説明

地下茎作物の収穫装置

【課題】収穫作業中にコンテナが球根部で満杯になると、その度に走行を止めて、又は走行させながら空のコンテナと交換する作業が必要であり、その交換作業が作業者に負担となっていた。
【解決手段】地下茎作物の茎葉部を挟持して抜き取るとともに後方に搬送する引き抜きコンベア3と、地下茎作物の球根部と茎葉部との間を切断して分離する切断部4と、底部50が可撓性部材から成るとともに底部50を球根部Bを収容可能状態と、球根部Bを排出可能状態とに可変可能とする収容部底部可変手段51を備えた球根収容部5と、引き抜きコンベア3の終端部より更に後方
に位置する茎葉部排出コンベア6と、茎葉排出コンベア6から落下する茎葉部Lを装置後方に排出する茎葉排出シュート7とを有する地下茎作物の収穫装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ニンニク等の地下茎作物の収穫装置に関する。詳細にはニンニク等の地下茎作物を掘り上げて地下茎部分を作物として収穫する地下茎作物の収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニク等の地下茎作物の収穫装置は、図示していないトラクタ等の走行装置によって牽引され、地下茎作物が植わっている畝間を走行輪で走行しながら1畝に数条植えられている地下茎作物を掘り起こしつつ、地上の茎葉部を、走行装置前方向から後上がりに斜設されている引き抜きコンベアによって斜め上後方へ移送し、切断部によって地下茎作物の球根部と茎葉部との間を切断して分離し、収穫物である球根部は、球根収容部であるコンテナに落下し、コンテナが満杯になると空のコンテナに交換していた(従来技術1)。
【0003】
また、ニンニク等の地下茎作物の収穫装置としては、特開2004−41159号公報(従来技術2)に「地下茎作物の根切部と茎葉を挾持して抜き取る搬送コンベア部と、地下茎作物の茎葉を切断する切断部と、地下茎作物を収納するコンテナ部とからなるニンニク等の収穫装置」の開示があり、「コンテナユニット6は、カッタ48の下方に配置され、茎葉部を切断された地下茎作物の球根部が落下収納される。コンテナユニット6の下面には落下収納された地下茎作物の球根部、すなわち収穫作物を搬送落下させる収穫作物排出コンベア62が設けられ、収穫作物排出モータ61にて駆動されるよう構成されている。」
【0004】
そして従来技術2のコンテナユニットの作用として「斜め後方へ搬送される地下茎作物Nはカッタ46にて茎葉部がカットされ、球根部は落下しコンテナユニット6へ貯留される。茎葉処理された球根部、すなわち収穫作物がコンテナユニット6へ一定量貯留すると、コンテナユニット6に備えた排出コンベア62が駆動し、収穫作物を後方へ移動させ排出扉63を開き排出する。」の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−41159号公報(従来技術2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術1のように収穫作業中にコンテナが球根部で満杯になると、その度に走行を止めて、又は走行させながら空のコンテナと交換する作業が必要であり、その交換作業が作業者に負担となっていた。
【0007】
また従来技術2では、コンテナユニットが球根部で満杯になると、収穫物排出コンベアが収穫作物排出モータにて駆動されて、球根部はコンベアに乗って順次装置後方の畝上に排出される。しかし、球根部が一瞬にして排出できないため走行しながら装置の後方へ球根部を落下させていくと、球根部が畝上に長い面積で広がってしまい、後作業として、それらを集める作業が大変であった。また、モータやコンベアを使用するため製造コストを安く抑えることに不向きな構造であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、可撓性部材からなる底部と、底部を球根部収容可能状態と球根部排出可能状態とに可変可能とする収容部底部可変手段とを備えた球根収容部とを有する地下茎作物の収穫装置を提案する。
