説明

地下タンクの施工方法

【課題】屋根のある状態で、地下タンク内部の掘削工程や底版および側壁を構築する工程を行うことができる。
【解決手段】地盤G中に筒体状の地中連続壁5を構築する地中連続壁構築工程と、屋根部22と屋根部22の外周に屋根部22と分離可能に設けられた分離部23とを有し工事用開口部が形成された屋根21を地盤G上に設置する屋根組立工程と、を備える。そして、屋根21を設置した後に、地中連続壁5の内部を掘削する内部掘削工程と、底版2を構築する底版構築工程と、側壁3を底版2の高さから地盤G面よりも上方の高さまで構築する側壁構築工程と、屋根部22と分離部23とを分離させ、屋根部22を側壁3の上端部3aに固定すると共に、工事用開口部を閉塞する本体屋根設置工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液化天然ガス等の低温液体の貯蔵に用いられる地下タンクの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液化天然ガス(LNG)等の低温液体の貯蔵タンクとして、底版と、底版の周囲に沿って構築された側壁と、側壁の上部を覆う屋根を備え、底版と側壁とが地中に埋設された地下タンクが使用されている。
このような、地下タンクの施工手順としては、地中に筒状の地中連続壁を構築して、地中連続壁の内部を掘削し、続いて、底版や側壁などの躯体を構築して、躯体が完成した後に屋根を構築している。このため、地中連続壁の内部の掘削工事や、底版や側壁の構築工事は、屋根がない状態で行われていて明かり工事となるため、工程が天候に左右されている。
このことは、地下タンクの施工において、工期短縮を困難にする一要因となっている。
【0003】
近年では、地下タンク内部の掘削工事や、底版や側壁の構築工事に先行して、屋根を構築する地下タンクの施工方法が行われている(例えば特許文献1乃至11参照)。これらの地下タンクの施工方法では、屋根がある状態でタンク内部の掘削工事や、底版構築工事を行うことができるため、工程が天候に左右されることが少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−279475号公報
【特許文献2】特許第3501283号公報
【特許文献3】特開2000−73385号公報
【特許文献4】特開2000−96588号公報
【特許文献5】特開昭61−21277号公報
【特許文献6】特開昭63−67380号公報
【特許文献7】特開平4−333784号公報
【特許文献8】特開平7−11807号公報
【特許文献9】特開平7−91103号公報
【特許文献10】特開2000−73384号公報
【特許文献11】特開2000−87371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地下タンクには、側壁の全部またはほとんどが、地中に埋設された地下タンクの他に、側壁の上部側が、地下タンクが構築される前の地盤面よりも上方に位置し、この側壁の上部側の外周に盛土を行うことで、地中に埋設された形態とした地下タンクがある。
【0006】
このような地下タンクは、側壁の上端部が、構築される前の地盤面よりも、例えば、10m程度上側に位置するように構築されている。
そして、このような地下タンクは、側壁の全部またはほとんどが地中に埋設された地下タンクと比べて、施工の際に、地盤の掘削量を少なくすることができると共に、地下水による揚圧力に対抗するために躯体を補強したり躯体のボリュームを大きくしたりする必要が少ないため、工期の短縮や、コストの削減を図ることができる。
【0007】
そこで、このような地下タンクの施工において、特許文献1乃至11に開示された従来の地下タンクの施工方法のように、屋根が架設された状態で地下タンク内部の掘削工事や、底版および側壁の構築工事を行うと、更なる工期の短縮およびコストの削減を図ることが可能である。
しかしながら、特許文献1乃至11に開示された従来の地下タンクの施工方法は、側壁の全部またはほとんどが、地中に埋設された地下タンクを対象としたものである。
例えば、特許文献1に記載された地下タンクの施工方法では、屋根が扇形または半円に分割され、横方向にスライド可能であるが、屋根が原地盤面よりも上方に位置する場合、横方向の移動は困難である。
また、例えば、特許文献2乃至10に記載された従来の地下タンクの施工方法では、工事中は、屋根に工事用の開口部を形成し、この開口部から資機材や土砂などの搬出入を行っているが、屋根が地盤面よりも上方に位置する場合、資機材や土砂などを高く吊上げる必要があり、かえって工期やコストがかかることになる。
【0008】
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたもので、側壁の上部側が、地下タンクが構築される前の地盤面よりも上方に位置する地下タンクの施工においても、屋根のある状態で、地下タンク内部の掘削工程や底版および側壁を構築する工程を行うことができる地下タンクの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る地下タンクの施工方法は、底版と、該底版の周囲に沿って構築された側壁と、該側壁の上部を覆う本体屋根と、を備え、前記底版と前記側壁とが地中に埋設された地下タンクの施工方法であって、地盤中に筒状の地中連続壁を構築する地中連続壁構築工程と、前記本体屋根となる屋根部と該屋根部の外周に該屋根部と分離可能に設けられた分離部とを備えた屋根を地盤上に設置する屋根組立工程と、前記屋根を設置した後に、前記地中連続壁の内部を掘削する内部掘削工程と、前記底版を構築する底版構築工程と、前記側壁を地盤面よりも上方の高さまで構築する側壁構築工程と、前記屋根部と前記分離部とを分離させ、前記屋根部を前記側壁の上端部に固定する本体屋根設置工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る地下タンクの施工方法では、前記本体屋根設置工程は、前記側壁構築工程で側壁が構築された後に、前記屋根部を上昇させて前記側壁の上端部に固定してもよい。
【0011】
また、本発明に係る地下タンクの施工方法では、前記側壁構築工程は、前記側壁の地盤面よりも下部側を構築する第1側壁構築工程と、該第1側壁構築工程の後の前記側壁の地盤面よりも上部側を構築する第2側壁構築工程と、を備え、前記本体屋根設置工程では、第1側壁構築工程と第2側壁構築工程との間に、前記屋根を上昇させて前記側壁の上端部よりも上側に仮設し、前記第2側壁構築工程の後に、前記屋根部と前記分離部とを分離すると共に、前記屋根部を前記側壁の上端部に固定してもよい。
【0012】
また、本発明に係る地下タンクの施工方法では、前記側壁構築工程は、前記側壁の地盤面よりも下部側を構築する第1側壁構築工程と、該第1側壁構築工程の後の前記側壁の地盤面よりも上部側を構築する第2側壁構築工程と、を備え、前記第2側壁構築工程では、前記側壁を下方から上方へ段階的に構築し、前記本体屋根設置工程では、前記第2側壁構築工程の段階毎に前記屋根を上昇させて直後の段階で構築される前記側壁の上端部よりも上側に仮設し、前記第2側壁構築工程の後に、前記屋根部と前記分離部とを分離すると共に、前記屋根部を前記側壁の上端部に固定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、側壁の上部側が地下タンクが構築される前の地盤面よりも上方に位置する地下タンクであっても、屋根のある状態で内部掘削工程、底版構築工程よび側壁構築工程を行うことができることにより、工事が天候に左右されることがないため、工期短縮やコスト削減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による地下タンクの一例を示す図である。
【図2】地盤改良工程および地盤表層部掘削工程を説明する図である。
