説明

在庫管理装置

【課題】各種指標を可視化し、製品の在庫管理の適切性評価を支援することを課題とする。
【解決手段】本発明による在庫管理装置は、製品の在庫状況を表示する表示部を備え、製品の在庫管理の意思決定を支援する在庫管理装置であって、前記在庫管理装置の記憶部001は、製品の在庫に関する特徴量の履歴を示すデータを、製品を特定する識別子である品番および日付ごとに記憶しており、前記在庫管理装置の制御部は、入力部からの入力により、前記品番を含む製品属性情報jと、着目日付pと、前記在庫状況を示すバランスチャートに表示する特徴量とを特定する制御と、前記記憶部から、前記着目日付pおよび前記製品属性情報jを検索キーとして前記特徴量を取得する制御と、前記取得した特徴量を異なる2つ以上の領域に少なくとも1つずつ特徴量の大きさが視認できる形状で配置するバランスチャートを表示させる制御と、を実行することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の在庫管理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製造、物流、小売業では、種々の製品を取り扱うため、製品の在庫管理は重要な課題である。製品の在庫管理の適切性を評価する際に、在庫月数、在庫回転率、生産販売比率、在庫増減、投資規模、投資規模回転期間および事業規模といった、指標を参照することは有効である。
【0003】
在庫月数とは、月初在庫と販売の比率であり、月初在庫数を販売数で除算した値または月初在庫金額を販売金額で除算した値である。この値が大きいと、過剰在庫による資金の停滞や管理コストの増大が懸念される。なお、「数」というとき、数量も含むものとする。
在庫回転率とは、販売された製品が在庫の何倍あったかを示す指標であり、販売数を在庫数で除算した値または販売金額を在庫金額で除算した値である。この値が大きいほど、在庫の入庫から実際の販売までの期間が短く、在庫管理が効率的に行われていることを示す。
【0004】
生産販売比率とは、生産数と販売数の比率または生産金額と販売金額の比率であり、生産販売比率は、生産数が適切か否かを判断する指標となる。生産販売比率が大きい場合は、過剰生産であることがわかる。一方、生産販売比率が小さい場合は、需要に対して生産数が追いつかず、欠品になる可能性があることがわかる。
投資規模とは、着目する製品に対する投資の程度であり、生産金額と月初在庫金額を加算した値である。この値が他の製品に比して大きいほど、重点的に投資されていることを示す。
投資規模回転期間とは、投資規模と販売の比率であり、投資規模を販売金額で除算した値である。投資規模回転期間は、販売に対してどの程度の規模の投資をしたかを示す指標である。この値が大きいと、投資の規模の割りに販売が少ないことを示す。
事業規模とは、着目する製品に対する投資、生産および販売を含む事業全体の大きさである。この値が他の製品に比して大きいほど、経営戦略において重要視されていることを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−187449号公報(請求項1など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来では在庫管理の適切性を評価する際に、前記のような指標をただ単に数値の羅列または時系列のグラフとして表示していた(例えば、特許文献1)。このため、指標が示す意味を直感的に理解しにくく、在庫管理の適切性を評価することが難しかった。特に、これらの指標を年度や月毎に比較したいときは、膨大な数の指標を一つ一つ確認していかなければならないため、確認に時間がかかり効率が悪かった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した問題を解決するために、各種の指標を可視化し、製品の在庫管理の適切性評価を支援することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明による在庫管理装置は、製品の在庫状況を表示する表示部を備え、製品の在庫管理の意思決定を支援する在庫管理装置であって、前記在庫管理装置の記憶部は、製品の在庫に関する複数の特徴量の履歴を示すデータを、製品を特定する識別子である品番および日付ごとに記憶しており、前記在庫管理装置の制御部は、入力部からの入力により、前記品番を含む製品属性情報と、着目日付と、前記在庫状況を示すバランスチャートに表示する特徴量とを、特定する制御と、前記記憶部から、前記着目日付および前記製品属性情報を検索キーとして前記特徴量を、取得する制御と、前記取得した特徴量を異なる2つ以上の領域に少なくとも1つずつ特徴量の大きさが視認できる形状で配置するバランスチャートを前記表示部に表示させる制御と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各種の指標を可視化し、製品の在庫管理の適切性評価を有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の在庫管理装置のソフトウェア構成を示す図である。
【図2】履歴データのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】製品属性データのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】表示設定定義データのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】バランスチャートの一例を示す図である。(a)は、左上に「月初在庫ボックス」、左下に「当月生産ボックス」、右上に「月末在庫ボックス」、右下に「当月販売ボックス」を配置した例である。(b)は、左上に「月初在庫ボックス」、左下に「当月生産ボックス」、右上に「当月販売ボックス」、右下に「月末在庫ボックス」を配置した例である。(c)は、左領域と右領域の高さが一致しない場合の例である。(d)は、「補完ボックス」を表示した例である。
【図6】バランスチャートによる在庫管理の適切性を評価する方法について説明する図である。
【図7】バランスチャートを比較することにより、在庫管理の適切性を評価する方法について説明する図である。
【図8】バランスチャートを比較することにより、事業規模の傾向を評価する方法について説明する図である。
【図9】バランスチャートを比較することにより、事業規模の傾向を評価する方法について説明する図である。
【図10】バランスチャートの各ボックスの高さを決定する方法を説明する図である。(a)は、基となる履歴データのサンプルデータと、各フィールドに対応するボックスの高さである。(b)は、(a)の履歴データのサンプルデータから作成したバランスチャートである。
【図11】正規化係数を決定する方法を説明するための、履歴データのサンプルデータである。
【図12】図11の履歴データのサンプルデータを正規化したデータである。
【図13】バランスチャートの一例である。(a)は、図11のサンプルデータから作成したチャートリストである。(b)は、補完ボックスを表示したバランスチャートを含む、チャートリストの一例である。
【図14】チャートリスト生成処理のフローチャートである。
【図15】ステップS1105による処理のフローチャートである。
【図16】ステップS1109による処理のフローチャートである。
【図17】生産ボックスに、生産グラフを表示したチャートリストの一例を示す図である。
【図18】ステップS1311による処理のフローチャートである。
【図19】販売ボックスに、販売グラフを表示したチャートリストの一例を示す図である。
