説明

地盤改良体及び地盤改良体の水平耐力算定方法

【課題】地盤改良体の特質を生かした滑り止め機構、及び滑り止め機構を設けた地盤改良体の水平耐力の算定方法を提供する。
【解決手段】滑り止め機構10は、頭部に凹凸部24が設けられた地盤改良体12と、凹凸部24の上に構築された構造物の躯体16を有している。水平耐力は、水平力Rにより破壊されるときのせん断破壊面18を水平面20と角度αをなす位置とし、せん断面傾斜角度αに沿って、構造物が重力に逆らって変位するときの仕事量と、地盤改良体12の水平耐力を加算して算定する。ここに、水平耐力Fは次の手順で算定される。先ず、水平耐力特性算出ステップを実行し、せん断面傾斜角度αにおける水平耐力をF(α)としたとき、せん断面傾斜角度αと水平耐力F(α)の関係を示す水平耐力特性Pを算出する。次に、水平耐力特性P1における、水平耐力F(α)が最も小さい値となる角度αpと、角度αpでの水平耐力F(αp)を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良体及び地盤改良体の水平耐力算定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤等では、地盤改良された地盤改良体の上に構造物が構築される。地盤改良体は、構造物の基礎と地盤改良体の間の摩擦抵抗で基礎の滑動を抑制し、杭に作用する水平力を軽減している。しかし、地震力や偏土圧によって地盤改良体に大きな水平力が作用するときには、構造物の基礎と地盤改良体の間の摩擦抵抗力が不足して、基礎と地盤改良体の間が滑動する。
【0003】
この滑動を防止するために、杭径を大きくする選択もあるが施工コストが増大する。このため、基礎と地盤改良体の間に、せん断力を伝達させる凹凸部やシアキー(伝達部材)等の滑り止め機構を設けて対応している(特許文献1)。
【0004】
特許文献1の滑り止め機構108は、図10に示すように、土間スラブ110と地盤112の間に地盤改良体114を構築し、土間スラブ110と地盤改良体114の間を凹凸部116で接合した構成である。地盤改良体114の深さは基礎フーチング118の底面までとされ、地盤改良体114の底面は地盤112と平面で接している。また、土間スラブ110と地盤改良体114の周囲は、基礎フーチング118と水平方向に接している。
【0005】
これにより、土間スラブ110と地盤改良体114の一体化が図られ、地震時の水平力を受けたとき、地盤改良体114の底面と地盤112の間で滑動する。
即ち、特許文献1は、滑動位置を、土間スラブ110と地盤改良体114の間から、地盤改良体114と地盤112の間に変更したに過ぎず、地盤改良体114の特質を生かした構成とはいえない。
【0006】
また、滑り止め機構108を設けた地盤改良体114の水平耐力についても、具体的な算定方法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−321402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事実に鑑み、地盤改良体の特質を生かした滑り止め機構、及び滑り止め機構を設けた地盤改良体の水平耐力の算定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明に係る水平耐力算定方法は、頭部に凹凸部が形成され、凸部を構造物の躯体に呑み込ませた地盤改良体で前記構造物を支持し、水平力を前記躯体から前記地盤改良体へ伝達する、地盤改良体の水平耐力算定方法であって、前記水平力により、前記凸部が破壊されるときに生じるせん断破壊面の水平面に対する傾斜角度をせん断面傾斜角度をαとし、前記せん断面傾斜角度αに沿って構造物が変位するときに、前記構造物が重力に逆らって変位するときに消費される仕事量を、前記地盤改良体の水平耐力に加算することを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、せん断面傾斜角度αに沿って構造物が重力に逆らって変位するときに消費される仕事量と、地盤改良体の水平耐力と、を加算して地盤改良体の水平耐力が算定される。即ち、せん断面傾斜角度αを適切に選択することで、地震時の水平力を、構造物が重力に逆らって変位するときに消費される仕事量の形で減衰させることができる。
これにより、地盤改良体の負担を軽減させることができ、地盤改良体の特質を生かした滑り止め機構の算定方法を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る水平耐力算定方法は、請求項1に記載の水平耐力算定方法において、前記水平耐力の算定方法は、前記せん断面傾斜角度αと前記地盤改良体の水平耐力F(α)の関係を示す水平耐力特性を、下式で算出する水平耐力特性算出ステップと、前記水平耐力特性から、前記水平耐力F(α)を最も小さくする前記せん断面傾斜角度αpを求め、前記せん断面傾斜角度αpにおける水平耐力F(αp)を、地盤改良体の水平耐力とする最小耐力算出ステップと、を有することを特徴としている。