【図3】ガイドウォール構築工程および地中連続壁構築工程を説明する図である。
【図4】(a)は仮設屋根設置工程を説明する図、(b)は(a)の上面図である。
【図5】(a)は仮設屋根の工事用開口部を説明する図、(b)は仮設屋根に設けられた足場を示す図、(c)は(b)に示す足場の挙動を説明する図である。
【図6】内部掘削工程を説明する図である。
【図7】底版構築工程を説明する図である。
【図8】側壁構築工程を説明する図である。
【図9】屋根設置工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による地下タンクの施工方法について、図1乃至図9に基づいて説明する。
(地下タンク)
図1に示すように、本実施形態による地下タンク1は、例えば、LNG貯蔵タンクとして使用されるものであり、地盤G面より下方に配された平面視略円形状の底版2と、略円筒状の側壁3と、側壁3の上端部3aに支持されたドーム状の本体屋根4と、を備えている。
【0016】
また、側壁3の下端部3b側の外周の地盤Gには、側壁3の外周面に沿った形状で平面視円環状の地中連続壁5が設けられていて、地中連続壁5の外周の地盤Gには、地盤改良体6が施工されている。また、地中連続壁5と地盤改良体6との間には、地下タンク1施工時に後述する屋根21(図4参照)を支持していたガイドウォール7と、側部ヒーター8とを備えている。
なお、ガイドウォール7は、地中連続壁5を構築する際の定規となるものである。
【0017】
底版2は、鉄筋コンクリート造で、掘削された地盤G上に設けられた砕石層11の上部に構築されている。底版2の内部には、地下タンク1内の温度調整を行う底部ヒーター12が設置されている。
側壁3は、鉄筋コンクリート造で、下端部3bが底版2の外縁部2aに剛に接合されて、底版2および側壁3は有底円筒状に構成されている。
この地下タンク1が施工される前の地盤面を施工前地盤面Gaとすると、側壁3は、下部側が施工前地盤面Gaの下方に位置し、上部側が施工前地盤面Gaの上方に位置している。
そして、側壁3の上部側の外周には地下タンク1の施工中に盛土されているため、地下タンク1は地下に配された構成となっている。
【0018】
地中連続壁5は、土留めとして地盤Gの崩落を防ぐ機能や止水機能を備えている。地中連続壁5は、地下タンク1の底版2よりもさらに深く構築されており、下端部5bは難透水層(洪積粘性土層)13まで達している。
地中連続壁5は、例えば、コンクリートなどで構築されている。
地盤改良体6は、例えば、サンドコンパクションパイル工法などにより形成されていて、地下タンク1の周辺の地盤Gの液状化対策として設けられている。
【0019】
本体屋根4は、平面視において円形状に形成され、側壁3の上端部3aに架設される複数の骨組材15と、骨組材15の下側に配される保冷材16と、骨組材15の上側に配される屋根材17と、を備えている。
底版2と側壁3との内面には、図示しない保冷材と、この保冷材の内側に取り付けられた例えば、ステンレス薄鋼板製のメンブレン材とを備える保冷層(内槽)18が形成されている。
【0020】
(地下タンクの施工方法)
次に、上述した地下タンク1の施工方法について図面を用いて説明する。
本実施形態による地下タンクの施工方法は、図1に示す地下タンク1が構築される地中連続壁5の内側の地盤Gの掘削や、底版2や側壁3などの躯体の構築に先行して、図4に示すように地盤G上に屋根21を配設するものである。
(地盤改良工程)
まず、図2に示すように、地下タンク1外周側の地盤Gの地盤改良を行う。
この地盤改良は、例えば、サンドコンパクションパイル工法などにより行う。地盤改良体6の形状や大きさは、地下タンク1の形状や地盤Gの強度を考慮して決定する。
【0021】
(地盤表層部掘削工程)
続いて、地下タンク1が配設される領域およびその外周近傍の地盤Gの表層部Gbを、盤下げ掘削し、周囲の地盤Gよりも低くなるようにする。
