説明

地中埋設型照明器具

【課題】照明器具本体の上端開口部を覆う透光性の蓋体が高温となることを防止すると共に,照明器具本体内に熱が籠もることを防止する。
【解決手段】上端に開口12を備え,灯具20等を収容可能に構成された容器状を成すアルミ又はアルミ合金製の本体10内を,仕切壁151で上下に仕切り,その下段側に灯具20を収容する灯具室30を形成すると共に,仕切壁151と透光性の蓋体40との間に第1の透明板50を設けて更に分割する。そして,前記灯具20のリフレクタ23の反射面及びリフレクタ23の前方を覆う透光性フィルタに赤外線吸収性を付与し,赤外線が除去された光を蓋体40に照射すると共に,リフレクタ23や透光性フィルタ24の熱が蓋体40に伝わることを空気層31,32によって阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中埋設型照明器具に関し,より詳細には容器状に形成された本体内部に灯具等の構成機器を収容した状態で前記本体を地中に埋設し,この本体の上端開口部を覆う透光性の蓋体を介して本体外に上向きの光を照射して照明する地中埋設型照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設して使用する地中埋設型照明器具は,公園や遊歩道,庭園等の地中に埋設されて,植栽やオブジェ,その他の建造物,看板等を照らすための照明器具として使用されている。
【0003】
このように,屋外において地中に埋設して使用される地中埋設型照明器具にあっては,灯具や安定器等の構成機器を土や埃,その他の塵芥や,降雨や積雪等より保護するために,上端部に設けた開口を介してこれらを内部に収容可能な容器状に形成された本体を設け,この本体を地中に埋設すると共に,本体に設けた前記開口を介して内部に灯具等の機器を収容した後,この開口をカバーガラス等の透光性の蓋体によって覆うことで,上端開口及びこれを覆う蓋体を介して照射光を上向きに照射できるようにしている。
【0004】
このような地中埋設型照明器具にあっては,前述した本体の上端開口部を覆う前述の透光性の蓋体を強化ガラス等によって形成し,歩行者等が透光性の蓋体上に乗った場合であってもこれを支えるに十分な強度を持たせていると共に,この透光性の蓋体の表面が路面と略同一高さとなるように地中に埋設することで,路面と地中埋設型照明器具間に段差が生じないようにして,地中埋設型照明器具の設置によっても歩行者の歩行等が妨げられることのないようにしている。
【0005】
以上のように構成された地中埋設型照明器具では,光源用のランプとして高圧ナトリウム灯,メタルハライドランプ(マルチハロゲン灯など),水銀灯等の所謂「HIDランプ(High Intensity Discharge Lamp)」と呼ばれる高輝度放電灯を使用するが,この種のランプが放射する光には熱線(赤外線)が含まれることから,地中埋設型照明器具の本体上端に設けた開口部を覆う前述の透光性の蓋体がこの熱線(赤外線)によって加熱されて高温になる。そのため,靴等を介して透光性の蓋体に触れる分には問題は無いが,この蓋体に誤って直接触れる等した場合には火傷等の危険がある。
【0006】
このように,透光性の蓋体が高温となることを防止するために,光源ランプと透光性の蓋体間の距離を広く取ることを提案する先行技術も存在しており,一例として,図6(A)に示すように光源ランプ220の長軸を垂直方向に配置する地中埋設型照明器具200の一般的な構成に対し,図6(B)に示すように光源ランプ220の長軸を水平方向に配置することで,照明器具本体210の全高を増加させることなく光源ランプ220と蓋体240間の間隔を増大させることで,蓋体240の温度上昇を抑制することも提案されている(特許文献1「0012」欄)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3145206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで,赤外線による加熱は,光源から輻射されて対象物に照射された赤外線(赤外線は特定波長の電磁波である)が,対象物中に共振吸収され,この吸収されたエネルギーが対象物の分子(原子)を振動させることによって発熱することにより生じる現象であるから,赤外線による加熱は,温風等による加熱のような空気等の熱媒を介した「熱」の移動ではなく,「光エネルギー」による発熱として捉えることができる。
【0009】
このように赤外線を,光をエネルギーとして捉えた上で,前述した特許文献1に記載されているように光源ランプ220の軸線方向の向きを変更することの作用を考えると,特許文献1に記載の構成を採用しても,赤外線の輻射に伴う透光性の蓋板240の温度上昇は殆ど抑制できないことが判る。
【0010】
すなわち,図6(A)に示すように光源ランプ220の軸線方向を垂直方向とした配置から,図6(B)に示すように光源ランプ220の軸線方向を水平方向に変更した場合,光源ランプ220の外管バルブと透光性の蓋体240間の距離は確かに図6(A)中のlから,図6(B)中のLに広がることになるが,発光点の配置はリフレクタの形状と配置によって決まるので,光源ランプ220の向き以外をそのままとした場合,赤外線を発生している光源ランプ220の発光点と蓋体240間の距離Dはいずれの向きで光源ランプ220を配置しても変化しない。
【0011】
そのため,特許文献1の記載に従って光源ランプ220の軸線方向の向きを変化させたとしても,透光性の蓋体240に輻射される赤外線のエネルギーを低減させる何等の効果も無いことから,特許文献1に記載の構成では赤外線の共振吸収に伴う蓋体240の発熱を防止することはできない。
【0012】
そうすると,特許文献1には蓋体240が赤外線の輻射によって発熱することを防止しようという発想は無く,光源ランプ220自体を発熱体と捉え,この発熱体に対し,透光性の蓋体240をなるべく遠くに離して配置することで,空気等を媒体とした「熱伝導」によって透光性の蓋体240が加熱されることを僅かでも抑制しようというものであることが判る。
【0013】
確かに,点灯によって光源ランプ220は発熱するが,この種の照明器具に使用される前述のHIDランプは,ハロゲンランプ等に比較してエネルギー効率が良いために発熱量自体が少なく,また,高温となる発光管が高真空の外管バルブ内に収容されていることと,この外管バルブとして赤外線の吸収率が低い石英ガラスが使用されていることから,外管バルブの温度はさほど高くはならない。
【0014】
そのため,特許文献1に記載されているように光源ランプの軸線方向を水平方向として,光源ランプ220の外管バルブと透光性の蓋体240間の間隔をたかだか数cm程度広げることができたとしても,このことによって透光性の蓋体240の温度を大幅に下げる効果が得られるとは考えられない。
【0015】
このように,特許文献1で紹介している方法では,光エネルギーとしての赤外線によって透光性の蓋体240が温度上昇することも,また,空気等を介した熱伝導によって蓋体240の温度が上昇することのいずれも抑制することができない。
【0016】
そこで本発明は,光源ランプから輻射された赤外線(熱線)を「光エネルギー」として捉え,透光性の蓋体に入射する前にこの赤外線をカットすることにより,透光性の蓋体が赤外線を共振吸収しないようにして蓋体が発熱することを効果的に防止すると共に,透光性の蓋体に対して輻射される前に赤外線をカットすることによって,この赤外線のカットに使用した機器が発熱するという新たな課題に対処して,このようにして生じた熱が本体内に籠らないようにすることで本体内に収容した光源ランプや安定器等にダメージが及ぶことを防止し,更に,熱線のカットに使用した機器の発熱が空気等を媒体として透光性の蓋体に伝わることをも防止することで,熱の伝導によって透光性の蓋体が加熱されることをも防止し得る構造を備えた地中埋設型照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の特許請求の範囲の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0018】