【数1】


ここに
【0012】
Pf:地盤改良体と躯体境界面の摩擦抵抗面における鉛直力(kN)
Ps:地盤改良体のせん断抵抗面における鉛直力(kN)
α:地盤改良体のせん断面傾斜角度(度)
φ:地盤改良体の摩擦角(度)
μ:地盤改良体と躯体境界面の摩擦係数( − )
S:地盤改良体のせん断面の1個当たりの面積( m

【数2】


De:地盤改良体の奥行き方向の有効幅( m )
La:地盤改良体の凸部の水平長さ( m )
H :地盤改良体の凸部の高さ( m )
Fc:躯体のコンクリートのせん断強度(kN/m
N:地盤改良体の凸部の総数( 個 )

【0013】
請求項2に記載の発明によれば、水平耐力特性算出ステップと最小耐力算出ステップを経て、地盤改良体の水平耐力F(αp)が算出される。
即ち、構造物重量、地盤改良体の強度、及び地盤改良体頭部の凹凸部形状等に基づいて、地盤改良体の水平耐力を算出できる。このとき、(1)式で複数の凹凸部の存在が前提とされているため、小規模な凹凸部を密に設置することも可能となり、施工性を向上させ、かつ、必要な水平耐力F(αp)を確保できる。
【0014】
また、凹凸部における凸部の水平長さLa、凹部の水平長さLb、凸部の高さHの比が一定であれば、(1)式で得られる地盤改良体の水平耐力は同じ値となる。このことから、施工性に応じて凹凸部の形状を変えることができる。
また、凹凸部の寸法を、凹凸部と躯体側コンクリートのせん断強度比(2〜5倍程度)に対応させた寸法(2〜5倍程度)とすることにより、躯体側コンクリートを無筋にすることも可能となり、施工コストの削減と省力化が図れる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水平耐力算定方法において、前記水平耐力特性算出ステップと、予め設定した、せん断面傾斜角度αqにおける前記水平耐力F(αq)が最小値となるよう、前記凹凸部の凸部の高さHを調整し、調整後の前記高さHに対応させた前記水平耐力特性を前記(1)式で算出する凹凸部調整ステップと、最小値とされた前記水平耐力F(αq)を、前記地盤改良体の水平耐力とする最小耐力算出ステップと、を有することを特徴としている。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、(1)式で算出された水平耐力特性を用いて、せん断面傾斜角度αqにおける水平耐力F(αq)が最小値となるよう、凸部の高さHが調整されている。凸部の高さHを適切に調整することで、予め設定した、せん断面傾斜角度αqにおける水平耐力F(αq)の値を最小値にすることができる。
即ち、せん断破壊面の位置(せん断面傾斜角度αq)を、設計段階で予め設定しておくことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の水平耐力算定方法において、前記せん断面傾斜角度αqを0度(水平面)とすることを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、水平面に、せん断破断面を生じさせることができる。
これにより、地盤改良体のせん断強度を最大限活用でき、水平耐力F(αq)を最も高くすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の水平耐力算定方法において、前記せん断面傾斜角度αqを10〜45度の範囲内のいずれかとすることを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、せん断面傾斜角度αqを10〜45度の範囲内のいずれかの角度で選択できる。
これにより、凸部が極限滑り抵抗力を超える水平力を受けて部分的に損傷しても、凸部の残された部分により、ある程度の残留滑り抵抗力が確保され、滑り止め機構の抵抗力の急激な低下を防止できる。
【0020】
請求項6に記載の発明に係る地盤改良体は、頭部に凹凸部を形成し、凸部を躯体に呑み込ませて水平力を前記躯体へ伝達する地盤改良体であって、前記水平力により、凹部と隣り合う前記凸部が破壊されるときに生じるせん断破壊面の水平面に対する傾斜角度をせん断面傾斜角度αとし、下式で算出される前記せん断面傾斜角度αと前記地盤改良体の水平耐力F(α)の関係を示す水平耐力特性において、予め設定した、せん断面傾斜角度αqにおける前記水平耐力F(αq)が最小値となるよう、前記凹凸部における前記凸部の高さH、前記凸部の水平長さLa、及び前記凸部の総数Nが調整されていることを特徴としている。

