説明

地下構造物用親子蓋

【課題】小蓋体のがたつきや食い込みを防止することができる地下構造物用親子蓋を提供する。
【解決手段】地下構造物用親子蓋は、受枠(4)、親蓋体(10)及び親蓋体(10)内に嵌合して支持される小蓋体(18)を備え、親蓋体(10)は小蓋体(18)を嵌合支持する小蓋受部(20)と、小蓋受部(20)の外側に形成された環状溝(34)とを有し、環状溝(34)は親蓋体(10)の撓みを吸収し、小蓋受部(20)の内径の拡径を弾性変形により許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物の地上開口を開閉可能に閉塞する蓋、特に、親子の蓋体を備えた地下構造物用親子蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
地下構造物用親子蓋は、地下構造物の地上開口から地下構造物内への機材搬入や、点検作業員の入出に使用される。機材の搬入には約900mm〜約1200mmの直径の大径開口が要求されるのに対し、通常の点検時、点検作業員の入出には約600mmの直径の小径開口で十分である。
それ故、この種の親子蓋は、前記大径開口を確保する受枠と、この受枠に嵌合して支持され、この受枠を開閉可能に閉塞する親蓋体と、この親蓋体に前記小径開口を確保すべく設けられた小蓋受部に嵌合して支持され、小蓋受部を開閉可能に閉塞する小蓋体とから構成され、受枠への親蓋体の支持や、親蓋体への小蓋体の支持は何れもテーパ嵌合によって得られている(特許文献1の図1,2参照)。
【0003】
このような親子蓋によれば、機材の搬入の際には受枠に対し、親蓋体を開いて大径開口を確保でき、これに対し、点検作業員の入出の際には親蓋体に対し、小蓋体を開いて小径開口のみを確保することができる。
【特許文献1】特開2005-16132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような親子蓋の場合、親蓋体には小蓋受部、即ち、小径開口が形成されているために全体的にリング形状をなし、その剛性は円形の蓋体に比べて弱いものとなる。このため、親子蓋の設置箇所が道路上である場合、車両が親子蓋上を通行し、車両の重量が親子蓋に加わると、親蓋体に撓みを生じさせることがある。
このような撓みは親蓋体の小蓋受部を僅かに変形させることから、小蓋受部に対する小蓋体の良好なテーパ嵌合が解除され、その繰り返しにより、親蓋体に対して小蓋体のがたつきが発生し易く、これは親子蓋に特有の課題である。
【0005】
一方、親蓋体に上述の撓みが発生するのを阻止するため、親蓋体全体の剛性を高めることが考えられる。しかしながら、この場合、小蓋体に衝撃的な荷重が加わり、小蓋体が小蓋受部に一旦食い込んでしまうと、小蓋受部からの小蓋体の開放を困難にし、その開放不良をもたらす。
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、親蓋体の撓みに起因した小蓋体のがたつき、更には過剰な食い込みに起因した小蓋体の開放不良を防止することができる地下構造物用親子蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の地下構造物用親子蓋は、受枠と、この受枠に嵌合して支持され、前記受枠を開閉可能に閉塞する親蓋体と、前記親蓋体の一部を円形に開口させた小蓋受部に嵌合して支持され、前記小蓋受部を開閉可能に閉塞する小蓋体とからなり、前記親蓋体に前記小蓋受部の内周縁よりも外側に位置して設けられた上面に開口する溝を備えている(請求項1)。
【0007】
上述の請求項1の地下構造物用親子蓋によれば、親蓋体に前述した撓みが生じても、この撓みは親蓋体の溝により吸収される。即ち、溝は親蓋体の変形の影響が小蓋受部に伝播するのを防ぎ、親蓋体の撓みに拘わらず小蓋受部への小蓋体の嵌合支持を良好に維持する。
また、溝は、小蓋受部における内径の拡径を弾性変形により許容し、小蓋体に衝撃的な荷重が加わっても、小蓋受部に小蓋体が過剰に食い込むことを防止する。
【0008】
好ましくは、溝は小蓋受部の全周に亘って設けられている(請求項2)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1,2の地下構造物用親子蓋は、親蓋体に撓みが生じても、この撓みを親蓋体の溝により吸収することで、小蓋受部に対する小蓋体の嵌合支持を良好に維持でき、小蓋体のがたつきを確実に防止することができる。
また、小蓋受部の拡径が弾性変形により許容されているので、小蓋受部に小蓋体が過剰に食い込むことを防止でき、小蓋体の円滑な開閉が保証される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図3は、第1実施例の地下構造物用親子蓋を示す。
