説明

地盤改良体、及びこれを備えたパイルド・ラフト基礎

【課題】地震時における地盤改良体のせん断破壊が抑制された地盤改良体、及びこれを備えたパイルド・ラフト基礎を得ることを目的とする。
【解決手段】地盤改良体20は、その上部が格子状地盤改良部20Aとされると共に、その下部が壁状地盤改良部20Bとされている。壁状地盤改良部20Bは、格子状地盤改良部20Aから下方へ延出しており、液状化層14Aの下層にある軟弱層14Bを貫通して支持層14Cに達している。これにより、格子状地盤改良部20Aが壁状地盤改良部20Bを介して支持層14Cに支持されるようになっている。また、壁状地盤改良部20Bには、その下端部から上方へ延びるスリット部34が形成されている。このスリット部34では、軟弱層14B及び支持層14Cが地盤改良されておらず、地盤改良された柱状改良体30と比較して剛性が小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良体、及びこれを備えたパイルド・ラフト基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地盤の液状化対策として、地盤における液状化の可能性がある液状化層に、平面視にて格子状の地盤改良体(以下、「格子状地盤改良体」という)を形成する地盤改良工法が知られている。
【0003】
ところで、例えば、地盤改良直接基礎やパイルド・ラフト基礎のように、格子状地盤改良体が建物の鉛直荷重を負担する場合、格子状地盤改良体が形成された液状化層の下層が軟弱層で構成されていると、格子状地盤改良体が沈下する可能性があり、建物に対して十分な支持力(鉛直支持力)を確保することが困難になる。
【0004】
この対策として、例えば、特許文献1に開示された技術では、格子状地盤改良体を構成する複数の柱状改良体の一部を支持層へ延伸することにより、格子状地盤改良体の沈下を抑制している。
【0005】
また、特許文献2に開示された技術において、格子状地盤改良体を構成する平面視にて二方向へ延びる壁状の地盤改良体(以下、「壁状地盤改良体」という)のうち、一方向へ延びる壁状地盤改良体を支持層へ延伸することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−285047号公報
【特許文献2】特開2000−212949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の技術では、地震時に、支持層へ延伸された地盤改良体がせん断破壊すると、格子状地盤改良体の鉛直支持力が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記の事実を考慮し、地震時における地盤改良体のせん断破壊が抑制された地盤改良体、及びこれを備えたパイルド・ラフト基礎を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の地盤改良体は、液状化層に平面視にて格子状に形成された第1地盤改良部と、前記第1地盤改良部から前記液状化層の下層にある軟弱層を貫通して支持層へ延びる壁状の第2地盤改良部と、を備え、前記第2地盤改良部には、該第2地盤改良部の下端部から上方へ延びるスリット部又は溝部が形成されている。
【0010】
請求項1に記載の地盤改良体によれば、液状化層には、平面視にて格子状の第1地盤改良部が形成されている。この第1地盤改良部によって、当該第1地盤改良部で囲まれた地盤(液状化層)の変形が拘束される。従って、地震時における液状化層の液状化が抑制される。また、第1地盤改良部から支持層へ延びる第2地盤改良部を介して第1地盤改良部が支持層に支持されるため、第1地盤改良部の沈下が抑制される。更に、本発明における第2地盤改良部は壁状であるため、従来(例えば、特許文献1)のように杭状の地盤改良体で第1地盤改良部を支持する構成と比較して、第1地盤改良部がより強固に支持される。従って、地盤改良体の支持性能(鉛直支持力)が向上する。
【0011】
ここで、地震時には、地盤に発生する慣性力によって第1地盤改良部及び第2地盤改良部に水平力が作用する。この際、第1地盤改良部及び第2地盤改良部に発生するせん断応力は、下方へ向かうに従って大きくなり、第2地盤改良部の下端部で最大となる。特に、本発明における第2地盤改良部は壁状であるため、面内方向のせん断剛性が大きく、第2地盤改良部の下端部に発生するせん断応力が過大になる可能性がある。これにより、例えば、第2地盤改良部がせん断破壊すると、第1地盤改良部の鉛直荷重が支持層に伝達されず、地盤改良体の支持性能(鉛直支持力)が低下してしまう。
【0012】
