説明

地盤のブロック状混合処理工法

【課題】 地盤改良作業の時間短縮に有効な地盤改良の工法を提供する。
【解決手段】 建造物や構造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削、排土して所定開口面積で且つ一定深さの空所11を形成し、該空所において、該空所の下方の所定深さHの地盤にある支持層SLの確認を行ない、前記支持層が確認されたら、前記空所に所定量の固化材13と混練水14を投入し、続いて、前記所定開口面積の領域について掘削を行いつつ該掘削した土壌と前記投入された固化材と混練水との攪拌、混合を行い、前記掘削、攪拌、混合の並行作業を、前記所定深さに到達するまで行うことにより、前記所定開口面積でかつ所定深さの領域内に土壌と固化材と混練水とのスラリーを生成し、前記スラリーを固化させる、ことを特徴とする地盤のブロック状混合処理工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物や構造物の基礎を構築すべき位置の地盤を改良する工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地盤改良工法は、現地土壌とセメントや水、その他の添加材を機械撹拌混合して固化させることにより、次のように行われている。
【0003】
この地盤改良工法では、図6に示されるように、まず、掘削機60を使用して建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を必要面積、必要深さまで掘削・排土し所定大きさの空所52を形成する空所形成作業が行われる。排土した土壌は現地土壌Sとして空所52の近くの敷地に積み置かれる。続いて、空所52内にセメント等の固化材と水とを投入し撹拌混合を行なって固化材混入スラリーを生成する固化材混入スラリー生成作業と、空所52内に先に掘削・排土した現地土壌Sを投入し固化材混入スラリーと共に撹拌混合して固化材と現地土壌混合スラリーを生成する固化材・現地土壌混合スラリー生成作業とを順次行う。その後、空所52内の固化材・現地土壌混合スラリーを固化させることによって改良地盤(改良体K)を構築する(特許文献1)。
【0004】
上記空所形成作業では、空所52を形成すると、空所52の底部の支持地盤の状態を目視又は接触等によって確認する。
【0005】
なお、掘削機60は、バケット61部分に撹拌装置62を備え、バケット61による掘削機能だけでなく撹拌装置62による回転撹拌機能も備えたものがある。
【0006】
形成した空所52の付近には、固化材を所定量ずつ分包した複数個の固化材入り袋Caを運んでおく。また、空所52の近くに水管63の注水口64を導いておく。水管63には、バルブ65と流量計66が設けられており、流量計66を見ながら空所52内に注水する。
【0007】
図7は、回転攪拌機能を持つバケットを備えた掘削機60による空所形成作業、固化材混入スラリー生成作業、及び固化材・現地土壌混合スラリー生成作業を示す。
【0008】
掘削機60は、第1アーム60−1と第2アーム60−2を有し、第2アーム60−2の先端に回転攪拌機能を持つバケット60−3を備える。
【0009】
図7(A)は、掘削機60が、第1アーム60−1と第2アーム60−2を介してバケット60−3を地盤内に挿入し、掘削している状態を示す。
【0010】
図7(B)は、掘削機60が、バケット60−3を空所52内で上下左右方向に移動させて回転攪拌機能により空所52内に投入された固化材、水、現地土壌の混合、攪拌を行い、固化材・現地土壌混合スラリーを生成している状態を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−106467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の地盤改良工法は、あらかじめ建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を必要面積、必要深さまで掘削・排土し所定大きさの空所52を形成する作業が不可欠である。必要面積、必要深さは、図6に示した改良体Kのサイズで決まり、通常、空所52の大きさは一辺が数m程度の四角形、深さも数m程度であることが多い。
【0013】
このため、空所形成作業に時間を要するだけでなく、空所52近くの敷地に排土した現地土壌を積み置くためのスペースを必要とする。空所52の近くに必要なスペースを確保できない場合には、排土した現地土壌を一旦、別場所に移送、保管し、固化材・現地土壌混合スラリー生成作業を行なう時に保管場所にある現地土壌を空所まで運びなおすという作業が必要になる。