本実施形態による地下タンク1の施工方法では、屋根21(図4(a)参照)を、この地盤Gの表層部Gbが掘削された盤下げ領域に設置するため、屋根21の周囲が地盤Gで囲まれた状態となり、工事中に屋根21に当たる風を少なくすることができると共に、資機材の搬入を容易に行うことができる。ひいては、作業の安全性を高めることができる。
この地盤Gの表層部Gbの盤下げ掘削の深さは、仮設屋根21の形状や、地形などを考慮して決定する。
【0022】
(ガイドウォール設置工程)
続いて、図3に示すように、地中連続壁5を施工するための定規であると共に、屋根21(図4(a)参照)の外周部を支持する基礎でもあるガイドウォール7を設置する。
ガイドウォール7は、地中連続壁5の外側に位置する外側ガイドウォール7aと、地中連続壁5の内側に位置する内側ガイドウォール7bと、から構成されている。外側ガイドウォール7aと内側ガイドウォール7bとは、地中連続壁5を挟むように設置され、コンクリートなどで平面視円環状に形成されている。
なお、内側ガイドウォール7bは、後の内部掘削工程で、地中連続壁5内部の地盤Gとともに撤去され、外側ガイドウォール7aのみが地下タンク1完成後も地盤G中に残されている。
ガイドウォール設置工程では、外側ガイドウォール7aの内周面と内側ガイドウォール7bの外周面との間に、地中連続壁5の厚さに相当する間隔があくように、外側ガイドウォール7aおよび内側ガイドウォール7bを設置する。
【0023】
(地中連続壁設置工程)
続いて、間隔をおいて設置された外側ガイドウォール7aと内側ガイドウォール7bとの間に、地中連続壁5を構築する。
地中連続壁5の構築は、地下タンク1の設置予定箇所の周囲に沿って掘削溝を設け、その溝内に鉄筋を配してコンクリートを打設する周知技術により構築する。このとき、下端部5bが難透水層13に達するように地中連続壁5を構築する。
【0024】
(屋根組立工程)
続いて、図4(a)および(b)に示すように、屋根21を設置する。屋根21は、本体屋根4(図1参照)が部分的に構築された屋根部22と、屋根部22の外周部に設けられて屋根部22と分離可能な分離部23とから構成されている。
【0025】
屋根部22は、骨組材15と、保冷材16(図1参照)のうち、平面視で径方向中心側付近に配された保冷材16aと、屋根材17(図1参照)のうち、平面視で径方向中心側に配されると共に外周側に部分的に配された屋根材17aと、を備えている。この屋根材17aの外周側端部の位置は、側壁3の内周側近傍の位置となるように配されている。
【0026】
また、屋根部22の屋根材17aが配されていない部分には、工事用開口部24が形成されている。工事用開口部24は、施工中の資機材の搬出入や、土砂を搬出するための開口部として使用される。そして、図5(a)に示すように、この工事用開口部24は、着脱自在な覆い材25で覆われていて、必要に応じて開閉されている。
なお、この覆い材25は、例えば、シート状の部材とし、作業(使用)時には、覆い材25をロール状に巻き取って工事用開口部24を開口させ、作業休止(未使用)時には、工事用開口部24に被せて工事用開口部24を塞ぐようにしてもよい。
また、覆い材25は、例えば、工事用開口部24よりも若干大大きく組み立てられた枠体と、この枠体に張り付けられたシートを備える部材とし、この覆い材25全体を移動させて、工事用開口部24を開口させたり塞いだりするようにしてもよい。
また、屋根21の分離部23にも、別途でシート状の覆い材を設けて、屋根21全体に降雨対策が施されているようにする。
【0027】
図4に示すように、分離部23は、屋根部22の骨組材15と連結している骨組材からなり、屋根部22の骨組材15との連結側の反対側(外周部)が、外側ガイドウォール7aに支持されている。屋根部22と分離部23との連結位置は、側壁3の内周面近傍の位置とする。