【0009】
更に、走行前方向から後上がりに斜設され地下茎作物の茎葉部を挟持して抜き取るとともに後方に搬送する引き抜きコンベアと、
引き抜きコンベアの下方に設けられ、抜き取られた地下茎作物が搬送される途中において地下茎作物の球根部と茎葉部との間を切断して分離する切断部と、
切断部下方に設けられ、底部が可撓性部材から成るとともに、底部を球根部収容可能状態と、球根部排出可能状態とに可変可能とする収容部底部可変手段を備えた球根収容部とを有する地下茎作物の収穫装置を提案する。
【0010】
また、走行前方向から後上がりに斜設され地下茎作物の茎葉部を挟持して抜き取るとともに後方に搬送する引き抜きコンベアと、
引き抜きコンベアの下方に設けられ、抜き取られた地下茎作物が搬送される途中において地下茎作物の球根部と茎葉部との間を切断して分離する切断部と、
切断部下方に設けられ、底部が可撓性部材から成るとともに、底部を球根部収容可能状態と、球根部排出可能状態とに可変可能とする収容部底部可変手段を備えた球根収容部と、
引き抜きコンベアの上方位置で引き抜きコンベアの終端部側で重合部分を有する茎葉部排出コンベアと、
茎葉排出コンベアの終端部下方に位置し茎葉排出コンベアから落下する茎葉部を装置後方に排出する茎葉排出シュートとを有する地下茎作物の収穫装置を提案する。
【0011】
更に、茎葉部排出シュートが、茎葉部を常に排出する茎葉部排出状態と、茎葉部を一時的に貯留可能な茎葉部貯留状態とに可変可能とするシュート可変手段を備えている0010欄に記載の地下茎作物の収穫装置を提案する。
【0012】
更に又、収容部底部可変手段が、操縦席から遠隔操作によって操作可能な収容部底部可変手段である0008欄又は0009欄又は0010欄又は0011欄に記載の地下茎作物の収穫装置を提案する。
【0013】
また、球根収容部の収容部可変手段と茎葉部排出シュートのシュート可変手段とが連動している0009欄又は0010欄又は0011欄又は0012欄に記載の地下茎作物の収穫装置を提案する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、球根収容部に収容され満杯になった球根部を走行収穫作業を続けながら一度に畝上にまとまって排出することができるため、後工程の作業である根切り作業や選別作業が排出された場所毎に行うことができる。
【0015】
また、球根収容部の底部が可撓性部材から構成され、かつ底部を球根部収容可能状態と球根部排出可能状態とに可変可能としているため、収容部全体を回転させたり、従来技術2のようにコンベアやコンベアを駆動させるモータなどの装置が不要となり、装置全体をコンパクトに軽量化することができる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、地下茎作物の収穫装置を走行させながら操縦席から遠隔操作によって球根収容部に収容され満杯になった球根部を一度に畝上にまとまって排出することができるため、走行を止めたり、他の作業者を必要としないため作業効率が向上する。
【0017】
請求項4乃至請求項6に係る発明によれば、茎葉部排出シュートが、茎葉部を常に排出する茎葉部排出状態と、茎葉部を一時的に貯留可能な茎葉部貯留状態とに可変可能とするシュート可変手段を備えているため、球根部の排出時のときに一時的に茎葉部排出シュート内に茎葉部を溜めておくことができ、球根部の上に茎葉部が覆うことを防ぎ、後工程の作業の利便性が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態である地下茎作物の収穫装置の一部切欠平面図
【図2】同じく左側面図
【図3】同じく地下茎作物の収穫装置が走行作業をして球根収容部が球根収容状態である一部切欠左側面説明図
【図4】同じく地下茎作物の収穫装置が走行作業をして球根収容部が球根排出状態である一部切欠左側面説明図