【数3】


ここに
【0021】
Pf:地盤改良体と躯体境界面の摩擦抵抗面における鉛直力(kN)
Ps:地盤改良体のせん断抵抗面における鉛直力(kN)
α:地盤改良体のせん断面傾斜角度(度)
φ:地盤改良体の摩擦角(度)
μ:地盤改良体と躯体境界面の摩擦係数(−)
S:地盤改良体のせん断面の1個当たりの面積(m

【数4】


De:地盤改良体の奥行き方向の有効幅(m)
La:地盤改良体の凸部の水平長さ(m)
H :地盤改良体の凸部の高さ(m)
Fc:躯体のコンクリートのせん断強度(kN/m
N:地盤改良体の凸部の総数(個)

【0022】
請求項6に記載の発明によれば、地盤改良体の頭部には滑り止め機構としての凹凸部が形成され、凸部が躯体に呑み込まれている。これにより、水平力を躯体から地盤改良体へ伝達できる。
地盤改良体の水平耐力F(α)は、水平力により、凹部と隣り合う凸部が破壊されるときに生じるせん断破壊面の水平面に対する傾斜角度をせん断面傾斜角度αとしたとき、(2)式で算出することができる。
【0023】
せん断面傾斜角度αと地盤改良体の水平耐力F(α)の関係を示す特性を水平耐力特性としたとき、予め設定した、せん断面傾斜角度αqにおける水平耐力F(αq)が最小値となるよう、凹凸部における凸部の高さH、凸部の水平長さLa、及び凸部の総数Nが調整されている。
【0024】
これにより、予め設定した、せん断面傾斜角度αqにおける水平耐力F(αq)が最小値となる地盤改良体を提供できる。即ち、せん断破壊面の位置(せん断面傾斜角度αq)を、設計段階で予め設定しておくことができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の地盤改良体において、前記せん断面傾斜角度αqを0度(水平面)とすることを特徴としている。
即ち、水平面に、せん断破断面を生じさせることができる。これにより、地盤改良体のせん断強度を最大限活用でき、水平耐力F(αq)を最も高くすることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の地盤改良体において、前記せん断面傾斜角度αqを10〜45度の範囲内のいずれかの角度とすることを特徴としている。
即ち、せん断面傾斜角度αqを、10〜45度の範囲内のいずれかの角度で選択できる。これにより、これにより、凸部が極限滑り抵抗力を超える水平力を受けて部分的に損傷しても、凸部の残された部分により、ある程度の残留滑り抵抗力が確保され、滑り止め機構の抵抗力の急激な低下を防止できる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか1項に記載の地盤改良体において、前記地盤改良体は、地盤を改良した柱状の改良柱を互いにラップさせた壁体として構成され、前記凹凸部の凹部は頭部を前記壁体の幅方向に横断する溝状に形成され、前記凹部が横断する方向は、平面視において、前記頭部の長さ方向に対し角度を持って交差していることを特徴としている。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、改良柱を互いにラップさせた壁体として、地盤改良体が構成されている。また、凹凸部における凹部は、頭部を壁体の幅方向に横断する溝状に形成され、凹部が横断する方向は、平面視において、頭部の長さ方向に対し角度を持って交差している。
これにより、地盤改良体の面外方向にも、滑り抵抗力を発揮できる。
【0029】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか1項に記載の地盤改良体において、前記改良柱がラップされたラップ部には、前記壁体の長さ方向に対して直交し、矩形状に形成された前記凹部が配置されていることを特徴としている。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、矩形状の凹部が改良柱のラップ部に形成されている。これにより、地盤改良体の頭部に形成する凹凸部の掘削、除去作業を省力化できる。また、水平耐力は、構築する矩形状の凹部の深さと幅から決定することができ、必要最小限の掘削量で滑り止め機構を構築できる。
【0031】
請求項11に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか1項に記載の地盤改良体において、前記改良柱の中心部には、円柱状に形成された前記凹部が、前記壁体の頭部から所定の深さで設けられていることを特徴としている。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、改良柱の中心部に凹部が形成され、凹部は、壁体の頭部から所定の深さで円柱状に形成されている。
即ち、コアカッターを用いることで、容易に円柱状の凹部を施工でき、施工性が向上する。
【0033】
請求項12に記載の発明は、請求項6〜11のいずれか1項に記載の地盤改良体において、隣接する前記凹部の深さを異ならせたことを特徴としている。
請求項11に記載の発明によれば、隣接する凹部の深さが互いに異なっている。これにより、せん断破壊面が、水平方向に連続して発生するのを防止でき、地盤改良体の水平耐力を増大させることができる。
【0034】
