説明

圧接装置及び圧接システム

【課題】中継コネクタをID毎に製品管理する必要をなくすことができる圧接装置を提供する。
【解決手段】中継コネクタに設けた圧接端子が搭載された端子搭載台71aと、圧接ブレード72と、の間に電源線、グランド線、信号線を位置付けて圧接ブレード72を端子搭載台71aに近づけることにより、電源線、グランド線、信号線を圧接端子に圧接する圧接装置7において、端子搭載台71aに接続端子73を設け、この接続端子73からIDを出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧接装置及び圧接システムに係り、特に、電線と、この電線を介して通信を行う複数の通信装置に設けられた圧接端子と、を圧接する圧接装置及び当該圧接装置を備えた圧接システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車、貨物車等の車両には、エアコンやワイパー、パワーウインドウなどを構成する多種多様な電子機器が搭載されている。これらの電子機器は、コンピュータなどで構成された電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)と電気的に接続されており、これら電子機器とECUとの間で電力や制御信号などが伝えられる。
【0003】
従来、上述した電子機器を制御する電子制御システムとして、例えば、図7に示すようなものが提案されている(例えば特許文献1)。同図に示すように、電子制御システム1は、一つのECU2と、通信装置としての複数の中継コネクタ33と、各中継コネクタ33にそれぞれ接続された図示しない複数の電子機器と、を備えている。これらECU2及び中継コネクタ33は、一つの第2ワイヤハーネス32に共通接続されている。
【0004】
第2ワイヤハーネス32は、電源線L1、グランド線L2及び信号線L3の3本の電線から構成されている。上記ECU2及び複数の中継コネクタ33は、これら1本ずつ設けられた電源線L1、グランド線L2及び信号線L3にそれぞれ共通接続されている。
【0005】
上記中継コネクタ33は、信号線L3を介してECU2との通信を行い、この通信に応じて当該中継コネクタ33に接続されている図示しない電子機器の動作を制御する。なお、中継コネクタ33には各々、中継コネクタ33全体の制御を司る図示しないCPUが内蔵されている。
【0006】
このように、1本の信号線L3にECU2と複数の中継コネクタ33とを接続して通信を実現するために各中継コネクタ33には、識別情報としてのIDが設定されている。そして、中継コネクタ33は各々、信号に送信先のIDと自己のIDとを添付して信号の送信を行うと共に、自己のIDが添付された信号の受信を行っている。
【0007】
上記IDの設定がないと一つの信号線L1に接続されたECU2と複数の中継コネクタ33との信号の授受ができなくなるため、IDの設定は必要不可欠なものである。従来、上記IDの設定としては、例えば中継コネクタ33のハウジング内に複数のID設定スイッチ群を内蔵したり、中継コネクタ33内に設けられた図示しない不揮発性メモリなどに、製造時に個別に記憶するなどして行われる。
【0008】
しかしながら、上述したIDの設定方法では、ID毎に製品管理が必要となる。また、外観が同じものだと中継コネクタ33同士区別できないため誤接続され、正規の制御ができなくなり、製品不良になる危険性もある。そこで、例えば、中継コネクタ33を図8(A)に示すように構成することが考えられる。中継コネクタ33は、基板33cと、基板33cに搭載されたコネクタ部33dと、この基板33c上に搭載され、CPUを内蔵したICチップ33eと、を備えている。
【0009】
このICチップ33eに、通信や電源供給用の端子とは別に複数のID設定用端子33fを設け、図8(B)及び(C)に示すように、このID設定用端子33fとグランド又は電源用の配線33gとの接続数や接続位置を変更することによりIDを設定することが考えられる。この場合、配線33gのパターンを見れば中継コネクタ33同士を区別することはできるが、ID別に配線33gのパターンが異なる基板33cを用意する必要があり、ID毎に製品管理が必要となる、という問題は依然解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−225673号公報