【図5】同じくこの発明の球根収容部の収容部底部可変手段であり、球根収容部が球根収容状態である斜視図
【図6】同じくこの発明の球根収容部の収容部底部可変手段であり、球根収容部が球根排出状態である斜視図
【図7】同じくこの発明の茎葉部排出シュート及び茎葉部排出シュートのシュート可変手段の部分を示し、茎葉部排出シュートが排出状態である斜視図
【図8】同じくこの発明の茎葉部排出シュート及び茎葉部排出シュートのシュート可変手段の部分を示し、茎葉部排出シュートが貯留状態である斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施形態である地下茎作物の収穫装置について図1乃至図8に基づいて説明する。この発明の実施形態である地下茎作物の収穫装置は、図示しないトラクタなどの走行装置によって矢印方向へ進行しながらニンニク等の地下茎作物を収穫する。この発明の実施形態である地下茎作物の収穫装置は、地下茎作物Cが栽培されている畝Rの両側の2つの畝間の地面Gをそり状の走行部1によって走行しつつ、走行方向と直角方向に設けられる根切り部2によって畝の土中に栽培されているニンニク等の地下茎作物Cの球根部Bを掘り起こすとともに、複数列、この実施例では4列の引き抜きコンベア3によって地下茎作物の茎葉部Lを挟持して抜き取り、後方に搬送する。
【0020】
それぞれ1列の引き抜きコンベア3は、走行前方向から後上がりに斜設される2つのコンベアをコンベア面を垂直方向に位置させてほぼ接して対面させてなり、前端部は畝面R近傍の高さに位置し、2つのコンベア間の前端部で地下茎作物Cの茎葉部Lを挟持して抜き取るとともに後方に搬送する。それぞれの引き抜きコンベア3の中間位置の下方に球根部Bの根の泥落としを行う泥落とし部30を設ける。泥落とし部30は、回転可能な棒状体にギア状の板状体を設け回転させて球根部Bの根の泥落としを行う。
【0021】
それぞれの引き抜きコンベア3の後方位置の下方にそれぞれ切断部4を設ける。1つの切断部4は円盤状カッターからなり、抜き取られた地下茎作物Cが引き抜きコンベア3によって搬送される途中において地下茎作物Cの球根部Bと茎葉部Lとの間を切断して分離する。
【0022】
切断部4によって切断され分離された地下茎作物Cの球根部Bは自然落下して切断部4の下方に設けられた上面が開放されている箱状の球根収容部5に収納される。
【0023】
球根収容部5は、図5及び図6に示されるように底部50が網状体、布状体等の素材からなる可撓性部材からなり、底部50を球根部Bを収容することのできる収容可能状態と、球根部Bを球根収容部5の後方へ排出することのできる排出可能状態とに可変可能とする収容部底部可変手段51と、左右の収容枠52、52とを備えている。
【0024】
収容部底部可変手段51は、左右の収容枠52、52の各々に設けられ左右対応する同じ構造の複数の作動リンク53と、作動リンク53を作動させるとともに後述する茎葉部排出シュート7のシュート可変手段70と連結している連動部材54と、ワイヤーからなる遠隔操作部材57と、遠隔操作部材57によって連動部材54を昇降せしむる巻き上げ装置56とからなる。
【0025】
各々の収容枠52、52は、走行方向左右にほぼ平行に立設される平行板状体52aと、平行板状体52aの後部を構成する後部板状体52bからなり、後部板状体52bは互いの間隔を狭くして中央方向に斜めに設けられている。平行板状体52aの前部側にリンク移動孔55を設けている。リンク移動孔55は、前側を凸とする上下方向の円弧形状に設けられ、左右の第1作動リンク53a、53aの前端部同士を連結している前部連結杆53dが貫通しており前部連結杆53dの移動路として作用する。
【0026】
左右の作動リンク53、53は、この実施形態では、第1作動リンク53a、53a、第2作動リンク53b、53b、連結リンク53c、53cというそれぞれ3本のリンクからなり、第1作動リンク53a、53aと第2作動リンク53b、53bはそれぞれ左右の収容枠52、52に第1回動支点53e、53eと第2回動支点53f、53fによって回動自在に取り付けられている。
