説明

地下構造及び浮き上がり防止方法並びに地下構造の構築方法

【課題】 地下を地下埋設構造物(地下鉄等のシールドトンネル)が専有する敷地であっても、高層ビル、超高層ビル等の建築物の建設を可能とする。
【解決手段】 地下埋設構造物30の上部の地盤の部分に、地表から泥水掘削により地下埋設構造物30を跨ぐ一連の溝を掘削し、この溝内に補強部材を配置し、コンクリートを打設することにより溝の形状に合致した格子状の押さえ手段2を構築する。建築物35の地下部分に相当する地盤の根伐りを行う際に、押さえ手段2を先行して構築しておくことにより、地下埋設構造物30の上部の地盤が押さえ手段2によって押さえられることになるので、根伐りの際に地盤のリバウンドを抑制することができ、地下埋設構造物30の浮き上がりを防止でき、高層ビル、超高層ビル等の建築物の建設が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造及び浮き上がり防止方法並びに地下構造の構築方法に関し、特に、地下埋設構造物(地下鉄等のシールドトンネル)の上部に地下部分を有する建築物を建設するのに好適な地下構造及び浮き上がり防止方法並び地下構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高層ビル、超高層ビル等の建築物を建設する場合には、地表から地下の硬い地盤に達する孔を穿設し、この孔内にコンクリート杭を打設し、このコンクリート杭の上部に基礎梁、耐圧板等からなる地下構造を構築し、この地下構造の上部に建築物を建設することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−341149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような地下構造を構築し、その上部に建築物を建設する場合に、敷地内の地下を地下埋設構造物(地下鉄等のシールドトンネル)が専用していると、地下埋設構造物との干渉を避けるために、地下構造を構成する杭の配置、耐圧板の位置等が制約を受けることになる。このため、一般的な構造の地下構造では、建築物直下の柱荷重を処理することが困難になり、高層ビル、超高層ビル等の建築物の建設が困難になる。
【0004】
また、高層ビル、超高層ビル等の建築物に地下部分がある場合には、地下部分の掘削深度によっては、掘削後のリバウンド等によって地下埋設構造物が浮き上がる問題が生じるため、掘削深度も制約を受けることになる。
【0005】
従って、敷地の地下を地下埋設構造物が専有している場合には、地下埋設構造物を避けた部分に建築物を建設しなければならず、敷地を有効に利用することが困難になる。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、地下埋設構造物(地下鉄等のシールドトンネル)の上部に地下部分を有する高層ビル、超高層ビル等の建築物の建設を可能とし、これにより、敷地の地下を地下埋設構造物が専有している場合であっても、その敷地を有効に利用することができる地下構造及び浮き上がり防止方法並びに地下構造の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、地下埋設構造物の上部に構築されて地下埋設構造物の浮き上りを防止する地下構造であって、前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分に設けられて該地盤を押さえる押さえ手段と、前記地下埋設構造物を避けた前記地盤の部分に設けられて前記押さえ手段を支持する支持手段とを備えていることを特徴とする。
本発明による地下構造によれば、地下埋設構造物の上部の地盤の部分に設けられる押さえ手段と支持手段との協働によって地下埋設構造物の上部の地盤が押さえられ、根伐りの際に地盤のリバウンドが抑制され、地下埋設構造物が浮き上がるのが防止される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の地下構造であって、前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分には、地表から泥水掘削により前記地下埋設構造物を跨ぐ前記押さえ手段用の一連の溝が設けられるとともに、前記地下埋設構造物を避けた前記地盤の部分には前記支持手段用の孔が設けられ、前記溝及び孔内に補強部材を配置し、コンクリートを打設することにより、前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分に前記押さえ手段及び支持手段が構築されていることを特徴とする。
本発明による地下構造によれば、地下埋設構造物の上部の地盤の部分に溝及び孔を掘削する際に、泥水によって地下埋設構造物の上部の地盤が押さえられ、地下埋設構造物が浮き上がるのが防止される。また、溝及び孔の掘削後においては、溝内に構築される押さえ手段と孔内に構築される支持手段との協働によって地下埋設構造物の上部の地盤が押さえられ、根伐りの際に地盤のリバウンドが抑制され、地下埋設構造物が浮き上がるのが防止される。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の地下構造であって、前記押さえ手段は、基礎梁又は基礎梁の一部を構成していることを特徴とする。
