圧電発電装置
【課題】 本発明は、自然の力または人為的な力によって発生する、微弱な振動エネルギーから比較的大きな機械的エネルギーまで、電気エネルギーに変換することができ、電気的エネルギーへの変換の再現性の優れた圧電発電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 圧電板と補強板とを有する略矩形状又は略扇形状圧電素子であって、前記補強板の長手方向又は半径方向に沿って、その厚み方向に分極されて配置され、貼着された圧電板を含む圧電素子と、前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材と、保持部材に当接する弾性体とを有し、前記圧電素子の長手方向又は半径方向の他の一端は別の保持部材で固定され、保持部材または弾性体に加えられる外力により、弾性体が変位する際、外力が取り除かれて、前記弾性体が元の形状に戻る際に、圧電素子が変位することにより電気エネルギーが得られることを特徴とする圧電発電装置、を提供する。
【解決手段】 圧電板と補強板とを有する略矩形状又は略扇形状圧電素子であって、前記補強板の長手方向又は半径方向に沿って、その厚み方向に分極されて配置され、貼着された圧電板を含む圧電素子と、前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材と、保持部材に当接する弾性体とを有し、前記圧電素子の長手方向又は半径方向の他の一端は別の保持部材で固定され、保持部材または弾性体に加えられる外力により、弾性体が変位する際、外力が取り除かれて、前記弾性体が元の形状に戻る際に、圧電素子が変位することにより電気エネルギーが得られることを特徴とする圧電発電装置、を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動等の機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する圧電発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素等による地球温暖化を抑制するために、化石燃料を用いず、風力、水力、等の自然力を利用した圧電発電装置が注目されている。例えば、実用化されている風力発電装置は、プロペラを風力で回転させてモータを回し、電磁誘導で発電する。しかし、これらは、装置が大型であってコストが高い、設置場所が限定される、所定の広さと設置間隔を必要とする等の問題があった。
【0003】
そこで、圧電素子による発電が注目される。この技術に関し、特許文献1には、外部からの水平の保持力によって、凸に屈曲した圧電素子と、前記圧電素子を屈曲自在に保持する保持部材と、弾性体部と、を有する発電素子で、前記圧電素子の凸状部分に外力を印加することにより弾性体が前記圧電素子から押圧されて縮み、凹に屈曲した圧電素子へと屈曲する際、および、前記圧電素子に印加されている外力が取り除かれて、前記弾性体が元の形状に戻るとともに該凹に屈曲した圧電素子が、凸に屈曲した圧電素子へと復元する際に、屈曲して発電することを特徴とする発電装置、が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特許3768520号公報
【0005】
この発電装置は、ある閾値を持つ機械的エネルギーに対して、瞬間的に大きな起電力を得られる利点があるが、水平の保持力に抗して変位するため、外力による変位の伝播が生起し、一定の外力に対して、変位の再現性が得にくい、電気的エネルギーへの変換の再現性の得られないこともあるという不利な点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、自然の力または人為的な力によって発生する微弱な振動エネルギーから比較的大きな機械的エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することができ、電気的エネルギーへの変換の再現性の優れた圧電発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
圧電板と補強板とを有する略矩形状又は略扇形状圧電素子であって、前記補強板の長手方向又は半径方向に沿って、その厚み方向に分極されて配置され、貼着された圧電板を含む圧電素子と、
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材と、
保持部材に当接する弾性体と
を有し、
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の他の一端は別の保持部材で固定され、
保持部材または弾性体に加えられる外力により、弾性体が変位する際、外力が取り除かれて、前記弾性体が元の形状に戻る際に、圧電素子が変位することにより電気エネルギーが得られることを特徴とする圧電発電装置(請求項1)、を提供する。更に、前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材が補強板を受け入れるための溝部分を有することを特徴とする請求項1記載の圧電発電装置(請求項2)、を提供する。
【0008】
また、前期保持部材を円の中心に配置し、複数の略同一形状の圧電板が円の中心から放射状に配置されたことを特徴とする複数の圧電素子からなる請求項1乃至2記載の圧電発電装置(請求項3)、前記複数の圧電素子から起電力を別個に取り出して、各圧電素子の位置情報と起電力の測定値から外力の方向と大きさを検知することを特徴とする請求項3記載の圧電発電装置(請求項4)、を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る圧電発電装置によれば、圧電素子の保持部に外力が負荷された際、圧電素子全体が移動する際、外力が取り除かれて、弾性体の復帰作用で逆方向に戻る際、起電力が発生する。保持部は、圧電素子の一端を可動に支持し、圧電素子に長さ方向への応力を小さくするので、圧電素子自体の局部に応力が集中することが少なく、自然の力または人為的な力によって発生する微弱な振動エネルギーから比較的大きな振動エネルギーまで、広範囲の機械的エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することができる。しかも、部品点数が比較的少なく、組み立てが容易である。