【0027】
左右の第1作動リンク53a、53aは、互いの前端部同士を前部連結杆53dで連結しており、前部連結杆53dは左右の収容枠52、52のリンク移動孔55、55を貫通している。
【0028】
左右の第2作動リンク53b、53bは、互いの後端部同士を後部連結杆53gで回動可能に連結している。
【0029】
第1作動リンク53a、53aと第2作動リンク53b、53bとは、第1回動支点53e、53eと第2回動支点53f、53fより走行方向前方に位置する連結リンク53c、53cによって回動自在に連結しており連動する。連結リンク53cは、前端部で連動部材54の下端部と回動自在に連結する。
【0030】
連動部材54は、直杆形状であり下端部で連結リンク53cと回動自在に連結するとともに上部にシュート係合孔54aを設け、茎葉部排出シュート7の第1回動リンク72aの係合ピン720aと係合しており、中間部で巻き上げ装置56の昇降部材(ロープ又はワイヤー)56aと連結している。
【0031】
巻き上げ装置56は、回転可能な回転軸からなり、この実施形態では図示されないトラクタの駆動装置から回転力を供給され駆動される。
【0032】
遠隔操作部材57は、操縦席に位置する操作部57aを引くことによりテンションクラッチ57bをONとして昇降部材56aを巻き上げ、操作部57aを放すことによりテンションクラッチ57bをOFFとして昇降部材56aを自重により下降させることによって巻き上げ装置56の駆動及び停止を行う。
【0033】
底部50は、網状体等の可撓性部材からなり、その前辺部を左右の収容枠52、52の上部間に掛け渡されて固定された前部固定杆50aに取り付けられ前部固定杆50aの下方に平行に位置する中間折返杆50bによって折り返され、後辺部を第2作動リンク53bの後部連結杆53gに取り付けている。底部50の前部の下方に第1作動リンク53aの前部連結杆53dが昇降自在に位置している。
【0034】
茎葉部排出コンベア6は、引き抜きコンベア3の後部上方に位置し、引き抜きコンベア3と同様複数列、この実施例では4列設けられている。各茎葉部排出コンベア6は、前端部が切断部4より前方位置に位置し、引き抜きコンベア3の上方で引き抜きコンベア3と平行に設けられており、その終端部は引き抜きコンベア3の終端部から更に後方に延設されており、茎葉部排出シュート7の上方に位置している。1列の茎葉部排出コンベア6は、前方向から後上がりに斜設され互いのコンベア面を垂直方向に位置させてほぼ接して相対させてなる2つコンベアからなる。
【0035】
茎葉部排出シュート7は、茎葉排出コンベア6の終端部下方に位置し茎葉排出コンベア6から落下する茎葉部Lを装置後方に排出する。茎葉部排出シュート7は、図7及び図8に示すように前上部板状体70aと後下部板状体70bの長方形状の2つの平面板状体を折軸71によって側面視く字状に折り曲げ可能に連結してなり、前上部板状体70aと後下部板状体70bが同一平面で連結し茎葉部Lを常に排出する茎葉部排出状態(図7)と、前上部板状体70aと後下部板状体70bが折軸71で下方へ折れ曲がり茎葉部Lを一時的に貯留可能な茎葉部貯留状態(図8)とに可変可能とするシュート可変手段72を備えている。後下部板状体70bの左右の側枠部70cは、折軸71である回動軸71から前方に上方に曲がったリンクピン72cを有しており、リンクピン72cは、中間回動リンク72bと回動可能に連結している。
【0036】
シュート可変手段72は、前上部板状体70aと後下部板状体70bの左右端辺又はどちらか一方の端辺に設けられる複数の回動リンク72と、回動リンク72の1つが係合している連動部材54と、連動部材54の中間部で昇降部材56aによって連結している巻き上げ装置56とからなる。シュート可変手段72は、巻き上げ装置57と連動部材54の作動によって球根収容部5の収容部可変手段51と連動する。