本発明による地下構造によれば、押さえ手段によって基礎梁の全部又は一部が構成されることになり、この基礎梁の上部に建築物を支持することが可能となる。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から3の何れかに記載の地下構造であって、前記押さえ手段は、全体が格子状に形成されていることを特徴とする。
本発明による地下構造によれば、格子状の押さえ手段の下面と地盤との間の摩擦力及び側面と地盤との間の摩擦力によって地下埋設構造物の上部の地盤が押さえられるとともに、支持手段と地下埋設構造物との間の摩擦力によって押さえ手段が浮き上がるのが防止される。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1から4の何れかに記載の地下構造であって、前記支持手段は、杭、アンカー又は地中連続壁であることを特徴とする。
本発明による地下構造によれば、押さえ手段は、杭、アンカー又は地中連続壁からなる支持手段によって支持され、浮き上がりが防止されることになる。
【0012】
請求項6に係る発明は、地下埋設構造物の上部に構築されて地下埋設構造物の浮き上りを防止する浮き上がり防止方法であって、前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分に、該地盤を押さえるための押さえ手段を設けるとともに、前記地下埋設構造物を避けた前記地盤の部分に、前記押さえ手段を支持するための支持手段を設け、前記押さえ手段と前記支持手段との協働により、前記地下埋設構造物の浮き上がりを防止することを特徴とする。
本発明による浮き上がり防止方法によれば、地下埋設構造物の上部の地盤の部分に設けられる押さえ手段と、地下埋設構造物の上部の地下埋設構造物を避けた部分に設けられる支持手段との協働により、地下埋設構造物の上部の地盤が押さえられ、地下埋設構造物が浮き上がるのが防止される。
【0013】
請求項7に係る発明は、地下埋設構造物の上部の地盤の部分に、前記地下埋設構造物との間に上下方向に所定の間隔をおき、かつ前記地下埋設構造物を跨ぐように一連の溝と該溝に連通する孔とを地表から泥水掘削により掘削する掘削工程と、該掘削工程により掘削した一連の溝及び孔内に補強部材を配置し、コンクリートを打設するコンクリート打設工程とを備え、前記一連の工程を経ることにより、根伐りに先行して前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分に前記溝の形状に合致した押さえ手段と前記孔に合致した支持手段とを構築することを特徴とする。
本発明による地下構造の構築方法によれば、掘削工程によって、地下埋設構造物の上部の地盤の部分に地下埋設構造物を跨ぐ一連の溝及び溝に連通する孔が形成される。そして、コンクリート打設工程において、溝及び孔内に補強部材を配置し、コンクリート打設することにより、地下埋設構造物の上部の地盤の部分に溝の形状に合致した押さえ手段と孔の形状に合致した支持手段とが構築され、この押さえ手段と支持手段との協働により、地下埋設構造物の上部の地盤が押さえられ、地下埋設構造物の浮き上がりが防止されることになる。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明の地下構造及び浮き上がり防止方法並びに地下構造の構築方法によれば、地下を地下埋設構造物(地下鉄等のシールドトンネル)が専有している敷地の地下埋設構造物の上部の地盤を押さえ手段と支持手段との協働により押さえることができるので、地下埋設構造物の浮き上がりを防止することができる。
従って、地下埋設構造物の上部に地下部分を有する高層ビル、超高層ビル等の建築物を建築する場合に、地下埋設構造物の上部の地盤の部分に根伐りに先行して押さえ手段及び支持手段を設けておくことにより、根伐りを行う際に地盤のリバウンドを抑制することができるので、地下埋設構造物が浮き上がるのを防止でき、地下埋設構造物に割れ等が生じるのを未然に防止できる。
この結果、地下を地下埋設構造物が専有している敷地においても、高層ビル、超高層ビル等の建築物を建設することが可能となり、そのような敷地であっても有効に利用することが可能となる。
【0015】
また、地下埋設構造物の上部の地盤の部分に溝及び孔を泥水掘削によって掘削することになるので、溝及び孔を掘削する際にも泥水によって地下埋設構造物の上部の地盤を押さえることができ、地下埋設構造物が浮き上がるのを確実に防止できる。さらに、溝及び孔の掘削後においては、溝内に構築される押さえ手段と孔内に構築される支持手段との協働によって地下埋設構造物の上部の地盤を押さえることができ、根伐りの際の地盤のリバウンドを抑制でき、地下埋設構造物が浮き上がるのを防止できる。