【0014】
そこで、本発明の課題は、地盤改良作業の時間短縮に有効な地盤のブロック状混合処理工法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の好ましい態様による地盤のブロック状混合処理工法は、建造物や構造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削、排土して所定開口面積で且つ一定深さの空所を形成し、該空所において、該空所の下方の所定深さの地盤にある支持層の確認を行ない、前記支持層が確認されたら、前記空所に所定量の固化材と混練水を投入し、続いて、前記所定開口面積の領域について掘削を行いつつ該掘削した土壌と前記投入された固化材と混練水との攪拌、混合を行い、前記掘削、攪拌、混合の並行作業を、前記所定深さに到達するまで行うことにより、前記所定開口面積でかつ所定深さの領域内に土壌と固化材と混練水とのスラリーを生成し、前記スラリーを固化させる、ことを特徴とする。
【0016】
なお、前記支持層の確認は、前記空所に更に、前記支持層まで到達する前記所定深さの縦穴あるいは溝を形成して行ない、該支持層の確認後、前記縦穴あるいは溝を埋め戻すことで行うことができる。
【0017】
前記掘削、攪拌、混合の並行作業は、可動アーム先端の掘削用バケットとして回転攪拌翼による攪拌混合機能を持つバケットミキサーを備えた掘削機で行なうことが好ましい。この場合、少なくとも前記バケットミキサーにセンサを備え、該センサからの検出信号により前記掘削、攪拌、混合の並行作業をモニターで確認しながら、前記スラリーの生成が前記所定深さに到達したかどうかの判別を行なうようにすることが望ましい。
【0018】
前記センサとしては、前記バケットミキサーの先端部及び前記可動アームに設置した複数の傾斜計、前記バケットミキサーの先端部に設置した電気比抵抗値センサ、前記回転攪拌翼の回転数を検出する回転計、前記固化材の投入量を計測するセンサ、前記混練水の投入流量を計測するセンサを備えることが好ましい。この場合、前記複数の傾斜計からの検出値を用いて前記バケットミキサーの先端部の位置を、現在の地盤改良位置として算出し、前記電気比抵抗値センサからの検出値を用いて前記バケットミキサーの先端部の電気比抵抗値を攪拌混合度として求め、これらの値を前記各センサの検出値と共にメモリに記憶する。そして、前記メモリに記憶されている、前記複数の傾斜計からの検出値を用いて算出された地盤改良位置と、その地盤改良位置での前記攪拌混合度を用い、地盤改良領域をその縦断面でかつ該縦断面全域について地盤改良位置毎の攪拌混合度の違いを色分けしてモニターにて表示することで前記掘削、攪拌、混合の並行作業を監視することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るブロック状混合処理工法による地盤改良工法は、排土を必要とする地盤の土壌の掘削、排土は、地盤改良を必要とする深さ、例えば支持層まで到達する所定深さに比べて十分に浅い深さについて行なえば良いので、前述した従来の空所形成作業の時間に比べて十分に短くて済む。そして、これにより生じる現地土壌は埋め戻しを必要としないだけでなく、掘削、排土の現場近くに積み置く必要がないので、そのためのスペースが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による地盤のブロック状混合処理工法の実施形態を作業の流れに沿って説明するための断面図である。
【図2】本発明による地盤のブロック状混合処理工法に用いられる掘削機のバケットとして好適なバケットミキサーを側面側から見た断面図である。
【図3】図2に示したバケットミキサーの一部断面正面図である。
【図4】本発明による地盤のブロック状混合処理工法を実施する際に適用される施工管理システムを構成するために必要な複数種類のセンサについて説明するための図である。
【図5】本発明による地盤のブロック状混合処理工法を実施する際に適用される施工管理システムの管理装置におけるモニターの表示画像の一例を示した図である。
【図6】従来の地盤改良工法の一例を説明するための斜視図である。
【図7】従来の地盤改良工法の作業工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照して、本発明に係るブロック状混合処理工法による地盤改良工法の実施形態について説明する。
【0022】
