説明

地盤振動遮断工法

【課題】高い耐圧強度の袋状クッション体は不要であり、運搬費用や施工費用が嵩むことがなく、施工効率に優れる地盤振動遮断工法を提供すること。
【解決手段】複数の袋状クッション体を地盤中に埋設する地盤振動遮断工法であって、貫入体に装着された萎んだ複数の袋状クッション体を、該貫入体と共に地盤中に連行する第1工程と、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填又は充満させる第2工程と、該貫入体を地上に引上げて膨らませた複数の袋状クッション体を地盤中に置き去りにする第3工程を行なう工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、列車、自動車及び振動機械等を振源とする振動を遮断する地盤振動遮断工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の地盤振動遮断工法で構築される地盤振動遮断構造体としては、特開2006−132142に、地盤中に可撓性の袋体を設置して該地盤の変位を抑制するようにしたもので、前記地盤中の上下方向に積層状態で埋設され、それぞれ内部に流体が充填された可撓性の複数の袋体と、この複数の袋体の圧力をそれぞれ調整可能な圧力調整手段と、を備えた地盤変位抑制装置が開示されている。また、特開2006−118209に、複数のクッション体を地盤中に埋設した地盤振動遮断構造において、内部に流体が充填された前記複数のクッション体を前記地盤中の上下方向に埋設し、この埋設の深度或いは前記地盤中の圧力に従って前記各クッション体の内部圧力を調整自在にした地盤振動遮断構造が開示されている。これらの地盤振動遮断構造は、土水圧の変動に拘わらずほぼ同じ体積を保持して地盤中に配置されるため、地盤の上下方向の全域において所望の地盤振動遮断効果が得られる。
【特許文献1】特開2006−132142(請求項1)
【特許文献2】特開2006−118209(請求項2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の地盤振動遮断構造体を構築する工法は、可撓性の袋体やクッション体を、予め、地上で膨らませてその後地中に設置するため、例えば、設置位置の範囲を泥土化する際、施工費用が嵩むことがあった。また、ガス封入も工場で行なうため、膨れた状態で現場まで運搬しなければならず、運搬費も高くなっていた。また、気中でガスを封入するため、内圧を一定以上高くできず、設置深度にも限界があった。例えば設置深度が100mの場合、土の密度を1.5とした場合、100m×1.5/10=15kg/cmで、圧力容器の扱いとなり、法規制により気中では取り扱えないという問題がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、高い耐圧強度の袋状クッション体は不要であり、運搬費用や施工費用が嵩むことがなく、施工効率に優れる地盤振動遮断工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実用において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、貫入体に装着された萎んだ複数の袋状クッション体を、該貫入体と共に地盤中に連行する第1工程と、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填又は充満させる第2工程と、該貫入体を地上に引上げて膨らませた複数の袋状クッション体を地盤中に置き去りにする第3工程を行なう地盤振動遮断工法であれば、袋状クッション体は、高い耐圧強度のものは不要であり、運搬費用や施工費用が嵩むことがなく、施工効率に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、複数の袋状クッション体を地盤中に埋設する工法であって、貫入体に装着された萎んだ複数の袋状クッション体を、該貫入体と共に地盤中に連行する第1工程と、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填又は充満させる第2工程と、該貫入体を地上に引上げて膨らませた複数の袋状クッション体を地盤中に置き去りにする第3工程を行なうことを特徴とする地盤振動遮断工法を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、複数の袋状クッション体を地盤中に埋設する工法であって、貫入体に装着された萎んだ複数の袋状クッション体を、該貫入体と共に地盤中に連行する第1工程と、該貫入体を地上に引上げて複数の萎んだ袋状クッション体を地盤中に置き去りにする第2A工程と、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填又は充満させる第3A工程を行なう前記地盤振動遮断工法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記複数の袋状クッション体が埋設される予定地盤を、予め泥水地盤とする前工程を更に行なう前記地盤振動遮断工法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記萎んだ袋状クッション体は、2枚のシートを袋部となる部分を残して溶着したシート状物である前記地盤振動遮断工法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記貫入体は、貫入フレームか、あるいはケーシングである前記地盤振動遮断工法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記第1工程は、前記萎んだ袋状クッション体を包む外袋を該ケーシングに装着し、該萎んだ袋状クッション体を包む外袋ごと、地盤中に連行する前記地盤振動遮断工法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填させる方法は、前記袋状クッション体の各袋部を深度方向に連通する逆止弁付き連通孔又は連通短管に気体封止用配管を、その先端が最深部の袋部内に位置するように串刺し状に設置し、該気体封止用配管を該最深部の袋部から上方の袋部へ順に移動させながら、各袋部に所定の圧となる気体を封入していく前記地盤振動遮断工法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、袋状クッション体の素材として、耐圧強度の高いものは不要であり、運搬費用や施工費用が嵩むことがなく、施工効率に優れる。また、泥水地盤は軟弱地盤であり、貫入体を地中に建て込み易い。また、2枚のシートから複数の袋状クッション体を容易に製作することができる。また、深度方向に対して直交する方向に横長の袋状クッション体を深度方向に複数個積層して配列させる場合、従来のシート状遮水板地中構築工法で用いる貫入フレームを同様の施工方法で使用でき、深度方向に縦長の袋状クッション体を深度方向に複数個積層して配列させる場合、パックドレーン工法で用いるケーシングを同様の施工方法で使用できる。また、外袋は、ケーシングを引上げる際、袋状クッション体とケーシング内面との接触をさせないため、袋状クッション体を防護し、地中に建て込まれた後は、土水圧に耐え得る補強材として機能する。また、串刺し状の気体封止用配管を使用すれば、袋状クッション体の各袋部を、埋設深度の土水圧に応じた内圧に容易に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次ぎに、本発明の実施の形態における地盤振動遮断工法を説明する。先ず、第1工程は、貫入体に装着された萎んだ複数の袋状クッション体(以下、「萎んだクッション体」とも言う。)を、該貫入体と共に地盤中に連行する工程である。
【0015】
第1工程において、萎んだクッション体は、各々が独立した複数の袋部が上下方向(深度方向)に積層されたものが使用できる。袋部の形状としては、特に制限されず、横長状の袋部、縦長状の袋部、矩形状の袋部あるいは不定形状の袋部が挙げられるが、この中、横長状の袋部又は縦長状の袋部が作製の容易さと用途に応じた遮断壁を構築することができる点で好ましい。深度方向に対して直交する方向に横長の袋状クッション体が深度方向に複数個積層して配列される横置きの(横置きの形態)場合、効率よく連続壁を構築することができる。また、深度方向に縦長の袋状クッション体が深度方向に複数個積層して配列される縦置き(縦置きの形態)の場合、施工区域を予め泥水地盤とする前工法を必ずしも必要としない点で好適である。
【0016】
萎んだクッション体の作製方法としては、2枚のシートを袋部となる部分を残して溶着したシート状物とする方法または各々の袋部を予め作製しておき、その後、各袋部をバンドなどの接合部材で連結する方法などが挙げられる。この中、2枚のシートを袋部となる部分を残して溶着したシート状物とする方法が作製が容易である点で好ましい。