【0016】
さらに、押さえ手段によって基礎梁の全部又は一部を構成することにより、押さえ手段の上部に建築物を支持することが可能となる。
【0017】
さらに、押さえ手段を格子状とすることにより、格子状の押さえ手段の下面と地盤との間の摩擦力及び側面と地盤との間の摩擦力によって地下埋設構造物の上部の地盤を押さえることができるとともに、支持手段と地下埋設構造物との間の摩擦力によって押さえ手段が浮き上がるのを防止できる。従って、地下埋設構造物の上部の地盤を確実に押さえることができ、地下埋設構造物の浮き上がりを確実に防止できる。
【0018】
さらに、支持手段を杭、アンカー又は地中連続壁で構成することにより、押さえ手段を杭、アンカー又は地中連続壁からなる支持手段によって支持することができる。従って、地盤の状態に応じて杭、アンカー又は地中連続壁を使用することができるので、地盤の状態に影響されずに地下埋設構造物の上部の地盤を確実に押さえることができ、地下埋設構造物の浮き上がりが防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図10には、本発明による地下構造及び浮き上がり防止方法並びに地下構造の構築方法の一実施の形態が示されていて、図1は地下構造の全体を示す平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は押さえ手段及び支持手段の力の作用関係を示す説明図、図5はメガ梁の断面図、図6はスーパーメガ梁の断面図、図7〜図10は地下構造の構築手順を示す説明図である。
【0020】
すなわち、この地下構造1は、地下埋設構造物30(地下鉄等のシールドトンネル等)に地下を専用された敷地において、地下部分を有する高層ビル、超高層ビル等の建築物35を建設する場合に有効となるものであって、地下埋設構造物30の上部の地盤26の部分に構築される押さえ手段2を備えている。
【0021】
押さえ手段2は、地下構造1を構築する際に、地下構造1の他の部分に先行して地表27から構築され、この押さえ手段2を地下埋設構造物30の上部に先行して構築することにより、建築物35の地下部分に相当する部分の根伐りを行う際に、地盤26のリバウンドを抑制することができ、地下埋設構造物30が浮き上がるのを防止できる。
【0022】
押さえ手段2は、図1〜図3に示すように、地下埋設構造物30との間に上下方向に所定の間隔をおき、かつ地下埋設構造物30を水平方向に跨ぐように格子状に構築される。そして、この押さえ手段2の上部に、図2及び図3に想像線で示すように、更に上部分11を一体に構築することにより、格子状をなす基礎梁3の全体が構築され、この基礎梁3によって地下埋設構造物30の上部に建設される建築物35の地下部分となる地下構造1の一部が構成される。なお、基礎梁3は、押さえ手段2のみによって構成しても良い。
【0023】
押さえ手段2は、図1に示すように、複数の梁5を組み合わせることにより格子状に形成される。これらの複数の梁5のうちの一部の梁5は、長手方向の一端部又は両端部が地下埋設構造物30の外側に打設されている支持手段8によって支持され、この支持手段8によって押さえ手段2が地盤26の状態に影響されることなく、地下埋設構造物30の上部の所定の位置に位置決めされる。
【0024】
支持手段8としては、押さえ手段2を支持できるものであれば特に制限はなく、本実施の形態においては、杭9と地中連続壁10とを組み合わせて使用している。なお、図示はしないが、支持手段8としてアンカーを使用し、アンカーによって押さえ手段2を支持するように構成しても良い。
【0025】
図4に基づいて、押さえ手段2に作用する力の関係を説明する。図4において、格子状の押さえ手段2には、各梁5の側面と地盤との間に矢印の方向(図中上方向)への摩擦力aが作用し、各梁5の下面と地盤との間に矢印の方向(図中上方向)への摩擦力bが作用し、この摩擦力aとbとの和と相対する摩擦力cが各杭9の周面と地盤との間に矢印方向(図中下方向)へ作用し、これらの力の協働によって押さえ手段2が地盤の所定の位置に支持されている。押さえ手段2によって基礎梁3の一部又は全部が構成される。
【0026】
押さえ手段2を構成する複数の梁5は、図1〜図3、図5及び図6に示すように、梁背の低いメガ梁7とメガ梁7よりも梁背の高いスーパーメガ梁6とを備えている。メガ梁7は、上部分11のコンクリート15内部に補強部材12である鉄筋が埋設され、スーパーメガ梁6は、上部分11のコンクリート15内部に補強部材12である鉄筋及び鉄骨が埋設されている。そして、これらのメガ梁7とスーパーメガ梁6とを、建築物35の種類に応じて適宜に組み合わせることにより、地下埋設構造物30の専有幅の大小に関わらず、地下埋設構造物30の上部に建設される建築物35を安定して支持することができる。
【0027】