(1)はじめに、建造物や構造物の基礎を構築すべき位置の地盤(現状地盤)の土壌を掘削、排土して所定開口面積で且つ一定深さhの空所11を形成する(図1a)。この掘削、排土は、第1アーム10−1、第2アーム10−2からなる可動アーム先端に備えられる掘削用バケットとして、攪拌混合機能を持つバケットミキサー20を備えた掘削機10で行われる。バケットミキサー20は、これまでの回転攪拌機能を改良した構造を有しており、後で図面を参照して詳しく説明する。
【0023】
空所11の一定深さhは、地盤改良を必要とする所定深さHに比べて十分に浅い。そして、この掘削、排土により生じた現地土壌は廃棄される。
【0024】
(2)次に、空所11に更に一定深さhよりも深い、支持層SLまで到達する所定深さHの縦穴あるいは溝12を形成して支持層SLの確認を行なう。この作業も掘削機10で行われる(図1b)。この作業は、地盤改良を支持層SLに到達する深さまで行なうことが要求されることから、支持層SLの確認のために必要な作業である。それゆえ、支持層SLを確認できる大きさであれば良く、通常は縦穴で良いが、支持層SLが不陸していることが想定される場合には、図面の表裏方向に延びる溝状にする。
【0025】
いずれにしても、支持層SLの確認ができたら、掘削機10により縦穴あるいは溝12は埋め戻される(図1c)。
【0026】
なお、地下水位が高い場合や、崩壊の可能性がある砂地盤の場合は、縦穴あるいは溝12を形成しての支持層SLの確認作業に代えて、穴あるいは溝形成を必要としない、スウェーデン式サウンディング試験等で支持層SLの確認を行なうようにしても良い。
【0027】
(3)続いて、空所11に所定量の固化材(例えばセメント系固化材)13と混練水14を投入し(図1d)、バケットミキサー20で攪拌、混合を行なう。なお、固化材、混練水の供給方法は、地盤改良作業を行う場所、すなわち敷地の条件や工事規模により以下の2つのどちらかの方法を採用する。
【0028】
第1の方法:敷地に余裕があり、かつ大規模工事で採用する方法で、セメントミルクプラントで混練水とプレミックスした固化材料を、空所11に投入する。
【0029】
第2の方法:狭隘敷地や小規模工事で採用する方法で、固化材と混練水を別々に空所11に投入する。図1(d)は、この第2の方法を示している。
【0030】
(4)バケットミキサー20による固化材13と混練水14との攪拌、混合に併せて、空所11より下側の領域の地盤について掘削を行うことにより、該掘削により生じた土壌と上記工程(3)で投入された固化材と混練水との攪拌、混合を行う(第1図e)。
【0031】
(5)上記の掘削、攪拌、混合の並行作業を、所定深さHに到達するまで行うことにより、上記所定開口面積でかつ所定深さHの領域内に土壌と固化材と混練水とのスラリー(固化材・土壌混合スラリー)を生成し、前記スラリーを固化させる。
【0032】
このようにして、建造物や構造物の基礎を構築すべき位置の地盤に、所定開口面積で且つ所定深さHのブロック状の均質な改良体1が形成される。なお、改良体1の上面は改良天端と呼ばれ、一定深さhよりやや浅い深さ位置になる。これは、添加される固化材の分だけ改良体1の体積が増え、この増加分が改良体1の上面側に現れるからである。少し浅くなった空所11における改良天端の上には、建造物や構造物の基礎2が構築される。
【0033】
なお、掘削、攪拌、混合の並行作業が、所定深さHに到達したかどうかの判別についても、後で詳しく説明する。
【0034】
以上のように、本実施形態においては、掘削、排土による空所11の形成作業は、従来の地盤改良工法における空所の形成作業に比べて十分に浅いので、作業時間が短く、排出される土壌の量も少ない。また、支持層SLを確認するための縦穴あるいは溝12も空所11に比べて十分に小さいので、空所11の形成作業と合わせても、従来の地盤改良工法における空所の形成作業時間に比べて十分に短い時間で済む。加えて、空所11の形成で生じた土壌は廃棄され、縦穴あるいは溝12の形成で生じた土壌は埋め戻されるので、従来の地盤改良工法における空所の形成作業で生じた現地土壌を置くための大きなスペースは不要である。
【0035】
なお、空所11及び縦穴あるいは溝12の形成は掘削のみであるので、バケットミキサー20ではなく、掘削機の通常のバケット(攪拌混合機能を持たないもの)で行なわれても良い。
【0036】
次に、図2、図3を参照して、従来よりも回転攪拌機能を向上させたバケットミキサー20の一例について説明する。
【0037】
図2、図3は、本発明による地盤のブロック状混合処理工法において使用される掘削機に備えられた改良型のバケットミキサーを示す図であり、図2は側面側から見た断面図、図3は一部断面正面図である。