上記目的を達成するために,本発明の地中埋設型照明器具1は,地中に埋設される本体10と,前記本体10内に収容される灯具20と,前記本体10の上端開口12を被蓋する透光性の蓋体40を備えた地中埋設型の照明器具1において,
前記本体10をアルミ又はアルミ合金によって形成すると共に,中央部に開口152が形成された仕切壁151によって前記本体10内を上下に仕切り,下段の室を,前記灯具20を収容する灯具室30と成すと共に,前記透光性の蓋体40と前記仕切壁151間における前記本体内の空間を更に第1の透明板50によって上下に仕切り,
前記灯具室30内に収容された前記灯具20に,光源ランプ22と,前記光源ランプ22からの光を上方に向けて反射する,上向きに開口したリフレクタ23と,前記リフレクタ23の開口部前方を覆う透光性フィルタ24を設け,前記リフレクタ23の反射面と前記透光性フィルタ24に波長740nm〜1150nmの光吸収性を付与すると共に,前記透光性フィルタ24を通過した光を前記仕切壁151に設けた前記開口152を介して前記透光性の蓋体40に向けて照射できるよう前記灯具20を前記灯具室30内に収容し,
前記仕切壁151の前記開口152を,第2の透明板60によって被蓋したことを特徴とする(請求項1)。
【0019】
上記請求項1の構成に加え,前記リフレクタ23の開口縁を上方に延長するコーン25を設け,前記コーン25の上端を前記仕切壁151に設けた前記開口152内に係止して前記灯具室30内に前記灯具20を吊り下げて,前記灯具20を前記灯具室30内に収容すれば,好適である。(請求項2)
【0020】
上記構成の地中埋設型照明器具において,前記仕切壁151の前記開口152を被蓋する前記第2の透明板60に,波長740nm〜1150nmの光吸収性を付与するものとしても良い(請求項3)。
【0021】
更に,前記本体10の外周には,放熱フィン17を設けることが好ましい(請求項4)。
【0022】
なお,光源ランプの赤外線吸収を効率的に行うため,前記リフレクタ及び/又はフィルタは,入射光線を透過と反射によって分岐する作用を有する光学薄膜の積層体を成す,誘導体多層膜を形成すれば好適である(請求項5)。
【発明の効果】
【0023】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の地中埋設型照明器具1によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0024】
灯具20に設けたリフレクタ23の反射面に波長740nm〜1150nmの光吸収性を付与すると共に,前記リフレクタ23の前方を波長740nm〜1150nmの光吸収性を有する透光性フィルタ24で覆うことにより,光源ランプ22からの光は赤外線がカットされた状態で透光性の蓋体40に向けて照射されるため,赤外線の吸収によって透光性の蓋体40が発熱することを防止できた。
【0025】
一方,リフレクタ23や透光性フィルタ24は,前述のように赤外線を吸収するように構成されているため,赤外線を吸収したリフレクタ23や透光性フィルタ24は高温に発熱することとなるが,本体10を熱伝導性の良いアルミ乃至はアルミ合金によって形成すると共に,発熱を生じるリフレクタ23や透光性フィルタ24を備えた灯具20を本体10内に設けた灯具室30内に収容したことにより,リフレクタ23や透光性フィルタ24で生じた熱は,灯具室30内で生じる空気の対流によって冷却されると共に,本体10に容易に吸収されて地中に放熱される一方,リフレクタ23や透光性フィルタ24と透光性の蓋体40との間には,仕切壁151と第1の透明板50間に形成された空気層31と,第1の透明板50と透光性の蓋体40間に形成された空気層32という2つの空気層が介在するために,リフレクタ23や透光性フィルタ24の熱が空気を媒体として透光性の蓋体40に伝わることも防止することができた。
【0026】
その結果,上記構成を備えた地中埋設型照明器具1にあっては,透光性の蓋体40の温度を比較的低温,好ましくは直接人体に触れても熱さを感じない38℃以下に維持することができると共に,灯具20に設けた光源ランプ22や,灯具20と共に本体10内に収容されている安定器等が本体10内に籠もった熱によりダメージを受けることを好適に防止することができた。