【0037】
複数の回動リンク72は、この実施形態では前上部板状体70aに回動支点を有しく字形状である第1回動リンク72aと、中間回動リンク72bとからなり、中間回動リンク72bは回動自在に連結する後下部板状体70bのリンクピン72cと回動可能に連結している。
【0038】
8はフィルムシート切断装置であり、引き抜きコンベア3が地下茎作物Cの茎葉部Lを挟持する位置から走行方向後部に位置し、畝Rの幅方向の略中央に位置するように設けられている回転カッター80及びカッター回転モータ81を有する。回転カッター80は、回転軸82を畝幅方向かつ水平方向にして設けられた円板状カッターからなる。
【0039】
また、この発明の球根収容部5は、球根部Bの掘り上げ搬送装置が、上述したこの発明の実施形態とは異なり、最初に植栽されている茎葉部Lのみを刈り取り、後作業として地中に残った球根部Bを掘り上げ、搬送コンベア等によって球根部Bを球根収納部5に搬送するような構成(例えば実開平5−68217号公報)の地下茎作物の収穫装置に備えて使用することも可能である。
【0040】
次に、この発明の実施形態である地下茎作物の収穫装置の作用について説明する。この発明の実施形態である地下茎作物の収穫装置は、図示しないトラクタなどの走行装置によって矢印方向に走行しながらニンニク等の地下茎作物を収穫する。
【0041】
畝Rは、フィルムシート(マルチフィルム)Fによって全面が覆われており、一般的に4条で植え付けられている地下茎作物Cの位置に対応した植付け穴Hが幅方向に4つ開けられている。
【0042】
この発明の実施形態である地下茎作物の収穫装置は、地下茎作物Cが栽培されている畝Rの両側の2つの畝間の地面Gをそり状の走行部1によって走行しつつ、根切り部2によって畝の土中に栽培されているニンニク等の地下茎作物Cの球根部Bを掘り起こすとともに、4列の引き抜きコンベア3によって地下茎作物Cの茎葉部Lを挟持して抜き取り、後方に搬送する。
【0043】
地下茎作物の収穫装置が走行し始めると、フィルムシート切断装置8の回転カッター80によりフィルムシートFの畝R幅方向の中央の部分を畝R長手方向へ向かってラインA上を切断し始める。切断されたフィルムシートFSは、図示されない左右のガイドレーキにガイドされて畝Rの端、すなわち畝間の位置までガイドされて畝間の地面Gに置かれる。
【0044】
それぞれの引き抜きコンベア3によって搬送されてくる地下茎作物Cは、切断部4によって球根部Bと茎葉部Lとの間を切断して分離する。分離された球根部Bは、自然落下して球根収容部5に収容される。
【0045】
通常の収穫作業中において球根収容部5は、図3及び図5に示されるように球根部Bを収容可能状態としており、底部50が左右の収容枠52、52の下方に位置し可撓性部材が下方に湾曲可能である。このとき第1作動リンク53aの前部連結杆53dは、左右の収容枠52、52のリンク移動孔55、55の下端部に位置し底部50の下方に位置する。
【0046】
切断部4によって切断され分離された地下茎作物Cの茎葉部Lは、引き抜きコンベア3の上方に位置する茎葉部排出コンベア6に挟持されて、より後方に搬送され、茎葉部排出コンベア6の後端部から茎葉部排出シュート7へ落下しシュート斜面を滑って球根収容部5後方から、フィルムシートFが無い畝Rの地表面に落下する。
【0047】
通常の収穫作業中において茎葉部排出シュート7は、図3及び図7に示されるように前上部板状体70aと後下部板状体70bが同一平面で後部が低い斜面状に設けられているため、その平面状のシュート斜面を滑って球根収容部5後方から、フィルムシートFが無い畝Rの地表面に落下する。
【0048】
球根収容部5が球根部Bで満杯になると、走行車操縦者が操縦席に設けられた遠隔操作部材57の操作部57aを操作して巻き上げ装置56の回転軸を回転させ昇降部材56aを上昇させ連動部材54を上昇させる。連動部材54は下部で収容部底部可変手段51の連結リンク53cと連結し、上部でシュート可変手段71の第1回動リンク72aと係合している。
