説明

地下構造物用蓋

【課題】無線で位置情報やメンテナンス情報等の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体を蓋本体に設置した場合に、その情報記憶媒体と通信するための電磁波に乱れが生じにくく安定した通信を行うことができる地下構造物用蓋を提供すること。
【解決手段】蓋本体200とこの蓋本体200を開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋において、蓋本体200を樹脂で形成し、蓋本体200の裏面に設けた凹部内に、無線で位置情報やメンテナンス情報等の情報の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体240を配置し、凹部の底面側に固定部材250を嵌め込んだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋本体とこの蓋本体を開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋に関し、とくに、蓋本体に無線で位置情報やメンテナンス情報等の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体を配置した地下構造物用蓋に関する。
【0002】
なお、本願明細書でいう「地下構造物用蓋」とは、下水道における地下埋設物,地下構造施設等と地上とを通じる開口部を閉塞するマンホール蓋,大型鉄蓋,汚水桝蓋、電力・通信における地下施設機器や地下ケーブル等を保護する開閉可能な共同溝用鉄蓋,送電用鉄蓋,配電用鉄蓋、上水道やガス配管における路面下の埋設導管およびその付属機器と地上とを結ぶ開閉扉としての機能を有する消火栓蓋,制水弁蓋,仕切弁蓋,空気弁蓋,ガス配管用蓋,量水器蓋等を総称する。
【背景技術】
【0003】
地下構造物用蓋においては、その位置情報やメンテナンス情報等の各種の情報を迅速に把握できるようにすることが望まれており、そのための手段として特許文献1には、蓋またはその近傍に無線応答タグを埋設し、蓋を開けたり台帳を使用せずとも各種の情報を得ることができるようにした地下埋設配管設備が開示されている。
【0004】
また、このような無線応答タグ等の無線で位置情報やメンテナンス情報等の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体を蓋本体に設置する技術として、特許文献2には、蓋本体の表面近傍に設けた小径孔または空所に電源不要な半導体記憶素子を挿入し、カバーで被覆することが開示されている。
【特許文献1】特開平4−19485号公報
【特許文献2】特開平9−125433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地下構造物用蓋の蓋本体は、一般的に鋳鉄製であり、この鋳鉄製の蓋本体に、無線で位置情報やメンテナンス情報等の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体を設置すると、情報記憶媒体と、読み書きする装置との間の通信を担う電磁波に乱れが生じ、安定して通信ができない場合があった。また、安定して通信するためには、大きな穴(空間)を設けて鋳鉄製の蓋本体との間隔をあけて、そこに情報記憶媒体を設置し、周囲または上面を電磁波が透過する合成樹脂等で覆う必要があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、無線で位置情報やメンテナンス情報等の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体を蓋本体に設置した場合に、その情報記憶媒体と通信するための電磁波に乱れが生じにくく安定した通信を行うことができる地下構造物用蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蓋本体とこの蓋本体を開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋において、前記蓋本体は樹脂で形成され、前記蓋本体の裏面に設けた凹部内に、無線で位置情報やメンテナンス情報等の情報の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体が配置され、前記凹部の底面側に固定部材が嵌め込まれたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、蓋本体とこの蓋本体を開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋において、前記蓋本体は、周囲に縁部を有し、この縁部に囲まれた部分を窪部とした鋳鉄製のフレームと、前記フレームの窪部に装着可能な樹脂製のベースプレートとを備え、前記ベースプレートの裏面に設けた凹部内に、無線で位置情報やメンテナンス情報等の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体が配置され、前記凹部の底面側に固定部材が嵌め込まれたことを特徴とする。
【0009】
このように、情報記憶媒体を樹脂製の蓋本体あるいはベースプレートの裏面に設けた凹部内に配置することで、情報記憶媒体と通信するための電磁波が蓋本体によって影響を受けて乱れることはなく、安定して通信を行うことができる。また、凹部の底面側の開口部は、固定部材を嵌め込むことによって塞がれるので、凹部内への浸水が防止され、安定した通信を維持できる。さらに、凹部の大きさは情報記憶媒体を配置できる必要最小限の大きさでよく、省スペースを図ることができる。
【0010】
本発明において、情報記憶媒体は、固定部材の上面に載置された状態で前記凹部内に配置することが好ましい。これによって、固定部材の厚みや凹部内への嵌め込み深さを調整することにより、凹部内における情報記憶媒体の配置高さを適宜調整することができる。
【0011】
また、固定部材は弾性を有していることが好ましい。これによって、情報記憶媒体を運搬中の衝撃や、設置後の車両通過時に発生する衝撃から保護することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線で位置情報やメンテナンス情報等の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体を蓋本体に設置した場合に、その情報記憶媒体と通信するための電磁波に乱れが生じにくく安定した通信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の地下構造物用蓋の一実施例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0015】
図1に示す地下構造物用蓋100は仕切弁蓋であり、蓋本体200と、この蓋本体200を蝶番機構300を介して開閉可能に支持する受枠400とを備えて構成されている。
【0016】