【0027】
仕切壁151に設けた開口152を被蓋する第2の透明板60についても波長740nm〜1150nmの光吸収性を有するものとした場合には,透光性の蓋体40に対して輻射される光中に含まれる赤外線をより減少させることができ,その結果,透光性の蓋体40の温度を更に低く抑えることができた。
【0028】
前記本体10の外周に,放熱フィン17を形成した構成にあっては,この放熱フィン17によって本体10に伝導された熱を地中に伝導し易く,本体10を好適に冷却させることができただけでなく,放熱フィン17が地中に噛み込むことで,本体10を強固に埋設することができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の地中埋設型照明器具の側面図。
【図2】本発明の地中埋設型照明器具の平面図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】本体の上端開口部分の拡大図。
【図5】透光性の蓋体の部分拡大図。
【図6】従来技術の説明図であり,(A)は光源ランプの軸線方向を垂直とした構成,(B)は光源ランプの軸線方向を水平方向とした特許文献1の構成。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に,添付図面を参照しながら本発明の照明器具について説明する。
【0031】
本発明の照明器具1は上端縁11が路面等と略同一高さとなるように地中に埋設した状態で使用される本体10と,前記本体10の上端に形成された開口12を被蓋する透光性の蓋体40を備え,前記本体10内に収容された灯具20によって照射された光を,前記開口12を覆う透光性の蓋体40を介して外部に照射することができるようにした地中埋設型の照明器具であり,地中に埋設されて灯具20やその附属品(安定器等)を収容する前述の本体10と,この本体10の上端開口12を被蓋する,前述した透光性の蓋体40を備えている(図1〜3)。
【0032】
〔本体〕
本発明の照明器具1を構成する前述の本体10は,地中に埋設した状態で使用するもので,図3に示すように内部に灯具20及びその附属機器〔例えば安定器等(図示せず)〕を収容する空間が形成されていると共に,上端には本体10内に前述の灯具20等の機器を収容等することができるようにするための開口12が形成されている。
【0033】
本実施形態にあっては,この本体10を,矩形状に形成された底板13(図2参照)上に,前記底板13の四隅部分に対応する位置を切り取った八角形の角筒部14と,前記角筒部14上に設けられた略裁頭円錐状の円錐部15と,該円錐部15上に形成された円筒部16によって構成された形状としている(図1〜3参照)。
【0034】
このように形成することで,本実施形態における本体10は上端に対し下部が幅広となる形状となっており,後述する灯具20を収容する空間である灯具室30が広く形成されることで,灯具室30内の空気が対流することで発熱した灯具20の冷却が効率的に行われると共に,本体10内で工具等を使用して行う灯具20等の取付作業等が行い易いものとなっている。
【0035】
もっとも,本発明の照明器具1に使用する本体10は,内部に灯具20等を収容するに充分な空間が形成されていると共に,上端に開口12が形成された形状であれば,前述した角筒部14や円錐部15,円筒部16を備えた図示の形状に限定されることなく,より単純な形状,例えば全体として有底円筒状に形成する等しても良い。
【0036】
本実施形態における照明器具1の本体10は,良好な熱伝導性が得られるようアルミ乃至はアルミ合金によって構成されており,アルミ乃至はアルミ合金を前述の形状に成型した後に,表面(必要に応じて内部表面を含む)に耐候性を付与するための表面処理が施されている。
【0037】