スーパーメガ梁6及びメガ梁7は、それらを支持する支持手段8(杭9及び地中連続壁10)の間隔が長く設定されるので、強度をもたせるために、通常の基礎梁よりも梁背を高く設定している。例えば、この実施の形態においては、スーパーメガ梁6の梁背を12.0mに設定し、メガ梁7の梁背を7.0mに設定し、通常の基礎梁の梁背(3.5m)よりも高く設定している。そして、このような梁背にスーパーメガ梁6及びメガ梁7を設定することにより、地下埋設構造物30の上部に建設される建築物35を安定して支持することができる。
【0028】
次に、上記のような構成の押さえ手段2を備えた地下構造1の構築方法について説明する。
(1) 掘削工程
図7に示すように、地下埋設構造物30の上部の地盤26の部分に、地下埋設構造物30との間に上下方向(鉛直方向)に所定の間隔をおき、かつ地下埋設構造物30を水平方向に跨ぐように、地表27から泥水掘削によって所定の幅、深さの複数の溝13を掘削し、一連の格子状の溝13を形成する。また、溝13の掘削と同時に又は溝13の掘削に先行して地下埋設構造物30を避けた部分に複数の孔20を掘削する。
【0029】
この場合、掘削によって地盤26から土を取り除いても、溝13及び孔20内には泥水14が充填されているので、土圧が減少することによって地盤26がリバウンドを起こすようなことはなく、地盤26のリバウンドによって地下埋設構造物30が浮き上がるようなことはない。
【0030】
(2) コンクリート打設工程
図8に示すように、掘削工程において掘削した溝13内の底部に上筋、下筋等からなる補強部材4を挿入し、所定の位置に位置決めする。また、孔20内にも鉄筋からなる補強部材22を挿入し、所定の位置に位置決めする。そして、溝13内の底部及び孔20にコンクリート(水中コンクリート)15を打設し、溝13の底部に格子状の押さえ手段2を形成し、孔20内に支持手段8である杭9を形成する。
【0031】
この場合、押さえ手段2の複数の梁5は、図1に示すように、一端部又は両端部が地下埋設構造物30の外側に地下埋設構造物30を避けて打設されている杭9又は地中連続壁10によって支持される。これにより、押さえ手段2は、地下埋設構造物30の上部の所定の位置に位置決めされる。
【0032】
ここで、押さえ手段2を構成する各梁5の長さが長く、各梁5の全体を一度に構築することが困難な場合には、各梁5を長手方向に複数に分割し、分割梁同士を剛接ジョイント工法によって互いに連結する。
【0033】
そして、押さえ手段2を構築した後に、図9に示すように、押さえ手段2の上部に位置する建築物35の地下構造1となる地盤26の部分の根伐りを行う。この場合、地下埋設構造物30の上部に位置する地盤26は、押さえ手段2によって押さえられているので、地盤26のリバウンドが抑制され、地下埋設構造物30が浮き上がるのが防止され、地下埋設構造物30に割れ等が生じるのが防止される。
【0034】
そして、押さえ手段2の上部に型枠(図示せず)を配置し、補強部材12である鉄筋及び鉄骨を所定の位置に配置し、コンクリート15を打設ことにより押さえ手段2の上部に上部分11を一体に形成し、格子状の基礎梁3の全体を構築する。
【0035】
そして、図10に示すように、押さえ手段2を一部に備えた基礎梁3の上部に建築物35の地下部分を構築することにより、押さえ手段2を一部に備えた基礎梁3を一部とする地下構造1が地下埋設構造物30の上部に構築される。そして、この地下構造1の上部に建築物35の地上部分36を構築することにより、地下埋設構造物30の上部に高層ビル、超高層ビル等の建築物35が建設される。この場合、杭9を打設することができない部分の柱軸力は、スーパーメガ梁6及びメガ梁7を介して杭9に伝達されることになるので、建築物35を安定して支持することができることになる。
【0036】
上記のように構成したこの実施の形態による地下構造1及び浮き上がり防止方法並びに地下構造の構築方法にあっては、地下を地下埋設構造物30(地下鉄等のシールドトンネル)に専有された敷地に地下部分を有する高層ビル、長高層ビル等の建築物35を建設する場合に、地下部分の根伐りに先行して、地下埋設構造物30の上部の地盤26の部分に地表27から押さえ手段2を構築し、この押さえ手段2によって地盤26を押さえるように構成したので、根伐りの際に地盤26がリバウンドを起こすようなことはない。従って、地盤26のリバウンドによって地下埋設構造物30が浮き上がり、地下埋設構造物30に割れ等の問題が生じるのを未然に防ぐことができる。
【0037】
また、地下埋設構造物30の存在によって杭9又は地中連続壁10を打設できない部分においては、地下埋設構造物30を跨ぐ押さえ手段2を一部に備えた基礎梁3のスーパーメガ梁6及びメガ梁7の梁背を長く設定し、地下埋設構造物30の外側に打設されている杭9又は地中連続壁10によって支持しているので、建築物35からの柱軸力を押さえ手段2を一部に備えた基礎梁3を介して杭9に伝達させることができる。従って、高層ビル、超高層ビル等の建築物35を安定して支持することができる。
【0038】
なお、前記の説明においては、押さえ手段2を格子状に形成したが、格子状に限らず、他の形状に形成しても良い。要は、根伐りの際に地盤26を押さえて地下埋設構造物30の浮き上がりを防止するとともに、建築物35の柱軸力を杭9に伝達させることができる形状であれば良い。