この対策として本発明では、第2地盤改良部に上下方向に延びるスリット部又は溝部を形成している。ここで、第2地盤改良部にスリット部が形成された構成では、スリット部において第2地盤改良部が水平方向に連続しないため、第2地盤改良部の面内方向のせん断剛性が小さくなる。従って、第2地盤改良部の下端部に対するせん断応力の集中が低減されるため、第2地盤改良部の水平方向のせん断破壊が抑制される。
【0013】
一方、第2地盤改良部に溝部が形成された構成では、溝部によって第2地盤改良部の水平断面積が部分的に小さくなっている。即ち、第2地盤改良部における溝部が形成された部位のせん断剛性が、第2地盤改良部における他の部位のせん断剛性よりも小さくなっている。従って、地震時に第2地盤改良部に水平力が作用すると、第2地盤改良部が溝部に沿って上下方向にせん断破壊する。これにより、水平力が吸収されると共に、溝部に沿って分割された各第2地盤改良部の面内方向のせん断剛性が小さくなる。従って、第2地盤改良部の下端部に対するせん断応力の集中が低減されるため、第2地盤改良部のせん断破壊が抑制される。
【0014】
このように本発明では、第2地盤改良部にスリット部又は溝部を形成することにより、地震時における地盤改良体の鉛直支持力の低下を抑制することができる。
【0015】
請求項2に記載の地盤改良体は、請求項1に記載の地盤改良体において、前記第1地盤改良部及び前記第2地盤改良部が、ソイルセメント壁を有して構成され、前記溝部が、前記ソイルセメント壁の壁面に形成されている。
【0016】
請求項2に記載の地盤改良体によれば、第1地盤改良部及び第2地盤改良部がソイルセメント壁を有して構成されており、このソイルセメント壁の壁面に溝部が形成されている。このようにソイルセメント壁の壁面に溝部を形成することにより、当該壁面の所定位置に溝部を形成することができる。
【0017】
請求項3に記載のパイルド・ラフト基礎は、平面視にて格子状に接合され、建物を支持する複数の基礎梁と、前記基礎梁の交差部を支持する杭と、前記基礎梁を支持すると共に、前記杭を前記第1地盤改良部で囲む請求項1又は請求項2に記載の地盤改良体と、を備え、平面視にて隣り合う前記基礎梁の間に前記第2地盤改良部に形成された前記スリット部又は前記溝部が位置している。
【0018】
請求項3に記載のパイルド・ラフト基礎によれば、平面視にて隣り合う基礎梁の間に、第2地盤改良部に形成されたスリット部又は溝部が位置している。換言すると、平面視にて第2地盤改良部に形成されたスリット部又は溝部と重ならないように基礎梁が構築されている。従って、地震時にスリット部が開いたり、溝部がせん断破壊したりしても、スリット部又は溝部が形成されていない第2地盤改良部の部位によって基礎梁が支持されるため、基礎梁が支持する建物の沈下が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明に係る地盤改良体、及びこれを備えたパイルド・ラフト基礎によれば、地震時における地盤改良体のせん断破壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパイルド・ラフト基礎によって支持された建物を示す立面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る地盤改良体を示す斜視図である。
【図3】(A)は本発明の第1実施形態に係る地盤改良体の変形状態を模式的に示す説明図であり、(B)は従来の地盤改良体の変形状態を模式的に示す説明図である。
【図4】(A)は図1の4A−4A線断面図であり、(B)は図1の4B−4B線断面図であり、(C)は図1の4C−4C線断面図である。
【図5】(A)及び(B)は本発明の第1実施形態に係る地盤改良体の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る地盤改良体を示す斜視図である。
【図7】(A)〜(C)は本発明の第2実施形態における壁状地盤改良部を示す図4(A)〜図4(C)に相当する水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る地盤改良体及びこれを備えたパイルド・ラフト基礎について説明する。
【0022】
先ず、第1実施形態について説明する。
【0023】
図1には、本実施形態に係るパイルド・ラフト基礎10によって支持された建物12が示されている。本実施形態に係るパイルド・ラフト基礎10は、一例として、地表から順に液状化層14A、軟弱層14B、支持層14Cで構成された地盤14に適用されている。この液状化層14Aは主として砂質土で構成されると共に、地下水位が比較的高くなっており、地震時に液状化し易くなっている。また、軟弱層14Bは主として粘性土で構成され、建物12からの鉛直荷重により圧縮沈下等が生じ易くなっている。一方、支持層14Cは建物12を支持可能な十分な強度を有している。
