体2の係合片4に当接することないように段部20′が蓋体3の側孔に係止され、半径方向内方へ位置し、図11の如く、パッキン6をその先端が押す。この結果、容体2内は、この部分を介して外部へ連通し、加熱しても内部圧は上昇しない。
【0015】第1の摺動体20と個別に移動可能に並列に且つ孔18内に第2の摺動体21を配す。第2の摺動体21は、スプリング22の付勢力を受ける本体23を有し、本体23は図9に示す開口19より外部に突出するレバー24を備える。レバー24を操作することで、本体23を半径方向に前後進可能である。本体23にロックバー25の一端を固定する。ロックバー25は、その先端にロックピン12を受ける孔26を有す。
【0016】容体2の係合片4の一つに凹部28を設ける。凹部28は平坦な底面と、ゆるやかな傾斜側面と垂直な側面とからなり、垂直な側面にくぼみ29を設ける。一方、第2の摺動体21の本体23の先端は垂直な側面と円弧面とからなり、さらに、本体23は壁面30を有す。
【0017】容体2に蓋体3をのせた後に、蓋体3を回動して摺動体20および本体23が係合する前の状態時で、係合片4,5は図2の関係となっており、両摺動体20,21は図10に示す位置を占める。蓋体3を回すと、第2の摺動体21の本体先端が係合片4に当接して半径方向外方へ移動させられる。さらに、蓋体3の回動は、第1の摺動体20の先端を係合片4に当接させ、これを押し下げ、図11、図12の状態のパッキン6を図1R>1の密封状態にする。第2の摺動体21の本体23の先端が凹部28にスプリング22の付勢力により入り、本体23壁面30が蓋体3の側面に図13、図14のように当接し、音を出す。この音は、係合片4,5の正しい重なり合いの確認となり、使用者は蓋体3の回動を止めて、調理を開始する。本体23の側面は、凹部28のくぼみ29と対向するが、このくぼみ29による空隙が、本体23の凹部28の側面へのくっつきを防止する。
【0018】加熱により内部圧が上昇すると、ロックピン12が、上昇し、表示ピン13を持上げながら、ロックバー25の孔26内へ入る。この状態でレバー24を図12の右方へ操作しても、ロックピン12により第2の摺動体21は動かない。勿論、蓋体3を戻し方向に回そうとしても、凹部28と本体23との両側面が当接しているので蓋体3は回らない。調理が終了し、容体2内の圧が下がると、ロックピン12と表示ピン13が自重で落下し、使用者に残圧がないことを知らせる。使用者が、レバー24を外方へ引くと、ロックピン12がロックバー25の孔26に引掛からず、第2の摺動体21が半径方向外方へ移動し本体23の先端が凹部28から出て、蓋体3の回動を可能にするので、蓋体3を所定量回し、係合片4,5を図2の状態とする。この時、第1の摺動体20は、図11の状態となって、パッキン6を押す。かくして、蓋体3を外しても、内部の調理物が吹き出ることはない。
【0019】
【効果】本発明によれば、蓋体の回動に伴って、不完全嵌合時の昇圧防止と残圧時開蓋防止機構が順次作用するので、圧力調理器を安全に使用できる。蓋体の完全閉時、音による確認ができ、しかも、表示ピンの煮汁による付着を防止しているので、調理開始と終了を使用者が確認し易い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例の断面図である。
【図2】容体と蓋体の係合片を示す図である。
【図3】ロックピンの下がった状態を示す図である。
【図4】内部圧によりロックピンが上昇した状態を示す図である。
【図5】表示ピンの例を示す平面図である。
【図6】表示ピンの別の例を示す平面図である。
【図7】表示ピンの他の例を示す平面図である。
【図8】蓋体の平面図である。
【図9】摺動体を納める把手の蒲を示す図である。
【図10】第1と第2の摺動体を示す平面図である。
【図11】第1の摺動体とパッキンの関係を示す図である。
【図12】第2の摺動体の平面図である。
【図13】第2の摺動体の本体と容体の係合片の凹部との関係を示す平面図である。
【図14】本体と蓋体との関係を示す側面図である。
【符号の説明】
2 容体
3 蓋体
4,5 係合片
6 パッキン
8 把手
11 ロック弁
12 ロックピン
13 表示ピン
15 隙間
20 第1の摺動体
21 第2の摺動体
23 本体
24 レバー
25 ロックバー
28 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 容体の開口周縁に設けた複数個の離間した係合片を、蓋体の周縁に設けた複数個の離間した係合片に重ね合せ、前記蓋体の側壁内側に配したパッキンにより両者を密閉する圧力調理器において、前記蓋体に固定した把手にスプリングの附勢力を受けた第1と第2の摺動体を配し、両前記摺動体が前記容体の係合片に当接して半径方向内外に、個別に移動可能であり、前記第1の摺動体が両前記係合片の非係合時前記パッキンを内方へ押し、前記第2の摺動体が両前記係合片の係合時前記蓋体に固定したロック弁のロックピンに係合することを特徴とする圧力調理器。
【請求項2】 前記第2の摺動体が前記把手の外表面より突出する操作レバーを有し、前記ロックピンと前記第2の摺動体との非係合時、前記操作レバーが前記第2の摺動体を半径方向外方へ移動可能とさせる請求項1の圧力調理器。
【請求項3】 前記容体の係合片の少くとも一つが凹部を有し、両前記係合片の係合時前記第2の摺動体の一部が該凹部に当接する請求項1の圧力調理器。
【請求項4】 前記把手が表示ピン用孔を有し、該孔に前記ロックピンと連動する表示ピンを上下動可能に配し、前記表示ピンと前記表示ピン用孔との間に空隙があり、且つ前記表示ピンの前記把手への煮汁によるくっつきを防止させている請求項1の圧力調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【図14】
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【公開番号】特開平6−78850
【公開日】平成6年(1994)3月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−253430
【出願日】平成4年(1992)8月31日
【出願人】(000250432)理研軽金属工業株式会社 (89)