【特許文献2】特開平10−6748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、通信装置を識別情報毎に製品管理する必要をなくすことができる圧接装置及び圧接システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、電線と、この電線を介して通信を行う複数の通信装置に設けられた圧接端子と、を圧接する圧接装置であって、前記圧接端子が搭載される端子搭載台と、前記端子搭載台に接離自在に設けられた圧接部材と、を備え、前記端子搭載台と前記圧接部材との間に前記電線を位置付けて前記圧接部材を前記端子搭載台に近づけることにより前記電線を前記圧接端子に圧接する圧接装置において、前記端子搭載台に設けられ、当該端子搭載台に搭載された前記圧接端子に電気的に接続される接続端子と、前記接続端子から識別情報を出力させる識別情報設定手段と、を備えたことを特徴とする圧接装置に存する。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記接続端子が、前記端子搭載台から前記圧接端子に向かって突出する接続ピンと、前記接続ピンを前記圧接端子に向かって付勢するバネと、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧接装置に存する。
【0014】
請求項3記載の発明は、電線と、この電線を介して通信を行う複数の通信装置に設けられた圧接端子と、を圧接する圧接システムであって、前記複数の通信装置毎に設けられた複数の請求項1に記載の圧接装置を備え、前記複数の圧接装置が、互いに異なる識別情報をそれぞれの前記接続端子から出力することを特徴とする圧接システムに存する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、通信装置に設けた圧接端子を搭載する端子搭載台に接続端子を設け、この接続端子から識別情報を出力させることにより、電線に通信装置の圧接端子を圧接するときに識別情報を設定することができる。このため、圧接前においては複数の通信装置は互いに共通のものを使用することができ、通信装置を識別情報毎に製品管理する必要をなくすことができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、接続端子が、端子接続台から圧接端子に向かって突出する接続ピンと、接続ピンを圧接端子に向かって付勢するバネと、から構成されているので、端子搭載台に搭載された圧接端子と接続端子とを確実に電気的に接続することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、通信装置毎に圧接装置を設けることにより、識別情報の誤設定を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の圧接装置を組み込んだ圧接システムの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す圧接システムに第2ワイヤハーネス及び中継コネクタをセットした状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す圧接システムの側面図である。
【図4】(A)は図1に示す圧接装置の斜視図であり、(B)は(A)中X部の部分拡大図である。
【図5】(A)は図4(A)のI−I線部分断面図であり、(B)は(A)に示す接続端子及びID設定装置を示す概略図である。
【図6】図1に示す圧接システムを用いた圧接手順を説明するための説明図である。
【図7】図1に示す圧接システムを用いて製造されたワイヤハーネス構造体を組み込んだ電子制御システムを示す構成図である。
【図8】従来の中継コネクタの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の圧接装置及び圧接システムについて説明する前に、この圧接装置及び圧接システムを用いて製造されたワイヤハーネス構造体について図7を参照して説明する。図7は、図1に示す圧接システムを用いて製造されたワイヤハーネス構造体を組み込んだ電子制御システム1を示す構成図である。
【0020】
図7に示す電子制御システム1は、図示しない車両に搭載されている。この電子制御システム1は、複数の図示しない電子機器と、これら電子機器を制御する電子制御ユニット(以下ECU)2と、複数の電子機器及びECU2を通信可能に接続するためのワイヤハーネス構造体3と、を備えている。
【0021】
上記電子機器は、ECU2によって制御される各種装置であり、例えば、エアコン、ワイパー、パワーウインドウやドアスイッチなどの各種スイッチが挙げられる。上記ECU2には、車載バッテリからの電源電圧VBが供給されている。上記ECU2は、電子制御システム1全体の制御を司るマイクロプロセッサ(MPU)21と、後述するワイヤハーネス構造体3などに接続される外部コネクタ22などから構成されている。
【0022】
上記MPU21は、後述する通信装置としての中継コネクタ33からスイッチのオン情報が入力されると、その操作スイッチに対応する電子機器のID及びその電子機器が接続される中継コネクタ33のID(識別情報)を宛先情報として付加した制御信号を出力する。
【0023】
上記外部コネクタ22は、MPU21に接続されている。上記外部コネクタ22は、後述する複数の中継コネクタ33と多重通信を行うための所定の通信プロトコル(例えば、LIN(Local Interconnect Network))などに対応した通信インタフェースを内蔵している。また、外部コネクタ22には、電源電圧VBの+側が出力される電源端子、電源電圧VBの−側が出力されるグランド端子及び上記通信インタフェースに接続され、制御信号が出力される信号端子(何れも図示せず)が設けられている。