【0010】
また、圧電素子の一端が、外力が直接作用しない支持状態であり、突発的な大きな変位に対しても圧電部の一部に大きな負荷のかかりにくく、発電部が破損することがない。
【0011】
また、本発明のシステムでは、構造物に生ずる振動によって力が発生する部分に発電装置を配置すると、この力を有効に利用でき、稼働率、発電効率がいっそう高まる。化石燃料、原子力等の資源に頼らない、未利用のエネルギーの有効活用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1、図2、図3に圧電発電装置100の概略構造と圧電素子10、10´の変位状態を示す断面図を示す。図4に圧電発電装置100の平面断面図(図2に対応する。)を示す。圧電発電装置100は、矩形状の圧電板11と矩形状の補強板12とを貼り合わせてなる圧電素子10、10´と、保持部20と、弾性体部30と、から構成される。矩形状の圧電素子10、10´の一端を保持部材20で可動に支持する。矩形状の圧電素子10、10´の他の一端は、側部フレーム42に固着されている。圧電素子10と圧電素子10´は保持部材21の略中心を略円の中心としてその半径方向に位置し、前記円の直径位置となっている。保持部材21には、圧電素子の変位に伴い、補強板12、12´が挿入され、これを受け入れる溝が形成され、溝に沿って補強板がスライドし、圧電素子に長さ方向の過度のストレスをかけず屈曲させる。保持部材21の平面形状は、任意でよいが、正方形、矩形、多角形等が好ましい。圧電部分が対称性を有し、図4における紙面に垂直方向の外力に対しては、変位も対称性を保つことになる。保持部材21の中心部に細長円柱状の延長部22、22´を補強板12の垂直方向に延ばしている。圧電素子、保持部20は、筐体又はフレーム41、41´、42に納めている。延長部を筐体又はフレーム41、41´に穿孔した孔部から突出させ、圧電素子が筐体又はフレームに対して位置を可動とすることができる。保持部材の延長部22には、外力が印加されやすいようにボタン部23を固着させている。保持部材21とフレーム41´の間には、螺旋状の金属ばね(以下、コイルバネ)31を延長部22´を囲みこむように装着し、コイルバネ31は、ボタン部からの外力による保持部材の移動に抗し、保持部と圧電素子をもとの位置に復元させる。
【0013】
保持部21には、弾性体を当接させ、弾性体部を筐体又はフレームで保持または固着させる。保持部材21に所定圧力が印加されているときは、この圧力に抗するように予圧機構と復元用の弾性体部30を併用することもできる。又、予圧と印加される負荷を弾性体部30の復元力とバランスさせても良い。
【0014】
圧電板11は、矩形状の圧電セラミックスの表裏面に電極膜(図示せず)が形成された構造を有し、圧電板の圧電セラミックスは厚み方向に分極されている。圧電板11は樹脂接着剤を用いて、補強板12に接着されている。なお、圧電セラミックスの代わりに圧電ポリマーを用いてもよい。圧電板の形状はこれに限定されるものでなく、例えば、略扇形状、正方形の圧電セラミックス板でよく、圧電セラミックス板と金属板、プラスチック等の補強板(以下、補強板12)とを貼り合わせた構造を有するもの(例えば、電気編み機の運針駆動部、圧電スピーカの圧電音響素子に相当するものや、これらをユニモルフ素子、バイモルフ素子として構成するもの)を用いることができる。バイモルフ素子にあっては、分極方向が同一のパラレルタイプまたは、逆向きのシリーズタイプの両タイプを好適に用いることができる。また、圧電素子の材質は、特に問わないが、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム等のセラミックスを用いることができ、有機ポリマーの圧電材料、たとえば、ポリビリニデンジフルオライド、ポリフッ化ビニリデンを用いることもできる。
【0015】
補強板12は、金属または樹脂の少なくとも一方からなり、圧電板11を装着するため、これより大きく、例えば、長い矩形状等、を有している。補強板12として樹脂からなるものを用いる場合には、圧電板11からの電極リード(図示せず)の取り出しを容易とするために、圧電板11と貼り合わされる面に、金属箔が設けられているものを用いることが好ましい。
【0016】
保持部20は、延長部22、22´、ボタン部を含み、例えば、ボルト(図示せず)による結合により一体化される。図1に示すとおり、圧電素子部に過度の変位が生じないように、ストッパー23を取り付けることもできる。ストッパー23は、外力印加時に、ボタン部自体がフレーム上部41に触れても良く、復元時には、保持部材の延長部分にフレームに接するように拡張部23を設けてストッパーとしても良い。また、延長部22´の下に別個にストッパー部(図示せず)を設けることもできる。
【0017】
保持部材21及びその延長部22´は金属で一体成形して、圧電素子10を結合しても良く、延長部22、22´を金属性細長円柱部材として設け、圧電素子10の取り付け部及びストッパー部分23をプラスチックで別成形して、これと結合して、全体として、保持部20とすることができる。
【0018】
また、弾性体部30は、コイルバネ31と、これを保持するために結合部端に設けられた当接部材から構成され、フレーム41´の一部、保持部材の端面に固定して当接部材を省略することもできる。弾性体が保持部に加えられた外力に抗して反発力を与え圧電素子を屈曲させる。
【0019】
筐体又はフレームは、金属、プラスチック等、適度の剛性を有する材質のものが好適に用いられる。金属性の場合は、導体として配線の一部としても利用可能であるが、電気配線系統と接触が不利の場合は、絶縁被覆を考慮する。
【0020】
圧電発電装置100は、保持部20に負荷のないとき、所定位置に圧電素子が図1の通り、ストッパー23で停止する状態、或いは、コイルバネ31が無負荷で所定長さを保つ状態で設置される。外力の所定負荷状態にあるとき、コイルバネ31による予圧によって圧電素子10が図1の状態で停止するように、圧電素子10に一定の予圧を加えた状態となるように、配置することが好ましい。つまり、コイルバネ31は圧電素子10が外力方向と反対方向で凸となるようなニュートラル状態に保つように、設置される。