【図20】ステップS1312による処理のフローチャートである。
【図21】チャートリストを上下2段に並べて表示した例を示す図である。
【図22】実績値および計画値のチャートリストを、上下2段に並べて表示した例を示す図である。
【図23】図22のチャートリストに、月末在庫が次月初在庫であることを示す補助線を表示した例を示す図である。
【図24】チャートリストを上下2段に並べて表示する処理のフローチャートである。
【図25】実績値および計画値のチャートリストを、上下2段に並べて表示するタイプの画面例である。
【図26】図25のバランスチャートに、生産グラフを表示した画面例である。
【図27】図26のバランスチャートに、販売グラフを表示した画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、本発明を実施するための形態(「本実施形態」という)を、図などを参照しながら詳細に説明する。また、本実施形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
<<構成>>
図1は、本実施形態の在庫管理装置のソフトウェア構成を示す図である。この在庫管理装置は、履歴データ001、製品属性データ002、表示設定定義データ003、表示手段004、チャートリスト生成手段100、製品指定手段102、表示年月指定手段103、表示画面指定手段104、表示単位指定手段105といったソフトウェア構成を有する。
【0013】
この在庫管理装置は、入力部(例:ポインティングデバイス、タッチパネル)、表示部(例:ディスプレイ、タッチパネル)、制御部(例:CPU(Central Processing Unit))、記憶部(例:メモリ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive))をハードウェア構成として有するコンピュータである。この在庫管理装置は、記憶部にソフトウェア構成としてのチャートリスト生成手段100などを実現する在庫管理用のプログラムを記憶する。制御部がこのプログラムを実行することにより、在庫管理に要する処理が実行される。
【0014】
履歴データ001は、在庫管理の対象となる製品の在庫実績および在庫計画を記憶している(詳細後記)。
表示設定定義データ003は、在庫管理の適切性を評価する指標を示すバランスチャート表示する際、どのように表示するかを定義するデータを記憶している(詳細後記)。バランスチャートとは、履歴データ001に記憶されている、製品に関する各種データをバランスシートのように示し、在庫管理の適切性を評価する指標を示すチャートである(詳細後記)。また、バランスチャートを複数並べたものを、チャートリストと呼ぶ。
表示手段004は、バランスチャートを表示部に表示させる。
【0015】
チャートリスト生成手段100は、製品指定手段102により指定された製品に関するレコードを履歴データ001および製品属性データ002から抽出する。チャートリスト生成手段100は、例えば、SQL(Structured Query Language)などの、データベースにおいてデータの操作や定義を行う手段により実現される。
チャート生成手段101は、バランスチャートを生成する(詳細後記)。
【0016】
製品指定手段102は、入力部からの入力により、ユーザが着目したい品番、品名、事業グループ、カテゴリおよびブランドを指定(特定)する。製品指定手段102は、ユーザが行う表示部の画面上のGUI(Graphical User Interface)操作による指定、または外部ファイルによる指定により実現される。
表示年月指定手段103は、入力部からの入力により、ユーザが着目したい年月(着目年月)や日付(着目日付)を指定(特定)する。表示年月指定手段103は、ユーザが行う表示部の画面上のGUI操作による指定、または外部ファイルによる指定により実現される。
【0017】
表示画面指定手段104は、入力部からの入力により、ユーザが表示したい画面のタイプを指定(特定)する。表示画面のタイプは、バランスチャートを2段に並べるタイプや、バランスチャートに日次の推移を示すグラフを表示するタイプなど、予め定義されている。表示画面指定手段104は、ユーザが行う表示部の画面上のGUI操作による指定、または外部ファイルによる指定により実現される。
表示単位指定手段105は、入力部からの入力により、ユーザが表示したい単位を指定(特定)する。単位は、金額や数量を指定できる。表示単位指定手段105は、ユーザが行う表示部の画面上のGUI操作による指定、または外部ファイルによる指定により実現される。
【0018】
図2は、履歴データ001のデータ構造の一例を示す図である。履歴データ001は、「数量」、「金額」の分類に分けて記憶される。
図2(a)は、数量の履歴データ001のデータ構造の一例を示す図である。数量の履歴データ001は、「品番」、「年月日」、「生産実績数」、「在庫実績数」、「販売実績数」、「生産計画数」、「在庫計画数」および「販売計画数」といったフィールドを有する。
【0019】
「品番」は、在庫管理の対象となる製品を特定する識別番号である。
「年月日」は、製品の在庫実績および計画を決定する日であり、製品の在庫推移を日単位で追跡することができる。製品の種類などに応じて、週、月、年を決定するようにし、週単位、月単位、年単位で追跡してもよい。説明の便宜上、履歴データ001は日単位の製品に関するレコードを備えているものとする。
【0020】
「生産実績数」は、該当する製品をその日において、工場などで生産したときの実際の生産数である。ここでは単位は「個」である。
「在庫実績数」は、該当する製品がその日において、所定のスペースで保管されたときの実際の在庫数である。
「販売実績数」は、該当する製品がその日において、市場で販売されたときの実際の販売数である。
【0021】
「生産計画数」は、該当する製品がその日において、工場などで生産する計画であった生産数である。
「在庫計画数」は、該当する製品がその日において、所定のスペースで保管される計画であった在庫数である。
「販売計画数」は、該当する製品がその日において、市場で販売される計画であった販売数である。
【0022】
図2(a)の履歴データ001の4行目のレコードに着目して説明する。
品番「I001」の製品は、2008年1月10日において、計画では、前日からの在庫400個を引き継いで、300個販売し、900個生産し、1000個の在庫が残る予定であった。しかし、実際は、前日からの在庫600個を引き継いで、200個販売し、900個生産し、1300個の在庫が残ったことがわかる。
【0023】
図2(b)は、金額の履歴データ001のデータ構造の一例を示す図である。金額の履歴データ001は、「品番」、「年月日」、「生産実績金額」、「在庫実績金額」、「販売実績金額」、「生産計画金額」、「在庫計画金額」および「販売計画金額」といったフィールドを有する。
【0024】
「品番」、「年月日」は、図2(a)と同様なので、説明を省略する。
【0025】
「生産実績金額」は、該当する製品をその日において、工場などで生産したときの実際の生産数を金額として示したものである。
「在庫実績金額」は、該当する製品がその日において、所定のスペースで保管されたときの実際の在庫数を金額として示したもの在庫金額である。
「販売実績金額」は、該当する製品がその日において、市場で販売されたときの実際の販売数を金額として示したもの販売金額である。
【0026】
「生産計画金額」は、該当する製品がその日において、工場などで生産する計画であった生産数を金額として示したもの生産金額である。ここでは単位は「円」である。