【0049】
そのため、収容部底部可変手段51においては、連結リンク53cの上昇に伴い連結リンク53cに回動自在に連結している第1作動リンク53a、53aと第2作動リンク53b、53bが、それぞれ第1回動支点53e、53eと第2回動支点53f、53fを中心に回動する。第1作動リンク53a、53aは、第1回動支点53e、53eを中心に前部を上昇させるが、前部連結杆53dがリンク移動孔55に沿って上昇してリンク移動孔55の上端で停止する。このとき前部連結杆53dが可撓性部材である底部50を下面から押し上げる。同時に第2作動リンク53b、53bは第2回動支点53f、53fを中心に回動して後部連結杆53gを下方へ降下させる。これによって底部50は前方が上で後方が下となる平斜面となり収容されていた球根部Bは、球根収容部5から後方のフィルムシートFが無い畝Rの地表面に一度に落下する((図4及び図6に示す状態))。
【0050】
この収容部底部可変手段51の作動に連動してシュート可変手段72の第1回動リンク72aが回動して、中間回動リンク72bを介してリンクピン72cを前方向へ引く。これにより後下部板状体70bが側枠部70cを介して折軸71を中心に回動し、後下部板状体70bの後部が上方へ折れ曲がり、茎葉部排出シュート7は側面視くの字状態の茎葉部貯留状態となる(図4及び図8に示す状態)。
【0051】
そのため茎葉排出コンベア6から落下する茎葉部Lは、茎葉部排出シュート7の折軸71付近に停止し、この状態で茎葉部排出シュート7に一時貯留され畝Rの地表面bには排出されない。したがって、球根収容部5から後方に排出された球根部Bの団塊の上に茎葉部Lは排出されず、後作業において球根部Bを見落とすことがない。
【0052】
球根部Bが、比較的短時間に球根収容部5から畝上に排出されたら直ぐに走行車操縦者が操縦席に設けられた遠隔操作部材57の操作部57aを放してテンションクラッチ57bをOFFとし、昇降部材56aを自重により下降させ、連動部材54を下降させる。
【0053】
そのため、収容部底部可変手段51においては、連結リンク53cの下降に伴い連結リンク53cに回動自在に連結している第1作動リンク53a、53aと第2作動リンク53b、53bが、それぞれ第1回動支点53e、53eと第2回動支点53f、53fを中心に回動する。第1作動リンク53a、53aは、第1回動支点53e、53eを中心に前部を下降させ前部連結杆53dがリンク移動孔55に沿って下降してリンク移動孔55の下端で停止する。そのため可撓性部材である底部50は自然重力により収容枠52の下方へ位置し、同時に第2作動リンク53b、53bは第2回動支点53f、53fを中心に回動して後部連結杆53gを上方へ上昇させる。これによって底部50の前辺部は収容枠52の上部に位置し、後辺部も後部連結杆53gが上部に位置して固定されるので、その中間の可撓性部材に球根部Bが落下すると、その重量で自然と収容状態になる(図3及び図5に示す状態)。
【0054】
この収容部底部可変手段51の作動に連動してシュート可変手段72の第1回動リンク72aが回動して、中間回動リンク72bを介してリンクピン72cを後方向へ押して元の状態に戻す。これにより後下部板状体70bが側枠部70cを介して折軸71を中心に回動し後下部板状体70bは後部を下降させて、前上部板状体70aと平面状態となり、茎葉部排出シュート7は茎葉部排出状態となる(図3及び図7に示す状態)。
【0055】
この作業を繰り返し、通常の走行収穫作業中においては球根部Bは球根収容部5内へ落下して収容され、茎葉部Lは茎葉部排出シュート7から球根収容部5後方の畝R地表面に排出する。そして球根収容部5から球根部Bを一度に排出するときは、その球根部Bの塊の上に茎葉部Lが落下しないように茎葉部排出シュート7は貯留状態となり排出を一時的停止する。
【0056】