請求項13に記載の発明は、請求項6〜12のいずれか1項に記載の地盤改良体において、前記地盤改良体の頭部には、前記壁体の長さ方向に、前記凹凸部が複数形成されていることを特徴としている。
【0035】
請求項13に記載の発明によれば、地震時の水平力から決定される凹凸部の形状比(凸部の高さHと水平長さLaの比等)を満足させるように、地盤改良体の頭部には、壁体の長さ方向に、凹凸部が複数形成されている。
これにより、躯体と地盤改良体が接触する表面積を大きくすることができる。また、地盤改良体の頭部の掘削量を削減できるので、躯体コンクリート量を減らすことができる。
【0036】
請求項14に記載の発明は、請求項6〜13のいずれか1項に記載の地盤改良体において、前記地盤改良体の頭部には、靭性を補強する繊維が混入されていることを特徴としている。
【0037】
請求項14に記載の発明は、地盤改良体の頭部には、靭性を補強する繊維が混入されている。これにより、局所的な応力が集中する頭部の靭性を補強することができる。また、耐震性も向上できる。また、繊維を補強していない地盤改良体の下部には、荷重分散効果で均等な水平力が伝わるようにできる。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、上記構成としてあるので、地盤改良体の特質を生かした滑り止め機構、及び滑り止め機構を設けた地盤改良体の水平耐力の算定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る地盤改良体の算定方法を説明するための滑り止め機能の基本構造を示す断面図、及び地盤改良体の水平耐力特性図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る地盤改良体の基本構成を示す断面図、及び地盤改良体の水平耐力特性図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る地盤改良体の水平耐力特性図、及び地盤改良体の抵抗力を示す模式図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る地盤改良体のせん断破壊面の位置を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る地盤改良体の基本構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る地盤改良体の基本構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態に係る地盤改良体の基本構成を示す断面図である。
【図8】本発明の第7の実施の形態に係る地盤改良体の基本構成を示す断面図である。
【図9】本発明の第8の実施の形態に係る地盤改良体に混入される繊維の混入状況を示す断面図である。
【図10】従来例の地盤改良体の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る地盤改良体の算定方法は、図1の断面図に示す滑り止め機構10の、水平耐力Fの算定方法である。滑り止め機構10は、頭部に凹凸部24が形成された地盤改良体12と、凹部22に入り込む、図示しない構造物の躯体16との接合部であり、地震時の水平力Rを、凹凸部24を介して地盤改良体12へ伝達する。
【0041】
ここに、地盤改良体12は、図示しないオーガで原地盤を掘削しながら、掘削土とセメントミルクを混合、撹拌して柱体を形成し、柱体の外周部同士をラップさせて壁状とした構成である。地盤改良体12の単位面積当たりの水平耐力は、地盤改良体12には掘削土が含まれているため、躯体16に使用されるコンクリートの単位面積当たりの水平耐力より小さい。
【0042】
地盤改良体12の頭部には、深さH1の凸部14(幅La)が、凹部22(幅Lb)を挟んで連続して複数形成された凹凸部24が設けられている。凹凸部24の上には躯体16が形成され、凸部14は躯体16のコンクリートに呑み込まれている。
この構成において、地震時の水平力Rにより凸部14が破壊されるとき、水平面20と角度αをなす、せん断破壊面18の位置で地盤改良体12が破壊される。このときの水平耐力は、地盤改良体12のせん断破壊面18の位置における水平耐力と、構造物が重力に逆らってせん断面傾斜角度αに沿って変位するときに消費される仕事量と、を加算することで算定される。
【0043】
即ち、地盤改良体12を、せん断面傾斜角度αの位置で破壊させることで、地震時の水平力を、構造物が重力に逆らって変位するときに消費される仕事量の形で減衰させることができる。
この結果、地盤改良体12の負担が軽減され、地盤改良体12の特質を生かした滑り止め機構の算定方法を提供することができる。
【0044】
ここに、構造物が重力に逆らって変位するときに消費される仕事量は、構造物の質量とせん断面傾斜角度αにより決定することができる。また、滑り止め機構10の水平耐力Fは、次の手順で算定することができる。
先ず、水平耐力特性算出ステップを実行する。せん断面傾斜角度αにおける地盤改良体の水平耐力をF(α)としたとき、せん断面傾斜角度αと水平耐力F(α)の関係を示す水平耐力特性Pは、下式で算出される。