「在庫計画金額」は、該当する製品がその日において、所定のスペースで保管される計画であった在庫数を金額として示したもの在庫金額である。
「販売計画金額」は、該当する製品がその日において、市場で販売される計画であった販売数を金額として示したもの販売金額である。
【0027】
図2(b)の履歴データ001の4行目のレコードに着目して説明する。
品番「I001」の製品は、2008年1月10日において、計画では、前日からの在庫80000円を引き継いで、60000円販売し、180000円生産し、200000個の在庫が残る予定であった。しかし、実際は、前日からの在庫120000円を引き継いで、40000円販売し、180000円生産し、260000円の在庫が残ったことがわかる。
【0028】
図3は、製品属性データ002のデータ構造の一例を示す図である。製品属性データ002は、「品番」、「品名」、「事業グループ」、「カテゴリ」および「ブランド」といったフィールドを有する。
【0029】
「品番」は、図2(a)と同様なので、説明を省略する。
「品名」は、在庫管理の対象となる製品の名称である。
「事業グループ」は、在庫管理の対象となる製品の生産、販売などを担当する事業組織の名称である。
「カテゴリ」は、在庫管理の対象となる製品を、特性、品質などで分類したときの分類の名称である。
「ブランド」は、在庫管理の対象となる製品の銘柄の名称である。
【0030】
なお、製品属性データ002に「単価」のフィールドを有するようにしてもよい。単価に数量を乗算すると金額が算出できるので、金額の履歴データ001を有さない構成にすることができる。
「単価」は、在庫管理の対象となる製品の1個あたりの金額である。
【0031】
図4は、表示設定定義データ003のデータ構造の一例を示す図である。表示設定定義データ003は、「定義項目」、「定義値」といったフィールドを有する。
「定義項目」は、定義する対象の名称である。
「定義値」は、定義項目について決定した値である。
図4においては、バランスチャートを表示する大きさとして「ボックスの幅」という対象を、「200pixel」という値に決定している。なお、定義項目はこれに限るものではなく、円グラフの場合は「半径」や、「色」などを有してもよい。
ここで、「ボックス」とは、バランスチャートにおいて、表示年月の製品の生産数(金額)や販売数(金額)や在庫数(金額)等を表すオブジェクトである。
【0032】
<<バランスチャート>>
次に、バランスチャートについて説明する。
バランスチャートは、月次の生産、販売、在庫金額(数)データをバランスシートのように左右対称の形で表示し、事業グループ、ブランド、カテゴリおよびSKU(Stock Keeping Unit)レベルまでの生産、販売および在庫のバランスの推移を可視化するチャートである。なお、本実施形態では、バランスチャートは矩形のチャートとしたが、形状はこれに限るものではない。例えば、バランスチャートは、平行四辺形や円形にすることもできる。
【0033】
1つのバランスチャートは、「生産ボックス」と「月初在庫ボックス」と「月末在庫ボックス」と「販売ボックス」とを有する。バランスチャートの左領域には、「生産ボックス」と「月初在庫ボックス」とが、上下に並んで表示される。バランスチャートの右領域には、「月末在庫ボックス」と「販売ボックス」とが、上下に並んで表示される。各領域内では、ボックスの上下は任意に入れ替えることができる。
【0034】
図5は、バランスチャートの一例を示す図である。(a)は、左上に「月初在庫ボックス」、左下に「生産ボックス」、右上に「月末在庫ボックス」、右下に「販売ボックス」を配置した例である。(b)は、左上に「月初在庫ボックス」、左下に「生産ボックス」、右上に「販売ボックス」、右下に「月末在庫ボックス」を配置した例である。(c)は、左領域と右領域の高さが一致しない場合の例である。(d)は、「補完ボックス」を表示した例である。
【0035】
バランスチャートでは、各ボックスの高さが、数(金額)の相対的な大小関係を表す。例えば、200000円を表すボックスの高さは、100000円を表すボックスの高さのちょうど2倍になる(詳細後記)。
【0036】
バランスチャートでは、左右に積み上げられたボックスの高さの合計は、原則一致する。これは、(生産+月初在庫)が(月末在庫+販売)と一致することを意味する。しかし、返品や棚卸減耗が発生した時など、高さが一致しない場合がある(図5(c)参照)。この場合、左右の領域の差異を把握するために、両領域の高さを補完する「補完ボックス」を表示することができる。図5(c)のバランスチャートに、「補完ボックス」を表示した例が図5(d)である。
【0037】
補完ボックスには、左右の領域の高さが一致しない原因などを表示するようにしてもよい。例えば、履歴データ001に備考欄のフィールドを設けて、返品、盗難、紛失などが発生した場合は備考欄に記憶しておく。バランスチャートを生成する際に、備考欄に前記のような特記事項が記憶されている場合は、その内容を表示する。
また、在庫管理装置の制御部は、左右の領域の高さが一致するか否かを日単位で判定し、一致しなかった場合に警告を表示するようにしてもよい。
【0038】
これらのバランスチャートにより、在庫管理の適切性を評価することができる。
図6は、バランスチャートによる在庫管理の適切性を評価する方法について説明する図である。前記した在庫月数(その逆数である在庫回転率)および生産販売比率は、もともと除算の結果である。除算の結果である値を表示しても、その値を直感的に評価することは困難である。また、精緻な分析のためには、除算の結果である値が必要になる場合もあるが、当該値が1より大きいか否か、すなわち、除算の分母と分子の大小関係が分かれば充分である場合も多い。そこで、本実施形態のように、除算の分母の大きさと除算の分子の大きさを並べて比較することが有効になる。
【0039】
図6(a)および(b)では、月初在庫数(金額)の大きさ(月初在庫ボックスの高さ)および販売数(金額)の大きさ(販売ボックスの高さ)のうち、何れが大きいかが一見してわかる。すなわち、図6(a)においては、販売ボックスの高さの方が、月初在庫ボックスの高さよりも低い。よって、在庫月数が「1か月」より大きいことは、除算を試みるまでもなく明らかである。一方、図6(b)においては、販売ボックスの高さの方が、月初在庫ボックスの高さよりも高い。よって、在庫月数が「1か月」より小さいことは、除算を試みるまでもなく明らかである。このような効果は、月初在庫ボックスおよび販売ボックスの両者が、それぞれ、バランスチャートの左下および右下にあるために、高さを並べて比較できることから生じる。仮に、図6(a)において、販売ボックスが右上にあるような場合は、このような効果は期待できない。
【0040】
同様のことが、前記した生産販売比率についてもあてはまる。図6(c)においては、販売ボックスの高さの方が、生産ボックスの高さよりも高い。よって、生産販売比率が「1」より小さいことは、除算を試みるまでもなく明らかである。一方、図6(d)においては、販売ボックスの高さの方が、生産ボックスの高さよりも低い。よって、生産販売比率が「1」より大きいことは、除算を試みるまでもなく明らかである。このような効果は、生産ボックスおよび販売ボックスの両者が、それぞれ、バランスチャートの左上および右上にあるために、高さを並べて比較できることから生じる。仮に、図6(c)において、販売ボックスが右下にあるような場合は、このような効果は期待できない。
【0041】
次に、バランスチャートを比較することにより、在庫管理の適切性を評価する方法について説明する。
図7は、バランスチャートを比較することにより、在庫管理の適切性を評価する方法について説明する図である。