【0021】
図1に例示されたニュートラル状態の圧電発電装置100に対し、外力が、保持部材21の延長部22を通して、保持部20に作用し、更に、コイルバネ31に作用して、コイルバネ31が、押し下げられる。図2は、外力が増して、下向きに作用して、圧電素子の屈曲がとれた状態を図示する。更に外力が増すと、図3に示すとおり、外力方向で凹となるように屈曲する。このとき、ボタン部23がストッパーとして作用しても良い。外力がなくなるか上向きとなると、コイルバネ31が急激に反発して、可動保持部全体を外力と反対方向に押し上げる。そのまま無負荷状態が維持される間、圧電素子は、図1の状態に復することになる。引き続き、外力が周期的に印加されると、上記変化が繰り返され、圧電素子は、周期的な変位を繰り返す。このとき、圧電板11が長さ方向に所定周期で伸縮する。圧電板11が伸縮変位すると、圧電板の圧電セラミックスは厚み方向に分極されているので、起電力が発生する。図8に圧電発電装置100から電気エネルギーを回収するための回路構成を示す。
【0022】
例えば、保持部20に周期的な外力が加わると、圧電板11は、外力に対して、反対方向及び順方向に凸となるような周期的変位をすることとなる。圧電板の反対面に配置した圧電板は、互いに伸縮方向が逆となり、分極方向を補強板の厚み方向でパラレルとしておくと、振幅方向が全く逆の周期的変位をおこない、起電力の向きが逆となる。図12に、保持部20に外力、および弾性体からの力が加わったときの電力の発生状況の例を模式的に示す。図13は、起電力発生状況を示す。起電力の発生に小刻みな振幅が見られるのは、外力の印加に対して、圧電素子が滑らかに追随せずに、圧電素子の振動の減衰が生起するために生ずる。圧電素子が剛性を有するために外力の印加する加速度と調和しないことが主な原因である。従って、圧電素子の補強板、圧電板の材質、形状をコントロールすることにより、弾性を保ちながら、剛性を弱めて、前記、起電力の小刻みな振幅のない、滑らかな発生起電力波形を得ることができる。
【0023】
補強板の上下に配置する圧電板の分極方向をパラレルとするバイモルフ型の圧電素子にあっては、圧電板11の接着面側の電極膜と反対面の圧電板の接着面側の電極膜とを短絡させる構造でよい。このため、補強板12として金属箔・金属板を用いることが出来る。一方、両圧電板の分極方向が逆方向のときは、補強板12は、圧電板11の接着面側の電極膜と反対面の圧電板の接着面側の電極膜とを短絡させない構造とする必要がある。このため、補強板12として金属箔・金属板を用いる場合には、上下に配置する圧電板の一方を、この金属箔・金属板と短絡しないように、絶縁膜を介して金属箔・金属板に接着する等の工夫が必要となる。また、補強板12としてプリント配線基板のように樹脂基板に金属箔を取り付けてなるものを用いる場合には、上下に配置する圧電板が絶縁されるように、その金属箔を内周側部と外周側部とに分かれたパターンとしておけばよい。
【0024】
従って、この起電力を図8に例示するように、正負を考慮した結線で取り出すことが出来る。こうして得られる電気エネルギーは交流電力であるために、通常は図9に示されるように、整流回路を通して直流電力に変換し、コンデンサや二次電池等の蓄電装置に充電するか、または直接に「負荷」に供給して負荷を駆動することができる。又は、圧電素子毎の整流回路を介することにより、若しくは、圧電素子群ごとの整流回路を入れることにより、直流電力を得ることができる。
【0025】
こうして、効率良く得られた電気エネルギーは、コンデンサや二次電池等の蓄電装置に充電するか、または直接に負荷に供給して負荷を駆動することができる。なお、複数の圧電素子は、変形が対称性をたもって行われるときは、図9に示すように、個々の圧電素子13に整流回路を設ける必要はなく、1組の整流回路で整流が可能であり、回路を単純に構成することもできる。
【0026】
圧電素子10の変位量は、補強板の材質や厚さ、圧電素子の形状や数を変えることによって調整することができるので、弱い力でも変位する圧電素子を用いた圧電発電装置を実現することもできれば、強い力で小さく変位する圧電素子を用いた圧電発電装置を実現することもでき、その場合でも、圧電素子を用いることで、十分に大きな電気エネルギーを得ることができる。さらに、圧電発電装置100を直並列に接続することによって、保持部20に印加される力の大きさに対応する電力を得ることもできる。
【0027】
圧電素子10の補強板12としては、一般的には樹脂基板や金属、金属板等の種々のバネ性を有する材料を用いることができるが、例えば、補強板として所定の強度を有する金属板が好適に用いられる。保持部材21には、大きな力が必要なときには、機械的強度に優れたエンジニアリングセラミックスやステンレス等の金属材料が好適に用いられる。
【0028】
圧電素子10が変形する際には保持部材の延長部分に一定の力が加わる。このために、このような力が加えられた際に保持部自体が変形を起こさないような機械的強度が、保持部全体に求められる。このような観点から、保持部材にはステンレス、アルミニウム合金等の各種金属材料が好適に用いられる。
【0029】
なお、保持部材に金属材料を用い、かつ、圧電素子10を構成する補強板12にも金属材料を用いた場合において、保持部材20として、機械的強度が大きく、かつ、絶縁性を有するセラミックス材料(例えば、アルミナ、ジルコニア、ムライト等)を用いることができる。
【0030】
さらに、保持部材は、3個以上の圧電素子を、保持部材の中心を略円の中心として、その半径方向に保持することができる。図5は、4個の圧電素子10を、十字形に装着した圧電発電装置200である。これ以上多くの圧電素子を保持部の中心を円の中心として放射状に装着することも好ましい。図6は、3個の扇形圧電素子を放射状に装着した例である。
【0031】
図5の圧電発電装置200及び図6の圧電発電装置300において、上部フレームを設けないか、これを設けても上部フレームの穿孔径を保持部21a、21bの直径以上とすることにより、ベクトルとして紙面に垂直な方向以外の成分をもつ外力にたいしても、非対称の屈曲が圧電素子に生起し、これに対応した起電力が各圧電素子に生起することになる。従って各圧電素子から起電力を別個に取り出して、各圧電素子の位置情報と各起電力の測定値から外力の紙面に垂直な方向以外の成分と起電力の大きさを検知することが可能となる。