【0017】
図1は横置きの形態、図2は縦置きの説明図であり、それぞれ(A)は正面図、(B)は側面図である。萎んだクッション体1は、2枚のシートを袋部11となる部分を残して溶着したシート状物であり、中空部を有する複数の袋部11、上下端部12、両側端部13及び仕切り部16を有する。また、萎んだクッション体1は、各袋部11を深度方向に連通する逆止弁付き連通短管14を備える。連通短管14は、各袋部11に流体を供給する供給口であり、供給された流体の逆流を防止するものである。従って、連通短管14に替えて、上下端部12及び仕切り部16に形成される逆止弁付き連通孔であってもよい。また、連通短管又は連通孔は、上記形態の他、例えば各袋部11を繋げるものではなく、両側端部13の一方にキャップ付きの連通孔を各袋部11毎に個別に形成されるものであってもよい(図5参照)。逆止弁付き連通短管14の場合、流体を袋部11に供給する際、流体封止用配管15を、その先端151が最深部の袋部11a内に位置するように串刺し状に設置して、第1工程において使用される。なお、図2においては、流体封止用配管15の記載を省略した。また、個別のキャップ付きの連通孔は、それぞれに流体封止用配管15が接続されて使用される。
【0018】
萎んだクッション体1の素材としては、可撓性且つ不透水性の材料であり、例えばポリエチレン、ポリエチレンにアルミニウムをラミネートしたものなどが使用される。萎んだクッション体1は、地中に連行された後、膨らませるため、深い深度においても土水圧と内圧の差圧以上の耐圧性であればよく、従来の地上で膨らませて地中に設置する場合に比べて、遥かに低い耐圧性のものが使用できる。
【0019】
本発明の萎んだクッション体1には、更に地中に設置された後、袋部11の内圧をモニタリングするための配管が接続される接続口を有していてもよい。また、本発明の萎んだクッション体1の各袋部11は、すべてが独立である必要はなく、例えば2つ以上の袋部11が連通孔で接続されていてもよい。これにより、連通された各袋部11の内圧は同じとなり、モニタリング配管の設置数を減らすことができる。一方、連通孔で接続する袋部11が多過ぎると、深度方向に異なる土水圧の影響を受け、深い深度部分の袋部11の体積が収縮する恐れがある。また、本発明の萎んだクッション体1に、予め、アンカーを設置しておいてもよい。これにより設置安定性が向上する。また、本発明の萎んだクッション体1には、貫入体に装着するためのフックなどの係止部が形成されていてもよい。
【0020】
萎んだクッション体1は、貫入体に装着される。貫入体は、貫入フレーム又はケーシングである。貫入フレームやケーシングは、ベースマシンにより起立支持されたリーダーに沿って昇降されるか、あるいはクレーンによる吊り込みにより昇降される。クレーンによる吊り込みは、地盤が軟弱地盤の場合に好適である。横置き形態の場合、従来のシート状遮水板地中構築工法で用いる貫入フレームを同様の施工方法で使用でき、縦置き形態の場合、従来のパックドレーン工法で用いるケーシングを同様の施工方法で使用できる。
【0021】
貫入フレームは、例えば図1(A)のシート状物(萎んだクッション体1)をその大きさを保持したまま、添装できるものである。
【0022】
ケーシングは、例えば図2(A)のシート状物(萎んだクッション体1)をその大きさを保持したまま、中空内に装着できるものである。ケーシングの中空部の内径が小さ過ぎると、袋部11が膨らんだ後、ケーシングを引き抜く際、ケーシングから膨らんだクッション体が抜け難くなり、また、ケーシングの中空部の内径が大き過ぎると、地中への貫入抵抗が大きくなる。
【0023】
次ぎに、図2のシート状物をケーシングに装着して施工する方法を図3を参照して説明する。図3の(A)から(E)に向けて順に工程が進む。また、図3(C)〜(E)では、図面の簡略のため、ベースマシンの記載を省略した。
【0024】
ケーシング21は、ベースマシン22により起立支持されたリーダー23に沿って昇降される昇降機26に連結されている。先ず、一端が巻き上げ機24に接続された巻き上げロープ25の他端をケーシング21の中空部を通して、ケーシング21の下端から頭だしをする。この巻上げロープの端部251に、図2に示す袋部11が萎んだシート状物(萎んだ袋状クッション)1の上部を接続する(図3(A))。なお、この段階で、シート状物1には、例えば、流体封止用配管15などの袋部11内に流体を供給する配管類を設置しておく。
【0025】