親子蓋2は受枠4を介して地下構造物(図示しない)の地上開口部上に設置され、受枠4は円形のリング形状をなし、その内周面の上部が下方に向けて縮径する受枠側雌テーパ面6(図2)に形成されている。なお、受枠4はその下端外周に円形のフランジ8を有し、このフランジ8を介して地上開口部に固定可能となっている。
【0011】
親子蓋2は円形の親蓋体10を有し、図1〜図3に示す状態あるとき、親蓋体10は受枠4の上部内周面に形成された受枠側雌テーパ面6に嵌合されて受枠4に支持され、この受枠4を閉塞している。即ち、親蓋体10の外周面は受枠側雌テーパ面6に合致可能な親蓋側雄テーパ面12として形成されている。また、親蓋体10は受枠4に親蓋ヒンジ機構14を介して連結され、この親蓋ヒンジ機構14を中心として回動し、受枠4に対して開閉可能となっている。
【0012】
そして、親蓋体10には円形の開口16が偏心して形成され、この開口16は親蓋体10の直径方向でみて、親蓋体10の中心から親蓋ヒンジ機構14とは反対側にずれて位置付けられている。図1〜図3に示す状態にあるとき、開口16には小蓋体18が嵌合され、この小蓋体18は開口16を閉塞している。
より詳しくは、図4及び図5を参照すればより明らかなように、開口16の内周面を含む親蓋体10の領域は小蓋受部20として形成され、この小蓋受部20は開口16の内周面の一部に下方に向けて縮径する小蓋受側雌テーパ面22を有する。一方、小蓋体18はその外周面の一部に小蓋受側雌テーパ面22と合致する小蓋側雄テーパ面36を有する。従って、小蓋体18は親蓋体10の開口16、即ち、小蓋受部20内にテーパ嵌合されて、小蓋受部20に支持されている。
【0013】
また、小蓋体18は親蓋体10に小蓋ヒンジ機構24を介して連結され、この小蓋ヒンジ機構24を中心として回動することで、小蓋受部20(開口16)を開閉可能としている。ここで、親蓋ヒンジ機構14及び小蓋ヒンジ機構24は親蓋体10の直径方向に互いに離間し配置されている(図2,3参照)。
なお、図4中、参照符号26は小蓋ヒンジ機構24の一部をなすヒンジブラケットを示しており、このヒンジブラケット26は小蓋受部20の内周から突出して形成されている。
【0014】
また、ヒンジブラケット26の両側には梯子支持ブラケット28が配置され、これら梯子支持ブラケット28もまた小蓋受部20の内周から突出して形成されている。梯子支持ブラケット28には梯子30が上方向に回動可能に装着されている。
親蓋体10に対し、小蓋体18が小蓋ヒンジ機構24を介して回動されたとき、即ち、小蓋受部20が開かれたとき、小蓋受部20から梯子30を直立させることができる。点検作業員は、梯子30及び地下構造物の内面に設置した昇降ステップ(図示しない)を利用して地下構造物に対して入出することができる。
【0015】
なお、図5中、参照符号32は親蓋体10の下面に設けられた径方向リブを示し、この径方向リブ32は図3から明らかなように、親蓋体10の小蓋受部20の外側にて、その周方向に間隔を存して配置されている。
そして、図4及び図5に最も良く示されているように、親蓋体10は環状溝34を有し、この環状溝34は小蓋受部20の内周、即ち、開口16よりも大径で且つ開口16と同心に形成されている。更に、本実施例の場合、環状溝34は親蓋体10の上面にて開口し、その溝深さは前述した小蓋体18の外周面高さの2倍以上であるのが好ましい。
【0016】
図5から明らかなように環状溝34は小蓋受部20の根元部分を除き、親蓋体10の外周部と小蓋受部20とを分離し、親蓋体10の変形の影響が小蓋受部20に伝播することを防ぐ。また、環状溝34は小蓋受部20における内径の拡径を弾性変形により許容する。ここで、環状溝34に要求される幅は後述の説明から明らかになる。
次に、図6を参照し、環状溝34の働きについて説明する。
【0017】
なお、図6は前述した親蓋体10及び小蓋体18の一部を簡略化して示しており、図6中、D,Wは環状溝33の深さ及び幅を示し、そして、Hは小蓋体18の外周面高さを示す。
図6(a)中の矢印で示されるように、親蓋体10の小蓋受部20に向けて小蓋体18が上方から下降し、そして、小蓋受側雌テーパ面22と小蓋側雄テーパ面36とが互いに密着した状態で、小蓋受部20内に小蓋体18が嵌合支持されたとき、図6(b)中の矢印で示されるように小蓋体18はその自重及び通過車両の荷重等により、小蓋受枠部20を径方向外側に向けて押圧することから、小蓋受部20は僅かに弾性変形する。ここでの弾性変形は環状溝34における上端部の幅Wを減少させる。
【0018】
なお、図6(a),(b)の親蓋体10は前述の受枠4内に嵌合支持された状態にある。
