説明

圧着シート及びその製造方法

【課題】 剥離可能な接着剤を用いた紙片を利用して、個人情報などを隠蔽することができ、その隠蔽した紙片を圧着シートから剥がす際に、紙片が材破することなく、またその紙片材破を防止する印刷もすることなく、さらに圧着シートに穴を加工するなどの際、製造上の不具合が生じ無い圧着シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 感圧接着部を有する基材が、折り部2または切り離し部で連接され、該基材が折り部2で折られて、重なり、または切り離し部で切り取られて、切り取られた基材同士が重なり、感圧接着部により接着する圧着シート1において、前記基材の所定の位置に貫通穴3を有し、該貫通穴3を通して、前記重なって接着した圧着シートで、予め形成されている表示部6が認識可能であり、また前記貫通穴の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤が劣化しているように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着シート及びその製造方法に関し、更に詳しくは、感圧接着部を有する基材が、折り部または切り離し部で連接され、該基材が折り部で折られて、重なり、または切り離し部で切り取られて、切り取られた基材同士が重なり、感圧接着部により接着する圧着シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
個人情報等が印刷された圧着可能なシートがある。このシート(圧着シート)は、シートを構成する基材の少なくとも一部に粘着剤が塗布されており、その粘着剤面にデザイン等の印刷や個人情報等が印刷されており、折り返して圧着することにより剥離可能に接着することができる。圧着シートをはがきとして使用する場合には、郵便法により、はがきの本体部分に「郵便はがき」等の文言が印刷されていることが必要であり、且つ、「郵便はがき」等の文言が、隠蔽後にも表出されていることが必要である。
【0003】
上記に対し、従来、本体シートと隠蔽ラベルを圧着する際に、隠蔽ラベルを本体シートよりも短くし(小さくし)、「郵便はがき」等の文言が表出されるようにしたり(特許文献1)、隠蔽ラベル部分の一部に、穴を開けておき、圧着した後に、その穴の部分から「郵便はがき」等の文言が表出されるようにしたりすることにより、対応している。またシートの基材には略均一に粘着剤が塗布されているため、圧着後にも略均一な接着力を有するため、上記のように加工された部分(穴が開けられた部分)は、隠蔽ラベルを剥がす際に、基材が材破する問題がある。したがって、従来、加工された部分に、本来では不必要な印刷を形成し、粘着剤面を覆うことにより、圧着後の接着力を弱くすることにより材破を防止していた。(例えば、特許文献2参照。特許文献2の目止め層が上記の接着力を弱くしている。)
【0004】
上記の基材の材破を防止するために、不必要な印刷を形成する必要がある。通常、圧着シートに地紋や、固定情報を印刷して形成する時に使用するインキ等により、上記の材破防止用印刷を形成するため、上記の地紋、固定情報の印刷がない場合には、材破防止用印刷を形成できない問題がある。また、上記の「郵便はがき」等の文言を表出させるための穴を、刃型で加工する場合、粘着剤が塗布されているため、穴の抜けが悪かったり、抜いたカスが、圧着シート上に付着したりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−6664号公報
【特許文献2】特開2007−55208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、剥離可能な接着剤を用いた紙片を利用して、個人情報などを隠蔽することができ、その隠蔽した紙片を圧着シートから剥がす際に、紙片が材破することなく、またその紙片材破を防止する印刷もすることなく、さらに圧着シートに穴を加工するなどの際、製造上の不具合が生じ無い圧着シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は感圧接着部を有する基材が、折り部または切り離し部で連接され、該基材が折り部で折られて、重なり、または切り離し部で切り取られて、切り取られた基材同士が重なり、感圧接着部により接着する圧着シートにおいて、前記基材の所定の位置に貫通穴を有し、該貫通穴を通して、前記重なって接着した圧着シートで、予め形成されている表示部が認識可能であり、また前記貫通穴の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤が劣化していることを特徴とする。
【0008】