【0024】
パイルド・ラフト基礎10は、直接基礎と杭基礎とを併用した併用基礎であり、地盤改良体20と、地盤改良体20の上に構築された基礎スラブ22と、基礎スラブ22の上に構築された複数の基礎梁24と、基礎スラブ22を支持する複数の杭26を備えている。
【0025】
図2及び図3(A)に示されるように、地盤改良体20は、ソイルセメント柱列工法によって構築されており、柱長さ(掘削深度)の異なる2種類の柱状改良体28,30を有している。柱長さが短い柱状改良体28は液状化層14Aに形成されており、柱長さが長い柱状改良体30は液状化層14Aと支持層14Cとに渡って形成されている。これらの柱状改良体28,30は平面視にて格子状に配列されると共に、隣接する柱状改良体28,30同士が壁状に連接されている。
【0026】
このように構成された地盤改良体20は、その上部が第1地盤改良部としての格子状地盤改良部20Aとされており、その下部が第2地盤改良部としての壁状地盤改良部20Bとされている。格子状地盤改良部20Aは、液状化層14Aに形成された柱状改良体28と柱状改良体30の上部とによって構成されており、隣接する柱状改良体28,30が平面視にて格子状に隙間なく連接されている。この格子状地盤改良部20Aによって液状化層14Aが複数の領域32(図2参照)に仕切られており、領域32内の地盤(液状化層14A)の変形が拘束されている。
【0027】
一方、壁状地盤改良部20Bは、軟弱層14Bと支持層14Cに渡って形成された柱状改良体30の下部によって構成されており、隣接する柱状改良体30が壁状に連接されている。これらの柱状改良体30は格子状地盤改良部20Aから下方へ延出しており、液状化層14Aの下層にある軟弱層14Bを貫通して支持層14Cに達している。これにより、格子状地盤改良部20Aが壁状地盤改良部20Bを介して支持層14Cに支持されるようになっている。
【0028】
また、壁状地盤改良部20Bには、その下端部から上方へ延びるスリット部34が形成されている。スリット部34は、柱状改良体28の柱長さ(掘削深度)を柱状改良体30の柱長さ(掘削深度)よりも短く(浅く)することにより、柱状改良体28の下方に形成されている。このスリット部34では、軟弱層14B及び支持層14Cが地盤改良されておらず、地盤改良された柱状改良体30と比較して剛性が小さくなっている。
【0029】
ここで、図4(A)に示されるように、地盤改良体20の上には、鉄筋コンクリート造の基礎スラブ22及び複数の基礎梁24が構築されている。これらの基礎スラブ22及び基礎梁24は液状化層14A(図1参照)に構築されており、建物12を直接支持している。各基礎梁24は、平面視にて格子状に接合されると共に、その交差部24Aが格子状地盤改良部20Aで仕切られた領域32の中央部に位置されている。一方、図4(B)に示されるように、格子状地盤改良部20Aで仕切られた領域32の中央部には杭26が配置されている。杭26は、図1に示されるように、液状化層14Aから軟弱層14Bを貫通して支持層14Cの深層へ延びており、この杭26によって基礎梁24の交差部24Aが支持されるようになっている。
【0030】
また、図4(C)に示されるように、格子状地盤改良部20Aで仕切られた領域32の角部には柱状改良体28が配置され、隣接する角部の間には柱状改良体30が配置されている。各基礎梁24は、これらの柱状改良体30を平面視にて横切るように構築されている。即ち、各基礎梁24は平面視にて柱状改良体30と重なるように構築されており、これらの柱状改良体30によって基礎梁24が支持されるようになっている。一方、基礎梁24は、平面視にて柱状改良体28及び当該柱状改良体28の下方に形成されたスリット部34と重ならないように構築されている。換言すると、隣り合う基礎梁24の間(略平行する基礎梁24の間)に柱状改良体28及びスリット部34が位置されている。
【0031】
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0032】
本実施形態に係る地盤改良体20は、液状化層14Aに形成された格子状地盤改良部20Aと、軟弱層14Bと支持層14Cに渡って形成された壁状地盤改良部20Bとを備えている。この格子状地盤改良部20Aは平面視にて格子状に形成されており、当該格子状地盤改良部20Aで仕切られた領域32内の地盤(液状化層14A)の変形が拘束されている。従って、地震時における液状化層14Aの液状化が抑制される。
【0033】