屋根部22と分離部23との連結は、一体化して連結されていてもよく、またボルトなどの連結具で連結されていてもよい。なお、いずれの場合も、屋根部22と分離部23とは、分離可能に構成されている。例えば、屋根部22と分離部23とが、一体化して連結されている場合は、切断すること分離され、ボルトなどの連結具で連結されている場合は、連結具を外すことで分離される。
【0028】
そして、屋根組立工程では、分離部23の外周部が外側ガイドウォール7aに支持されるように設置すると共に、屋根部22の骨組材15を配設する。このとき、骨組材15と分離部23とを連結した状態にする。
【0029】
続いて、保冷材16aおよび屋根材17aを設置する。
保冷材16aを設置する際には、図5(b)および(c)に示すような屋根部22の半径と略同じ長さで、屋根部22の曲率にあわせて形成された足場31を使用する。この足場31は、骨組材15に支持されて屋根部22の周方向に同心円状に延びる複数のガイドレール32に摺動自在に支持されており、屋根部22の周方向に沿って回転可能に構成されている。
そして、保冷材16aの設置は、この足場31を回転させながら行う。
屋根材17aの設置は、クレーンなどで屋根材17aを吊り上げて骨組材15の上部に設置する。
【0030】
(内部掘削工程)
続いて、図6に示すように、地下タンク1の内部の地盤Gの掘削を行う。
この工程では、地中連続壁5の内側を所定の深さまで掘削する。このとき、地中連続壁5の内側に配された内側ガイドウォール7bは、この掘削と共に撤去される。
このとき、掘削機材や掘削土砂などの搬出入は、屋根21に形成された工事用開口部24から行う。
【0031】
(底版構築工程)
続いて、図7に示すように、内部掘削工程で掘削された地盤G上に底版2を構築する。
底版2の構築は、地盤G上に砕石層11を配し、その上部に鉄筋を配してコンクリートを打設することで底版2を構築する。このとき、底版2に底部ヒーター12を設置する。
底版構築工程においても資機材の搬出入は、屋根21の工事用開口部24から行う。
【0032】
(側壁構築工程)
続いて、図8に示すように、側壁3を構築する。
側壁3は、底版2と一体化させ、下端部3b側から上端部3a側に向って、所定高さ毎に鉄筋を配してコンクリートを順次打ち継いで打設することで構築する。このとき、側壁3の上端部3a側は、地盤G面よりも高いため、屋根21の分離部23を巻き込むように施工する。このとき、覆い材25(図5(a)参照)を外した状態で側壁3を施工することになる。
【0033】
(本体屋根設置工程)
続いて、図9に示すように、屋根部22を側壁3の上端部3aに設置する。
まず、側壁3の上端部3aに、屋根固定装置26を取り付ける。そして、屋根部22を側壁3の上端部3aまで上昇させるための、例えばジャッキなどの上昇装置27を所定の位置に設置する。
そして、屋根部22を上昇できるように、上昇装置27と屋根部22とをセットした後に、屋根21を屋根部22と分離部23とに分離する。また、このとき、屋根部22の保冷材16や屋根材17が施工されていない部分の一部に、保冷材16や屋根材17を施工してもよい。
【0034】
次に、上昇装置27の駆動により、屋根部22を側壁3の上端部3aの高さまで上昇させ、屋根固定装置26に固定する。これにより、屋根部22が本体屋根4となる。
また、分離部23を、側壁3のコンクリートに巻き込まれている部分を除き撤去する。
なお、外側ガイドウォール7aは、そのまま地盤G上に残す。
そして、この本体屋根設置工程と同時に、側壁3の内周側に保冷材およびメンブレンを設置する内槽工事を行う。そして、最後に、屋根の工事用開口部24に保冷材16や屋根材17を施すことで閉塞し、本体屋根4を完成させる。
【0035】
(盛土工程)
続いて、図1に戻り、側壁3の上部側外周の盛土を行う。
また、盛土工程において、側部ヒーター8の設置を行う。
このとき、側壁3の外周面が地中に埋設されるように、側壁3の上端部3a付近の高さまで盛土を行う。図1において、盛土された地盤GをGcと示す