【0032】
更にまた、圧電板の長さのおなじ複数の圧電素子を、保持部材で保持し、圧電板の厚み方向に積層することができる。即ち、複数の圧電素子を、スペーサを介して又はスペーサを介さずに、複数の圧電板が保持部材の延長方向に積層されるように装着することができる。図7は、外力の作用する保持部材21cにスペーサ60、60´を介して4個の圧電素子を装着した実施形態で、圧電素子の屈曲がとれた状態を示す。圧電板の厚さは、複数の圧電素子13を保持部材にスペーサを介して或いは、ひとつの保持部に一定間隔で配置し、各圧電素子が屈曲する際に、互いに衝突して、機械的エネルギーの損失が起きないように配置することが好ましい。
【0033】
圧電素子10が変形する際には保持部材の延長部分、スペーサ部に一定の力が加わる。このために、このような力が加えられた際にスペーサ部自体が変形を起こさないような機械的強度が、求められる。このような観点から、スペーサ部分にもステンレス、アルミニウム合金等の各種金属材料が好適に用いられる。
【0034】
延長方向に積層する保持部材21及びスペーサは、円形または、正八角形等の正多角形とすると、組み立てに好都合である。固定する圧電素子は、必要に応じて、その端部を保持部の構成物とのかみ合わせを良好とするために、圧電板、補強板の角取りをしても良い。外力を放射状に配された複数の圧電素子に伝達可能である。同一変位ならば、装着数に比例した起電力と電流を得ることができることとなる。各圧電素子の変形が対称とすれば、偏りがなく、一部に応力集中がおきないので、堅牢であり、高寿命化が計れる。
【0035】
また、圧電発電装置100では、圧電素子13として、補強板12の一方の面に圧電板11が取り付けられた、所謂、バイモルフ構造のものを示したが、補強板12の片面にそれぞれ圧電板11が取り付けられた、所謂、ユニモルフ構造のものを用いてもよい。さらに、圧電板は単板に限定されず、積層構造(積層コンデンサ型構造)を有しているものであってもよい。
【0036】
圧電発電装置100から取り出された電気エネルギーは、バッテリーやコンデンサ等の蓄電装置の充電に用いられる。
【0037】
別の圧電発電装置400の実施形態について例示して説明する。図10は、別の圧電発電装置400の正面図、図11は、別の圧電発電装置400の平面図である。圧電発電装置100と比べて、フレーム41、41´を穿孔して設けた保持部20のガイドに替えて、フレーム41´eに4本のガイド部材44を設け、保持部材21eに設けた穿孔と共に、ガイドするものである。即ち、保持部材21eは、外力を受けて弾性体の反発力に抗して移動し、外力がなくなり弾性体の反発力で変位、屈曲するとき、4本のガイド部材44に沿って移動する。このとき、4本のガイド部材44は、金属性で四フッ化エチレンポリマー被覆した部材が望ましく、保持部材21eも四フッ化エチレンポリマー等の摩擦係数の小さなものが望ましい。また。ガイド部材との接触部分には、ベアリングを用いて摩擦力を小さくすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る圧電発電装置は、コンパクトで大きな起電力及び大電流が得られ、メンテナンスの容易な発電装置となる。電力供給のない場所での標示機、警報機に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る圧電発電装置100のニュートラル状態の概略構造を示す正面断面図。
【図2】本発明に係る圧電発電装置100の加圧時の概略構造を示す正面断面図。
【図3】本発明に係る圧電発電装置100の加圧時の別の概略構造を示す正面断面図。
【図4】本発明の圧電発電装置100の平面図。
【図5】別の圧電発電装置200の圧電部分等の平面図。
【図6】更に別の圧電発電装置300の圧電部分等の平面図。
【図7】別の圧電部の構成を示す模式図。
【図8】回路図の一例。
【図9】別の回路図の例。
【図10】本発明に係る圧電発電装置400の概略構造を示す正面断面図。
【図11】本発明に係る圧電発電装置400の概略構造を示す平面図。
【図12】本発明に係る圧電発電装置100の電力の発生状況の模式図。
【図13】本発明に係る圧電発電装置100の起電力の発生状況の一例。
【符号の説明】
【0041】
100・200・300・400;圧電発電装置
10・10´・10a・10a´・10b・10b´・10c・10c ´;圧電素子
11・11´・11a・11a´・11b・11b´・11c・11c ´・11d・11d´;圧電板
12・12´・12a・12a´・12b・12b´・12c・12c ´・12d・12d´・12e・12e´;補強板
13・13´・13a・13a´・13b・13b´・13c・13c ´・13d・13d´;重石
20;保持部
21・21a・21b・21c・21d・21e;保持部材
22・22´・22a・22b・22c・22d・22e;保持部材の延長部
23・23´・23a・23b・23c・23d・23e;ストッパー
30;弾性体部
31;コイルバネ
41;上部フレーム
41´;下部フレーム
42;側部フレーム
43;足部フレーム
44;ガイド部材
60・60a;スペーサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動等の機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する圧電発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素等による地球温暖化を抑制するために、化石燃料を用いず、風力、水力、等の自然力を利用した圧電発電装置が注目されている。例えば、実用化されている風力発電装置は、プロペラを風力で回転させてモータを回し、電磁誘導で発電する。しかし、これらは、装置が大型であってコストが高い、設置場所が限定される、所定の広さと設置間隔を必要とする等の問題があった。
【0003】