本実施形態にあっては,一例として照明器具1の本体10を,加工の容易性,熱伝導性の良さから前述したアルミ材を低圧鋳造により製造し,この低圧鋳造した本体10の表面に,順に金属亜鉛処理,化成処理,塗装及び焼き付けの各処理を施し,金属亜鉛層である第1層を化学反応で強固に結び付けると共に,高耐食性化成皮膜層である第2層,セラミック系材料を使用した表面焼成層である第3層を架橋効果で強固に結び付けた「ラスパート」(商標)処理を行うことにより耐候性を付与し,かつ,低圧鋳造の際に生じた巣等を塞いで本体10の気密性を高めている。
【0038】
もっとも,この本体10に対する耐候性付与の処理は,既知の他の加工材料,他の加工方法を用いるものであっても良い。
【0039】
このように形成された照明器具1の本体10外周,本実施形態にあっては,前述の円錐部15の外周には放熱用のフィン17を多数形成して,本体に伝導された熱を地面(コンクリート等)に対して伝導し易くしていると共に,地中に埋設した際のコンクリートの食いつき性の向上を図っている。
【0040】
なお,図示の実施形態にあっては,円筒部16の外周には,地面に埋設した際のコンクリートの食いつきを良好とするための多数の凸条17’を設けているが,この凸条17’に代えて,円錐部15の外周部分と同様,円筒部16の外周にも放熱フィンを設けるものとしても良い。
【0041】
なお,図3中の符号18は導入口で,この導入口18を介して照明器具1の本体10内に対する配線を導入する。この引き込み線の導入口18には防水ソケット(図示せず)を取り付け,この防水ソケット内に引き込み線(図示せず)を挿通させて,照明器具本体10内への引き込み線の導入が行われている。
【0042】
照明器具1の本体10上端に形成された開口12の内周には,図4に示すようにその上端寄りに位置して下方に傾斜する傾斜段部161が形成されていると共に,この傾斜段部161の下方において,内周方向に突出した,上面にボルトが螺合される有底孔168が所定間隔で形成されたフランジ162が設けられており,このフランジ162によって開口12内にシール材を介して嵌合された透光性の蓋体40を係止することができるように構成されている。
【0043】
このフランジ162は,その内周縁部分においてその肉厚が減じられてフランジ162の内周縁側の上面には更に係止段部164が形成されており,この係止段部164に,後述する第1の透明板50の周縁部を載置することができるようになっている。
【0044】
更に,図3に示すようにこの本体10内には,図示の実施形態にあっては前述の円錐部15の高さ方向における略中間位置に本体10内の空間を上下に仕切る仕切壁151が,本体10の内壁より中央側に向かって突出形成されており,この仕切壁151の下方が,後述する灯具20を収容するための灯具室30となっていると共に,この仕切壁151の中心には本体10の上端開口12と同心を成す円形の開口152が形成されており,灯具室30に収容された灯具20からの光が,この開口152を介して上端開口12より本体10外に照射できるようになっている。
【0045】
〔灯具〕
以上のように構成された本体10の灯具室30内には,灯具20が収容され,この灯具20より照射された光を開口12及びこの開口を塞ぐ透光性の蓋体40を介して本体10外に照射することで照明を行うことができるようになっている。
【0046】
この灯具20は,図示の例では前述の導入口18を介して本体内に導入された電源コードと接続されるソケット21と,該ソケット21に取り付けられたHIDランプ等の光源ランプ22,前記光源ランプ22で生じた光を上方に向けて反射する碗形のリフレクタ23,前記リフレクタ23の前面を覆う透光性フィルタ24,前記リフレクタ23の上端開口部を上向きに延長する略円筒状に形成されたコーン25を備えると共に,これらの各構成部品を内部に収容して相互に所定の位置に配置固定する,フレーム26を備えている。
【0047】
本実施形態にあっては,リフレクタ23の前方を覆う前述の透光性フィルタ24を,前述のコーン25の下端部に近接して取り付けていると共に,このコーン25の上端縁に,外向きに突出するフランジ25aを形成し,ソケット21側を下向きにして仕切壁151の中央に設けた開口152内に灯具20を挿入すると,コーン25の上端外周縁に設けた前述のフランジ25aが仕切壁151に設けた開口152の縁に係止されて灯具20を灯具室30内に吊り下げた状態に収容することができる。
