説明

地山削孔方法および地山削孔装置

【課題】気泡を利用して地山削孔を効率的に行い得る有効適切な方法および装置を提供する。
【解決手段】水と空気を混合して微細気泡を発生させる微細気泡発生装置10によって微細気泡含有液体を調製して貯液槽13に貯留し、該貯液槽から微細気泡含有液体を削孔液として削孔ロッド1に供給しつつ削孔ロッドを駆動して地山を削孔する。微細気泡発生装置によって微細気泡を発生させる際に気泡保持剤を混入することが好ましい。微細気泡混合液体を削孔ロッドに供給する際に空気をさらに混入することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔ロッドにより地山を削孔するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、たとえばトンネル工事における補助工法としての鋼管打設工法等においては削孔ロッドにより地山を削孔することが行われる。
その場合、毎分60〜80リットル程度の水を削孔ロッド先端のビット周囲に噴射して削孔を行うことが通常であるが、そのような多量の水を供給しつつ削孔を行う場合には地山を痛める場合があるし、地山への水の浸透に起因して地山の緩み域が拡大したり、水が地山の亀裂を通って切羽面にまわることで小崩落を引き起こす懸念もある。また、孔壁が損傷を受けて自立せずに周辺地山が崩壊してしまい、削孔内への鋼管の打設が困難になる場合もある。
【0003】
そのため、上記のような多量の水の供給による悪影響を回避するために、特許文献1には削岩機へ送給する圧縮空気に気泡を混入してその気泡混入圧縮空気を削岩機のビットから噴出させて穿孔を行う方法が提案され、また特許文献2には削孔ビットに供給する冷却媒体として圧縮空気に帯同された気泡を用いるという工法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−60553号公報
【特許文献2】特開2000−291358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように気泡を利用して削孔を行う工法によれば、在来工法における多量の水に起因する上記のような問題を解決し得るものではあるが、単なる気泡によることでは充分な流動性を持ったスラリーを形成できないことから掘削ズリの排出が必ずしも充分に行われず、そのためたとえば長尺鋼管打設工法や大口径削孔を行う場合のように多量の掘削ズリが発生する場合には有効に適用できないものである。
また、掘削ズリの処理に際しては消泡処理が必要であるのでそのために消泡剤を用いる必要があるし、消泡が不完全であると排水処理時に再発泡して環境汚染の一因となるので万全の処理が必要とされる。
したがってこの種の工法は有効性が認められつつも上記の点で改善の余地を残しており、広く普及するに至っていないのが実状である。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は気泡を利用して地山削孔を行う場合における上記の問題を解決し得る有効適切な方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の地山削孔方法は、水と空気を混合して微細気泡を発生させる微細気泡発生装置によって微細気泡含有液体を調製して貯液槽に貯留し、該貯液槽から微細気泡含有液体を削孔液として削孔ロッドに供給しつつ削孔ロッドを駆動して地山を削孔することを特徴とする。
本発明方法においては、前記微細気泡発生装置によって微細気泡を発生させる際に気泡保持剤を混入することが好ましい。
また、微細気泡混合液体を前記削孔ロッドに供給する際に空気を混入することが好ましい。
【0008】
本発明の地山削孔装置は、地山を削孔するための削孔ロッドと、水と空気を混合して微細気泡を発生させて微細気泡含有液体を調製する微細気泡発生装置と、前記微細気泡発生装置により調製した微細気泡含有液体を貯留する貯液槽と、前記貯液槽に貯留した微細気泡含有液体を削孔液として前記削孔ロッドに供給する微細気泡含有液体供給手段とを具備してなることを特徴とする。
本発明装置においては、前記微細気泡発生装置に気泡保持剤を供給する気泡保持剤供給装置を具備することが好ましい。