【0039】
また、前記の説明においては、地下埋設構造物30として地下鉄等のシールドトンネルを挙げたが、これに限らず、他の地下埋設構造物に本発明による地下構造及び浮き上がり防止方法並びに地下構造の構築方法を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による地下構造の一実施の形態を示した平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】押さえ手段及び支持手段に作用する力の関係を示した説明図である。
【図5】図1のメガ梁の断面図である。
【図6】図1のスーパーメガ梁の断面図である。
【図7】本発明による地下構造の構築方法を示した説明図であって、掘削工程を示した説明図である。
【図8】本発明による地下構造の構築方法を示した説明図であって、コンクリート打設工程を示した説明図である。
【図9】押さえ手段の上部に上部分を構築した状態を示した説明図である。
【図10】本発明による地下構造の全体を構築し、その上部に建築物の地上部分を建設した状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 地下構造 2 押さえ手段
3 基礎梁 4、12、22 補強部材
5 梁 6 スーパーメガ梁
7 メガ梁 8 支持手段
9 杭 10 地中連続壁
11 上部分 13 溝
14 泥水 15 コンクリート(水中コンクリート)
20 孔 26 地盤
27 地表 30 地下埋設構造物
35 建築物 36 地上部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下埋設構造物の上部に構築されて地下埋設構造物の浮き上りを防止する地下構造であって、
前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分に設けられて該地盤を押さえる押さえ手段と、前記地下埋設構造物を避けた前記地盤の部分に設けられて前記押さえ手段を支持する支持手段とを備えていることを特徴とする地下構造。
【請求項2】
前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分には、地表から泥水掘削により前記地下埋設構造物を跨ぐ前記押さえ手段用の一連の溝が設けられるとともに、前記地下埋設構造物を避けた前記地盤の部分には前記支持手段用の孔が設けられ、前記溝及び孔内に補強部材を配置し、コンクリートを打設することにより、前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分に前記押さえ手段及び支持手段が構築されていることを特徴とする請求項1に記載の地下構造。
【請求項3】
前記押さえ手段は、基礎梁又は基礎梁の一部を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の地下構造。
【請求項4】
前記押さえ手段は、全体が格子状に形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の地下構造。
【請求項5】
前記支持手段は、杭、アンカー又は地中連続壁であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の地下構造。
【請求項6】
地下埋設構造物の上部に構築されて地下埋設構造物の浮き上りを防止する浮き上がり防止方法であって、
前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分に、該地盤を押さえるための押さえ手段を設けるとともに、前記地下埋設構造物を避けた前記地盤の部分に、前記押さえ手段を支持するための支持手段を設け、前記押さえ手段と前記支持手段との協働により、前記地下埋設構造物の浮き上がりを防止することを特徴とする浮き上がり防止方法。
【請求項7】
地下埋設構造物の上部の地盤の部分に、前記地下埋設構造物との間に上下方向に所定の間隔をおき、かつ前記地下埋設構造物を跨ぐように一連の溝と該溝に連通する孔とを地表から泥水掘削により掘削する掘削工程と、該掘削工程により掘削した一連の溝及び孔内に補強部材を配置し、コンクリートを打設するコンクリート打設工程とを備え、
前記一連の工程を経ることにより、根伐りに先行して前記地下埋設構造物の上部の地盤の部分に前記溝の形状に合致した押さえ手段と前記孔に合致した支持手段とを構築することを特徴とする地下構造の構築方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−112148(P2006−112148A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301449(P2004−301449)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)