【0048】
これにより,多種の灯具において,前記コーンの上端面外形を同一に構成すれば,あらゆる種類の灯具を吊り下げて収容し,その交換も容易である。
【0049】
この灯具20に設けた前述のリフレクタ23は,鏡面等として形成された反射面に波長740nm〜1150nmの光吸収性を有する材質による被膜を形成する等して,光源ランプ22からの光をリフレクタ23で反射する際に,赤外線の波長域にある波長740nm〜1150nmの光をリフレクタ23に吸収させると共に,それ以外の波長の光を反射することで,リフレクタ23の反射面で反射して透光性の蓋体40に向かって照射される反射光中の熱線(赤外線)を除去乃至は減少させることができるようにしている。
【0050】
前記リフレクタは,本実施形態においては,高純度アルミニウム素材に真空蒸着により,光学薄膜の積層体を成す,誘導体多層膜が形成され,前記波長光を吸収させる構成である。
【0051】
図示の実施形態にあっては,光源ランプ22の先端にキャップ27を被せることにより,光源ランプ22からの直接光が透光性の蓋体40側に向けて照射されることを防止することで,透光性の蓋体40側に向かう光を全てリフレクタ23によって反射された光とし,透光性の蓋体40に対して入射される光より赤外線成分を確実に除去乃至は減少させることができるようにしている。
【0052】
そして,このリフレクタ23の前方を覆う透光性フィルタ24は,波長740nm〜1150nmの光を吸収し,その他の波長の光を透過する透光性を有するものとすることで,リフレクタ23によって反射する際に赤外線の吸収が行われた光の中に依然として含まれている赤外線の成分を,更にこの透光性フィルタ24で吸収した後に透光性の蓋体40に向かって照射できるようにすることで,透光性の蓋体40の発熱をより確実に防止することができる。
【0053】
従って,前記透光性フィルタは,前記リフレクタと同様に,又はこれに替え,この透光性フィルタに,硬質ガラスに前記リフレクタと同様の真空蒸着による光学薄膜の積層体を成す,誘導体多層膜を形成し,前記波長光を吸収させることができる。
【0054】
以上のようにして灯具20を仕切壁151の開口152縁に吊り下げて灯具室30内に収容した後,仕切壁151の中央に設けた開口152は,これを第2の透明板60によって被蓋し,本体10内の空間を,仕切壁151を境に完全に上下で仕切るようにしている。
【0055】
この第2の透明板60は,光透過性を有するものであれば通常の透明ガラスを使用可能であるが,この第2の透明板60も,前述したリフレクタ23や透光性フィルタ24と同様, 波長740nm〜1150nmの光吸収性を付与するものとしても良く,このように構成することで透光性の蓋体40に向かって照射される光中に含まれる赤外線成分を更に減少させることができ,透光性の蓋体の発熱をより一層抑制することが可能となる。
【0056】
〔透光性の蓋体及び第1の透明板〕
以上のようにして灯具20を収容した本体10に対しては,上端開口12より第1の透明板50を挿入して,フランジ162に設けた係止段部164上に第1の透明板50の周縁部を載置した後,更に透光性の蓋体40を上端開口12内に嵌合して,本体10を被蓋する。
【0057】
このようにして本体10に形成された上端開口12を被蓋する透光性の蓋体40は,図2及び図5に示すようにガラス板41等の透明板の周縁部に無端環状の金属製の枠体42を取り付けた構造となっており,この枠体42には,本体10の開口12内に設けられたフランジ162の上面に設けられた有底孔168の形成間隔と同一の間隔にボルト孔421が形成されており,この枠体42部分を開口12内に設けたフランジ162に載置すると共に,このフランジ162に設けた有底孔168にボルト留めすることで,本体10の開口12を密閉された状態に被蓋することができるようになっている。
【0058】
なお,図示の実施形態にあっては,前述した第1の透明板50と透光性の蓋体40の間に六角柱状の孔が蜂の巣状に多数形成されたハニカムルーバ70を配置しており,このハニカムルーバ70によって照射光が幅方向に広がることを抑制して防眩性(グレアレス)を付与している。