また、前記微細気泡含有液体供給手段により前記削孔ロッドに供給される微細気泡含有液体に空気を供給する空気供給装置を具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地山削孔方法および地山削孔装置は、従来のこの種の工法において利用されている気泡に比べて充分に微細な気泡を用いることを要旨とするものであり、それにより以下のような効果が得られる。
微細気泡を含む微細気泡含有液体は掘削ズリと混合されて流動性の高いスラリーとなって削孔内および削孔ロッド内を支障なく流動するので、掘削ズリの排出効果を高めることができる。また、微細気泡含有液体は気泡保持効果に優れることから孔壁を充分に被覆保護して孔壁崩壊をより確実に防止可能である。
したがって、本発明によれば従来工法に比べて掘削ズリの排出効果と孔壁保持効果とに優れるものであって充分なる施工性改善効果が得られ、特に鋼管打設工法に適用する場合にはそのスラリーにより周辺地山が保持されつつ鋼管との間の摩擦係数が低減するので、長尺あるいは大口径の鋼管であっても効率的な打設が可能となる。
【0010】
また、本発明によれば削孔水として微細気泡含有液体を用いることにより削孔水の所要水量を大幅に低減できるので、従来工法のように多量の水を供給することによる孔壁への悪影響や地山への浸透、それに起因する孔壁崩壊や地山の緩みを充分に抑制することができる。
また、微細気泡含有液体を貯液槽に貯留してそこから微細気泡含有液体供給手段を介して削孔ロッドに供給するので、削孔ロッドにする安定供給が可能であることはもとより、地山状況や削孔条件に応じて微細気泡含有液体の供給水量や供給水圧を最適に設定可能であるし、貯液槽の容量をはじめとして各機器の諸元を適宜変更することで様々な施工条件に広範に対応可能である。
【0011】
さらに、気泡保持剤供給装置を備えて適宜の気泡保持剤を供給する構成とすれば、さらに効率的に微細気泡を発生させることができる。
【0012】
さらにまた、微細気泡含有液体供給手段に空気供給装置を備えて、削孔ロッドに供給される微細気泡含有液体に対して空気を供給するように構成すれば、貯液槽からの微細気泡含有液体は空気との気液2層流状態を呈する削孔液となって削孔ロッドへ供給されるので微細気泡含有液体の供給量をさらに削減できるし、くり粉の排出効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の地山削孔方法および地山削孔装置の一実施形態を示す概要図である。
【図2】同、他の実施形態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明方法および装置の一実施形態を図1に示す。これは周知の削孔ロッド1に対して微細気泡含有液体を供給しつつ地山を削孔することを主眼とするものである。
削孔ロッド1は内管1aと外管1bからなる二重管構造のもので、周知のドリフタ2((b)参照、(a)では図示略)の先端部にスイベルジョイント3を介して連結され、ドリフタ2を駆動して内管1aに回転および打撃を加えることで地山削孔を行うものである。
上述したように通常の削孔ロッド1では水や圧縮空気、あるいは気泡を含む圧縮空気を内管1aを通してその先端のビットに供給しつつ削孔を行い、それにより発生する掘削ズリを水や圧縮空気とともに外管1b内(内管1aと外管1bとの間の環状空間)あるいは外管1bと孔壁との間の空隙を通して排出するのであるが、本発明では削孔水として微細気泡含有液体を用いることを要旨とし、本実施形態の地山削孔装置はそのための装置群を備えている。
【0015】
すなわち、本実施形態の地山削孔装置は、水と空気を混合して微細気泡を発生させて微細気泡含有液体を調製する微細気泡発生装置10を主体として、その微細気泡発生装置10に対し、管路(流路)を通して水を供給するための水供給装置11および気泡生成用の空気を供給するためのコンプレッサ(空気供給装置)12とを備え、それにより調製した微細気泡含有液体を貯液槽13から削孔ロッド1に供給することを基本とする。
微細気泡発生装置10としてはたとえば特開2003−265938号公報に開示されている微細気泡発生装置が好適に採用可能である。これはいわゆる加圧溶解方式により微細気泡(マイクロバブル)を発生するもので、水と空気とを容器内において攪拌混合し加圧して気体溶解液を調製し、それを下流側の減圧バルブを通して吐出ノズル20から吐出し減圧させることで50μm以下の微細気泡はもとよりさらに微細な10μm以下の極微細気泡を安定に調製可能なものである。