なお、シート状物をケーシング21に装着する際、不図示の外袋でシート状物1を包み込み、その後ケーシング21に入れ込んでもよい。外袋は、耐摩耗性を有する合成繊維又は天然繊維製のメッシュ材にて形成され、可撓性で且つ透水性を有するものが使用できる。また、外袋は、膨らんだ袋状クッション体1の外径とほぼ同一径の円筒形でよく、円筒形の両端面が開口したもの、上端面のみ開口したものなどが使用できる。円筒形の両端面が開口したものは、袋状クッション体1が抜けないよう開口部分に袋状クッション体1の外径より小さい径の環状金具などを装着することが好ましい。外袋は、ケーシング21を引上げる際、シート状物1とケーシング21内面の接触をさせないため、袋状クッション体1を防護し、地中に建て込まれた後は、土水圧に耐え得る補強材として機能する。従って、外袋は、シート状物1の袋部11に流体が供給され膨れた形状を包む容積を持つものである。
【0026】
次いで、巻き上げ機24を稼動させ、巻き上げロープ25及びシート状物1を巻き上げる。これにより、シート状物1はケーシング21内に収容され、その後、ケーシング21の下端の開口は閉じられる(図3(B))。次いで、昇降機26をケーシング21との結合位置を変えつつ下降させ、ケーシング21を地中に貫入する(図3(C))。
【0027】
なお、振動遮断壁構築地盤としては、特に制限されず、軟弱地盤の場合は、そのまま、地盤に対して遮断壁を構築する。また、必要に応じて、遮断壁が構築される区域を、予め泥土地盤とすることもできる。これにより、貫入フレームなどの貫入体を地中に建て込み易くなる。なお、地盤中には、シート状物1を固定する地中アンカーを予め構築しておいてもよい。
【0028】
第1の工程において、シート状物1は上記形態に限定されず、例えば、袋部11内に、オブラートに包んだドライアイスを予め充填させておいてもよい。オブラートは、ケーシング21にシート状物1を装填してから、地中に設置されるまでの間にドラアイスが蒸散しないようにするものである。ドライアイスの使用量は、シート状物1の袋部11の容積と袋部11が位置する地中の深度との関係で決定される。すなわち、シート状物1の袋部11の容積がそれぞれ同じである場合、地中の深度が深くなるほど、ドライアイスの充填量を多くする。これにより、各袋部の内圧を、地中の深度が深くなるほど高くなる土水圧に応じた圧にすることができ、深度方向に拘わらず袋状クッションをほぼ同じ体積を保持して地盤中に埋設させることができる。
【0029】
第2工程は、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の袋部11の内部に流体を充填又は充満させる工程である。使用される流体としては、空気などの気体または水などの液体であり、この中、空気が好適である。以下、便宜上、流体を気体として説明する。
第2工程において、萎んだシート状物(袋状クッション体)1の袋部11の内部に気体を充填する方法としては、シート状物1の各袋部11を深度方向に連通する逆止弁付き連通短管14に、気体封止用配管15を、その先端151が最深部の袋部11a内に位置するように串刺し状に設置し、気体封止用配管15を最深部の袋部11aから上方の袋部11b、11cへ順に移動させながら、各袋部に所定の圧となる気体を封入していく方法が挙げられ、萎んだシート状物(袋状クッション体)1の袋部11の内部に気体を充満させる方法としては、袋部11内に充填されたオブラートに包まれたドライアイスが、地中に設置後、蒸散して袋部11内を炭酸ガスで充満させる方法である。ケーシング21にシート状物1を装填してから、地中に設置されるまでの間は、ドライアイスはオブラートに包まれているため、実質的に蒸散することはない。
【0030】
串刺し状の気体封止用配管15を使用した充填方法を簡略図である図4を参照して説明する。串刺し状の気体封止用配管15は、その先端151が最深部の袋部11a内に位置するようにし、基端152が地上の気体供給手段18に接続される。気体封止用配管15の地上側部には、圧力計17が設置されている。気体封止用配管15は、シート状物1に対して、串刺し状であっても各袋部11間は気密状態であり、また、気体封止用配管15は、連通短管14内を地表方向に対して移動自在である。
【0031】