そこで、圧電素子による発電が注目される。この技術に関し、特許文献1には、外部からの水平の保持力によって、凸に屈曲した圧電素子と、前記圧電素子を屈曲自在に保持する保持部材と、弾性体部と、を有する発電素子で、前記圧電素子の凸状部分に外力を印加することにより弾性体が前記圧電素子から押圧されて縮み、凹に屈曲した圧電素子へと屈曲する際、および、前記圧電素子に印加されている外力が取り除かれて、前記弾性体が元の形状に戻るとともに該凹に屈曲した圧電素子が、凸に屈曲した圧電素子へと復元する際に、屈曲して発電することを特徴とする発電装置、が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特許3768520号公報
【0005】
この発電装置は、ある閾値を持つ機械的エネルギーに対して、瞬間的に大きな起電力を得られる利点があるが、水平の保持力に抗して変位するため、外力による変位の伝播が生起し、一定の外力に対して、変位の再現性が得にくい、電気的エネルギーへの変換の再現性の得られないこともあるという不利な点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、自然の力または人為的な力によって発生する微弱な振動エネルギーから比較的大きな機械的エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することができ、電気的エネルギーへの変換の再現性の優れた圧電発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
圧電板と補強板とを有する略矩形状又は略扇形状圧電素子であって、前記補強板の長手方向又は半径方向に沿って、その厚み方向に分極されて配置され、貼着された圧電板を含む圧電素子と、
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材と、
保持部材に当接する弾性体と
を有し、
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の他の一端は別の保持部材で固定され、
保持部材または弾性体に加えられる外力により、弾性体が変位する際、外力が取り除かれて、前記弾性体が元の形状に戻る際に、圧電素子が変位することにより電気エネルギーが得られることを特徴とする圧電発電装置(請求項1)、を提供する。更に、前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材が補強板を受け入れるための溝部分を有することを特徴とする請求項1記載の圧電発電装置(請求項2)、を提供する。
【0008】
また、前期保持部材を円の中心に配置し、複数の略同一形状の圧電板が円の中心から放射状に配置されたことを特徴とする複数の圧電素子からなる請求項1乃至2記載の圧電発電装置(請求項3)、前記複数の圧電素子から起電力を別個に取り出して、各圧電素子の位置情報と起電力の測定値から外力の方向と大きさを検知することを特徴とする請求項3記載の圧電発電装置(請求項4)、を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る圧電発電装置によれば、圧電素子の保持部に外力が負荷された際、圧電素子全体が移動する際、外力が取り除かれて、弾性体の復帰作用で逆方向に戻る際、起電力が発生する。保持部は、圧電素子の一端を可動に支持し、圧電素子に長さ方向への応力を小さくするので、圧電素子自体の局部に応力が集中することが少なく、自然の力または人為的な力によって発生する微弱な振動エネルギーから比較的大きな振動エネルギーまで、広範囲の機械的エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することができる。しかも、部品点数が比較的少なく、組み立てが容易である。
【0010】
また、圧電素子の一端が、外力が直接作用しない支持状態であり、突発的な大きな変位に対しても圧電部の一部に大きな負荷のかかりにくく、発電部が破損することがない。
【0011】
また、本発明のシステムでは、構造物に生ずる振動によって力が発生する部分に発電装置を配置すると、この力を有効に利用でき、稼働率、発電効率がいっそう高まる。化石燃料、原子力等の資源に頼らない、未利用のエネルギーの有効活用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1、図2、図3に圧電発電装置100の概略構造と圧電素子10、10´の変位状態を示す断面図を示す。図4に圧電発電装置100の平面断面図(図2に対応する。)を示す。圧電発電装置100は、矩形状の圧電板11と矩形状の補強板12とを貼り合わせてなる圧電素子10、10´と、保持部20と、弾性体部30と、から構成される。矩形状の圧電素子10、10´の一端を保持部材20で可動に支持する。矩形状の圧電素子10、10´の他の一端は、側部フレーム42に固着されている。圧電素子10と圧電素子10´は保持部材21の略中心を略円の中心としてその半径方向に位置し、前記円の直径位置となっている。保持部材21には、圧電素子の変位に伴い、補強板12、12´が挿入され、これを受け入れる溝が形成され、溝に沿って補強板がスライドし、圧電素子に長さ方向の過度のストレスをかけず屈曲させる。保持部材21の平面形状は、任意でよいが、正方形、矩形、多角形等が好ましい。圧電部分が対称性を有し、図4における紙面に垂直方向の外力に対しては、変位も対称性を保つことになる。保持部材21の中心部に細長円柱状の延長部22、22´を補強板12の垂直方向に延ばしている。圧電素子、保持部20は、筐体又はフレーム41、41´、42に納めている。延長部を筐体又はフレーム41、41´に穿孔した孔部から突出させ、圧電素子が筐体又はフレームに対して位置を可動とすることができる。保持部材の延長部22には、外力が印加されやすいようにボタン部23を固着させている。保持部材21とフレーム41´の間には、螺旋状の金属ばね(以下、コイルバネ)31を延長部22´を囲みこむように装着し、コイルバネ31は、ボタン部からの外力による保持部材の移動に抗し、保持部と圧電素子をもとの位置に復元させる。
【0013】