【0042】
図7(a)では、左右のバランスチャートの高さは一致している。しかし、左のバランスチャートと比較すると、右のバランスチャートの販売ボックスの高さが高く、月末在庫ボックスの高さが低くなっている。このことから、同じ投資規模に対して販売が増えたことがわかる。すなわち、在庫月数および投資規模回転期間が改善されたことがわかる。
【0043】
図7(b)では、左右のバランスチャートの月初在庫ボックスおよび販売ボックスのそれぞれの高さは一致している。しかし、左のバランスチャートと比較すると、右のバランスチャートの全体の高さは低くなっている。このことから、販売は変わらないが投資規模が小さくなったことで、販売の比率が大きくなったことがわかる。すなわち、投資規模回転期間が改善されたことがわかる。
【0044】
次に、バランスチャートを比較することにより、事業規模の傾向を評価する方法について説明する。
図8および図9は、バランスチャートを比較することにより、事業規模の傾向を評価する方法について説明する図である。例えば、図8および図9はバランスチャートを左から右へ、1ヶ月毎または1年毎に時系列で並べたものとする。
【0045】
図8では、左、中央、右のバランスチャートの高さが、徐々に高くなっている。また、販売ボックスの高さも、徐々に高くなっている。このことから、事業規模および販売が増加していることがわかる。すなわち、事業規模が拡大傾向にあることがわかる。
また、月初在庫ボックスおよび月末在庫ボックスの高さも、徐々に高くなっている。このことから、事業規模が拡大すれば、在庫も増えることがわかる。すなわち、在庫の増加が懸念事項とは一概に言えないことがわかる。
【0046】
図9では、左、中央、右のバランスチャートの高さが、徐々に高くなっている。しかし、各販売ボックスの高さはおおむね一致している。このことから、事業規模だけ増加していることがわかる。すなわち、計画に問題があった可能性があることがわかる。
【0047】
図10は、バランスチャートの各ボックスの高さを決定する方法を説明する図である。(a)は、基となる履歴データ001のサンプルデータと、各フィールドに対応するボックスの高さである。(b)は、(a)の履歴データ001のサンプルデータから作成したバランスチャートである。
【0048】
バランスチャートのボックスの高さ(pixel、ピクセル)は、各ボックスが表すフィールドの値(数量や金額)に比例する。在庫管理装置の表示部に表示するために、数量や金額を適当な数値(正規化係数と呼ぶ)で除算した値をボックスの高さに設定する。例えば、図10では、正規化係数を4としている。履歴データ001の各フィールドの値(数量)を4で割って算出した値を、対応するボックスの高さに設定する。
なお、正規化係数は、チャートリストを表示する領域の高さを考慮して決定する。アプリケーションにおけるチャートリスト表示領域を、チャートリスト表示部と呼ぶ。
【0049】
チャートリスト表示部に表示されるバランスチャートが1つの場合、チャートリスト表示部の高さを、当該バランスチャートの高さとする。例えば、バランスチャートの(月初在庫数+生産数)が1500個であり、チャートリスト表示部の画面上の高さが500pixelの場合は、1500/500=3が正規化係数となる。
【0050】
チャートリスト表示部に表示されるバランスチャートが複数の場合、在庫管理装置の制御部は、高さの最大値を有するバランスチャートを基準にして、他のバランスチャートの高さを決定する。
図11および図12は、正規化係数を決定する方法を説明する図である。図11は履歴データ001のサンプルデータであり、図12は図11の履歴データ001のサンプルデータを正規化したデータである。
【0051】
このサンプルデータでは、バランスチャートの左領域に表示される(生産数+月初在庫数)を基に、正規化係数を算出するものとする。もちろん、(月末在庫数+販売数)を基に算出してもよいし、金額を基に算出してもよい。また、チャートリスト表示部の画面上の高さを500pixelとする。なお、図11では、説明の便宜上、月次データとなっているが、本実施形態で用いる履歴データ001は日次データである。月次データは、日次データを集計することで算出できる。
【0052】
図11において、(生産数+月初在庫数)が最大となるのは、2008年5月である。すなわち、このサンプルデータでは、2008年5月のバランスチャートが最大の高さを有するバランスチャートとなる。当該バランスチャートの高さに対して、チャートリスト表示部の高さ(500pixel)を割り当てる。つまり、2008年5月のバランスチャートの高さが、チャートリスト表示部の高さと等しくなる。
【0053】
そして、正規化係数を算出すると、(生産数+月初在庫数)/チャートリスト表示部の高さ=2000/500=4となる。
算出した正規化係数を基に、他の月のバランスチャートの高さを決定する。
図12は、図11の履歴データ001のサンプルデータを正規化したデータである。
2008年5月のバランスチャートが、チャートリスト表示部の高さ(500pixel)を最大限に使用したチャートとなっていることがわかる。
【0054】
図13は、バランスチャートの一例である。(a)は、図11のサンプルデータから作成したチャートリストである。このように、2008年5月のバランスチャートが、チャートリスト表示部の高さを最大限に使用したチャートとして表示されていることがわかる。また、2008年1月および2月のバランスチャートの高さは、2008年5月のバランスチャートの高さの半分であることがわかる。
【0055】
図13(b)は、図5(d)で示した補完ボックスを表示したバランスチャートを含む、チャートリストの一例である。
なお、図13(a)および(b)の下部に設置されているスクロールバーを左右に移動すると、現在表示されていないバランスチャート(2008年6月から12月のバランスチャート)が表示される(図示は省略)。
【0056】
<<処理>>
次に、本実施形態の在庫管理装置の処理内容について説明する。以下に説明する処理の主体は、在庫管理装置の制御部である。
【0057】
(チャートリスト生成処理)
図14は、チャートリスト生成処理のフローチャートである。
【0058】
ステップS1101において、変数jを設定し、製品指定手段102により指定された、品番、製品名、事業グループ、カテゴリおよびブランドのいずれかまたは複数を変数jに代入して、製品属性情報jとする。なお、製品属性情報jは、バランスチャートを生成する対象となる製品の属性を意味する。
そして、ステップS1102に進む。
【0059】
ステップS1102において、変数Mを設定し、履歴データ001と製品属性データ002とをマージして変数Mに代入し、履歴データMとする。履歴データ001および製品属性データ002は、図2および図3に示すように、数量、金額、製品に分けて記憶されているので、品番と年月日をキーとしてマージし、1つのデータとする。
また、変数Lを設定し、表示年月指定手段103により指定された表示年月(着目年月)を、例えば昇順に並べて、変数Lに代入してリストLとする。なお、リストLは、生成するバランスチャートの年月(表示年月)の一覧を意味する。リストLは年月に限るものではなく、週や日付でもよい。
また、変数Cを設定し、チャートリスト表示部の描画領域を変数Cに代入して、描画領域Cとする。そして、変数wを設定し、表示設定定義データ003を読み出し、変数wにボックスの幅を代入して、ボックスの幅wとする。
そして、ステップS1103に進む。
【0060】