【0024】
上記ワイヤハーネス構造体3は、複数の第1ワイヤハーネス31と、第2ワイヤハーネス32と、複数の中継コネクタ33と、を備えている。
【0025】
上記複数の第1ワイヤハーネス31は各々、各電子機器と中継コネクタ33とを接続する複数の電線から構成されていて、その一端には、中継コネクタ33と接続されるコネクタ31aが設けられ、他端には電子機器と接続される図示しないコネクタが設けられている。
【0026】
上記第2ワイヤハーネス32は、上記外部コネクタ22の電源端子に接続される電源線L1、グランド端子に接続されるグランド線L2、及び、信号端子に接続され各中継コネクタ33宛の制御信号が多重(シリアル)伝送される信号線L3の3本の電線からなる。
【0027】
この第2ワイヤハーネス32の一端には、接続コネクタ32aが取り付けられていて、この接続コネクタ32aを外部コネクタ22に接続すると、外部コネクタ22の電源端子が電源線L1に接続され、グランド端子がグランド線L2に接続され、信号端子が信号線L3に接続される。また、第2ワイヤハーネス32には、後述する複数の中継コネクタ33が接続されている。
【0028】
上記中継コネクタ33は、上記第1ワイヤハーネス31と第2ワイヤハーネス32とを接続するコネクタである。この中継コネクタ33は、合成樹脂により角筒型に形成されたアウタハウジング33aと、このアウタハウジング33aの筒長さ方向一方側の開口から外部に突出された3つの圧接端子33bと、このアウタハウジング33aの筒長さ方向他方側の端部に設けたフード部(図示せず)内に収容された複数の雄タブ端子(図示せず)などで構成されている。
【0029】
上記アウタハウジング33aは、その内部に図示しない樹脂封止体を収容している。樹脂封止体は、中継コネクタ33全体の制御を司るCPUが内蔵された図示しないチップと、上記圧接端子33b及び雄タブ端子の一端と、を互いにワイヤボンディングして接続した状態で、樹脂封止している。
【0030】
上記3つの圧接端子33bは、導電性の金属から構成されていて、一端が図示しない樹脂封止体に挿入され、他端がアウタハウジング33aから外部に突出している。また、これら圧接端子33bの外部に突出された他端には、その突出方向に互いに間隔を空けて設けられた2つの圧接刃からなる圧接刃対が2対設けられている。この圧接端子33bに設けた2つの圧接刃間に電源線L1、グランド線L2、信号線L3を挿入すると、電源線L1、グランド線L2、信号線L3の被覆部が切れて内部の芯線と圧接刃とが圧接される。上記雄タブ端子は、導電性の金属から構成されていて、アウタハウジング33aに設けた図示しないフード部にコネクタ31aが嵌合すると、コネクタ31a内の雌型端子が電気的に接続される。
【0031】
次に、上述した第2ワイヤハーネス32と、この第2ワイヤハーネス32を介して通信を行う複数の中継コネクタ33に設けられた圧接端子33bと、を圧接してワイヤハーネス構造体3を製造する本発明の圧接システムについて図1乃至図5を参照して以下説明する。図1は、本発明の圧接装置を組み込んだ圧接システムの一実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す圧接システムに第2ワイヤハーネス32及び中継コネクタ33をセットした状態を示す斜視図である。図3は、図1に示す圧接システムの側面図である。図4(A)は、図1に示す圧接装置の斜視図であり、図4(B)は、図4(A)中X部の部分拡大図である。図5(A)は図4(A)のI−I線部分断面図であり、図5(B)は図5(A)に示す接続端子及びID設定装置を示す概略図である。
【0032】
図1及び図2に示すように、圧接システム4は、長尺状の平板で構成されたハウジング固定台5と、このハウジング固定台5に突設され、中継コネクタ33のアウタハウジング33aやコネクタ31aを固定する複数の固定アーム対6と、ハウジング固定台5の幅方向の一方側にその長手方向に沿って複数並べて配置された圧接装置7と、を備えている。以下、図1及び図2中の矢印X方向をハウジング固定台5の長手方向、矢印Y方向をハウジング固定台5の幅方向、矢印Z方向をハウジング固定台5の厚さ方向とする。
【0033】
上記ハウジング固定台5は、例えば工場のフロア上に配置されている。上記固定アーム対6は、長手方向Xに対向する一対の固定アーム61、62から構成されている。この固定アーム61、62は各々、ハウジング固定台5から突出した棒状のアーム本体63と、このアーム本体63の側面から互いに間隔を空けて突設された係止爪64及び固定部65と、を備えている。上記係止爪64は、アーム本体63のハウジング固定台5から離れた端部側面に突設されている。上記固定部65は、ハウジング固定台5寄りのアーム本体63側面から係止爪64と同じ方向に突設されている。
【0034】