保持部21には、弾性体を当接させ、弾性体部を筐体又はフレームで保持または固着させる。保持部材21に所定圧力が印加されているときは、この圧力に抗するように予圧機構と復元用の弾性体部30を併用することもできる。又、予圧と印加される負荷を弾性体部30の復元力とバランスさせても良い。
【0014】
圧電板11は、矩形状の圧電セラミックスの表裏面に電極膜(図示せず)が形成された構造を有し、圧電板の圧電セラミックスは厚み方向に分極されている。圧電板11は樹脂接着剤を用いて、補強板12に接着されている。なお、圧電セラミックスの代わりに圧電ポリマーを用いてもよい。圧電板の形状はこれに限定されるものでなく、例えば、略扇形状、正方形の圧電セラミックス板でよく、圧電セラミックス板と金属板、プラスチック等の補強板(以下、補強板12)とを貼り合わせた構造を有するもの(例えば、電気編み機の運針駆動部、圧電スピーカの圧電音響素子に相当するものや、これらをユニモルフ素子、バイモルフ素子として構成するもの)を用いることができる。バイモルフ素子にあっては、分極方向が同一のパラレルタイプまたは、逆向きのシリーズタイプの両タイプを好適に用いることができる。また、圧電素子の材質は、特に問わないが、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム等のセラミックスを用いることができ、有機ポリマーの圧電材料、たとえば、ポリビリニデンジフルオライド、ポリフッ化ビニリデンを用いることもできる。
【0015】
補強板12は、金属または樹脂の少なくとも一方からなり、圧電板11を装着するため、これより大きく、例えば、長い矩形状等、を有している。補強板12として樹脂からなるものを用いる場合には、圧電板11からの電極リード(図示せず)の取り出しを容易とするために、圧電板11と貼り合わされる面に、金属箔が設けられているものを用いることが好ましい。
【0016】
保持部20は、延長部22、22´、ボタン部を含み、例えば、ボルト(図示せず)による結合により一体化される。図1に示すとおり、圧電素子部に過度の変位が生じないように、ストッパー23を取り付けることもできる。ストッパー23は、外力印加時に、ボタン部自体がフレーム上部41に触れても良く、復元時には、保持部材の延長部分にフレームに接するように拡張部23を設けてストッパーとしても良い。また、延長部22´の下に別個にストッパー部(図示せず)を設けることもできる。
【0017】
保持部材21及びその延長部22´は金属で一体成形して、圧電素子10を結合しても良く、延長部22、22´を金属性細長円柱部材として設け、圧電素子10の取り付け部及びストッパー部分23をプラスチックで別成形して、これと結合して、全体として、保持部20とすることができる。
【0018】
また、弾性体部30は、コイルバネ31と、これを保持するために結合部端に設けられた当接部材から構成され、フレーム41´の一部、保持部材の端面に固定して当接部材を省略することもできる。弾性体が保持部に加えられた外力に抗して反発力を与え圧電素子を屈曲させる。
【0019】
筐体又はフレームは、金属、プラスチック等、適度の剛性を有する材質のものが好適に用いられる。金属性の場合は、導体として配線の一部としても利用可能であるが、電気配線系統と接触が不利の場合は、絶縁被覆を考慮する。
【0020】
圧電発電装置100は、保持部20に負荷のないとき、所定位置に圧電素子が図1の通り、ストッパー23で停止する状態、或いは、コイルバネ31が無負荷で所定長さを保つ状態で設置される。外力の所定負荷状態にあるとき、コイルバネ31による予圧によって圧電素子10が図1の状態で停止するように、圧電素子10に一定の予圧を加えた状態となるように、配置することが好ましい。つまり、コイルバネ31は圧電素子10が外力方向と反対方向で凸となるようなニュートラル状態に保つように、設置される。
【0021】
図1に例示されたニュートラル状態の圧電発電装置100に対し、外力が、保持部材21の延長部22を通して、保持部20に作用し、更に、コイルバネ31に作用して、コイルバネ31が、押し下げられる。図2は、外力が増して、下向きに作用して、圧電素子の屈曲がとれた状態を図示する。更に外力が増すと、図3に示すとおり、外力方向で凹となるように屈曲する。このとき、ボタン部23がストッパーとして作用しても良い。外力がなくなるか上向きとなると、コイルバネ31が急激に反発して、可動保持部全体を外力と反対方向に押し上げる。そのまま無負荷状態が維持される間、圧電素子は、図1の状態に復することになる。引き続き、外力が周期的に印加されると、上記変化が繰り返され、圧電素子は、周期的な変位を繰り返す。このとき、圧電板11が長さ方向に所定周期で伸縮する。圧電板11が伸縮変位すると、圧電板の圧電セラミックスは厚み方向に分極されているので、起電力が発生する。図8に圧電発電装置100から電気エネルギーを回収するための回路構成を示す。
【0022】
例えば、保持部20に周期的な外力が加わると、圧電板11は、外力に対して、反対方向及び順方向に凸となるような周期的変位をすることとなる。圧電板の反対面に配置した圧電板は、互いに伸縮方向が逆となり、分極方向を補強板の厚み方向でパラレルとしておくと、振幅方向が全く逆の周期的変位をおこない、起電力の向きが逆となる。図12に、保持部20に外力、および弾性体からの力が加わったときの電力の発生状況の例を模式的に示す。図13は、起電力発生状況を示す。起電力の発生に小刻みな振幅が見られるのは、外力の印加に対して、圧電素子が滑らかに追随せずに、圧電素子の振動の減衰が生起するために生ずる。圧電素子が剛性を有するために外力の印加する加速度と調和しないことが主な原因である。従って、圧電素子の補強板、圧電板の材質、形状をコントロールすることにより、弾性を保ちながら、剛性を弱めて、前記、起電力の小刻みな振幅のない、滑らかな発生起電力波形を得ることができる。
【0023】