ステップS1103において、変数Dを設定し、履歴データMから製品属性情報jに対応するレコードを抽出して変数Dに代入し、製品データDとする。製品データDは、例えば日付で昇順に並べておく。なお、抽出するレコードは、リストLのものだけである。言い換えれば、製品属性情報jとリストLとを検索キーとして、履歴データMからレコードを抽出する。
そして、ステップS1104に進む。
【0061】
ステップS1104において、変数hを設定し、描画領域Cの高さを変数hに代入して、高さhとする。
そして、ステップS1105に進む。
【0062】
ステップS1105において、製品データD、リストL、高さhより正規化係数を算出する(詳細後記)。算出した値を変数aに代入して、正規化係数aとする。
そして、ステップS1106に進む。
【0063】
ステップS1106において、変数iを設定し、変数iに1を代入する。
そして、ステップS1107に進む。
【0064】
ステップS1107において、変数pを設定し、リストLから1件(例えば先頭から1件)の表示年月を取り出して変数pに代入して、表示年月pとする。なお、表示年月pは、バランスチャートを生成する対象となる年月を意味する。
そして、ステップS1108に進む。
【0065】
ステップS1108において、変数cを設定し、描画領域Cから1つのバランスチャートの描画領域を取り出して変数cに代入し、描画領域cを設定する。
そして、ステップS1109に進む。
【0066】
ステップS1109において、表示年月p、ボックスの幅w、正規化係数a、高さh、製品データD、描画領域cから、バランスチャートを生成する(詳細後記)。
そして、ステップS1110に進む。
【0067】
ステップS1110において、リストLに表示年月があるか否か(リストLの終端か否か)を判定する。リストLに表示年月がない場合(ステップS1110“No”)、処理を終了する。リストLに表示年月がある場合(ステップS1110“Yes”)、ステップS1111に進む。
【0068】
ステップS1111において、変数iにi+1を代入する(月を1ヶ月分繰り下げる)。
そして、ステップS1107に戻る。
【0069】
(正規化係数算出処理)
次に、ステップS1105による正規化係数の算出処理について説明する。
図15は、ステップS1105による処理のフローチャートである。なお、ここでは、金額を基に正規化係数を算出する場合について説明する。もちろん、前述のように、数量を基に正規化係数を算出してもよい。図16、図18および図20の説明においても同様である。
【0070】
ステップS1201において、製品データD、リストL、高さhを取得する。
そして、ステップS1202に進む。
【0071】
ステップS1202において、変数Sを設定し、空集合φを定義して、リストSとする。なお、リストSは、表示年月の各月における生産金額と月初在庫金額との和の集合(一覧)を意味する。
そして、ステップS1203に進む。
【0072】
ステップS1203において、変数pを設定し、リストLから1件(例えば先頭から1件)の表示年月を取り出して変数pに代入し、表示年月pとする。
そして、ステップS1204に進む。
【0073】
ステップS1204において、変数yを設定し、pの年を代入する。また、変数mを設定し、pの月を代入する。なお、変数yは、着目する年を意味する。変数mは、着目する月を意味する。
そして、ステップS1205に進む。
【0074】
ステップS1205において、変数Rymを設定し、製品データDからy年m月のレコードを抽出して変数Rymに代入し、集合Rymとする。なお、集合Rymは、着目する年月の製品データDのレコードの集合である。
【0075】
ステップS1206において、変数dを設定し、変数dに1を代入する。なお、変数dは、着目する日付を意味する。
そして、ステップS1207に進む。
【0076】
ステップS1207において、変数prodを設定し、0を代入する。なお、変数prodは、着目する年月の生産金額を意味する。また、変数stock1を設定し、y年m月1日のレコードの在庫金額を代入する。なお、変数stock1は、着目する年月の月初在庫金額を意味する。
そして、ステップS1208に進む。
【0077】
ステップS1208において、集合Rymからy年m月d日のレコードrを取得する。
そして、ステップS1209に進む。
【0078】
ステップS1209において、変数prodに、prod+rの生産金額を代入する(生産金額を集計する)。
そして、ステップS1210に進む。
【0079】
ステップS1210において、y年m月d日が、y年m月の最終日であるか否かを判定する。y年m月d日が、y年m月の最終日でない場合(ステップS1210“No”)、ステップS1211へ進む。y年m月d日が、y年m月の最終日である場合(ステップS1210“Yes”)、ステップS1212に進む。
【0080】
ステップS1211において、変数dに、d+1を代入する(日付を1日分繰り下げる)。
そして、ステップS1208に戻る。
【0081】
ステップS1212において、変数sを設定し、prod+stock1を変数sに代入する。そして、変数sをリストSに追加する。なお、変数sは、バランスチャートの左領域に表示される、生産金額と月初在庫金額との和であり、バランスチャートの高さを意味する。また、リストSは、変数sの集合である。変数sは、リストSの要素である。
そして、ステップS1213に進む。
【0082】
ステップS1213において、リストLに表示年月があるか否か(全ての表示対象の年月について、生産金額と月初在庫金額の和を求めたか否か)を判定する。リストLに表示年月がある場合(ステップS1213“Yes”)、ステップS1203に戻る。リストLに表示年月がない場合(ステップS1213“No”)、ステップS1214に進む。
【0083】
ステップS1214において、変数smaxを設定し、リストSの要素sのうち、最大値を代入して、変数smaxとする。また、変数smax/高さhを正規化係数aとして出力する。
そして、S1106に戻る。
【0084】
(バランスチャート生成処理)
次に、ステップS1109によるバランスチャート生成処理について説明する。
図16は、ステップS1109による処理のフローチャートである。
【0085】
ステップS1301において、表示年月p、ボックスの幅w、正規化係数a、高さh、製品データDおよび描画領域cを取得する。
そして、ステップS1302に進む。
【0086】
ステップS1302において、変数yを設定し、pの年を代入する。また、変数mを設定し、pの月を代入する。
そして、ステップS1303に進む。
【0087】
ステップS1303において、製品データDからy年m月のレコードの集合Rymを抽出する。
そして、ステップS1304に進む。
【0088】
ステップS1304において、変数dを設定し、1を代入する。また、変数prodを設定し、0を代入する。また、変数salesを設定し、0を代入する。なお、変数salesは、着目する年月の販売金額を意味する。また、変数stock1を設定し、y年m月1日のレコードの在庫金額を代入する。
そして、ステップS1305に進む。
【0089】
ステップS1305において、集合Rymから、y年m月d日のレコードrを取得する。
そして、ステップS1306に進む。
【0090】
ステップS1306において、変数prodに、prod+rの生産金額を代入する(生産金額を集計する)。また、変数salesに、sales+rの販売金額を代入する(販売金額を集計する)。
そして、ステップS1307に進む。
【0091】
ステップS1307において、y年m月d日が、y年m月の最終日であるか否かを判定する。y年m月d日が、y年m月の最終日でない場合(ステップS1307“No”)、ステップS1308へ進む。y年m月d日が、y年m月の最終日である場合(ステップS1307“Yes”)、ステップS1309に進む。