図6(b)に示す状態にて、親子蓋2上を車両が通行し、車両の重量により親蓋体10に撓みが生じても、このような親蓋体10の撓みは、環状溝34により吸収されることから、親蓋体10の撓みに拘わらず、小蓋受部20と小蓋体18との間のテーパ嵌合は安定して維持され、小蓋受部20に対する小蓋体18のがたつきが確実に防止される。即ち、親蓋体10に撓みが生じたとしても、親蓋体10の外周部と小蓋受部20との接触を回避するのに十分な幅Wが環状溝34に与えられている。
【0019】
一方、前述したように小蓋受部20は弾性変形可能であるから、小蓋体18に上方から衝撃力が加わっても、小蓋受部20が弾性変形し、その復元性によって小蓋受部20に対する小蓋体18の過剰な食い込みは阻止される。それ故、小蓋体18の過剰な食い込みに起因して小蓋体18の開放が困難になることもなく、小蓋受部20の開閉作動を安定して保証することができる。
【0020】
本発明は上述の第1実施例に限定されるものでなく、種々の変形が可能である。
例えば、図7及び図8は第2及び第3実施例における親子蓋の一部をそれぞれ示しており、これら第2及び第3実施例を説明するにあたり、第1実施例における親子蓋の構成要素と同一の機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付して、それらの説明を省略する。
【0021】
図7に示した第2実施例の親子蓋は、環状溝34内に伸縮可能な充填材38が詰め込まれている点で、第1実施例の場合とは相違する。第2実施例の充填材38は小蓋受部20の弾性変形を阻害することなく、環状溝34内への土砂や塵等の侵入を阻止し、環状溝34内に土砂等が堆積して小蓋受部20の機能が損なわれるのを防止する。
なお、図7の充填材38は環状溝34の全体に詰め込まれているが、環状溝34の上部のみに詰め込まれるものであってよい。
【0022】
図8に示した第3実施例の親子蓋は、環状溝34の底に複数の貫通孔40を有する点で、第1実施例の場合とは相違する。これら貫通孔40は小蓋受部20の周方向に間隔を存して配置され、これにより、環状溝34は親蓋体10の上面のみならず、貫通孔40を通じて親蓋体10の下面にも開口する。
第3実施例の貫通孔40は環状溝34内に流入した土砂や塵、また、雨水等を排出し、環状溝34内での土砂、塵及び雨水等の滞留を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施例の親子蓋を示した平面図である。
【図2】図1の親子蓋の断面図である。
【図3】図1の親子蓋の下面図である。
【図4】第1実施例の親蓋体を示した斜視図である。
【図5】図1の親子蓋の一部断面図である。
【図6】第1実施例の親子蓋の機能を説明するための図であり、(a)は親蓋体の小蓋受部に対して小蓋体が嵌合される直前の状態、(b)はその嵌合後の状態を示す。
【図7】第2実施例の親子蓋の一部を示した断面図である。
【図8】第3実施例の親子蓋の一部を示した断面図である。
【符号の説明】
【0024】
2 親子蓋
4 受枠
6 受枠側雌テーパ面
8 フランジ
10 親蓋体
12 親蓋側雄テーパ面
14 親蓋ヒンジ機構
16 開口
18 小蓋体
20 小蓋受部
22 小蓋受側雌テーパ面
24 小蓋ヒンジ機構
26 ヒンジブラケット
28 梯子支持ブラケット
30 梯子
34 環状溝(溝)
36 小蓋側雄テーパ面
38 充填材
40 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受枠と、
前記受枠に嵌合して支持され、前記受枠を開閉可能に閉塞する親蓋体と、
前記親蓋体の一部を円形に開口させた小蓋受部に嵌合して支持され、前記小蓋受部を開閉可能に閉塞する小蓋体とからなり、
前記親蓋体に前記小蓋受部の内周縁よりも外側に位置して設けられた上面に開口を有する溝を具備したことを特徴とする地下構造物用親子蓋。
【請求項2】
前記溝は前記小蓋受部の全周に亘って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の地下構造物用親子蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−65443(P2010−65443A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232434(P2008−232434)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(505093769)株式会社ライセンス&プロパティコントロール (16)
【Fターム(参考)】