図2は、蓋本体200の構成を示す分解斜視図である。蓋本体200は、周囲に縁部211を有し、この縁部211に囲まれた部分を窪部212として略盆形状に形成した鋳鉄製のフレーム210と、このフレーム210の窪部212に装着可能な樹脂製のベースプレート220とを備え、ベースプレート220はフレーム210の窪部212に嵌め込まれて一体に固定される。
【0017】
ベースプレート220は、耐摩耗性、耐衝撃性および耐圧縮強度を有するポリカーボネート等の熱可塑性樹脂製で、射出成形等によって成形され、その表面には、スリップ防止およびデザインとして複数の凸部221が設けられている。また、ベースプレート220の表面には、弁栓類の種類、口径、流体の種類、流れ方向、管理番号等の情報を表示する各種の情報表示プレート230が情報伝達媒体として取り付けられる。さらに、ベースプレート220の裏面には、無線で位置情報やメンテナンス情報等の読み取りおよび書き込みが可能なICタグ240が情報記憶媒体として取り付けられる。
【0018】
ICタグ240は、具体的には、図3に示すベースプレート220の裏面に円形リブによって形成した凹部222に挿入され、その下側から図2に示す弾性を有する樹脂発泡体からなる固定部材250を嵌め込むことで、図4に示すように、固定部材250の上面に載置された状態で凹部222内の所定の高さ位置に配置される。そして、ICタグ240の装着位置がベースプレート220の表面側からわかるように、ベースプレート220の表面には、ICタグ240の装着位置に対応する位置に図2に示すICタグ位置表示マーク223が設けられている。
【0019】
実施例ではICタグ240として、通信距離が数10cm、通信周波数が13.56MHzの電磁誘導方式のパッシブタグを使用した。ただし、本発明において情報記憶媒体はICタグに限定されるものではなく、無線で位置情報やメンテナンス情報等の情報の読取り、書込みが可能なものであればよい。いずれにしても、固定部材250の材質は、電磁波の乱れを防止する点からは、樹脂等の非磁性材料とすることが好ましい。
【0020】
図5は、図1(a)のB−B断面による蓋本体200の要部の拡大断面図である。同図に示すように、ベースプレート220の外周には、フレーム210の縁部211内径よりわずかに径大となる四分割円状の突起部224が全周にわたり形成されており、この突起部224がフレーム210の縁部211内周面に確実に当接することで、ベースプレート220がフレーム210に確実に嵌め合わされて一体化される。また、ベースプレート220とフレーム210との一体化をより確実にするため、フレーム210の裏面側からタッピングネジ260を装着し、ベースプレート220とフレーム210とを締結するようにしている。なお、タッピングネジ260を取り外せば、ベースプレート220をフレーム210から取り外せるようになり、ベースプレート220のみの交換が可能となる。
【0021】
ここで、突起部224の縦断面形状は、ベースプレート220を押し込んだときにフレーム210の縁部211内周面に当接しながらスムーズに嵌り込むように、四分割円状や半円状等の曲面状とすることが好ましい。また、突起部224を設ける位置は、雨水や土砂の流入を防止するため、ベースプレート220外周面の上部側が好ましい。
【0022】
以上のとおり、本発明においては、樹脂製のベースプレート220に設けた凹部内に情報記憶媒体(ICタグ240)を配置したので、情報記憶媒体と通信するための電磁波が蓋本体によって影響を受けて乱れることはなく、安定して通信を行うことができる。
【0023】
なお、実施例では、蓋本体200を鋳鉄製のフレーム210と樹脂製のベースプレート220とから構成したが、蓋本体を樹脂製のベースプレートのみから構成し、この樹脂製のベースプレートを受枠で開閉可能に支持するようにしてもよい。また、実施例では、本発明を仕切弁蓋に適用したが、マンホール蓋や消火栓蓋などのその他の地下構造物用蓋にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の地下構造物用蓋の一実施例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】図1に示す地下構造物用蓋の蓋本体の構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1に示す地下構造物用蓋の蓋本体を構成するベースプレートの裏面図である。
【図4】ICタグの装着状態を示す要部の断面図である。
【図5】図1(a)のB−B断面による蓋本体の要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
100 地下構造物用蓋
200 蓋本体
210 フレーム
211 縁部
212 窪部
220 ベースプレート
221 凸部
222 凹部
223 ICタグ位置表示マーク
224 突起部
230 情報表示プレート
240 ICタグ
250 固定部材
260 タッピングネジ
300 蝶番機構
400 受枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋本体とこの蓋本体を開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋において、
前記蓋本体は樹脂で形成され、
前記蓋本体の裏面に設けた凹部内に、無線で位置情報やメンテナンス情報等の情報の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体が配置され、前記凹部の底面側に固定部材が嵌め込まれたことを特徴とする地下構造物用蓋。
【請求項2】
蓋本体とこの蓋本体を開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋において、
前記蓋本体は、周囲に縁部を有し、この縁部に囲まれた部分を窪部とした鋳鉄製のフレームと、前記フレームの窪部に装着可能な樹脂製のベースプレートとを備え、
前記ベースプレートの裏面に設けた凹部内に、無線で位置情報やメンテナンス情報等の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体が配置され、前記凹部の底面側に固定部材が嵌め込まれたことを特徴とする地下構造物用蓋。
【請求項3】
前記情報記憶媒体が、固定部材の上面に載置された状態で前記凹部内に配置された請求項1または請求項2に記載の地下構造物用蓋。
【請求項4】
前記固定部材は、弾性を有している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の地下構造物用蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−84408(P2010−84408A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254004(P2008−254004)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(505093769)株式会社ライセンス&プロパティコントロール (16)
【Fターム(参考)】