【0092】
ステップS1308において、変数dに、d+1を代入する(日付を1日分繰り下げる)。
そして、ステップS1305に戻る。
【0093】
ステップS1309において、変数stock2を設定し、rの在庫金額を代入する。なお、変数stock2は、着目する年月の月末在庫金額を意味する。
そして、ステップS1310に進む。
【0094】
ステップS1310において、高さprod/a,幅wの矩形rectを生成する。なお、矩形rectは、バランスチャートを構成する生産ボックスを意味する。また、高さsales/a,幅wの矩形rectslを生成する。なお、矩形rectslは、バランスチャートを構成する販売ボックスを意味する。また、高さstock1/a,幅wの矩形rects1を生成する。なお、矩形rects1は、バランスチャートを構成する月初在庫ボックスを意味する。また、高さstock2/a,幅wの矩形rects2を生成する。なお、矩形rects2は、バランスチャートを構成する月末在庫ボックスを意味する。
そして、ステップS1311に進む。
【0095】
ステップS1311において、矩形rectに生産グラフを描画する(詳細後記)。
そして、ステップS1312に進む。
【0096】
ステップS1312において、矩形rectslに販売グラフを描画する(詳細後記)。
そして、ステップS1313に進む。
【0097】
ステップS1313において、矩形rects1を描画領域cの(0,h−(stock1/a))に配置する。すなわち、月初在庫ボックスを、描画領域cの左上に配置する。また、矩形rectを描画領域cの(0,h−((stock1/a)+(prod/a)))に配置する。すなわち、生産ボックスを、描画領域cの左下に配置する。また、矩形rectslを描画領域cの(w,h−(sales/a))に配置する。すなわち、販売ボックスを、描画領域cの右上に配置する。また、矩形rects2を描画領域cの(0,h−((stock2/a)+(sales/a)))に配置する。すなわち、月末在庫ボックスを、描画領域cの右下に配置する。なお、配置される座標値がそれぞれのボックスの左下の点に対応しているものとする。
そして、ステップS1314に進む。
【0098】
ステップS1314において、描画領域cを出力する。
そして、ステップS1110に戻る。
【0099】
(生産グラフ生成処理)
図17は、生産ボックスに、生産グラフを表示したチャートリストの一例を示す図である。生産グラフは、日次の生産金額(数)の推移を表すグラフである。生産グラフは、図17に示すように当日時点における生産金額(数)の累計を表してもよいし、日単位の生産金額(数)を表してもよい。また、日単位ではなく、週単位などでもよい。この生産グラフの生成処理について、図18を参照して説明する。
図18は、ステップS1311による処理のフローチャートである。
【0100】
ステップS1501において、表示年月p、製品データD、矩形rect、生産金額prodを取得する。
そして、ステップS1502に進む。
【0101】
ステップS1502において、変数hを設定し、矩形rectの高さを代入する。なお、変数hは、生産ボックスの高さを意味する。また、変数wを設定し、矩形rectの幅を代入する。なお、変数wは、生産ボックスの幅を意味する。
そして、ステップS1503に進む。
【0102】
ステップS1503において、変数yを設定し、pの年を代入する。また、変数mを設定し、pの月を代入する。また、変数nを設定し、y年m月の日数を代入する。なお、変数nは、着目する年月が何日あるかを意味する。例えば、2010年2月の場合は、nは28であり、2010年8月の場合は、nは31である。
そして、ステップS1504に進む。
【0103】
ステップS1504において、製品データDからy年m月のレコードの集合Rymを抽出する。
そして、ステップS1505に進む。
【0104】
ステップS1505において、変数dを設定し、1を代入する。
そして、ステップS1506に進む。
【0105】
ステップS1506において、集合Rymからy年m月d日のレコードrを取得する。
そして、ステップS1507に進む。
【0106】
ステップS1507において、変数prodを設定し、rの生産金額を代入する。なお、変数prodは、着目する年月日の生産金額を意味する。
そして、ステップS1508に進む。
【0107】
ステップS1508において、変数bheightを設定し、prod×prod/hにより、変数bheightを算出する。なお、変数bheightは、着目する年月日の生産金額を表すグラフの高さを意味する。
そして、ステップS1509に進む。
【0108】
ステップS1509において、変数bwidthを設定し、w/nにより、変数bwidthを算出する。なお、変数bwidthは、着目する年月日の生産金額を表すグラフの幅を意味する。
そして、ステップS1510に進む。
【0109】
ステップS1510において、変数bを設定し、(d−1)×bwidthにより、変数bを算出する。なお、変数bは、着目する年月日の生産金額を表すグラフを配置する位置を意味する。
そして、ステップS1511に進む。
【0110】
ステップS1511において、(b,0)の位置に幅bwidth高さbheightの矩形を描画する。なお、当該矩形は、着目する年月日の生産金額を表すグラフ(生産グラフ)である。また、配置される座標値がそれぞれの矩形の左下の点に対応しているものとする。
そして、ステップS1512に進む。
【0111】
ステップS1512において、y年m月d日が、y年m月の最終日であるか否かを判定する。y年m月d日が、y年m月の最終日でない場合(ステップS1512“No”)、ステップS1513へ進む。y年m月d日が、y年m月の最終日である場合(ステップS1512“Yes”)、ステップS1312に戻る。
【0112】
ステップS1513において、変数dに、d+1を代入する(日付を1日分繰り下げる)。
そして、ステップS1506に戻る。
【0113】
(販売グラフ生成処理)
図19は、販売ボックスに、販売グラフを表示したチャートリストの一例を示す図である。販売グラフは、日次の販売金額(数)の推移を表すグラフである。販売グラフは、図19に示すように当日時点における販売金額(数)の累計を表してもよいし、日単位の販売金額(数)を表してもよい。また、日単位ではなく、週単位などでもよい。この販売グラフの生成処理について、図20を参照して説明する。
【0114】
図20は、ステップS1312による処理のフローチャートである。
【0115】
ステップS1701において、表示年月p、製品データD、矩形rectsl、販売金額salesを取得する。
そして、ステップS1702に進む。
【0116】
ステップS1702において、変数hslを設定し、矩形rectslの高さを代入する。なお、変数hslは、販売ボックスの高さを意味する。また、変数wslを設定し、矩形rectslの幅を代入する。なお、変数wslは、販売ボックスの幅を意味する。
そして、ステップS1703に進む。
【0117】
ステップS1703において、変数yを設定し、pの年を代入する。また、変数mを設定し、pの月を代入する。また、変数nを設定し、y年m月の日数を代入する。
そして、ステップS1704に進む。
【0118】
ステップS1704において、製品データDからy年m月のレコードの集合Rymを抽出する。
そして、ステップS1705に進む。
【0119】
ステップS1705において、変数dを設定し、1を代入する。
そして、ステップS1706に進む。