なお、本発明においては他の形式の微細気泡発生装置も採用可能であり、たとえばいわゆるせん断方式によるものやベンチュリ管方式によるものも好適に採用可能である。
【0016】
そして、本実施形態では、上記の微細気泡発生装置10の後段に貯液槽13を配置するとともに、さらにその後段にポンプ15および供給管路16からなる微細気泡含有液体供給手段14を設け、微細気泡発生装置10により調製した微細気泡含有液体を貯液槽13に貯留したうえで微細気泡含有液体供給手段14を介して削孔ロッド1に対して供給するようにしており、その供給水量や供給水圧を地山状況や削孔条件に応じて最適に調整可能に構成されている。
【0017】
上記構成の地山削孔装置によれば、微細気泡含有液体を削孔ロッド1に供給しつつ削孔を行うことにより効率的な削孔を行い得てその施工性を大きく改善できるものである。
すなわち、本発明によれば、直径50μm以下の微細気泡を含む微細気泡含有液体を削孔水として削孔ロッド1に供給しつつ削孔を行うことにより、その微細気泡含有液体は掘削ズリと混合されて流動性の高いスラリーとなって削孔内および削孔ロッド1内を支障なく流動するので、掘削ズリの排出効果を高めることができる。
また、微細気泡含有液体は従来の単なる水や圧縮空気あるいは単なる気泡による場合に比べて気泡保持効果に優れることから、孔壁を充分に被覆保護して孔壁崩壊をより確実に防止可能である。
その結果、本発明方法によれば従来工法のような単なる水や圧縮空気による場合はもとより特許文献1や特許文献2に示される工法にような単なる気泡を圧縮空気とともに供給する場合に比べても遙かに掘削ズリの排出効果と孔壁保持効果とを高めることができ、それにより充分なる施工性改善効果が得られる。
特に本発明を先受け鋼管打設工法に適用する場合には、スラリーにより周辺地山が保持されつつ鋼管との間の摩擦係数が低減するので、長尺あるいは大口径の鋼管であっても効率的な打設が可能となる。
【0018】
勿論、微細気泡含有液体の供給量は従来工法において必要とされる削孔水量に比べて大幅に低減できるから、従来のように多量の削孔水を供給することによる孔壁への悪影響や地山への浸透、それに起因して懸念される孔壁崩壊や地山の緩みを充分に抑制することができる。
また、微細気泡含有液体を貯液槽13に貯留してそこから微細気泡含有液体供給手段14を介して削孔ロッド1に供給するようにしているので、削孔ロッド1に対する微細気泡含有液体の安定供給が可能であることはもとより、地山状況や削孔条件に応じて微細気泡含有液体の供給水量や供給水圧を最適に設定可能であるし、貯液槽13の容量をはじめとして各機器の諸元を適宜変更することで様々な施工条件に広範に対応可能である。
【0019】
以上の基本構成に加えて、本発明の地山削孔装置には必要に応じて図1に示しているように気泡保持剤供給装置17を備えることが好ましい。
気泡保持剤供給装置17は微細気泡発生装置10に管路を通して導入される水に対して適宜の気泡保持剤を混入供給するものであり、これにより微細気泡の気泡保持性がさらに高まる。この場合、微細気泡はもともと気泡保持性に優れるので、気泡保持剤を添加混入したとしてもその添加混入量は特許文献1,2に記載されている技術における起泡剤の混入量よりも少なくてすむと考えられる。
なお、本発明における気泡保持剤としては、各種のものが考えられるが界面活性剤を含むものが採用でき、また特許文献1,2に記載されている起泡剤と称されるものも採用できる。
【0020】
さらに、同じく図1に示しているように、本発明の地山削孔装置には必要に応じて微細気泡含有液体供給手段14にコンプレッサ(空気供給装置)18を備えることが好ましい。そのコンプレッサ18は削孔ロッド1に供給される微細気泡含有液体に対してさらに空気を混入供給するものであり、これにより貯液槽13からの微細気泡含有液体は空気との気液2層流状態を呈する削孔液となって削孔ロッド1へ供給され、そのため微細気泡含有液体の供給量をさらに削減できるし、くり粉の排出効果をさらに高めることができる
なお、上記のように微細気泡含有液体供給手段14にコンプレッサ18を設けてさらに空気を供給する場合には、そのコンプレッサ18を(a)に示しているように貯液槽13の後段の供給管路16に接続することでも良いが、あるいは(b)に示すようにスイベルジョイント3の直前の位置に接続しても良いし、図示は省略したがスイベルジョイント3に対して直接的に空気を供給するようにしても良い。