また、格子状地盤改良部20Aの下方には、壁状地盤改良部20Bが設けられている。この壁状地盤改良部20Bは格子状地盤改良部20Aから軟弱層14Bを貫通して支持層14Cへ延びている。従って、格子状地盤改良部20Aが壁状地盤改良部20Bを介して支持層14Cに支持されるため、格子状地盤改良部20Aの沈下が抑制される。
【0034】
更に、壁状地盤改良部20Bは壁状であるため、従来(例えば、特許文献1)のように杭状の地盤改良体によって格子状地盤改良部20Aを支持する構成と比較して、格子状地盤改良部20Aがより強固に支持される。
【0035】
更にまた、図3(A)に示されるように、壁状地盤改良部20Bには、スリット部34が形成されている。これにより、地震時における壁状地盤改良部20Bのせん断破壊が抑制される。より詳細に説明すると、図2に示されるように、地震時には、地盤14に発生する慣性力によって地盤改良体20に水平力Fが作用する。この際、地盤改良体20に発生するせん断応力Qは、地盤改良体20の下方へ向かうに従って大きくなり、壁状地盤改良部20Bの下端部で最大となる。
【0036】
従って、例えば、図3(B)に示される比較例のように、壁状地盤改良部20Bにスリット部34が設けられておらず、壁状地盤改良部20Bの面内方向(矢印M方向)のせん断剛性が大きい地盤改良体100では、壁状地盤改良部20Bの下端部に発生するせん断応力が過大になり、壁状地盤改良部20Bがせん断破壊(水平方向)する可能性がある。そして、例えば二点差線で示される位置で壁状地盤改良部20Bがせん断破壊すると、格子状地盤改良部20Aの鉛直荷重が支持層14Cに伝達されず、地盤改良体100の鉛直支持力が低下してしまう。
【0037】
この対策として本実施形態では、図3(A)に示されるように、壁状地盤改良部20Bに上下方向に延びるスリット部34を形成している。このスリット部34では、軟弱層14B及び支持層14Cが地盤改良されておらず、壁状地盤改良部20Bが水平方向に連続していないため、壁状地盤改良部20Bの面内方向(矢印M方向)のせん断剛性が小さくなっている。従って、地盤改良体20に水平力が作用すると、例えば、二点鎖線で示されるように壁状地盤改良部20Bが変形し、水平力が軟弱層14Bへ伝達される。これにより、壁状地盤改良部20Bの下端部に対するせん断応力の集中が低減されるため、壁状地盤改良部20Bのせん断破壊が抑制される。従って、地震時及び地震後における格子状地盤改良部20Aの沈下等が抑制されるため、地盤改良体20の鉛直支持力の低下が低減される。
【0038】
また、本実施形態では、基礎梁24が、平面視にて柱状改良体30を横切るように構築されている。これにより、支持層14Cへ延びる柱状改良体30によって基礎梁24が支持される。また、基礎梁24は、平面視にて壁状地盤改良部20Bのスリット部34と重ならないように構築されており、隣り合う基礎梁24の間にスリット部34が位置されている。従って、地震時にスリット部34が開いても、基礎梁24が柱状改良体30によって支持されるため、建物12の沈下が抑制される。
【0039】
更に、地盤改良体20の支持性能を向上し、地盤改良体20の鉛直支持力を杭26の鉛直支持力に近づけることにより、基礎梁24及び基礎スラブ22において、地盤改良体20で支持された部位の沈下量と杭26で支持された部位の沈下量との差が小さくなる。これにより、杭26で支持された基礎梁24及び基礎スラブ22の部位に対する応力集中が低減される。従って、基礎梁24及び基礎スラブ22の破壊、損傷が抑制される。
【0040】
このように本実施形態係る地盤改良体20、及びこれを備えたパイルド・ラフト基礎10によれば、壁状地盤改良部20Bにスリット部34を形成することにより、地震時における地盤改良体20の鉛直支持力の低下を抑制することができる。
【0041】
次に、第1実施形態に係る地盤改良体20の変形例について説明する。
【0042】
上記実施形態では、スリット部34のスリット幅を略3本分の柱状改良体28の幅にしたがこれに限らない。スリット部34のスリット幅は、隣接するスリット部34の間隔(ピッチ)や柱状改良体30の剛性に応じて適宜変更可能であり、例えば、図5(A)に示されるように、狭スリット部36のスリット幅Dを略1本分の柱状改良体28の幅にしても良い。このようにスリット幅Dを狭くすることにより、地盤改良体20の支持性能を向上することができる。更に、スリット部34、狭スリット部36の配置や数は適宜変更可能である。
【0043】
また、図5(B)に示されるように、4本以上の柱状改良体30を連接し、地盤改良体20の支持性能を向上しても良い。なお、図5(B)に示される地盤改良体21は、3連の掘削オーガを有するアースオーガ機と、4連の掘削オーガを有するアースオーガ機とを組み合わせて施工されている。このように掘削オーガの数が異なるアースオーガ機を適宜組み合わせて地盤改良体21を施工しても良い。