【0120】
ステップS1706において、集合Rymからy年m月d日のレコードrを取得する。
そして、ステップS1707に進む。
【0121】
ステップS1707において、変数salesを設定し、rの販売金額を代入する。なお、変数salesは、着目する年月日の販売金額を意味する。
そして、ステップS1708に進む。
【0122】
ステップS1708において、変数bheightを設定し、sales×sales/hslにより、変数bheightを算出する。なお、変数bheightは、着目する年月日の販売金額を表すグラフの高さを意味する。
そして、ステップS1709に進む。
【0123】
ステップS1709において、変数bwidthを設定し、wsl/nにより、変数bwidthを算出する。なお、変数bwidthは、着目する年月日の販売金額を表すグラフの幅を意味する。
そして、ステップS1710に進む。
【0124】
ステップS1710において、変数bを設定し、(d−1)×bwidthにより、変数bを算出する。なお、変数bは、着目する年月日の販売金額を表すグラフを配置する位置を意味する。
そして、ステップS1711に進む。
【0125】
ステップS1711において、(b,0)の位置に幅bwidth高さbheightの矩形を描画する。なお、当該矩形は、着目する年月日の販売金額を表すグラフ(販売グラフ)である。
そして、ステップS1712に進む。
【0126】
ステップS1712において、y年m月d日が、y年m月の最終日であるか否かを判定する。y年m月d日が、y年m月の最終日でない場合(ステップS1712“No”)、ステップS1713へ進む。y年m月d日が、y年m月の最終日である場合(ステップS1712“Yes”)、ステップS1313に戻る。
【0127】
ステップS1713において、変数dに、d+1を代入する(日付を1日分繰り下げる)。
そして、ステップS1706に戻る。
【0128】
(チャートリスト生成処理2)
次に、表示画面のタイプについて説明する。表示画面のタイプは、表示画面指定手段104により指定される。
図21は、チャートリストを上下2段に並べて表示した例を示す図である。上段には、2008年の実績を表すチャートリストが表示され、下段には、2007年の実績を表すチャートリストが表示されている。
図22は、実績値および計画値のチャートリストを、上下2段に並べて表示した例を示す図である。上段には、2008年の実績を表すチャートリストが表示され、下段には、2008年の計画を表すチャートリストが表示されている。
図23は、図22のチャートリストに、月末在庫が次月初在庫であることを示す補助線を表示した例を示す図である。
【0129】
図24を参照して、チャートリストを2段に並べて表示する処理を説明する。
図24は、チャートリストを上下2段に並べて表示する処理のフローチャートである。
【0130】
ステップS2101において、変数jを設定し、製品指定手段102により指定された、製品名、品番、事業グループ、カテゴリおよびブランドのいずれかまたは複数を変数jに代入して、製品属性情報jとする。
【0131】
ステップS2102において、変数Mを設定し、履歴データ001と製品属性データ002とをマージして変数Mに代入して、履歴データMとする。マージ方法については、図14のステップS1102と同様なので、説明を省略する。
また、変数y1を設定し、表示年月指定手段103により指定された表示年度を変数y1に代入して、表示年度y1とする。なお、表示年度y1は、着目する年を意味する。表示年度とは、ユーザが着目したい年度であり、生成するバランスチャートの年度である。
また、変数y2を設定し、表示年月指定手段103により指定された比較年度を変数y2に代入して、比較年度y2とする。なお、比較年度y2は、比較する年を意味する。比較年度とは、ユーザが比較したい年度であり、比較のために生成するバランスチャートの年度である。また、比較年度は、表示年度と同年度の計画である場合や、表示年度と異なる年度の実績である場合がある。
【0132】
また、変数mを設定し、表示年月指定手段103により指定された年度開始月を変数mに代入して、年度開始月mとする。なお、年度開始月mは、ユーザが着目したい月を意味する。例えば、年度開始月mとして「4」を指定すると、y1(y2)年4月から翌年3月までのバランスチャートが生成される。
また、変数Cを設定し、チャートリスト表示部の描画領域を変数Cに代入して、描画領域Cとする。そして、変数wを設定し、表示設定定義データ003を読み出し、変数wにボックスの幅を代入して、ボックスの幅wとする。
そして、ステップS2103に進む。
【0133】
ステップS2103において、表示年度y1および年度開始月mから、表示年月のリストL1を生成する。例えば、表示年度y1が「2008」であり、年度開始月mが「1」である場合は、リストL1は、2008年1月、2008年2月、・・・2008年12月となる。
そして、ステップS2104に進む。
【0134】
ステップS2104において、履歴データM、描画領域C、ボックスの幅w、リストL1から、チャートリストCL1を生成する。チャートリスト生成処理については、前記したとおりなので、説明を省略する。
そして、ステップS2105に進む。
【0135】
ステップS2105において、比較年度y2、年度開始月mから、表示年月のリストL2を生成する。リストL2については、リストL1と同様なので、説明を省略する。
そして、ステップS2106に進む。
【0136】
ステップS2106において、履歴データM、描画領域C、ボックスの幅w、リストL2から、チャートリストCL2を生成する。チャートリスト生成処理については、前記したとおりなので、説明を省略する。
そして、ステップS2107に進む。
【0137】
ステップS2107において、チャートリストCL1およびチャートリストCL2を上下に並べて表示する。
そして、処理を終了する。
【0138】
<<画面例>>
次に、本実施形態の在庫管理装置の表示部に表示される画面の具体例について説明する。
図25は、実績値および計画値のチャートリストを、上下2段に並べて表示するタイプの画面例である。
【0139】
画面上段のチャートリスト2201は、2008年の実績を表すチャートリストが表示されている。画面下段のチャートリスト2202は、2008年の計画を表すチャートリストが表示されている。これらのチャートリストは、製品指定手段102などによって指定された製品属性情報jに基づいて生成される。
コンボボックス2203,2204は、表示年月指定手段103を具現化したインターフェースである。コンボボックス2203において、表示年度および年度開始月を指定することにより、チャートリスト2201に表示されるチャートリストの表示年月が決定される。また、コンボボックス2204において、比較年度を指定することにより、チャートリスト2202に表示されるチャートリストの比較年度が決定される。
【0140】
ラジオボタン2205は、表示単位指定手段105を具現化したインターフェースである。ラジオボタン2205において、「数量」または「金額」を選択することによりチャートリスト2201,2202の表示単位が決定される。
【0141】
チェックボックス2206は、表示画面指定手段104を具現化したインターフェースである。チェックボックス2206において、「生産」および「販売」のいずれか一方または両方を選択することにより、各月のバランスチャートの日次推移のグラフ(生産グラフおよび販売グラフ)が表示される(詳細後記)。
【0142】