この盛土に使用する土砂は、内部掘削工程で掘削されたの土砂とすることが好ましい。このように、内部掘削工程で掘削されたの土砂を盛土に使用することで、内部掘削工程において生じた土砂の処分量を削減することができる。
また、このとき、外側ガイドウォール7aと地中連続壁5と側壁3とが一体となっていれば、外側ガイドウォール7a上部の盛土と外側ガイドウォール7aと地中連続壁5の重量を、地下タンク1の重量として見込むことが可能となる。
なお、この盛土工程は、本体屋根設置工程と並行して行ってもよい。
【0036】
第1実施形態による地下タンク1の施工方法によれば、内部掘削工程、底版構築工程および側壁構築工程を、屋根21がある状態で行うことができるため、天候に左右されず、工期短縮を図ることができると共に、コストを削減することができる。
また、底版2や側壁3のコンクリート打設などに降雨の影響がないため、地下タンク1の品質を向上することができる。
また、本体屋根4となる屋根21の組み立てを地盤G上で行うため、作業性および安全性を向上させることができる。
また、側壁3を構築した後に屋根部22を上昇させていることにより、屋根部22の上昇作業の効率をあげることができる。
【0037】
以上、本発明による地下タンクの施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、地盤Gの表層部Gbを盤下げ掘削して、表層部Gbが掘削された地盤Gに屋根21を設置しているが、地盤Gの表層部Gbを掘削せずに仮設屋根21を設置してもよい。
また、上述した実施形態では、地下タンク1が構築される地盤Gの周囲の地盤Gを地盤改良しているが、地盤改良は行わなくてもよい。
また、上述した実施形態では、屋根部22を上昇させる際にジャッキを使用しているが、ジャッキに代わって、屋根部22の周辺に複数のクレーンを設置して、複数のクレーンで屋根4を吊って上昇させてもよい。
【0038】
また、上述した実施の形態では、側壁構築工程で側壁が構築された後に、屋根部を上昇させて側壁の上端部に固定しているが、側壁構築工程を側壁3の地盤G面よりも下方の下部側を構築する第1側壁構築工程と、第1側壁構築工程の後の側壁3の地盤G面よりも上方の上部側を構築する第2側壁構築工程とに分け、第1側壁構築工程がほぼ完了した後に、本体屋根設置工程の屋根21を上昇させて仮設する工程を行ってもよい。
【0039】
この本体屋根設置工程の屋根21を上昇させて仮設する工程は、第2側壁構築工程による側壁の打ち上がりと共に順次屋根21を上昇させ、その高さ毎に仮設してもよいし、第1側壁構築工程の後に、一気に側壁3の上端部の上側の高さまで上昇させて仮設してもよい。
このようにすることによって、分離部23を側壁3のコンクリート中に巻き込むことがなくなるため、側壁3の型枠や鉄筋に細工をする必要がなく効率的に側壁を構築することができる。
また、第2側壁構築工程においても、常に屋根がある状態で工事を行うことができるため、全工程を天候に左右されずに行うことができる。
【0040】
この場合の屋根21を順次上昇させる工程の一例について説明する。
第1側壁構築工程が完了した後に、まず、屋根21の分離部23と外側ガイドウォール7aとの連結を切る。このとき、屋根部22と分離部23とは連結されている。
そして、屋根21をジャッキやクレーンなどで所定の高さに上昇させ、この高さにスペーサなどの支持材で保持する。続いて、屋根21の下側の高さまで側壁3を構築し、更に高い位置へ屋根21を上昇させ、その高さに保持する。そして、屋根21の上昇と側壁3の構築を交互に行い、側壁3が完成したら、屋根21から分離部23を分離させて屋根部22を側壁3の上端部に設置された屋根固定装置26に固定する。
【0041】
屋根21の順次上昇させる他の方法としては、平面視円形状の屋根21の外周の周方向所定間隔で、側壁3の高さよりも高い複数の仮設柱状構造物を地盤上に立設し、この仮設柱状構造物の頂部と分離部23あるいは屋根部22との間をワイヤなどの引っ張り材で連結し、この引張材を順次引き上げることで屋根を上昇させてもよい。