【0059】
〔作用等〕
以上のように構成された地中埋設型照明器具1の本体10を地中に埋設した状態で,灯具20に設けた光源ランプ22を点灯すると,この光源ランプ22の点灯により光の照射が開始される。
【0060】
キャップ27が被せてあることで,光源ランプ22からの直接光は上方に向かって照射されず,リフレクタ23によって反射された反射光のみが照明光として利用される。
【0061】
そのため,リフレクタ23の反射面に波長740nm〜1150nmの光吸収性を付与したことにより,光源ランプからの光はリフレクタ23によって反射される際に,その中に含まれる赤外線成分が吸収され,このようにして赤外線成分が除去された光が上方に向けて照射される。
【0062】
リフレクタによって上方に向けて反射された光は,その後,リフレクタ23の前面を覆う透光性フィルタ24を通過する際に更に赤外線成分が除去されると共に,仕切壁151の中央に設けた開口152を覆う第2の透明板60に対しても波長740nm〜1150nmの光を吸収する性質を付与している場合には,この第2の透明板60を通過する際にも赤外線成分が除去され,このようにして赤外線が大幅に除去された光源ランプ22からの光は,第1の透明板50,ハニカムルーバ70を通過して透光性の蓋体40に入射され,透光性の蓋体40を通過して本体10外に照射される。
【0063】
従って,光源ランプ22からの光は,透光性の蓋体40に到達する前にその中に含まれる赤外線成分が大幅に除去される結果,光源ランプ22からの光の照射を受けても,透光性の蓋体40は殆ど発熱しない。
【0064】
一方,前述したようにリフレクタ23や透光性フィルタ24,場合によっては第2の透明板60に対して赤外線を吸収する性質を付与した場合,リフレクタ23や透光性フィルタ24,場合によっては第2の透明板60は,赤外線の熱エネルギーを吸収して発熱する。
【0065】
しかし,このようにしてリフレクタ23や透光性フィルタ24,場合によっては第2の透明板60で生じた熱は,熱伝導性の良いアルミ乃至はアルミ合金によって形成された本体10に好適に伝導され,本体10の外側と接触している地中に吸収されることから,光源ランプ22や安定器(図示せず)等がこの熱によるダメージを受けることが無い。
【0066】
しかも,このようにして発熱したリフレクタ23や透光性フィルタ24,場合によっては第2の透明板60の熱は,本体10を介して地面に吸収されるだけでなく,前述のように発熱体と化したリフレクタ23や透光性フィルタ24を備える灯具20を,仕切壁151によって隔離された灯具室30内に収容することで,灯具室30内の空気の対流によって灯具20の冷却が行われると共に,この空気を媒介として本体10を介した地中への熱放出が促進されると共に,灯具20と透光性の蓋体40との間には,第1の透明板50と仕切壁151との間に形成された空気層31,透光性の蓋体40と第1の透明板50との間に形成された空気層32という二重の空気層が介在することで,リフレクタ23や透光性フィルタ24,第2の透明板60の熱が,透光性の蓋体40に対して伝わることが防止されている。
【0067】
その結果,透光性の蓋体40の温度上昇の防止と,光源ランプ22や安定器が熱によりダメージを受けることの防止を両立させることができるものとなっている。
【0068】
下記表1は,赤外線のカット量についての実施例の試験結果を示す。
〔試験内容〕
(1)光源
700nm以上の赤外域成分の多いハロゲンランプ(90W: オスラム製:J12V90W)を測定した。
(2)測定方法
リフレクタ及びフィルタを以下の条件として,フィルタと測定面を平行とし,フィルタ中心,従ってランプ中心位置で,フィルタから50cmの位置での温度を測定した。
【0069】

【表1】

【符号の説明】
【0070】
1 (地中埋設型)照明器具
10 本体
11 上端縁
12 開口
13 底板
14 角筒部
15 円錐部
151 仕切壁
152 開口
16 円筒部
161 傾斜段部
162 フランジ
164 係止段部
168 有底孔
17 放熱フィン
