説明

地盤の防塵処理方法

【課題】加熱不要で、大量の物資輸送が不要、防塵性能の高い施工方法の提供。
【解決手段】水性ディスパージョン状態のポリテトラフルオロエチレンを水とともにグラウンド上に散布し、このグラウンドを耕してポリテトラフルオロエチレンをフィブリル化させ地盤の土壌を捕捉する地盤の防塵処理方法。
【発明の効果】加熱及び物資輸送無しで安定した防塵処理が迅速に小規模設備でできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に地盤の防塵処理方法に関するものであり、学校のグラウンド、種々の競技場、広場、公園、屋上緑化庭園、畑などの地盤の表層土壌の防塵処理に特に適した地盤の防塵処理方法に関するものである。が、荒野、河原、砂浜、砂漠、土漠等の地盤にも適用できる。
【背景技術】
【0002】
粉体の防塵処理方法として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末を発塵性粉体と共に高速混合ミキサーでせん断作用及び圧縮作用下で発熱させつつ混合して、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末をフィブリル化させて粉体に絡ませて発塵を抑制する方法が提案されている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この防塵処理方法により調製された土壌を例えば学校のグラウンド等の表層土として投入し、グラウンドに防塵処理を施す方法が提案されている。このような防塵処理は、グラウンドの舗装と異なり、グラウンドの弾力や滑り具合等の物理的性質を大きく変えないですむ上に、ポリテトラフルオロエチレンが安定した無害な物質であるため、安全で効果が長期に持続できる処理方法として注目されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−102047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の防塵処理方法により防塵処理を施した土壌をグラウンドに客土してグラウンドの防塵処理をする場合には、グラウンドの土壌にポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末を混合してフィブリル化して土壌に絡ませるために、ヘンシェルミキサー等の高速混合ミキサーを用いて高速で強く攪拌して摩擦熱により70℃以上に加熱する必要がある。
【0006】
またグラウンドに表層土として投入するためには、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末と混合させるべき土壌として、グラウンドの表層部分から採掘した土壌あるいは全く別に用意した新たな土壌を大量に用意する必要がある。この大量の土壌は大型で大きなエネルギーを必要とするミキサー内で混合攪拌させねばならぬので、グラウンドからあるいは別の土壌供給源から一旦ミキサーのあるプラントへ輸送し、またポリテトラフルオロエチレンと混合して防塵処理の終わった土壌をグラウンドに輸送しなければならない。輸送が不都合な場合には、現場にプラントを建設して防塵処理作業を行わねばならない。このようなグラウンドの防塵処理作業には20日から30日必要であった。
【0007】
このように、従来の地盤の防塵処理方法においては、攪拌による加熱のために比較的大規模な設備と大きなエネルギーと長時間の処理作業が必要であり、また大量の土壌の輸送が必要である。
【0008】
従ってこの発明の目的は、小規模な設備機器で迅速に施工ができ、安全で安定した地盤の防塵処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、この発明の地盤の防塵処理方法は、水とポリテトラフルオロエチレンとの混合液を用意する工程と、この混合液を防塵処理すべき地盤に散布する工程と、この地盤を耕す工程とを備えることを特徴とする地盤の防塵処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明の地盤の防塵処理方法によれば、簡単な機器を用いた短時間の施工で安全で高性能の防塵処理が完了できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
この発明の地盤の防塵処理方法は、学校のグラウンド、種々の競技場、広場、公園などの表層土壌に施すのに特に適しているので、ここでは地盤としてグラウンドを例にして説明する。この発明で、「地盤」とは学校のグラウンド、種々の競技場、広場、公園、屋上緑化庭園、畑などの地盤をも、荒野、河原、砂浜、砂漠、土漠等の広く一般の地盤をも含み、また「土壌」とは一般に地盤を構成する物質のうち防塵処理が必要になることのある物質を意味し、所謂土、砂、小径の礫およびこれらの混合物を含む。
【0012】
図1はこの発明のポリテトラフルオロエチレンを用いた地盤の防塵処理方法の工程を示す概略フローチャートである。図1において、地盤の防塵処理方法は、水とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との混合液を用意する工程Aを備えている。この混合液はポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョンであってもよいし、ポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンであってもよい。
【0013】
ポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョン中のポリテトラフルオロエチレンの量は、水に対して0.01〜30.0w%となるように作るが、ポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョンを作るときには、水に市販のポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョンを原液として加えるのが便利である。
【0014】
水は水道水、井戸水、雨水、河川水などの水を使用できる。水に加えるべき原液としてのポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョンとしては、55〜65%のポリテトラフルオロエチレンと、35〜45%の水と、3.6%のポリ(オキシエチレン)=オクチルフェニルエーテルとを含む混合液を使用できる。
【0015】
この発明では、水道水1m 当たりポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョンとして上述の原液としての水性ディスパージョンを適量加えて、最終的に0.01〜10.0w%のポリテトラフルオロエチレンが水中に一様に分散した混合液である水性ディスパージョンを用意する。望ましい水性ディスパージョンのポリテトラフルオロエチレン濃度は、0.1〜1.0w%である。濃度が下限を超えるとポリテトラフルオロエチレンの微細繊維が土壌を充分に捕捉できずに防塵効果が不十分となり、上限を超えるとポリテトラフルオロエチレンの量を増やした割に防塵効果が上がらない。