先ず、図4(A)に示すように、串刺し状の気体封止用配管15の先端151が最深部の袋部11a内に位置する状態において、圧縮機などの気体供給手段18から圧縮気体が最深部の袋部11aに供給される。圧縮気体(空気)は、袋部11aの内圧(Pa)が、当該位置にある土水圧(拘束圧)と同程度又はそれよりやや高めになるまで供給される。次いで、串刺し状の気体封止用配管15を、その先端151が、最深部の袋部11aよりひとつ地表側にある袋体11b内に位置するように、引上げる。そして、圧縮気体(空気)が、袋部11bの内圧(Pb)が、当該位置にある土水圧(拘束圧)と同程度又はそれよりやや高めになるまで供給される(図4(B))。次いで、串刺し状の気体封止用配管15を、その先端151が、袋部11bの地表側にある袋体11c内に位置するように引上げる。そして、圧縮気体(空気)が、袋部11cの内圧(Pc)が、当該位置にある土水圧(拘束圧)と同程度又はそれよりやや高めになるまで供給される(不図示)。さらに袋部11を備える場合、以下、同様の方法で袋部11内に気体が充填される。これにより、シート状物1の袋部11の全てが気体により膨らみ、且つPa>Pb>Pc・・となる(図3(D))。なお、横置き形態であって、深度方向に多数の袋部が存在する場合、近接する2つ又は3つなどが同じ内圧となってもよい。これにより、地中の深度が深くなるほど高くなる土水圧に応じた圧にすることができ、深度方向に拘わらず袋状クッションをほぼ同じ体積を保持して地盤中に埋設させることができるため、地盤の上下方向の全域において所望の地盤振動遮断効果が得られる。
【0032】
ドライアイスを充填材として使用する場合、第2工程においては、気体封止用配管15は不要であり、後述する圧力監視手段で、袋部11内の圧力を監視するだけでよい。ドライアイスの量は、蒸散した炭酸ガスが、それぞれの袋部11の内圧が、当該位置にある土水圧(拘束圧)と同程度又はそれよりやや高めになるように予め決定しておく。これにより、串刺し状の気体封止用配管15を使用した場合と同様の効果を奏する。
【0033】
他の気体充填方法を図5を参照して説明する。図5(B)は図5(A)の側面図である。図5において、地中のシート状物1の9つの袋部11には、それぞれ圧力計54付きの気体供給配管55が接続されており、他端は、気体供給手段18に接続されている。符号56はアンカー、符号59は泥水地盤である。そして、圧縮気体(空気)を、袋部11の内圧(Px(xは1〜9の整数))が、当該位置にある土水圧(拘束圧)と同程度又はそれよりやや高めになるまでそれぞれに応じて供給される。これにより、串刺し状の気体封止用配管15を使用した場合と同様の効果を奏する。また、図5の気体充填方法であれば、袋部11内を膨らませた後は、各袋部11内の圧力を個別に監視することができる点で好適である。なお、シート状物1は、複数の子シート状物を連結して一体化した所謂ユニット物とすることができる。ユニット物は、例えば図5のシート状物1の場合、上方の3つの袋部11を有する上方ユニットと、中央の3つの袋部11を有する中央ユニットと、下方の3つの袋部11を有する下方ユニットとした場合、各ユニットの袋部は連通孔で連通し、同じユニット内ではそれぞれの袋部11の内圧を同じ圧力としてもよい。これにより、圧力計54付きの気体供給配管55の設置を省略することができる。
【0034】
第3工程は、ケーシング21である貫入体を地上に引上げて膨らませた複数の袋状クッション体1を地盤中に置き去りにする工程である。すなわち、昇降機26により、ケーシング21は地表に引上げられる。この際、ケーシング21と袋状クッション体1の連結部分は解除される。また、気体封止用配管15などの接続配管がケーシング21の引上げに障害となる場合は、これを取り外せばよく、また、この取り外しは、気体封止用配管15などの接続配管を再度設置するような取り外し方法が好適である。また、貫入体が、貫入フレームの場合も同様に、貫入フレームと袋状クッション体1の連結部分が解除され、従来の地中遮水壁構築方法の引き上げ工程に準じる方法で実施される。また、複数の袋状クッション体1を包んだ外袋を使用した場合、外袋は複数の袋状クッション体1と共に、地中に置き去りにされる。外袋は、地中に建て込まれた後は、土水圧に耐え得る補強材として機能する。
【0035】