【0038】
バケットミキサー20はバケット21を有し、そのハウジング23内には、横向きに回転軸24が回転可能に支持されている。回転軸24には、軸方向に間隔をおいてここでは3枚の回転撹拌翼25が取付けられている。回転攪拌翼25は、回転軸24を間にしてその直径方向に延びる少なくとも2枚のブレードから成り、各ブレードの先端には周方向に延びるカッター(爪)26が取付けられている。図2には回転攪拌翼25の正回転方向を実線の矢印、逆転方向を破線の矢印でそれぞれ示しており、ブレード先端におけるカッター26の延在方向は正回転方向である。3枚の回転攪拌翼25はまた、回転軸24を中心とする延在方向の角度が互いに異なるようにされている。
【0039】
バケットミキサー20は、隣り合う回転撹拌翼25の間に適切な間隔をおいて非回転撹拌翼(固定翼)27を攪拌促進ブレードとして備える。非回転攪拌翼27は、回転軸24を間にしてその直径方向に延び、両端がハウジング23(バケット21)の固定部に固定され、中間部を回転軸24が回転可能に貫通している。ここでは、非回転攪拌翼27の一端はハウジング23の後部の上部内壁、他端はハウジング23の開口に近い前端側にそれぞれ固定されているが、固定位置はこれらの場所に限定されるものではない。非回転攪拌翼27は、回転攪拌翼25が3枚の場合には2枚で回転攪拌翼の数に応じて設置枚数も変わる。また、ここでは、2枚の非回転攪拌翼27は、回転軸24を中心とする延在方向の角度が同じになるようにしているが、これに限定されるものではない。
【0040】
次に、ハウジング23に設置されている動力伝達部30について説明する。動力伝達部30は、油圧モーター33と、油圧モーター33の出力軸に固定されている第1歯車31と、回転軸24に固定されている第2歯車32と、第1歯車31と第2歯車32の間に掛け渡されているチェーン34とから構成される。
【0041】
特に、ここに示したバケットミキサー20は、地盤改良用の固化材を、図示しないグラウトホース内を経由してハウジング23内に送り、4箇所の固化材液吐出口(ノズル)(図示省略)から各回転攪拌翼25の付近に流出させることもできるものである。
【0042】
バケット21には傾斜計36が設置されるが、傾斜計は掘削機10のアーム部にも設置(2軸式の場合2箇所)される。後述する管理装置は、各アーム長と傾斜計の検出した角度から傾斜計を設置した各位置を演算し、基準の地表面からバケット21の先端刃先までの位置と深さを算出する。
【0043】
バケット21の下部前端には、4個の爪(カッター)22が固定されている。図示は省略しているが、ハウジング23の下部における後部は網目格子とされる。この網目格子は、格子より小さい粘性土やローム・シルト粘土の土塊や砂利・土砂は通過させるが、それより大きい土塊や砂礫、またはごみ等は通過させない役目をする。
【0044】
油圧モーター33が回転すると、動力伝達部30を介して回転撹拌翼25は図2に実線で示される正転方向に回転するので、バケット21内に取り込まれた土壌と固化材液吐出口から導入された固化材液が撹拌される。
【0045】
なお、回転撹拌翼25が図2に破線で示される逆転方向に回転すると、網目格子を通過できなかった砂礫や小石やごみ等がハウジング23の開口から排出される。
【0046】
以上のように、バケットミキサー20の回転軸24に複数枚の回転撹拌翼25を設置し、しかも回転攪拌翼25と交互に且つ適切な間隔をおいて非回転撹拌翼27を配置したことにより、回転攪拌翼25と非回転攪拌翼27の間での土塊の切断や粉砕の効率が良くなり、結果的に土壌改良性能を向上させることができる。つまり、回転軸24を回転させると、回転撹拌翼25と非回転撹拌翼27との間で強制的にせん断(はさみで切るような状態)や粉砕が行えるので、撹拌促進手段としての効果を創出できる。
【0047】
次に、上述した掘削、攪拌、混合の並行作業が、所定深さHに到達したかどうかの判別を伴う、地盤改良の施工管理について説明する。
【0048】
本実施形態による地盤のブロック状混合処理工法は、以下の施工管理システムを適用することでその効果を発揮する。
【0049】
施工管理システムは、複数種類のセンサ、これらのセンサからの検出信号を処理し処理結果をディスプレイに表示させるモニター機能付きの管理装置を含む。
【0050】
図4を参照して、本施工管理システムに用いられるセンサは以下の通りである。但し、以下の例はあくまでも一例にすぎず、本発明で用いられるセンサは以下の例に限定されるものではない。
【0051】