上記固定アーム対6は、圧接装置7毎に3対づつ設けられている。これら3対の固定アーム対6は、互いに幅方向Yに並べて配置されている。圧接装置7側の二対の固定アーム対6を構成する固定アーム61、62においては、固定部65及び係止爪64が互いに近づく方向に突設されている。圧接装置7から離れた側の一対の固定アーム対6を構成する固定アーム61、62においては、固定部65及び係止爪64が圧接装置7に近づく方向に突設されている。
【0035】
中継コネクタ33のアウタハウジング33aと第1ワイヤハーネス31の端末に設けたコネクタ31aとを互いに接続して、これらアウタハウジング33a及びコネクタ31aを、圧接装置7側に配置された二対の固定アーム対6を構成する固定アーム61と固定アーム62との間、圧接装置7から離れて配置された一対の固定アーム対6と圧接装置7との間に挿入すると、図2に示すように、圧接装置7側の二対の固定アーム対6は各々、アーム本体63間にアウタハウジング33aの長手方向Xを位置付ける。また、圧接装置7側の二対の固定アーム対6は各々、固定部65と係止爪64との間にアウタハウジング33aの厚さ方向Zを位置付ける。圧接装置7から離れた一対の固定アーム対6は、圧接装置7との間にアウタハウジング33a及びコネクタ31aの幅方向Yを位置付ける。また、圧接装置7から離れた一対の固定アーム対6は、固定部65と係止爪64との間にコネクタ31aの厚さ方向Zを位置付ける。これにより、中継コネクタ33のアウタハウジング33a及び第1ワイヤハーネス31の端末に設けたコネクタ31aが固定される。
【0036】
上記圧接装置7は、第1ワイヤハーネス31に接続される中継コネクタ33毎に設けられている。上記圧接装置7は、コ字状に設けられた装置本体71と、この装置本体71に移動可能に取り付けられた圧接ブレード72と、を備えている。装置本体71は、圧接端子33bが搭載される箱型の端子搭載台71aと、この端子搭載台71aに対して厚さ方向Zに離間して設けられ、後述する圧接ブレード72を支持するブレード保持部71bと、これら端子搭載台71a及びブレード保持部71bを連結する連結部71cと、から構成されている。
【0037】
端子搭載台71aの内部には、図5に示すように、端子搭載台71aに搭載された3つの圧接端子33bにそれぞれ電気的に接続される3つの接続端子73と、この接続端子73からIDを出力させる識別情報設定手段としてのID設定装置74と、が収容されている。上記接続端子73は、端子搭載台71aから圧接端子33bに向かって突出する接続ピン73a(図3〜図5)と、接続ピン73aを圧接端子33bに向かって付勢する図示しないバネと、から構成されている。上記接続ピン73aは、このバネによって、圧接ブレード72に接離する方向に移動自在に支持される。上記端子搭載台71aには、接続ピン73a用の孔が設けられていて、その孔から接続ピン73aの先端が端子搭載台71a外部に突出している。
【0038】
上記ID設定装置74は、各圧接装置7毎に異なるIDを3つの接続端子73から出力する。例えば、ノード0の中継コネクタ33の圧接を行う圧接装置7に設けられたID設定装置74は、3つの接続端子73を全てLレベルにして000のIDを出力する。また、ノード1の中継コネクタ33の圧接を行う圧接装置7に設けられたID設定装置74は、3つの接続端子73の一番右をHレベル、残りをLレベルにして001のIDを出力する。
【0039】
上記ブレード保持部71bは、圧接ブレード72を端子搭載台71aに接離自在に保持する。圧接ブレード72には、3つの圧接端子33bの並び方向(即ち長手方向x)に沿って互いに間隔を空けて設けられた3つのブレード部72a(図4)が突設されている。この3つのブレード部72aは、端子搭載台71aに近づけると、圧接端子33bに設けられた2対の圧接刃対間に挿入され、これにより第2ワイヤハーネス32を構成する電源線L1、グランド線L2、信号線L3をそれぞれ圧接端子33bの圧接刃に圧接する。
【0040】
次に、上述した圧接システム4を用いたワイヤハーネス構造体3の製造手順について以下説明する。まず、中継コネクタ33に第1ワイヤハーネス31の端末に設けたコネクタ31aを接続しておく。そして、互いに接続された中継コネクタ33及びコネクタ31aを固定アーム対6により固定する。すると、図6(A)に示すように、中継コネクタ33の圧接端子33bが圧接装置7の端子搭載台71aに搭載され、圧接端子33bと接続ピン73aとが接続される。また、第2ワイヤハーネス32を構成する電源線L1、グランド線L2、信号線L3を圧接刃の上に配置する。
【0041】
次に、図6(B)に示すように、圧接ブレード72を端子搭載台71aに近づける。これにより、圧接ブレード72のブレード部72aが電源線L1、グランド線L2、信号線L3を押して、これら電源線L1、グランド線L2、信号線L3が圧接端子33bに圧接される。この状態で、電源線L1、グランド線L2間に電源電圧VBを印加する。電源電圧VBの印加により各中継コネクタ33に内蔵されたCPUが動作を開始する。
【0042】