エリア2207には、バランスチャートの各ボックスの表示内容が描画される。図25においては、左上のボックスが「生産数」、左下のボックスが「月初在庫数」、右上のボックスが「月末在庫数」、右下のボックスが「販売数」を表している。左領域入れ替えボタン2208を押下することで、チャートリスト2201,2202に表示されるバランスチャートの左領域の上下のボックスが入れ替わる。同様に、右領域入れ替えボタン2209を押下することで、チャートリスト2201,2202に表示されるバランスチャートの右領域の上下のボックスが入れ替わる。ボックスの入れ替えに対応して、エリア2207の表示も入れ替わる。
【0143】
図26は、図25のバランスチャートに、生産グラフを表示した画面例である。
チェックボックス2206の「生産」を選択することにより、バランスチャートの生産ボックスに、生産グラフが表示される。
【0144】
図27は、図26のバランスチャートに、販売グラフを表示した画面例である。
チェックボックス2206の「生産」および「販売」を選択することにより、バランスチャートの生産ボックスおよび販売ボックスに、生産グラフおよび販売グラフが表示される。
【0145】
(変形例)
補完ボックスが表示されるということは、着目年月のある日に、返品又は在庫減耗が発生していることを意味する。
在庫管理装置の制御部は、例えば、ステップS1110“No”の直後に以下の処理を行ってもよい。すなわち、(1)履歴データ001の当月のレコードをすべて参照し、「前日の在庫実績(計画)数(金額)+当日の生産実績(計画)数(金額)−当日の販売実績(計画)数(金額)=当日の在庫実績(計画)数(金額)」という等式が成り立つか否かをレコードごとに判定する。(2)等式が成り立たないレコードの年月日を取得する(複数取得する場合もある。)(3)取得した年月日に基づいて、「○年◎月●日のデータを確認してください」のような警告文言を、表示部に表示させる。
【0146】
<<まとめ>>
本実施形態により、以下の効果を奏する。すなわち、在庫管理の適切性を評価する指標を、ボックスを用いたバランスチャートで可視化して提示するので、直感的な理解を支援することができる。
製品の生産や販売などを担当する現場の視点で行う在庫管理は、廃番管理や問題のある在庫の発見や欠品の削減を主目的とする。一方、経営者などの上層部の視点で行う在庫管理は、投資効率の改善や問題事業の発見やプロダクトミックスの効率化を主目的とする。
本実施形態におけるバランスチャートにより、経営者など上層部は、経営戦略の観点から在庫管理の適切性評価を効率的に行うことができる。
【0147】
<<その他>>
なお、前記した実施形態は、本発明を実施するための好適なものであるが、その実施形式はこれらに限定されるものではなく。本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更することが可能である。
【0148】
本実施形態では、在庫管理の適切性を評価する指標をバランスチャートで可視化したが、製品に関するデータに限るものではない。例えば、銀行口座の預金残高や、病院での待ち人数や、人口統計など、ある期間中に変化する値にも、適用できる。
【符号の説明】
【0149】
001 履歴データ(記憶部)
002 製品属性データ(記憶部)
003 表示設定定義データ(記憶部)
004 表示手段
100 チャートリスト生成手段
101 チャート生成手段
102 製品指定手段
103 表示年月指定手段
104 表示画面指定手段
105 表示単位指定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の在庫状況を表示する表示部を備え、製品の在庫管理の意思決定を支援する在庫管理装置であって、
前記在庫管理装置の記憶部は、
製品の在庫に関する複数の特徴量の履歴を示すデータを、製品を特定する識別子である品番および日付ごとに記憶しており、
前記在庫管理装置の制御部は、
入力部からの入力により、前記品番を含む製品属性情報と、着目日付と、前記在庫状況を示すバランスチャートに表示する特徴量とを、特定する制御と、
前記記憶部から、前記着目日付および前記製品属性情報を検索キーとして前記特徴量を、取得する制御と、
前記取得した特徴量を異なる2つ以上の領域に少なくとも1つずつ特徴量の大きさが視認できる形状で配置するバランスチャートを前記表示部に表示させる制御と、を実行する
ことを特徴とする在庫管理装置。
【請求項2】
前記記憶部は、
前記品番ごとに、品名、事業グループ、カテゴリおよびブランドのうち少なくとも1つ記憶しており、
前記記憶部に記憶された前記特徴量は、
生産実績数、在庫実績数および販売実績数である第1の組み合わせ、
生産計画数、在庫計画数および販売計画数である第2の組み合わせ、
生産実績金額、在庫実績金額および販売実績金額である第3の組み合わせ、または、
生産計画金額、在庫計画金額および販売計画金額である第4の組み合わせのうち、少なくともいずれか1つであり、
前記制御部は、
前記組み合わせの中から少なくとも1つを特定し、
前記記憶部が記憶している品名、事業グループ、カテゴリおよびブランドのうち少なくとも1つを、前記製品属性情報として特定する、制御を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の在庫管理装置。
【請求項3】
前記記憶部は、
前記バランスチャートを表示する大きさを定義する表示設定定義データを記憶しており、
前記制御部は、
前記表示設定定義データを参照して、前記大きさのバランスチャートを表示させる制御、
前記バランスチャートに、各領域が示す特徴量の推移を表すグラフを少なくとも1つ表示する制御、
前記バランスチャートを複数並べて前記表示部に表示させる制御のうち、少なくとも1つを実行する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の在庫管理装置。
【請求項4】
前記バランスチャートは、
上下左右の4つの領域に分かれ、
左または右の領域には、着目日付における生産実績数または生産実績金額と、着目日付の期首における在庫実績数または在庫実績金額とが上下に並べて表示され、
右または左の領域には、着目日付における販売実績数または販売実績金額と、着目日付の期末における在庫実績数または在庫実績金額とが上下に並べて表示される
ことを特徴とし、もしくは、
左または右の領域には、着目日付における生産計画数または生産計画金額と、着目日付の期首における在庫計画数または在庫計画金額とが上下に並べて表示され、
右または左の領域には、着目日付における販売計画数または販売計画金額と、着目日付の期末における在庫計画数または在庫計画金額とが上下に並べて表示される
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の在庫管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記左の領域における特徴量の和と、前記右の領域における特徴量の和とが一致しない場合は、差異を補完する領域を前記表示部に表示させる制御を実行する
ことを特徴とする請求項4に記載の在庫管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−66886(P2012−66886A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211077(P2010−211077)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000233538)株式会社 日立東日本ソリューションズ (53)
【出願人】(390008866)STARLECS株式会社 (8)