傾斜計S1(傾斜計36):掘削機の第1、第2アーム10−1、10−2及びバケット21に設置され(図4中に白抜き数字1で示す)、それぞれの検出値を用いてバケット位置を算出し現在の地盤改良位置を確認するために用いられる。
【0052】
電気比抵抗値センサS2:バケット21、特にその先端に近い箇所に設置され(図4中に白抜き数字2で示す)、固化材・土壌混合スラリーの攪拌混合度を確認するために用いられる。
【0053】
回転計S3:バケットミキサー20の回転軸24に設置され(図4中に白抜き数字3で示す)、回転攪拌翼25の回転数を、固化材・土壌混合スラリーの攪拌混合回数として確認するために用いられる。
【0054】
ロードセルS4:固化材の使用量を確認するための重量センサで、図4ではセメントミルクプラントにおける固化材の投入部に設置され(図4中に白抜き数字4で示す)、投入される固化材の重量を計測する。
【0055】
流量計S5:混練水の使用量を確認するための流量センサで、図4ではセメントミルクプラントにおけるグラウトポンプに設置され(図4中に白抜き数字5で示す)、投入される混練水の流量を計測する。
【0056】
以上の各センサで検出された検出値は、まず、掘削機キャビン内のメモリ機能を持つデータ収録装置に無線で送信されてメモリに記憶され、更に、データ収録装置から後述する管理装置に無線送信されるが、各センサから直接管理装置に送信されても良いし、場合によっては有線で送信されても良い。各センサで検出された検出値は、管理装置の内部メモリあるいは外部メモリに記憶される。管理装置はパーソナルコンピュータで実現することができ、工事事務所等に配置されるが、ラップトップタイプであれば配置場所は問わないし、無線受信も可能である。
【0057】
図5は管理装置のモニターによる表示画像の一例を示している。
【0058】
管理装置は、回転計S3からの検出値に基づいて、固化材・土壌混合スラリーの攪拌混合回数をモニターにリアルタイム表示すると共にメモリに記憶する。攪拌混合回数は設計値と実施値(検出値)が表示される。
【0059】
管理装置はまた、ロードセルS4からの検出値に基づいて固化材投入量を、流量計S5からの検出値に基づいて混練水の投入量をそれぞれモニターにリアルタイム表示すると共にメモリに記憶する。固化材、混練水の投入量も設計値と実施値が表示される。
【0060】
管理装置は更に、3つの傾斜計S1からの検出値を用いてバケット位置を算出することで現在の地盤改良位置を割り出すと共に、電気比抵抗値センサS2からの検出値に基づいて、現在の地盤改良位置での固化材・土壌混合スラリーの攪拌混合度を判別し、モニターにて表示すると共にメモリに記憶する。特に、記憶に際しては、地盤改良位置とその位置での攪拌混合度とを対応付けて記憶することで、以後、複数の地盤改良位置毎の攪拌混合度をモニター表示するのに都合が良い。図5では、地盤改良領域におけるある部分(縦断面)全体を複数の円形のグリッドを並べた状態で表示している。ここでは、1つのグリッドは20cm×20cmの面積の地盤改良位置に対応し、各グリッド、すなわち各地盤改良位置の攪拌混合度を電気比抵抗値別に色分け表示するようにしている。
【0061】
例えば、図5に示すように、0〜10.0(Ω・m)までの電気比抵抗値は黄色(第1の攪拌混合度)、10.1〜20.0までの電気比抵抗値は灰色(第2の攪拌混合度)、20.1〜30.0までの電気比抵抗値は青色(第3の攪拌混合度)、30.1以上の電気比抵抗値は黄緑色(第4の攪拌混合度)で表示する。この場合、例えばある部分(縦断面)の地盤改良領域全体が10(Ω・m)以下の電気比抵抗値であれば、すべてのグリッドは黄色で表示されることになる。
【0062】
図5ではまた、深さ約6m、幅約6mの部分(縦断面)について複数の地盤改良位置毎の攪拌混合度(電気比抵抗値)を表示可能であることを示しているが、太い実線により実際の計測領域は、太い実線内の領域、つまり深さ約6m、幅約4mの縦断面領域であることが示されている。勿論、この縦断面領域を奥行き方向に移動させて表示してゆくことで、地盤改良領域全体の攪拌混合度の表示を行なうことができる。また、上記のある部分(縦断面)の地盤改良領域、すなわち垂直断面領域での地盤改良位置毎の攪拌混合度の表示に代えて、水平断面領域、すなわちある深さの水平断面領域での地盤改良位置毎の攪拌混合度を表示するようにしても良い。この場合、図5の表示形態では、横軸が地盤改良領域の幅、縦軸が奥行きとなる。
【0063】