中継コネクタ33内のCPUは、例えば図示しない不揮発性のメモリに格納されたID設定済みフラグがオンされていなければ、このとき圧接端子33bに入力されたIDを読み取ってこのIDを自己のIDとして設定するID設定動作を行い、その後ID設定済みフラグをオンする。一方、ID設定済みフラグがオフしていれば、ID設定動作を行うことなく通常の通信動作を行うようにプログラムが設けられている。
【0043】
上述したように圧接システム4により圧接を行っているときは、ID設定済みフラグがオフの状態であるので、このとき中継コネクタ33内のCPUは、ID設定動作を行う。その後、図6(C)に示すように、圧接ブレード72を端子搭載台71aから離して、アウタハウジング33aを固定アーム対6から外して、ワイヤハーネス構造体3を完成させる。
【0044】
上述した圧接装置7によれば、中継コネクタ33に設けた圧接端子33bを搭載する端子搭載台71aに接続端子73を設け、この接続端子73からIDを出力させることにより、電源線L1、グランド線L2、信号線L3に中継コネクタ33の圧接端子33bを圧接するときにIDを設定することができる。このため、圧接前においては複数の中継コネクタ33は互いに共通のものを使用することができ、中継コネクタ33をID毎に製品管理する必要をなくすことができる。
【0045】
また、上述した圧接装置7によれば、接続端子73が、端子接続台71aから圧接端子33bに向かって突出する接続ピン73aと、接続ピン73aを圧接端子33bに向かって付勢する図示しないバネと、から構成されているので、端子搭載台71aに搭載された圧接端子33bと接続端子73とを確実に電気的に接続することができる。
【0046】
また、上述した圧接システム4によれば、中継コネクタ33毎に圧接装置7を設けることにより、IDの誤設定を防ぐことができる。
【0047】
なお、上述した圧接システム4によれば、中継コネクタ33毎に圧接装置7を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、1つの圧接装置7を用いて順次、中継コネクタ33を圧接するようにしてもよい。この場合、圧接装置7の接続端子73から出力されるIDは中継コネクタ33を圧接する毎に変わるようになる。
【0048】
また、上述した実施形態によれば、中継コネクタ33のアウタハウジング33a内には図示しない樹脂封止体が収容されていて、この樹脂封止体内でICチップと圧接端子33bやタブ状端子とをワイヤボンディングして接続していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、中継コネクタ33のアウタハウジング33a内に基板を収容し、この基板上でICチップと圧接端子33bやタブ状端子とを接続するようにしてもよい。
【0049】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
7 圧接装置
33 中継コネクタ(通信装置)
33b 圧接端子
71a 端子搭載台
72 圧接ブレード(圧接部材)
73 接続端子
73a 接続ピン
74 ID設定装置(識別情報設定手段)
L1 電源線(電線)
L2 グランド線(電線)
L3 信号線(電線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、この電線を介して通信を行う複数の通信装置に設けられた圧接端子と、を圧接する圧接装置であって、前記圧接端子が搭載される端子搭載台と、前記端子搭載台に接離自在に設けられた圧接部材と、を備え、前記端子搭載台と前記圧接部材との間に前記電線を位置付けて前記圧接部材を前記端子搭載台に近づけることにより前記電線を前記圧接端子に圧接する圧接装置において、
前記端子搭載台に設けられ、当該端子搭載台に搭載された前記圧接端子に電気的に接続される接続端子と、
前記接続端子から識別情報を出力させる識別情報設定手段と、
を備えたことを特徴とする圧接装置。
【請求項2】
前記接続端子が、前記端子搭載台から前記圧接端子に向かって突出する接続ピンと、前記接続ピンを前記圧接端子に向かって付勢するバネと、から構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の圧接装置。
【請求項3】
電線と、この電線を介して通信を行う複数の通信装置に設けられた圧接端子と、を圧接する圧接システムであって、
前記複数の通信装置毎に設けられた複数の請求項1に記載の圧接装置を備え、
前記複数の圧接装置が、互いに異なる識別情報をそれぞれの前記接続端子から出力する
ことを特徴とする圧接システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−227089(P2012−227089A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95943(P2011−95943)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】