圃場の畝Rの収穫作業が終わったあとに、畝Rに排出された球根部Bが塊としてあり、茎葉部Lに覆われていないため、後作業が非常にしやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、ニンニク等の地下茎作物の収穫作業、特に専業的なニンニク等の球根の収穫を目的とする広い作付け面積の圃場に利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0058】
1 走行部
2 根切り部
3 引き抜きコンベア
4 切断部
5 球根収容部
50 底部
50a 前部固定杆
50b 中間折返杆
51 収容部底部可変手段
52 収容枠
53 作動リンク
53a 第1作動リンク
53b 第2作動リンク
53c 連結リンク
53d 前部連結杆
53e 第1回動支点
53f 第2回動支点
53g 後部連結杆
54 連動部材
54a シュート係合孔
55 リンク移動孔
56 巻き上げ装置
56a 昇降部材
57 遠隔操作部材
57a 操作部
57b テンションクラッチ
6 茎葉部排出コンベア
7 茎葉部排出シュート
70a 前上部板状体
70b 後下部板状体
70c 側枠部
71 折軸
72 シュート可変手段
72a 第1回動リンク
720a 係合ピン
72b 中間回動リンク
72c リンクピン
8 フィルムシート切断装置
80 回転カッター
81 カッター回転モータ
F フィルムシート
FS 切断されたフィルムシート
C 地下茎作物
L 地下茎作物の茎葉部
B 地下茎作物の球根部
G 畝間の地面
R 畝面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性部材からなる底部と、底部を球根部収容可能状態と球根部排出可能状態とに可変可能とする収容部底部可変手段とを備えた球根収容部とを有する地下茎作物の収穫装置。
【請求項2】
走行前方向から後上がりに斜設され地下茎作物の茎葉部を挟持して抜き取るとともに後方に搬送する引き抜きコンベアと、
引き抜きコンベアの下方に設けられ、抜き取られた地下茎作物が搬送される途中において地下茎作物の球根部と茎葉部との間を切断して分離する切断部と、
切断部下方に設けられ、底部が可撓性部材から成るとともに、底部を球根部収容可能状態と、球根部排出可能状態とに可変可能とする収容部底部可変手段を備えた球根収容部とを有する地下茎作物の収穫装置。
【請求項3】
走行前方向から後上がりに斜設され地下茎作物の茎葉部を挟持して抜き取るとともに後方に搬送する引き抜きコンベアと、
引き抜きコンベアの下方に設けられ、抜き取られた地下茎作物が搬送される途中において地下茎作物の球根部と茎葉部との間を切断して分離する切断部と、
切断部下方に設けられ、底部が可撓性部材から成るとともに、底部を球根部収容可能状態と、球根部排出可能状態とに可変可能とする収容部底部可変手段を備えた球根収容部と、
引き抜きコンベアの上方位置で引き抜きコンベアの終端部側で重合部分を有する茎葉部排出コンベアと、
茎葉排出コンベアの終端部下方に位置し茎葉排出コンベアから落下する茎葉部を装置後方に排出する茎葉排出シュートとを有する地下茎作物の収穫装置。
【請求項4】
茎葉部排出シュートが、茎葉部を常に排出する茎葉部排出状態と、茎葉部を一時的に貯留可能な茎葉部貯留状態とに可変可能とするシュート可変手段を備えている請求項3に記載の地下茎作物の収穫装置。
【請求項5】
収容部底部可変手段が、操縦席から遠隔操作によって操作可能な収容部底部可変手段である請求項1乃至請求項4の中の1に記載の地下茎作物の収穫装置。
【請求項6】
球根収容部の収容部可変手段と茎葉部排出シュートのシュート可変手段とが連動している請求項3又は請求項4又は請求項5に記載の地下茎作物の収穫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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