補強板の上下に配置する圧電板の分極方向をパラレルとするバイモルフ型の圧電素子にあっては、圧電板11の接着面側の電極膜と反対面の圧電板の接着面側の電極膜とを短絡させる構造でよい。このため、補強板12として金属箔・金属板を用いることが出来る。一方、両圧電板の分極方向が逆方向のときは、補強板12は、圧電板11の接着面側の電極膜と反対面の圧電板の接着面側の電極膜とを短絡させない構造とする必要がある。このため、補強板12として金属箔・金属板を用いる場合には、上下に配置する圧電板の一方を、この金属箔・金属板と短絡しないように、絶縁膜を介して金属箔・金属板に接着する等の工夫が必要となる。また、補強板12としてプリント配線基板のように樹脂基板に金属箔を取り付けてなるものを用いる場合には、上下に配置する圧電板が絶縁されるように、その金属箔を内周側部と外周側部とに分かれたパターンとしておけばよい。
【0024】
従って、この起電力を図8に例示するように、正負を考慮した結線で取り出すことが出来る。こうして得られる電気エネルギーは交流電力であるために、通常は図9に示されるように、整流回路を通して直流電力に変換し、コンデンサや二次電池等の蓄電装置に充電するか、または直接に「負荷」に供給して負荷を駆動することができる。又は、圧電素子毎の整流回路を介することにより、若しくは、圧電素子群ごとの整流回路を入れることにより、直流電力を得ることができる。
【0025】
こうして、効率良く得られた電気エネルギーは、コンデンサや二次電池等の蓄電装置に充電するか、または直接に負荷に供給して負荷を駆動することができる。なお、複数の圧電素子は、変形が対称性をたもって行われるときは、図9に示すように、個々の圧電素子13に整流回路を設ける必要はなく、1組の整流回路で整流が可能であり、回路を単純に構成することもできる。
【0026】
圧電素子10の変位量は、補強板の材質や厚さ、圧電素子の形状や数を変えることによって調整することができるので、弱い力でも変位する圧電素子を用いた圧電発電装置を実現することもできれば、強い力で小さく変位する圧電素子を用いた圧電発電装置を実現することもでき、その場合でも、圧電素子を用いることで、十分に大きな電気エネルギーを得ることができる。さらに、圧電発電装置100を直並列に接続することによって、保持部20に印加される力の大きさに対応する電力を得ることもできる。
【0027】
圧電素子10の補強板12としては、一般的には樹脂基板や金属、金属板等の種々のバネ性を有する材料を用いることができるが、例えば、補強板として所定の強度を有する金属板が好適に用いられる。保持部材21には、大きな力が必要なときには、機械的強度に優れたエンジニアリングセラミックスやステンレス等の金属材料が好適に用いられる。
【0028】
圧電素子10が変形する際には保持部材の延長部分に一定の力が加わる。このために、このような力が加えられた際に保持部自体が変形を起こさないような機械的強度が、保持部全体に求められる。このような観点から、保持部材にはステンレス、アルミニウム合金等の各種金属材料が好適に用いられる。
【0029】
なお、保持部材に金属材料を用い、かつ、圧電素子10を構成する補強板12にも金属材料を用いた場合において、保持部材20として、機械的強度が大きく、かつ、絶縁性を有するセラミックス材料(例えば、アルミナ、ジルコニア、ムライト等)を用いることができる。
【0030】
さらに、保持部材は、3個以上の圧電素子を、保持部材の中心を略円の中心として、その半径方向に保持することができる。図5は、4個の圧電素子10を、十字形に装着した圧電発電装置200である。これ以上多くの圧電素子を保持部の中心を円の中心として放射状に装着することも好ましい。図6は、3個の扇形圧電素子を放射状に装着した例である。
【0031】
図5の圧電発電装置200及び図6の圧電発電装置300において、上部フレームを設けないか、これを設けても上部フレームの穿孔径を保持部21a、21bの直径以上とすることにより、ベクトルとして紙面に垂直な方向以外の成分をもつ外力にたいしても、非対称の屈曲が圧電素子に生起し、これに対応した起電力が各圧電素子に生起することになる。従って各圧電素子から起電力を別個に取り出して、各圧電素子の位置情報と各起電力の測定値から外力の紙面に垂直な方向以外の成分と起電力の大きさを検知することが可能となる。
【0032】
更にまた、圧電板の長さのおなじ複数の圧電素子を、保持部材で保持し、圧電板の厚み方向に積層することができる。即ち、複数の圧電素子を、スペーサを介して又はスペーサを介さずに、複数の圧電板が保持部材の延長方向に積層されるように装着することができる。図7は、外力の作用する保持部材21cにスペーサ60、60´を介して4個の圧電素子を装着した実施形態で、圧電素子の屈曲がとれた状態を示す。圧電板の厚さは、複数の圧電素子13を保持部材にスペーサを介して或いは、ひとつの保持部に一定間隔で配置し、各圧電素子が屈曲する際に、互いに衝突して、機械的エネルギーの損失が起きないように配置することが好ましい。
【0033】
圧電素子10が変形する際には保持部材の延長部分、スペーサ部に一定の力が加わる。このために、このような力が加えられた際にスペーサ部自体が変形を起こさないような機械的強度が、求められる。このような観点から、スペーサ部分にもステンレス、アルミニウム合金等の各種金属材料が好適に用いられる。
【0034】
延長方向に積層する保持部材21及びスペーサは、円形または、正八角形等の正多角形とすると、組み立てに好都合である。固定する圧電素子は、必要に応じて、その端部を保持部の構成物とのかみ合わせを良好とするために、圧電板、補強板の角取りをしても良い。外力を放射状に配された複数の圧電素子に伝達可能である。同一変位ならば、装着数に比例した起電力と電流を得ることができることとなる。各圧電素子の変形が対称とすれば、偏りがなく、一部に応力集中がおきないので、堅牢であり、高寿命化が計れる。
【0035】
また、圧電発電装置100では、圧電素子13として、補強板12の一方の面に圧電板11が取り付けられた、所謂、バイモルフ構造のものを示したが、補強板12の片面にそれぞれ圧電板11が取り付けられた、所謂、ユニモルフ構造のものを用いてもよい。さらに、圧電板は単板に限定されず、積層構造(積層コンデンサ型構造)を有しているものであってもよい。
【0036】
圧電発電装置100から取り出された電気エネルギーは、バッテリーやコンデンサ等の蓄電装置の充電に用いられる。
【0037】