17’ 凸条
18 導入口
20 灯具
21 ソケット
22 光源ランプ
23 リフレクタ
24 透光性フィルタ
25 コーン
25a フランジ
26 フレーム
27 キャップ
30 灯具室
31 空気層(第1の透明板50−仕切壁151間の)
32 空気層(透光性の蓋体40−第1の透明板50間の)
40 透光性の蓋体
41 ガラス板
42 枠体
421 ボルト孔
50 第1の透明板
60 第2の透明板
70 ハニカムルーバ
200 照明器具(地中埋設型)
210 本体
220 光源ランプ
240 透光性の蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される本体と,前記本体内に収容される灯具と,前記本体の上端開口を被蓋する透光性の蓋体を備えた地中埋設型の照明器具において,
前記本体をアルミ又はアルミ合金によって形成すると共に,中央部に開口が形成された仕切壁によって前記本体内を上下に仕切り,下段の室を,前記灯具を収容する灯具室と成すと共に,前記透光性の蓋体と前記仕切壁間における前記本体内の空間を更に第1の透明板によって上下に仕切り,
前記灯具室内に収容された前記灯具に,光源ランプと,前記光源ランプからの光を上方に向けて反射する,上向きに開口したリフレクタと,前記リフレクタの開口部前方を覆う透光性フィルタを設け,前記リフレクタの反射面と前記透光性フィルタに波長740nm〜1150nmの光吸収性を付与すると共に,前記透光性フィルタを通過した光を前記仕切壁に設けた前記開口を介して前記透光性の蓋体に向けて照射できるよう前記灯具を前記灯具室内に収容し,
前記仕切壁の前記開口を,第2の透明板によって被蓋したことを特徴とする地中埋設型照明器具。
【請求項2】
地中に埋設される本体と,前記本体内に収容される灯具と,前記本体の上端開口を被蓋する透光性の蓋体を備えた地中埋設型の照明器具において,
前記本体をアルミ又はアルミ合金によって形成すると共に,中央部に開口が形成された仕切壁によって前記本体内を上下に仕切り,下段の室を,前記灯具を収容する灯具室と成すと共に,前記透光性の蓋体と前記仕切壁間における前記本体内の空間を更に第1の透明板によって上下に仕切り,
前記灯具室内に収容された前記灯具に,光源ランプと,前記光源ランプからの光を上方に向けて反射する,上向きに開口したリフレクタと,前記リフレクタの開口部前方を覆う透光性フィルタを設け,前記リフレクタの反射面と前記透光性フィルタに波長740nm〜1150nmの光吸収性を付与すると共に,前記リフレクタの開口縁を上方に延長するコーンを設け,前記コーンの上端を前記仕切壁に設けた前記開口内に係止して前記灯具室内に前記灯具を吊り下げ,かつ,前記透光性フィルタを通過した光を前記仕切壁に設けた前記開口を介して前記透光性の蓋体に向けて照射できるよう前記灯具を前記灯具室内に収容し,
前記仕切壁の前記開口を,第2の透明板によって被蓋したことを特徴とする地中埋設型照明器具。
【請求項3】
前記仕切壁の前記開口を被蓋する前記第2の透明板に,波長740nm〜1150nmの光吸収性を付与したことを特徴とする請求項1又は2記載の地中埋設型照明器具。
【請求項4】
前記本体の外周に,放熱フィンを設けたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の地中埋設型照明器具。
【請求項5】
前記リフレクタ及び/又はフィルタは,光学薄膜の積層体を成す,誘導体多層膜を形成したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の地中埋設型照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−59620(P2012−59620A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203351(P2010−203351)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(592064110)株式会社ウシオスペックス (16)
【Fターム(参考)】