本発明の地盤振動遮断工法においては、上記第2工程と第3工程を逆にするようにしてもよい。すなわち、第1工程を行なった後、該貫入体を地上に引上げて複数の萎んだ袋状クッション体を地盤中に置き去りにする第2A工程と、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填又は充満させる第3A工程を行なう工法である。第2A工程において、該貫入体を地上に引上げる方法は、膨らんだ袋状クッション体が、萎んだクッション体となっている以外は、前記第3工程と同様の方法で行うことができる。また、第3A工程において、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填又は充満させる方法は、貫入体が該袋状クッション体から外された状況において行なうこと以外は、前記第2工程と同様の方法で行うことができる。
【0036】
なお、ドライアイスを使用する場合は、ドライアイスの蒸散が第2A工程から始まっていてもよい。すなわち、第1工程の後、該貫入体を地上に引上げて複数の萎んだ袋状クッション体を地盤中に置き去りにすると共に、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部にドライアイスを充満させる第2B工程を行なうこととなる。
【0037】
また、図5(B)に示すように、一つのシート状物1で構築された遮断壁1Aは、振動の振源地60から見て、クッション体非存在部57を有する。このため、遮断壁1Aに隣接し、遮断壁1Aのクッション体非存在部57に袋状クッション体が対向するように、深度方向の位相をずらして更に、遮断壁1Bを構築する。図5の地盤振動遮断壁10は遮断壁1Aと遮断壁1Bから形成される。なお、袋状クッション体1の配列形態は種々あり、その例示を以下に示す。
【0038】
図6(A)〜(E)は縦置き形態における袋状クッション体1の上下方向の配列形態を示す図である。図6(A)は前記の実施の形態で適用した形態であり、複数の袋状クッション体1が上下方向に1列に配置された形態である。図6(B)は、上下方向に一列配列された袋状クッション体1が3組三角形状に近接配置された形態である。図6(C)は、上下方向に1列配列され、且つ、上下方向に隣接する袋状クッション体1同士が離間された形態である。図6(D)は上下方向に一列配列された袋状クッション体1が3組水平方向に一直線上に密接に配置された形態である。図6(E)は、上下方向に1列に配列された袋状クッション体1と、この一列の袋状クッション体1の左右に2つの袋状クッション体1が隣接配置されたパターンである。
【0039】
図7(A)〜(E)は縦置き形態における地盤振動遮断壁の上方から見た配置形態を示す図である。振動の振源地は、図7の上方又は下方である。図7(A)の地盤振動遮断壁10Aは複数の袋状クッション体1が2列状に隙間無く密接して配置された形態である。図7(B)の地盤振動遮断壁10Bは複数の袋状クッション体1が互いに所定の隙間をあけて配置された形態である。図7(C)の地盤振動遮断壁10Cは複数の袋状クッション体1が各列でシフトして3列状とし隙間無く密接して配置された形態である。図7(D)の地盤振動遮断壁10Dは複数の袋状クッション体1が1列に隙間無く密接して配置された形態である。図7(E)の地盤振動遮断壁10Eは1列に密接に配置された複数の袋状クッション体1によって1つのブロックを構成し、このブロックを袋状クッション体1の幅だけ交互にシフトさせて配置された形態である。
【0040】
図8(A)〜(D)は縦置き形態における袋状クッション体1の上下方向の配列形態を示す図である。図8(A)は複数の袋状クッション体1が上下方向に1列に配置された形態である。図8(B)は、上下方向に1列配列された袋状クッション体1が3組に近接配置された形態である。図8(C)は、上下方向に一列配列され、且つ、上下方向に隣接する袋状クッション体1同士が離間された形態である。図8(D)は上下方向に1列配列された袋状クッション体1が3組水平方向に一直線上に密接に配置された形態である。
【0041】
図9(A)〜(D)は横置き形態における地盤振動遮断壁10の上方から見た配置形態を示す図である。振動の振源地は、図9の上方又は下方である。図9(A)の地盤振動遮断壁10Fは複数の袋状クッション体1が2列状に隙間無く密接して配置された形態である。図9(B)の地盤振動遮断壁10Gは複数の袋状クッション体1が4列状で互いにシフトして隙間無く密接して配置された形態である。図9(C)の地盤振動遮断壁10Hは複数の袋状クッション体1が一列且つ水平方向に隙間無く密接して配置された形態である。図9(D)の地盤振動遮断壁10Iは複数の袋状クッション体1が3列且つ水平方向に隙間無く密接して配置された形態である。
【0042】