これにより、上記圧着シートは、圧着シートの構成要素である紙片(感圧接着部を有する基材において、折り部または切り離し部を境にして分かれた部分)を利用して、容易に個人情報などを隠蔽することができ、また、貫通穴を通して、重なって接着した圧着シートの形態で、予め形成されている表示部が認識できる。またその隠蔽した紙片を圧着シートから剥がす際に、紙片が材破することがない。それは、隠蔽した紙片を剥がす際、貫通穴の周辺が破れやすいが、その周辺の基材に有する感圧接着部がレーザー照射の熱により、感圧接着剤の熱劣化が生じ、感圧接着剤同士の接着力を低下させ、剥がし易くているから、紙片の破れを防止している。
【0009】
また、本発明は、前記の表示部が、郵便はがきの表示であることを特徴とする。これにより、本発明の圧着シートを郵便はがきとして有効に利用することができる。また、本発明は、前記の基材の一部に、コーナーカット部を有し、さらに該コーナーカット部の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤が劣化していることを特徴とする。これにより、個人情報などを隠蔽する紙片を、圧着シートから剥がす際の剥がし始めやすくなり、剥がす作業性が向上する。
【0010】
また、本発明の圧着シートの製造方法は、基材上に、感圧接着部と、表示部を形成し、さらに折り部または切り離し部を形成し、その後に前記基材の所定の位置に、レーザー照射による貫通穴を形成し、該レーザー照射により、該貫通穴の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤を劣化させて、接着力を低下させ、その後に基材を折り部で折り重ねて、または切り離し部で基材を切り取り、切り取られた基材同士を重ねて、感圧接着剤により接着させ、前記の表示部が貫通穴を通して認識できることを特徴とする。
【0011】
このように、本発明では、表示部を露出させるための穴の周辺に、紙片材破を防止するための印刷を施すことがない。圧着シートの構成要素である紙片(感圧接着部を有する基材において、折り部または切り離し部を境にして分かれた部分)を、感圧接着剤により接着させて、情報を隠蔽し、その隠蔽した紙片を圧着シートから剥がす際、レーザー照射により発生した熱が伝導して、貫通穴の周辺の感圧接着剤が熱劣化して、感圧接着剤同士の接着力が低下し、剥がす際の紙片の材破を防止している。圧着シートに穴を加工する際、刃型で加工する方法ではなく、レーザー照射により、対象物と非接触により加工しているので、穴の抜けが悪かったり、接着剤が残存する影響による抜いたカスが、圧着シート上に付着したりする問題がない。
【0012】
また、レーザー照射により、穴の貫通の切削加工をしているので、すなわちレーザー照射を含むレーザー加工機のコントローラの電子制御により、加工を行なうので、加工する位置、加工の大きさが一定ではなく、自在に変化させた設定にすることができ、表示部、穴の位置の設計上の変更にも自在に対応でき、実用性が非常に高いものである。
【0013】
また、本発明の圧着シートの製造方法は、前記のレーザー照射により、基材の一部にコーナーカット部を形成し、該レーザー照射により、該コーナーカット部の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤を劣化させて、接着力を低下させることを特徴とする。これにより、刃型で加工する方法ではなく、レーザー照射により、対象物と非接触により加工しているので、穴の抜けが悪かったり、抜いたカスが、接着剤が残存する影響による、圧着シート上に付着したりする問題がない。また、コーナーカットの大きさ、形状をレーザー照射を含むレーザー加工機のコントローラの電子制御により、簡単に変化させることができ、コーナーカットの設計上の変更にも自在に対応できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の圧着シートは、上記構成をとることにより、剥離可能な接着剤を用いた紙片(感圧接着部を有する基材における折り部または切り離し部を境にして分かれた部分)を利用して、個人情報などを隠蔽することができ、その隠蔽した紙片を圧着シートから剥がす際に、紙片が材破することを防止できた。また本発明の圧着シートの製造方法によれば、上記の紙片の材破を防止する印刷をすることがないので、製造効率が良い。さらに圧着シートに穴を加工するなどの際、刃型で加工することはしないので、つまり、対象物と非接触により加工するので、穴の抜けが悪かったり、抜いたカスが、接着剤が残存する影響による、圧着シート上に付着したりする製造上の不具合を防止した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の圧着シートである一つの実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示した圧着シートの貫通穴を含む概略の部分断面図である。
【図3】本発明の圧着シートである他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の圧着シートの製造方法で適用する貫通穴形成などの際に使用されるレーザー加工装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について、詳述する。以下の実施の形態で示される圧着シート及びその製造方法は、本発明の実施例でもある。