【0016】
次に図1の工程Bで示すように、このように希釈したポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョンである混合液を防塵処理すべき地盤であるグラウンド上に散布する。水性ディスパージョンの濃度の散水車を用いてグラウンド上に散布してグラウンドの表層部分が湿った状態となる程度にまで行う。混合液の散布はできるだけ一様に散布するのが望ましいが、後にグラウンド表層土を耕す工程があるので、散布の一様性に厳密さはかならずしも必要ない。このとき、グラウンドに埋設してある各種の標識等があれば、これらは除去しておくが、グラウンド自体には何等特別の前処理を必要としない。ポリテトラフルオロエチレンの混合液の散布量は、ポリテトラフルオロエチレンの濃度および地盤の土壌の性質などを考慮に入れて、地盤1m 当たり0.01〜0.5m で良いが、0.1〜0.3m で良い結果が得られた。
【0017】
このグラウンドの表層土は次に、工程Cで示すように、耕されて掘り起こされ、砕かれ、表層部分の土壌が上下左右前後に混ぜ合わされる。この工程は耕耘機を使用すると良い。このとき散布されたポリテトラフルオロエチレンはフィブリル化して土壌に絡みつき、粉塵状の微細な粒子までもポリテトラフルオロエチレンがしっかりと捕捉して防塵処理効果が発揮される。耕す深さは、土壌の性質、水性ディスパージョンの濃度および散布量を考慮して、5cm〜20cmで充分である。
【0018】
次に工程Dに示すように、耕されたままの状態のグラウンドにローラーを走らせ、グラウンドを整地し転圧して表面を整える。
【0019】
この後、必要があれば工程Eに示すように仕上げブラシ等によってグラウンド表面の最終仕上げをしてグラウンドの微妙な不具合を取り除き、グラウンドの防塵処理の施工を完了させる。
【0020】
このような地盤の防塵処理方法の施工は、通常4、5日で完了できる。このことは、先に説明した従来の防塵処理を施した土壌をグラウンドに客土してグラウンドの防塵処理とする方法が30日程度必要であったのと比較して驚くべき違いである。
【0021】
以上の説明では、水とポリテトラフルオロエチレンの混合液の散布に散水車を用い、グラウンドの耕しに耕耘機を用い、グラウンドの整地、転圧にローラーを用い、また必要に応じて仕上げブラシを用いるとした。しかしながら、これらの数種の作業車を全てあるいは幾つか組み合わせて用いることもできる。例えば、散水車の後方に耕耘機の耕耘機構を連結し、その後ろに転圧ローラーを連結して散水車で牽引するようにした混成作業車あるいは一台の作業車に全ての機能を組み合わせて設けた専用作業車を用いることもできる。
【0022】
実施の形態2.
図2はこの発明の地盤の防塵処理方法の別の実施の形態を示すフローチャートである。地盤は、地盤を構成する物質の違いにより、また気象条件等の違いにより、多種多様であり、上述のように水とポリテトラフルオロエチレンとの混合液を地盤に散布して地盤の土壌とともに耕すという作業を一回施工しただけでは満足できる結果が得られないことがある。
【0023】
このような場合には、図2に示すように、混合液を地盤に散布する工程Bと地盤の表層土を耕す工程Cとを行った後に、工程Fで示すように一旦散水車で散水して地盤に水を供給し、更に工程Bと同様に混合液を地盤に散布する工程Gと、工程Cと同様に地盤の表層土を耕す工程Hとを実行し、地盤を転圧する工程Dおよび地盤の最終仕上げの工程Eと続ける。このような工程を繰り返す方法により、地盤の多様性に対応できるのである。
【0024】
以上説明したように、この発明のポリテトラフルオロエチレンを用いた地盤の防塵処理方法は、水性ディスパージョン状態のポリテトラフルオロエチレンを水とともにグラウンド等の地盤上に散布して耕し、フィブリル化させて土壌を捕捉する地盤の防塵処理方法であるので、従来必要であった加熱が必要なく、設備が簡単であり、主要な作業の殆どを現場で実行できて物資の大量輸送の問題が無く、安全で安価な防塵性能の高い施工ができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の地盤の防塵処理方法の一実施の形態の工程を示すフローチャートである。
【図2】この発明の地盤の防塵処理方法の別の実施の形態の工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
A 水とポリテトラフルオロエチレンの混合液を用意する工程、
B 混合液を防塵処理すべき地盤上に散布する工程、
C 地盤の表層土を耕す工程、
D 地盤を転圧する工程、
E 地盤の最終仕上げ工程
F 地盤に散水する工程
G 混合液を防塵処理すべき地盤上に散布する工程、
H 地盤の表層土を耕す工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とポリテトラフルオロエチレンとの混合液を用意する工程と、
この混合液を防塵処理すべき地盤に散布する工程と、
この地盤を耕す工程と、
を備えることを特徴とする地盤の防塵処理方法。
【請求項2】
上記混合液がポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョンであることを特徴とする請求項1に記載の地盤の防塵処理方法。
【請求項3】
上記混合液がポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の地盤の防塵処理方法。
【請求項4】
上記ポリテトラフルオロエチレンの水性ディスパージョン中のポリテトラフルオロエチレンが、水に対して0.01〜30.0w%であることを特徴とする請求項2あるいは3に記載の地盤の防塵処理方法。
【請求項5】
上記地盤を耕す工程の次に、耕した地盤を転圧する工程を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の地盤の防塵処理方法。
【請求項6】
上記地盤を転圧する工程の後に、転圧した地盤にブラッシ掛けを施す工程を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の地盤の防塵処理方法。
【請求項7】
上記混合液を上記地盤に散布する工程と上記地盤を耕す工程とを繰り返す工程を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の地盤の防塵処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−35589(P2009−35589A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199073(P2007−199073)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(506023482)
【出願人】(506023987)
【出願人】(506023471)
【Fターム(参考)】