以上のようにして、管理装置は、地盤改良工法施工時のモニター画面に、リアルタイムに項目(少なくとも固化材投入量、混練水投入量、攪拌混合回数、地盤改良位置別の攪拌混合度)毎のデータを表示し、攪拌混合度を評価できるようにしている。これにより、地盤改良領域の奥行き方向に関する一定間隔(あるいは深さ方向に関する一定間隔)で規定される複数の計測領域のすべてについて、計測領域内のすべてのグリッドの電気比抵抗値が20(Ω・m)以下(すなわち、すべてのグリッドが黄色または灰色で表示)に均一に分布し、所定の攪拌混合回数であることが確認されると、固化材・土壌混合スラリーの形成作業を終了する。
【0064】
以上のように、本管理装置により、地盤改良工法施工中の地盤改良領域、及びこの地盤改良領域内の固化材・土壌混合スラリーの攪拌混合度等をリアルタイムに表示できるので、工事中の固化材・土壌混合スラリーの攪拌混合状態を常時監視することができる。これにより、未掘削、攪拌部分や大きな土塊の有無を早期に発見し、不具合な部分は撤去、または掘削、再攪拌、混合等の迅速な対応ができる。
【符号の説明】
【0065】
1 改良体
2 基礎
10 掘削機
10−1、10−2 第1、第2アーム
11 空所
12 縦穴または溝
13 固化材
14 混練水
20 バケットミキサー
21 バケット
23 ハウジング
24 回転軸
25 回転撹拌翼
26 カッター(爪)
27 非回転撹拌翼(固定翼)
30 動力伝達部
31 第1歯車
32 第2歯車
33 油圧モーター
34 チェーン
36 傾斜計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物や構造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削、排土して所定開口面積で且つ一定深さの空所を形成し、
該空所において、該空所の下方の所定深さの地盤にある支持層の確認を行ない、
前記支持層が確認されたら、前記空所に所定量の固化材と混練水を投入し、続いて、前記所定開口面積の領域について掘削を行いつつ該掘削した土壌と前記投入された固化材と混練水との攪拌、混合を行い、
前記掘削、攪拌、混合の並行作業を、前記所定深さに到達するまで行うことにより、前記所定開口面積でかつ所定深さの領域内に土壌と固化材と混練水とのスラリーを生成し、
前記スラリーを固化させる、
ことを特徴とする地盤のブロック状混合処理工法。
【請求項2】
前記支持層の確認を、前記空所に更に、前記支持層まで到達する前記所定深さの縦穴あるいは溝を形成して行ない、該支持層の確認後、前記縦穴あるいは溝を埋め戻すことを特徴とする請求項1に記載の地盤のブロック状混合処理工法。
【請求項3】
前記掘削、攪拌、混合の並行作業は、可動アーム先端の掘削用バケットとして回転攪拌翼による攪拌混合機能を持つバケットミキサーを備えた掘削機で行ない、
少なくとも前記バケットミキサーにセンサを備え、
該センサからの検出信号により前記掘削、攪拌、混合の並行作業をモニターで確認しながら、前記スラリーの生成が前記所定深さに到達したかどうかの判別を行なうことを特徴とする請求項1に記載の地盤のブロック状混合処理工法。
【請求項4】
前記センサとして、前記バケットミキサーの先端部及び前記可動アームに設置した複数の傾斜計、前記バケットミキサーの先端部に設置した電気比抵抗値センサ、前記回転攪拌翼の回転数を検出する回転計、前記固化材の投入量を計測するセンサ、前記混練水の投入流量を計測するセンサを備え、前記複数の傾斜計からの検出値を用いて前記バケットミキサーの先端部の位置を、現在の地盤改良位置として算出し、前記電気比抵抗値センサからの検出値を用いて前記バケットミキサーの先端部の電気比抵抗値を攪拌混合度として求め、これらの値を前記各センサの検出値と共にメモリに記憶することを特徴とする請求項3に記載の地盤のブロック状混合処理工法。
【請求項5】
前記メモリに記憶されている、前記複数の傾斜計からの検出値を用いて算出された地盤改良位置と、その地盤改良位置での前記攪拌混合度を用い、地盤改良領域をその縦断面でかつ該縦断面全域について地盤改良位置毎の攪拌混合度の違いを色分けしてモニターにて表示することで前記掘削、攪拌、混合の並行作業を監視することを特徴とする請求項4に記載の地盤のブロック状混合処理工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−157754(P2011−157754A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21286(P2010−21286)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(506354010)株式会社フレスコーヴォ (5)
【Fターム(参考)】