別の圧電発電装置400の実施形態について例示して説明する。図10は、別の圧電発電装置400の正面図、図11は、別の圧電発電装置400の平面図である。圧電発電装置100と比べて、フレーム41、41´を穿孔して設けた保持部20のガイドに替えて、フレーム41´eに4本のガイド部材44を設け、保持部材21eに設けた穿孔と共に、ガイドするものである。即ち、保持部材21eは、外力を受けて弾性体の反発力に抗して移動し、外力がなくなり弾性体の反発力で変位、屈曲するとき、4本のガイド部材44に沿って移動する。このとき、4本のガイド部材44は、金属性で四フッ化エチレンポリマー被覆した部材が望ましく、保持部材21eも四フッ化エチレンポリマー等の摩擦係数の小さなものが望ましい。また。ガイド部材との接触部分には、ベアリングを用いて摩擦力を小さくすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る圧電発電装置は、コンパクトで大きな起電力及び大電流が得られ、メンテナンスの容易な発電装置となる。電力供給のない場所での標示機、警報機に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る圧電発電装置100のニュートラル状態の概略構造を示す正面断面図。
【図2】本発明に係る圧電発電装置100の加圧時の概略構造を示す正面断面図。
【図3】本発明に係る圧電発電装置100の加圧時の別の概略構造を示す正面断面図。
【図4】本発明の圧電発電装置100の平面図。
【図5】別の圧電発電装置200の圧電部分等の平面図。
【図6】更に別の圧電発電装置300の圧電部分等の平面図。
【図7】別の圧電部の構成を示す模式図。
【図8】回路図の一例。
【図9】別の回路図の例。
【図10】本発明に係る圧電発電装置400の概略構造を示す正面断面図。
【図11】本発明に係る圧電発電装置400の概略構造を示す平面図。
【図12】本発明に係る圧電発電装置100の電力の発生状況の模式図。
【図13】本発明に係る圧電発電装置100の起電力の発生状況の一例。
【符号の説明】
【0041】
100・200・300・400;圧電発電装置
10・10´・10a・10a´・10b・10b´・10c・10c ´;圧電素子
11・11´・11a・11a´・11b・11b´・11c・11c ´・11d・11d´;圧電板
12・12´・12a・12a´・12b・12b´・12c・12c ´・12d・12d´・12e・12e´;補強板
13・13´・13a・13a´・13b・13b´・13c・13c ´・13d・13d´;重石
20;保持部
21・21a・21b・21c・21d・21e;保持部材
22・22´・22a・22b・22c・22d・22e;保持部材の延長部
23・23´・23a・23b・23c・23d・23e;ストッパー
30;弾性体部
31;コイルバネ
41;上部フレーム
41´;下部フレーム
42;側部フレーム
43;足部フレーム
44;ガイド部材
60・60a;スペーサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電板と補強板とを有する略矩形状又は略扇形状圧電素子であって、前記補強板の長手方向又は半径方向に沿って、その厚み方向に分極されて配置され、貼着された圧電板を含む圧電素子と、
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材と、
保持部材に当接する弾性体と
を有し、
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の他の一端は別の保持部材で固定され、
保持部材または弾性体に加えられる外力により、弾性体が変位する際、外力が取り除かれて、前記弾性体が元の形状に戻る際に、圧電素子が変位することにより電気エネルギーが得られることを特徴とする圧電発電装置。
【請求項2】
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材が補強板を受け入れるための溝部分を有することを特徴とする請求項1記載の圧電発電装置。
【請求項3】
前期保持部材を円の中心に配置し、複数の略同一形状の圧電板が円の中心から放射状に配置されたことを特徴とする複数の圧電素子からなる請求項1乃至2記載の圧電発電装置。
【請求項4】
前記複数の圧電素子から起電力を別個に取り出して、各圧電素子の位置情報と起電力の測定値から外力の方向と大きさを検知することを特徴とする請求項3記載の圧電発電装置。
【請求項1】
圧電板と補強板とを有する略矩形状又は略扇形状圧電素子であって、前記補強板の長手方向又は半径方向に沿って、その厚み方向に分極されて配置され、貼着された圧電板を含む圧電素子と、
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材と、
保持部材に当接する弾性体と
を有し、
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の他の一端は別の保持部材で固定され、
保持部材または弾性体に加えられる外力により、弾性体が変位する際、外力が取り除かれて、前記弾性体が元の形状に戻る際に、圧電素子が変位することにより電気エネルギーが得られることを特徴とする圧電発電装置。
【請求項2】
前記圧電素子の長手方向又は半径方向の一端を可動に保持する保持部材が補強板を受け入れるための溝部分を有することを特徴とする請求項1記載の圧電発電装置。
【請求項3】
前期保持部材を円の中心に配置し、複数の略同一形状の圧電板が円の中心から放射状に配置されたことを特徴とする複数の圧電素子からなる請求項1乃至2記載の圧電発電装置。
【請求項4】
前記複数の圧電素子から起電力を別個に取り出して、各圧電素子の位置情報と起電力の測定値から外力の方向と大きさを検知することを特徴とする請求項3記載の圧電発電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−192944(P2008−192944A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27544(P2007−27544)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
[ Back to top ]