【0017】
図1に、本発明の圧着シート1である一つの実施形態を示す。図1(1)は、感圧接着部を有する基材が、折り部2で連接された圧着シート1の折られる前の状態を示す圧着シートの概略の平面図であり、圧着シートの両端には、後処理で使用するプリンター等の搬送でピン送りとして利用するためのマージナルパンチ7の加工が施されている。折り部2は圧着シートの中央部にあり、感圧接着部を有する基材において、折り部2を境にして、紙片10と紙片11が隣接した形態である。
【0018】
図1(1)で、圧着シート1の感圧接着部の設けられた面に、「郵便はがき」の表示部6がある。この表示部6は、通常は基材上に感圧接着部が設けられた後で、印刷により形成されるものである。この図示した圧着シート1を折り部2で、矢印で示すように、紙片10と紙片11の双方の感圧接着部同士が接するように、折られて、重なって、接着して、図1(2)に示すような形態になる。その重なった形態で、圧着シートにある表示部6が、貫通穴3を通して、認識できるものである。したがって、貫通穴3と表示部6は、折り部2に対して、対照の位置関係になるように、調整している。紙片10と紙片11の双方の感圧接着部同士が接するように、折られて、重なった状態で、郵便はがきとして利用する際には、マージナルパンチ7を含む端を切断(シートカット)して破棄するものである。
【0019】
図1では、折り部が圧着シートの中央部に位置するものを示したが、これに限らず、Z折りするような3つ折りタイプのように、折り部が中央部でない場合でも、また2つ折りでも折り部が中央部でなく、一方の端に近く存在してもよく、いずれにしても、貫通穴と表示部が、折り部に対して、対照の位置関係になるように、調整される。また、図1では、「郵便はがき」の文字の1つずつに対応して、貫通穴が1つずつ存在するものを示したが、これに限らず、例えば「郵便」の2文字、「はがき」の3文字、あるいは「郵便はがき」の5文字全て等を、1つの貫通穴を通して、見えるようにすることができる。それには、図1で示したような貫通穴が、円形の形状に限らず、楕円形、四角形など、紙片同士が重なった状態で、対応する表示部が貫通穴から露出して、認識できるものであれば、貫通穴の形状は任意に決定できる。
【0020】
図2は、図1(1)に示した圧着シートのX−Xで切断した概略の断面図であり、感圧接着部5を有する基材4において、所定の位置に貫通穴3を有し、その貫通穴の周辺8の基材4に有する感圧接着部5の感圧接着剤が劣化している。図では劣化した領域を分かり易く、感圧接着部の領域を示す斜線部と明確に区分して、破線の斜線で示したが、レーザー照射により発生した熱が伝導して、貫通穴の周辺の感圧接着剤が熱劣化した領域であり、劣化していない領域との境は、直線的(平面的)なものではないと思われる。
【0021】
図2で示した貫通穴の周辺8における感圧接着剤の熱劣化領域は、レーザー照射条件で、例えばレーザービーム径、パワーを変化させることにより、大きさを変化させることができる。その大きさの違いはあっても、貫通穴周辺の感圧接着剤が熱劣化しているので、感圧接着剤同士の接着力が低下し、剥がし易くなり、貫通穴の周辺での紙片の破れを防止している。
【0022】
また、図3は本発明の圧着シートである他の実施形態を示す断面図であり、図3(1)は、感圧接着部を有する基材が、折り部2で連接された圧着シート1の折られる前の状態を示す圧着シートの概略の平面図であり、圧着シートの両端には、後処理で使用するプリンター等の搬送でピン送りとして利用するためのマージナルパンチ7の加工が施されている。折り部2は圧着シートの中央部にあり、感圧接着部を有する基材において、折り部2を境にして分かれた部分、つまり紙片10と紙片11が隣接した形態である。
【0023】
図3(1)で、圧着シート1の感圧接着部の設けられた面に、「郵便はがき」の表示部6がある。この図示した圧着シート1を折り部2で、矢印で示すように、紙片10と紙片11の双方の感圧接着部同士が接するように、折られて、重なって、接着して、図3(2)に示すような形態になる。その重なった形態で、圧着シートにある表示部6が、貫通穴3を通して、認識できるものである。したがって、貫通穴3と表示部6は、折り部2に対して、対照の位置関係になるように、調整している。
【0024】
図3では、紙片11の隅に、コーナーカット部9を有し、紙片10と紙片11の双方の感圧接着部同士が接するように、折られて、重なった状態で、さらに郵便はがきとして利用する際に、マージナルパンチ7を含む端が切断(シートカット)され、破棄されるものである。その切断後の郵便はがきの形態で、配達されて受け取った人が、感圧接着部により、接着した郵便はがきの紙片10、11同士を剥がしやすくするために、最初に剥がす位置に、上記コーナーカット部9を有している。すなわち、コーナーカット部では、紙片同士が接着していなく、一方の紙片しか残存していないので、両者の紙片を剥がす手間がかからず、簡単に剥がし始めることができるからである。さらに、コーナーカット部の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤が劣化しているので、感圧接着剤同士の接着力が低下し、より剥がし易くなっている。