【0044】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0045】
図6及び図7(A)〜図7(C)に示されるように、第2実施形態に係る地盤改良体40は、ソイルセメントを用いた地中連続壁工法によって構築されている。具体的には、地盤14を溝状に掘削し、掘削された溝穴に掘削土とセメントミルクとを攪拌、混合したソイルセメントを打設してソイルセメント壁42を構築する。このソイルセメント壁42を平面視にて格子状に組み合わせることにより、地盤14(図1参照)中に地盤改良体40が構築されている。
【0046】
地盤改良体40は液状化層14A(図1参照)と支持層14Cとに渡って形成され、その上部が第1地盤改良部としての格子状地盤改良部40Aとされると共に、その下部が第2地盤改良部としての壁状地盤改良部40Bとされている。この地盤改良体40によって液状化層14A及び軟弱層14Bが複数の領域44に仕切られており、領域44内の地盤(液状化層14A)の変形が拘束されている。また、壁状地盤改良部40Bは、格子状地盤改良部40Aから下方へ延出しており、液状化層14Aの下層にある軟弱層14Bを貫通して支持層14Cへ延びている。これにより、格子状地盤改良部40Aが壁状地盤改良部40Bを介して支持層14Cに支持されるようになっている。
【0047】
また、壁状地盤改良部40Bを構成するソイルセメント壁42の壁面42Aには、その下端部から上方へ延びる溝部46が形成されている。この溝部46は、地盤を溝状に掘削した溝穴内の所定位置に発泡材(例えば、発泡ポリスチレンフォーム)を配置した後、溝穴にソイルセメントを打設することにより形成されている。この溝部46が形成された壁状地盤改良部40Bの部位は、他の壁状地盤改良部40Bの部位と比較して水平断面積が小さくなっている。即ち、壁状地盤改良部40Bにおける溝部46が形成された部位のせん断剛性は、壁状地盤改良部40Bにおける他の部位のせん断剛性よりも小さくなっている。これにより、地震時に壁状地盤改良部40Bに水平力が作用すると、壁状地盤改良部40Bが溝部46に沿って上下方向にせん断破壊するようになっている。
【0048】
ここで、図7(A)に示されるように、地盤改良体40の上には、第1実施形態と同様に、基礎スラブ22及び複数の基礎梁24が構築されている。各基礎梁24は、その交差部24Aが格子状地盤改良部40Aで仕切られた領域44の中央部に位置されている。これにより、図7(B)に示されるように、格子状地盤改良部40Aで仕切られた領域44の中央部に配置された杭26によって、基礎梁24の交差部24Aが支持されるようになっている。
【0049】
また、図7(C)に示されるように、溝部46は、格子状地盤改良部40Aで仕切られた領域44の角部に位置されており、平面視にて基礎梁24と重ならないようになっている。換言すると、隣り合う基礎梁24の間(略平行する基礎梁24の間)に溝部46が位置されている。これにより、溝部46が形成されていないソイルセメント壁42の部位によって各基礎梁24が支持されるようになっている。
【0050】
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0051】
本実施形態に係る地盤改良体40は、液状化層14Aに形成された格子状地盤改良部40Aと、軟弱層14Bと支持層14Cに渡って形成された壁状地盤改良部40Bとを備えている。この格子状地盤改良部40Aは平面視にて格子状に形成されている。これにより、格子状地盤改良部40Aで仕切られた領域44内の地盤(液状化層14A)の変形が拘束されている。従って、地震時における液状化層14Aの液状化が抑制される。
【0052】
また、格子状地盤改良部20Aの下方には、壁状地盤改良部40Bが設けられている。この壁状地盤改良部40Bは格子状地盤改良部40Aから軟弱層14Bを貫通して支持層14Cへ延びている。従って、格子状地盤改良部40Aが壁状地盤改良部40Bを介して支持層14Cに支持されるため、格子状地盤改良部40Aの沈下が抑制される。
【0053】
更に、壁状地盤改良部40Bは壁状であるため、従来(例えば、特許文献1)のように杭状の地盤改良体で格子状地盤改良部40Aを支持する構成と比較して、格子状地盤改良部40Aがより強固に支持される。従って、地盤改良体40の支持性能(鉛直支持力)が向上する。
【0054】
