説明

地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホース

【課題】土壌を消毒するため高温・高圧の蒸気を使用し、土壌中に埋設した蒸気放出ホースで土壌を消毒した後、その蒸気放出ホースを土中に放置でき且つそのホースの自然分解後の成分を有機質肥料として活用できる地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースを提供する。
【解決手段】栽培土壌2に地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホース1を埋設し、これにボイラ装置3から高温・高圧の蒸気を供給し、蒸気を地中に放出させて栽培土壌2を消毒し、使用後の地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホース1はそのまま放置する。この地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホース1は土壌菌で自然分解する不織布から成り、予め内部または表層部に窒素、リン酸、カリウムの一つ以上が付加されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の施肥と消毒とを兼ねる地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜、花又は果実などの栽培土壌に発生する害虫を殺傷して栽培土壌を消毒するために、臭化メチルが用いられていた。しかしながら、この臭化メチルによる消毒方法は、地球環境に対して悪影響を及ぼすことが判明しており、問題視されている。
【0003】
そこで、近年では、栽培土壌の土中にホースを敷設(埋設)し、このホースから高温・高圧の水蒸気を放出させて土壌を消毒する方法が提案されている。
この方法では、土壌温度を検出する温度検出機構を設け、その温度検出機構による検出情報に基づいて、消毒もれや過剰過熱を生じさせないようにボイラによる適宜な蒸気供給を行っている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、注入、土壌浄化、水質調査等で土中に埋設させたパイプを、その使用後に掘り起こしたり引き抜いたりして産業廃棄物として処理することなく、埋設させたまま、そのパイプに微生物が有効成分となる材料を注入または充填し、微生物によってパイプを土中内で分解させる方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、農作物や園芸作物に対して被害を与える害生物を防除する防除材を使用後に、その防除材を特許文献2と同様に土中から回収せずにそのまま放置して、自然界に存在する微生物により分解させて、産業廃棄物として処理することなく環境汚染を引き起こすことの無い高分子素材の防除材を使用する方法が提案されている。(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−088292号公報
【特許文献2】特開2005−350538号公報
【特許文献3】特開平6−116103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、消毒後に蒸気放出ホースの回収を行う作業が生じていた。この消毒後のホースを回収する作業は、最低2名の作業者を必要とするので、手数が掛かるだけでなく人件費も掛かって使用者側の利便性を損ねるものであった。
【0007】
また、特許文献1のシステムを販売する際に行う宣伝・紹介のための実演では、最低3名以上の人員が必要であり、やはり手数が掛かるだけでなく人件費も掛かって供給者側の利便性をも損ねるものであった。
【0008】
また、特許文献2では、特許文献1のように、使用後の管の回収を行わず、土中に埋設させた状態で管に微生物が有効成分となる材料を注入または充填させて管を土中内で分解させているが、管に微生物が有効成分となる材料を注入または充填させる作業は、特許文献1と同様に最低2名の作業者が必要であり、作業に従事する者の利便性を損ねる点において変わるところはなかった。
【0009】
また、特許文献3では、特許文献1及び特許文献2において問題となる作業従事者の利便性を損ねる点は解消されているが、特許文献3で取り上げている防除材は、ボイラ装置から蒸気の供給を行うものではない。
【0010】
本発明の課題は、上記従来の実状に鑑み、土壌を消毒するため高温・高圧の蒸気を使用し、土壌中に埋設した蒸気放出ホースで土壌を消毒した後、その蒸気放出ホースを土中に放置でき且つそのホースの自然分解後の成分を有機肥料として活用できる地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
先ず、第1の発明の栽培土壌施肥兼消毒システムは、高温・高圧の蒸気を地中に放出して栽培土壌を消毒すると共に使用後は施肥となる地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースと、該地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースに高温・高圧の蒸気を供給するボイラ装置とから成る栽培土壌施肥兼消毒システムであって、前記地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースは、土壌菌による自然腐食で分解可能な不織布で形成され、該不織布内又は表面に少なくとも窒素、リン酸、又はカリウムを含有するように構成される。
【0012】
次に、第2の発明の地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースは、栽培土壌施肥兼消毒システムに用いられ、ボイラ装置から供給される高温・高圧の蒸気を栽培土壌中に放出して前記栽培土壌の消毒を行うと共に使用後は施肥となる地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースであって、土壌菌による自然腐食で分解可能な不織布で形成され、該不織布内又は表面に少なくとも窒素、リン酸、又はカリウムを含有するように構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地中埋設型の土壌消毒用の蒸気放出ホースを消毒用として使用後に肥料としても用いることができる施肥兼用土壌消毒用ホースで形成しているので、消毒及び肥料撒設の作業を同時に行うことができるので、作業従事者の作業労力を大幅に低減させることが可能となる。