【0025】
上記で説明した図1、3では、いずれも感圧接着部を有する基材が、折り部2で連接された圧着シートのものであるが、これに限らず、感圧接着部を有する基材が、切り離し部で連接され、その切り離し部で切り取られて、切り取られた基材同士で感圧接着部同士が接するように、重なり、感圧接着部により接着する圧着シートであってもよい。その重ねて接着させる際に、切り取られた紙片同士は、マージナルパンチ同士の位置が合うようにすれば、容易に位置合わせができる。
【0026】
以下に、本発明の圧着シートを構成する要素について、詳しく説明する。
(基材)
圧着シートの基材4として、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等の紙類、または基材内部に微細空隙(ミクロボイド)を有するフィルム(いわゆる合成紙)を使用することができる。
【0027】
但し、圧着シートに所定の印刷を施し、またレーザー照射による貫通穴の形成加工できる所定の厚さを確保する必要がある。例えば、厚さが20〜300μmのものが好ましい。上記の基材の中でも、紙類が特に好ましい。それは、折り部で折って重ねて、感圧接着部を接着させる際の折適性、接着適性が良好であるからである。
【0028】
(感圧接着部)
感圧接着部5は、その使用する感圧接着部が基材と接触しても接着せずに、感圧接着部同士が加圧接触してはじめて接着し、しかも再剥離ができるように調整されたものであるが、本発明の圧着シートでは、レーザー照射の熱により、感圧接着部を構成する感圧接着剤は、熱劣化するものである。そして、その熱劣化により、感圧接着剤同士の接着力が低下するものである。
【0029】
上記の感圧接着剤としては、以下に説明する接着主剤と、充填剤を含有させたものが使用できる。その接着主剤としては、天然ゴムを無硫黄加硫し、メタアクリル酸メチルと混合した天然ゴムラテックス、天然ゴムにメタアクリル酸メチルやスチレンモノマー等をグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスが挙げられる。この天然ゴムラテックスは、レーザー照射により発生した熱の影響で、劣化する。この劣化とは、レーザー照射前と照射後で、感圧接着剤の性質や状態が変化して、感圧接着剤同士の接着力が低下することを意味している。
【0030】
上記の感圧接着剤の熱による劣化は、レーザー照射により発生する熱によって、天然ゴムの架橋密度が変化するため、あるいは天然ゴム中に浸透した酸素が反応して酸化が起こるため、接着剤同士の接着強度が低下するものと考えられる。
感圧接着剤に含有する充填剤としては、例えば、クレー、一次または二次凝集体を形成しているカルサイト系沈降性炭酸カルシウム、二次凝集体を形成しているアラゴナイト系沈降性炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、スチレンビーズ、シリカ、合成微粒子シリカ、アミノ表面改質シリカ、ワックス表面処理シリカ、球状シリカ、通常のカルシウムや、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムもしくはチタン等の金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、珪酸塩、またはこれらの混合物等が挙げられる。好適には、クレーと炭酸カルシウムである。
【0031】
感圧接着剤には、上記の接着主剤、充填剤、その他、必要に応じて分散剤、印刷適性向上剤等の添加剤なども目的に応じて併用することができる。
基材への感圧接着剤の塗工は、従来既知の塗工方法により塗工することができる。例えば、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによって塗工されるが、塗工量は固形分で3〜15g/m2の範囲で調整されるのが望ましい。塗工量が3g/m2の未満であると、所望の接着力が得られず意図しない剥離が生じやすくなり、15g/m2を超えると、接着力が強くなりすぎて、剥離することができなくなったり、塗工時に塗工ロールに、接着剤の粕が付着したりして、操業上および品質上のトラブルが生じやすくなる。
【0032】
図1、3を参照し、圧着シート1の折り部2で、折り、紙片10と紙片11の表面の感圧接着部同士が重ね合わされて圧着されて接着し、圧着シートに記録された個人情報などが隠蔽できる。また図示してはいないが、基材部に記載あるいは記入された個人情報が、郵便配達中などの取扱い中に、それらの個人情報が透けて見えないように、基材の感圧接着部の設けられた面と反対面や、基材と感圧接着部との間に、地紋印刷が施されることが好ましい。
【0033】
以下に、圧着シートの製造方法について、説明する。