本発明の地盤振動遮断工法で構築された地盤振動遮断壁には、複数の袋状クッション体の圧力を地中に構築後も調整可能な圧力調整手段を設置することができる。これにより、長期に安定した地盤振動遮断壁とすることができる。
【0043】
また、本発明の地盤振動遮断工法で構築された地盤振動遮断壁は、各袋部の内圧が、地中の深度が深くなるほど高くなる土水圧に応じた圧になっているため、深度方向に拘わらず袋状クッションをほぼ同じ体積を保持して地盤中に埋設させることができる。このため、地盤の上下方向の全域において所望の地盤振動遮断効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本例の萎んだ袋状クッション体の横置きの形態を示す図。
【図2】本例の萎んだ袋状クッション体の横置きの形態を示す図。
【図3】図2のシート状物をケーシングに装着して施工する方法を説明する図。
【図4】串刺し状の気体封止用配管を使用した充填方法を説明する図。
【図5】他の気体充填方法を説明する図。
【図6】縦置き形態における袋状クッション体の上下方向の配列形態を示す図。
【図7】縦置き形態における地盤振動遮断壁の上方から見た配置形態を示す図。
【図8】横置き形態における袋状クッション体の上下方向の配列形態を示す図。
【図9】横置き形態における地盤振動遮断壁の上方から見た配置形態を示す図。
【符号の説明】
【0045】
1 袋状クッション体
10、10A〜10I 地盤振動遮断壁
11、11a〜11c 袋部
14 逆止弁付き連通短管
15 流体封止用配管
17 圧力計
18 流体供給手段
21 ケーシング
24 巻き上げ機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の袋状クッション体を地盤中に埋設する工法であって、貫入体に装着された萎んだ複数の袋状クッション体を、該貫入体と共に地盤中に連行する第1工程と、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填又は充満させる第2工程と、該貫入体を地上に引上げて膨らませた複数の袋状クッション体を地盤中に置き去りにする第3工程を行なうことを特徴とする地盤振動遮断工法。
【請求項2】
複数の袋状クッション体を地盤中に埋設する工法であって、貫入体に装着された萎んだ複数の袋状クッション体を、該貫入体と共に地盤中に連行する第1工程と、該貫入体を地上に引上げて複数の萎んだ袋状クッション体を地盤中に置き去りにする第2A工程と、地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填又は充満させる第3A工程を行なうことを特徴とする地盤振動遮断工法。
【請求項3】
前記複数の袋状クッション体が埋設される予定地盤を、予め泥水地盤とする前工程を更に行なうことを特徴とする請求項1又は2記載の地盤振動遮断工法。
【請求項4】
前記萎んだ袋状クッション体は、2枚のシートを袋部となる部分を残して溶着したシート状物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤振動遮断工法。
【請求項5】
前記貫入体は、貫入フレームか、あるいはケーシングであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の地盤振動遮断工法。
【請求項6】
前記第1工程は、前記萎んだ袋状クッション体を包む外袋を該ケーシングに装着し、該萎んだ袋状クッション体を包む外袋ごと、地盤中に連行することを特徴とする請求項5に記載の地盤振動遮断工法。
【請求項7】
前記地盤中の複数の萎んだ袋状クッション体の内部に流体を充填させる方法は、前記袋状クッション体の各袋部を深度方向に連通する逆止弁付き連通孔又は連通短管に、気体封止用配管を、その先端が最深部の袋部内に位置するように串刺し状に設置し、該気体封止用配管を該最深部の袋部から上方の袋部へ順に移動させながら、各袋部に所定の圧となる気体を封入していくことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の地盤振動遮断工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−196251(P2008−196251A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34317(P2007−34317)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)