【0014】
また、消毒用として使用後の施肥兼用土壌消毒用ホースを地中から掘り起こす作業を行わなくてもよいので、施肥を兼ねる消毒作業を1名で行うことができて手数が省け、市場のより簡便な作業への要望に沿うことができ、施肥兼用土壌消毒用ホースの供給者側にとっても、宣伝・紹介のための実演を容易に行うことができるようになって便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は一実施の形態における地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホース(以下、蒸気放出ホースともいう)1を敷設した栽培土壌2の平面図である。
【0016】
尚、図1では、蒸気放出ホース1を横方向、縦方向、横方向、・・・と連続して向きを変えながら敷設しているが、これに限ることなく、例えば、斜め方向に折り返しながら敷設するようにしても良い。
【0017】
この蒸気放出ホース1は、例えば野菜や花などの栽培土壌に埋設させて用いるものであり、この蒸気放出ホース1には、無数の孔が形成されている。この孔は、蒸気放出ホース1に接続させたボイラ装置3から供給される高温・高圧の蒸気を土壌内に放出するために形成されている。
【0018】
尚、蒸気放出ホース1を、帯状の基布を縦に縫い付けて形成した場合には、縫い目から
高圧蒸気を放出することができるので、蒸気放出用の無数の孔を形成する必要がない。
また、この蒸気放出ホース1を埋設した箇所には、蒸気放出ホース1から放出される高温・高圧の蒸気による高温度が土壌内部から外部に逃げないように、保湿シート4が覆うように設けられている。
【0019】
また、この蒸気放出ホース1は不織布で形成されている。この不織布は土壌菌により分解させることができる素材で作製されている。
これにより、蒸気放出ホース1は土壌を消毒した後に土壌内に放置しておくと、土壌菌により分解させることができるので、この蒸気放出ホース1を土壌内から掘り起こして撤去する作業を省くことができ、蒸気放出ホース1の施設に伴う使用後の撤去作業が解消されて作業全体が簡便化して便利である。
【0020】
また、蒸気放出ホース1を形成している不織布には、内部または表層部に、肥料の三大元素である窒素、リン酸、カリウムの一つ以上が予め付加されている。これらの肥料成分は、蒸気放出ホース1が土壌内で土壌菌により自然分解した際に、施肥として用いられる。
【0021】
図2は、図1のA−A´矢視断面図である。栽培土壌2に敷設された蒸気放出ホース1に土を覆い、盛り土部5を形成させる。この盛り土部5を保湿シート4で更に覆い、この保湿シート4の縁部分に鎖、鉄棒などからなる載置具6a、6bを載置し、保湿シート4がめくりあがらないようにする。
【0022】
このようにして栽培土壌2内に蒸気放出ホース1を埋設し、蒸気を放出させて土壌内を消毒する。
従来においては、この消毒後に蒸気放出ホースを掘り起こす作業が必要であったが、本実施の形態では、この蒸気放出ホース1を形成している不織布には、土壌に自然に存在する微生物(土壌菌)によって分解されるため、蒸気放出ホース1を掘り起こす作業が不要である。
【0023】
このように、本発明になる栽培土壌施肥兼消毒システムにおける蒸気放出ホース1(地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホース)によれば、栽培土壌の消毒を行うと共に消毒に使用後は、そのまま放置して施肥となるので、消毒システムの敷設だけで撤去の必要がなく作業が簡便化されると共に施肥まで行うことが出来るので更に作業が簡便化されて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施の形態における地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホース(蒸気放出ホース)を敷設した栽培土壌の平面図である。
【図2】図1のA−A´矢視断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 蒸気放出ホース
2 栽培土壌
3 ボイラ装置
4 保湿シート
5 盛り土部
6a 載置具
6b 載置具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温・高圧の蒸気を地中に放出して栽培土壌を消毒すると共に使用後は施肥となる地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースと、該地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースに高温・高圧の蒸気を供給するボイラ装置とから成る栽培土壌施肥兼消毒システムであって、
前記地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースは、土壌菌による自然腐食で分解可能な不織布で形成され、該不織布内又は表面に少なくとも窒素、リン酸、又はカリウムを含有する、
ことを特徴とする栽培土壌施肥兼消毒システム。
【請求項2】
栽培土壌消毒システムに用いられ、ボイラ装置から供給される高温・高圧の蒸気を栽培土壌中に放出して前記栽培土壌の消毒を行うと共に使用後は施肥となる地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホースであって、
土壌菌による自然腐食で分解可能な不織布で形成され、該不織布内又は表面に少なくとも窒素、リン酸、又はカリウムを含有する、
ことを特徴とする地中埋設型施肥兼用土壌消毒用ホース。

【図2】
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【図1】
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