圧着シートの基材に対し、感圧接着部5と、表示部6を形成する。その感圧接着部5と表示部6との形成する順序は、特に限定するものではない。尚、基材の一方の全面に、感圧接着部が塗工されたものを、入手する場合は、表示部の形成は後で行なうことになる。この表示部の形成は、グラビア印刷やオフセット印刷等の印刷で形成する、またはインクジェット記録、電子写真記録などのプリンターで、圧着シートに個人情報など可変データを記録する際に、「郵便はがき」や「連絡票」などの表示を行なうための記録も兼ねて行なうことも可能である。
【0034】
次に、圧着シートの所定の箇所に、折り部または切り離し部を、ミシン加工により、形成する。その際に、連続シートの基材を用いて、長尺の形態で連続的に加工することが大量生産上、好ましく、その連続シートの搬送方向で、両端にマージナルパンチ7を、一対のロール表面に、ピンとダイスを取り付けて、ロール同士が基材を間に挟んで、回転することで、マージナルパンチを打ち抜いて加工することが好ましい。またコーナーカット部9は、上記マージナルパンチ加工の場合と同様に、打ち抜き加工により形成できる。但し、ピンとダイスの噛み合う形状を、コーナーカットの形状(三角形)に変更することが必要である。
【0035】
次に、前記基材の所定の位置に、レーザー照射により、基材(感圧接着部を含め)を切削して、貫通穴を形成する。貫通穴の大きさ、数及び貫通穴同士の間隔は、既に形成しておいた表示部の文字などの大きさ、文字数、文字同士の間隔に合わせて、基材を折り部で折り重ねて、または切り離し部で基材を切り取り、切り取られた基材同士を重ねて、その表示部が貫通穴を通して認識できるようにする。つまり、貫通穴3と表示部6は、折り部2(または切り離し部)に対して、対照の位置関係になるように、設定する。
【0036】
上記の貫通穴の形成する加工のレーザー照射の際に、そのレーザー照射により発生した熱が伝導して、貫通穴の周辺の感圧接着剤を熱劣化させ、感圧接着剤同士の接着力を低下させている。また、コーナーカット部を形成する加工もレーザー照射により行なうことが好ましい。そして、レーザー照射により、貫通穴の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤、またコーナーカット部の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤を劣化させて、接着力を低下させる。その際、レーザー照射条件のレーザービーム径、パワーなどを変化させることにより、上記の感圧接着剤の劣化する領域の大きさを変化させることができる。
【0037】
上記の基材上に、感圧接着部と、表示部を形成し、さらに折り部または切り離し部を形成し、その後に前記基材の所定の位置に、レーザー照射による貫通穴を形成し、また該レーザー照射により、該貫通穴の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤を劣化させて、接着力を低下させ、その後に基材を折り部で折り重ねて、または切り離し部で基材を切り取り、切り取られた基材同士を重ねて、感圧接着剤同士により、圧着し接着させ、前記の表示部が貫通穴を通して認識できるようにした。
【0038】
(レーザー照射による切削加工)
レーザー照射手段としては、レーザー光として、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー、ルビーレーザーなどを用い、特にYAGレーザーは、波長が短く、微小なスポットに集光できるため、より微細な加工が可能であり、好ましく用いられる。 レーザー照射手段により、任意の形状、大きさで、対象物を切削して、貫通穴の形成、コーナーカット部の形成することができる。
【0039】
本発明で適用するレーザー照射手段の例を、説明すると、まず、レンズによりレーザー光を集光して、印刷物に基材の面へ照射する。その際に、レーザー光の照射条件(ビーム径、パワー、走査速度等)を調整することにより、貫通穴、コーナーカットの加工する大きさを制御でき、また貫通穴の周辺の感圧接着剤、コーナーカット部の周辺の感圧接着剤の熱劣化する領域の大きさも調整することができる。このように、本発明ではレーザー照射を行なうことで、簡単に、精度が高く、再現性良く、圧着シートと非接触で、加工ができる。
【0040】
本発明のレーザー照射手段は、約0.9〜11μmの赤外線領域のレーザー光線を使用することが好ましく、レーザー光を照射された部分は、加熱されることになる。レーザー光を照射された部分は、局所的に加熱され、その部分の融点を越えた状態の液相時に、その部分を吹き飛ばすことにより切削される。
【0041】