【0042】
なお、上記の順次上昇の仮設柱状構造物を用いる他の方法においては、順次上昇でなくてもよい。つまり、屋根21を側壁3の上端よりも若干高い位置まで一気に上昇させることも可能である。このようにすれば、屋根上昇させる工程と第2側壁構築工程という異なる工種間の複数にわたる調整を避けることができる。
【0043】
また、上記の実施の形態では、側壁3の内周側に保冷材とメンブレンとからなる内槽の工事は、側壁3の施工が完了した後に着手するようにしている。しかし、更に工程短縮を図るためには、側壁3のコンクリートがある程度打ち上がったら、底版2での内槽工事に着手すること、さらには、側壁3のコンクリートの打ちあがりに伴って、その下方で側壁3部分の内槽工事を施工することも考えられる。この場合、側壁工事と内槽工事とが上下作業とならないように、平面視における施工箇所を異なるようにしたり、上下作業となる場合には側壁工事と内槽工事との間に防護材を設けたりするなどの安全上の配慮が必要と考えられる。
【符号の説明】
【0044】
1 地下タンク
2 底版
3 側壁
3a 上端部
3b 下端部
4 本体屋根
5 地中連続壁
6 地盤改良体
21 屋根
22 屋根部
23 分離部
24 工事用開口部
27 上昇装置
G 地盤



【特許請求の範囲】
【請求項1】
底版と、
該底版の周囲に沿って構築された側壁と、
該側壁の上部を覆う本体屋根と、を備え、
前記底版と前記側壁とが地中に埋設された地下タンクの施工方法であって、
地盤中に筒状の地中連続壁を構築する地中連続壁構築工程と、
前記本体屋根となる屋根部と該屋根部の外周に該屋根部と分離可能に設けられた分離部とを備えた屋根を地盤上に設置する屋根組立工程と、
前記屋根を設置した後に、前記地中連続壁の内部を掘削する内部掘削工程と、
前記底版を構築する底版構築工程と、
前記側壁を地盤面よりも上方の高さまで構築する側壁構築工程と、
前記屋根部と前記分離部とを分離すると共に、前記屋根部を前記側壁の上端部に固定する本体屋根設置工程と、を備えることを特徴とする地下タンクの施工方法。
【請求項2】
前記本体屋根設置工程は、前記側壁構築工程で側壁が構築された後に、前記屋根部を上昇させて前記側壁の上端部に固定することを特徴とする請求項1に記載の地下タンクの施工方法。
【請求項3】
前記側壁構築工程は、前記側壁の地盤面よりも下部側を構築する第1側壁構築工程と、該第1側壁構築工程の後の前記側壁の地盤面よりも上部側を構築する第2側壁構築工程と、を備え、
前記本体屋根設置工程では、第1側壁構築工程と第2側壁構築工程との間に、前記屋根を上昇させて前記側壁の上端部よりも上側に仮設し、前記第2側壁構築工程の後に、前記屋根部と前記分離部とを分離すると共に、前記屋根部を前記側壁の上端部に固定することを特徴とする請求項1に記載の地下タンクの施工方法。
【請求項4】
前記側壁構築工程は、前記側壁の地盤面よりも下部側を構築する第1側壁構築工程と、該第1側壁構築工程の後の前記側壁の地盤面よりも上部側を構築する第2側壁構築工程と、を備え、
前記第2側壁構築工程では、前記側壁を下方から上方へ段階的に構築し、
前記本体屋根設置工程では、前記第2側壁構築工程の段階毎に前記屋根を上昇させて直後の段階で構築される前記側壁の上端部よりも上側に仮設し、前記第2側壁構築工程の後に、前記屋根部と前記分離部とを分離すると共に、前記屋根部を前記側壁の上端部に固定することを特徴とする請求項1に記載の地下タンクの施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−7371(P2012−7371A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143781(P2010−143781)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】