更にまた、壁状地盤改良部40Bには、溝部46が形成されている。この溝部46によって壁状地盤改良部40Bの水平断面積が部分的に小さくなっている。即ち、壁状地盤改良部40Bにおける溝部46が形成された部位のせん断剛性が、壁状地盤改良部40Bにおける他の部位のせん断剛性よりも小さくなっている。従って、地震時に地盤改良体40に水平力F(図6参照)が作用すると、壁状地盤改良部40Bが溝部46に沿って上下方向にせん断破壊する。これにより、水平力Fが吸収されると共に、溝部46に沿って分割された各ソイルセメント壁42の面内方向のせん断剛性が小さくなる。従って、壁状地盤改良部40Bのせん断破壊が抑制される。
【0055】
また、本実施形態では、格子状地盤改良部40Aで仕切られた領域44の角部に溝部46が位置されており、平面視にて基礎梁24と溝部46とが重ならないようになっている。換言すると、隣り合う基礎梁24の間(略平行する基礎梁24の間)に溝部46が位置されている。これにより、溝部46が形成されていないソイルセメント壁42の部位によって基礎梁24が支持される。また、地震時に溝部46がせん断破壊しても、基礎梁24がソイルセメント壁42によって支持されるため、建物12の沈下が抑制される。
【0056】
また、本実施形態は、ソイルセメント壁42の壁面42Aに溝部46を形成する構成であるため、第1実施形態のように壁状地盤改良部20Bにスリット部34(図2参照)を形成する構成と比較して、壁状地盤改良部40Bの断面欠損が小さくなるため、地盤改良体40の支持性能が向上する。更に、地盤改良体40を施工する際に、地盤を溝状に掘削した溝穴内における発泡材の配置を変えることにより、ソイルセメント壁42の壁面42Aの所定位置に溝部46を形成することができる。なお、溝部46の形状や配置、数は適宜変更可能である。
【0057】
このように本実施形態係る地盤改良体40によれば、壁状地盤改良部40Bに溝部46を形成することにより、地震時における地盤改良体40の鉛直支持力の低下を抑制することができる。
【0058】
次に、第1、第2実施形態の変形例について説明する。
【0059】
上記第1、第2実施形態では、直接基礎と杭基礎とを併用したパイルド・ラフト基礎10に地盤改良体20,40を適用したが、上記第1,第2実施形態に係る地盤改良体20,40は、杭基礎(杭26)を省略した直接基礎にも適用可能である。この場合、第1実施形態に係る地盤改良体20では基礎梁24の交差部24Aを柱状改良体30で支持することが望ましく、第2実施形態に係る地盤改良体40では、基礎梁24の交差部24Aを溝部46が形成されていないソイルセメント壁42の部位で支持することが望ましい。また、直接基礎としては、基礎スラブ22及び基礎梁24に限らず、種々の構造の直接基礎に適用可能である。
【0060】
以上、本発明の第1,第2実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1,第2実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 パイルド・ラフト基礎
12 建物
14A 液状化層
14B 軟弱層
14C 支持層
20 地盤改良体
21 地盤改良体
20A 格子状地盤改良部(第1地盤改良部)
20B 壁状地盤改良部(第1地盤改良部)
24 基礎梁
24A 交差部
26 杭
34 スリット部
36 狭スリット部(スリット部)
40 地盤改良体
40A 格子状地盤改良部(第1地盤改良部)
40B 壁状地盤改良部(第2地盤改良部)
42 ソイルセメント壁
46 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状化層に平面視にて格子状に形成された第1地盤改良部と、
前記第1地盤改良部から前記液状化層の下層にある軟弱層を貫通して支持層へ延びる壁状の第2地盤改良部と、
を備え、
前記第2地盤改良部には、該第2地盤改良部の下端部から上方へ延びるスリット部又は溝部が形成されている地盤改良体。
【請求項2】
前記第1地盤改良部及び前記第2地盤改良部が、ソイルセメント壁を有して構成され、
前記溝部が、前記ソイルセメント壁の壁面に形成されている請求項1に記載の地盤改良体。
【請求項3】
平面視にて格子状に接合され、建物を支持する複数の基礎梁と、
前記基礎梁の交差部を支持する杭と、
前記基礎梁を支持すると共に、前記杭を前記第1地盤改良部で囲む請求項1又は請求項2に記載の地盤改良体と、
を備え、
平面視にて隣り合う前記基礎梁の間に前記第2地盤改良部に形成された前記スリット部又は前記溝部が位置しているパイルド・ラフト基礎。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2077(P2013−2077A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132265(P2011−132265)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】