このようなレーザー照射による切削加工は、以下に説明するレーザー加工装置により、行なうことができる。レーザー加工装置は、図4にその一例を示すように、レーザーヘッド21と加工光学系(レンズ)22と、レーザー電源23とから構成されるレーザー発振器20、被加工物である圧着シート30を搭載し、水平面内(XY平面内)に移動可能なXYテーブル24、レーザーヘッド21と加工光学系(レンズ)22を上下方向(Z軸方向)に移動させるZテーブル25、XYテーブル24の水平面内の移動動作とZテーブル25の上下方向の移動動作とレーザー発振器20の発振動作とを自動または手動で制御するメインコントローラ26を備える。このようなレーザー加工装置15のメインコントローラの制御により、図1、3に示すような、位置と大きさで、貫通穴3、コーナーカット9などを形成することができる。尚、圧着シートの端や、最終製品の圧着シートには存在しないが、圧着シートを製造する途中での製品の端などに、検知マークを形成しておき、その検知マークをレーザー照射による切削加工を開始する検知信号として利用することができる。
【0042】
(検知マーク)
本発明の圧着シートの製造方法におけるレーザー照射による貫通穴の加工、コーナーカット部の加工では、全て所定の箇所に加工する必要性があるために、圧着シートに予め検知マークを形成しておき、そのマークを検出して、レーザー照射する位置を調整することが好ましい。この検知マークは、表示部の形成時と同時、ないし直後に形成され、その後に、レーザー照射による切削加工を行なう場合の基準となるものである。
【0043】
検知マークの形状や色は、検知器によって検知可能であればよく、限定されるものではない。また、検知マークの位置は、圧着シートの利用する用途で、悪い影響が出ないように、設定できる。検知マークの形状においては、例えば、楕円、四角形、その他、丸形やバーコード等の形状でもよい。検知マークの色は、検知器で検知可能であればよく、例えば、光透過型検知器であれば、隠蔽性の高い銀色、黒色などがあげられる。また、光反射型検知器であれば、反射性の高い金属光沢の色調などがあげられる。検知マークの形成方法は、インクジェット記録、電子写真記録などのプリンターを使用した記録方法や、グラビア印刷やオフセット印刷方法などが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の圧着シートは、郵便はがきの用途を中心にして説明したが、そのはがき用途に限らず、アンケート用紙等を手渡し等で、配布して、その後に、記入した用紙が回収されて利用する用途などにも適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 圧着シート
2 折り部
3 貫通穴
4 基材
5 感圧接着部
6 表示部
7 マージナルパンチ
8 貫通穴の周辺
9 コーナーカット部
10、11 紙片
15 レーザー加工装置
20 レーザー発振器
21 レーザーヘッド
22 加工光学系
23 レーザー電源
24 XYテーブル
25 Zテーブル
26 メインコントローラ
30 圧着シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧接着部を有する基材が、折り部または切り離し部で連接され、該基材が折り部で折られて、重なり、または切り離し部で切り取られて、切り取られた基材同士が重なり、感圧接着部により接着する圧着シートにおいて、前記基材の所定の位置に貫通穴を有し、該貫通穴を通して、前記重なって接着した圧着シートで、予め形成されている表示部が認識可能であり、また前記貫通穴の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤が劣化していることを特徴とする圧着シート。
【請求項2】
前記の表示部が、郵便はがきの表示であることを特徴とする請求項1に記載する圧着シート。
【請求項3】
前記の基材の一部に、コーナーカット部を有し、さらに該コーナーカット部の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤が劣化していることを特徴とする請求項1または2に記載する圧着シート。
【請求項4】
基材上に、感圧接着部と、表示部を形成し、さらに折り部または切り離し部を形成し、その後に前記基材の所定の位置に、レーザー照射による貫通穴を形成し、該レーザー照射により、該貫通穴の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤を劣化させて、接着力を低下させ、その後に基材を折り部で折り重ねて、または切り離し部で基材を切り取り、切り取られた基材同士を重ねて、感圧接着剤により接着させ、前記の表示部が貫通穴を通して認識できることを特徴とする圧着シートの製造方法。
【請求項5】
前記のレーザー照射により、基材の一部にコーナーカット部を形成し、該レーザー照射により、該コーナーカット部の周辺の基材に有する感圧接着部の感圧接着剤を劣化させて、接着力を低下させることを特徴とする請求項4に記載する圧着シートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6289(P2013−6289A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138871(P2011−138871)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】