【0021】
図2(a)、(b)は他の実施形態を示す。これらは、いずれも貯液槽13に対して水供給装置11から水を供給するとともに気泡保持剤供給装置17から気泡保持剤を供給してそこで混合し、その混合液体を貯液槽13と微細気泡発生装置10との間で循環させつつコンプレッサ12から空気を供給することで微細気泡含有液体を調製して貯液槽13に貯留するようにしたものであり、これによっても上記実施形態の場合と同様に管路を通って微細気泡発生装置10に導入された水に対して気泡保持剤の混入供給が行われて微細気泡含有液体を効率的に調製することができる。
なお、図2(a)、(b)に示す実施形態においても、図1に示した上記の実施形態の場合と同様に気泡保持剤供給装置17とコンプレッサ18は必ずしも備えることはなく省略しても差し支えないし、コンプレッサ18を備える場合は図1(b)に示したように構成しても良いし、あるいはスイベルジョイント3に対して直接的に空気を供給することでも良い。
また、上記各実施形態において、空気供給装置はコンプレッサ12,18である必要はなく、空気が供給できる手段であれば良い。例えば、ベンチュリ効果を利用したエジェクタを流路途中に配することで、そのエジェクタを自吸込式空気供給手段として空気を供給するようにしてもよい。さらにまた、ベンチュリ効果を利用した微細気泡発生装置であれば、その装置自体が空気供給手段を備えるものなので、別途の空気供給手段を備えなくてもよい。
さらに、上記各実施形態の装置に対して、たとえば特許文献1(特公平6−60553号公報)に示されるような(微細気泡ではない)通常の気泡を発生させるための気泡発生装置を設置しても良く、各図に破線で示すようにそのような通常の気泡発生装置19を削孔ロッド1に対して気泡混合液体を供給する前の管路途中にを取り付ければさらに発生気泡径の大きさの分散化が図れる。
【符号の説明】
【0022】
1 削孔ロッド
1a 内管
1b 外管
2 ドリフタ
3 スイベルジョイント
10 微細気泡発生装置
11 水供給装置
12 コンプレッサ(空気供給装置)
13 貯液槽
14 微細気泡含有液体供給手段
15 ポンプ
16 供給管路
17 気泡保持剤供給装置
18 コンプレッサ(空気供給装置)
19 気泡発生装置
20 吐出ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と空気を混合して微細気泡を発生させる微細気泡発生装置によって微細気泡含有液体を調製して貯液槽に貯留し、該貯液槽から微細気泡含有液体を削孔液として削孔ロッドに供給しつつ削孔ロッドを駆動して地山を削孔することを特徴とする地山削孔方法。
【請求項2】
前記微細気泡発生装置によって微細気泡を発生させる際に気泡保持剤を混入することを特徴とする請求項1記載の地山削孔方法。
【請求項3】
微細気泡混合液体を前記削孔ロッドに供給する際に空気を混入することを特徴とする請求項1または2記載の地山削孔方法。
【請求項4】
地山を削孔するための削孔ロッドと、
水と空気を混合して微細気泡を発生させて微細気泡含有液体を調製する微細気泡発生装置と、
前記微細気泡発生装置により調製した微細気泡含有液体を貯留する貯液槽と、
前記貯液槽に貯留した微細気泡含有液体を削孔液として前記削孔ロッドに供給する微細気泡含有液体供給手段とを具備してなることを特徴とする地山削孔装置。
【請求項5】
前記微細気泡発生装置に気泡保持剤を供給する気泡保持剤供給装置を具備してなることを特徴とする請求項4記載の地山削孔装置。
【請求項6】
前記微細気泡含有液体供給手段により前記削孔ロッドに供給される微細気泡含有液体に空気を供給する空気供給装置を具備してなることを特徴とする請求項4または5記載の地山削孔装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−247028(P2011−247028A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123216(P2010−123216)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(391066157)ドリルマシン株式会社 (6)