【数5】


ここに
【0045】
Pf:地盤改良体と躯体境界面の摩擦抵抗面における鉛直力(kN)
Ps:地盤改良体のせん断抵抗面における鉛直力(kN)
α:地盤改良体のせん断面傾斜角度(度)
φ:地盤改良体の摩擦角(度)
μ:地盤改良体と躯体境界面の摩擦係数(−)
S:地盤改良体のせん断面の1個当たりの面積(m

【数6】


De:地盤改良体の奥行き方向の有効幅(m)
La:地盤改良体の凸部の水平長さ(m)
H :地盤改良体の凸部の高さ(m)
Fc:躯体のコンクリートのせん断強度(kN/m
N:地盤改良体の凸部の総数(個)
【0046】
図1(B)に、地盤改良体12の物性値を用いて、上式により水平耐力特性F(α)の値を算出した結果を示す。横軸はせん断面傾斜角度α(度)で、縦軸は水平耐力F(α)(kN)である。
【0047】
算出された水平耐力特性P1は実線で示されている。せん断面傾斜角度αが水平付近(0度〜10度程度)と鉛直付近(65度〜75度程度)で高い値を示し、その中間の範囲で低い値を示している。算出された水平耐力特性P1から、中間の範囲で破壊され易いことが分かる。
【0048】
次に、最小耐力算出ステップを実行する。手順は、図1(B)に示す水平耐力特性P1において、水平耐力F(α)が最も小さい位置を求める。その後、抽出された水平耐力F(α)が最も小さい位置におけるせん断面傾斜角度αpを求める。同時に、せん断面傾斜角度αpにおける水平耐力F(αp)の値を求め、地盤改良体12の水平耐力F(α)とする。
【0049】
具体的には、水平耐力特性P1の水平耐力F(α)の最小値は、丸印M1で囲んだ位置である。丸印M1で囲んだ位置におけるせん断面傾斜角度αpは、横軸の目盛から28度であり、丸印M1における水平耐力F(α)は、縦軸の目盛から120000(kN)である。
【0050】
上述の手順を経て、水平耐力Fが120000(kN)と算出される。ここに、上式は下記手順で求めることができる。
【0051】
地盤改良体12の頭部に作用する鉛直力P(kN)は、摩擦による破壊領域As(m)における分担鉛直応力Psと、せん断による破壊領域Af(m)における分担鉛直応力Pfの和となり、次の手順で求めることができる。
P=Ps+Pf

【数7】


【数8】


【数9】

ここに、
【0052】
P :地盤改良体(面内壁)頭部の鉛直力(kN)
Pf:地盤改良体と躯体境界面の摩擦抵抗面における鉛直力(kN)
Ps:地盤改良体のせん断抵抗面における鉛直力(kN)
La:地盤改良体凸部の水平長さ(m)
Lb:地盤改良体凹部の水平長さ(m)
Lc:地盤改良体のせん断破壊領域の水平長さ(m)
H1:地盤改良体凸部の高さ(m)
【0053】
また、地盤改良体12の頭部の水平耐力Fは、躯体16と地盤改良体12の境界面における摩擦抵抗力Ffと、地盤改良体12の凸部14のせん断破壊抵抗力Fsの和で表わされる。
F=Ff+Fs
摩擦抵抗力Ff、及びせん断破壊抵抗力Fsは、次式で表すことができる。

【数10】


【数11】


ここで、地盤改良体12のせん断強度τfは、次式で表わされる。

【数12】

【0054】
以上から、地盤改良体12(面内壁)の水平耐力F(α)は上述した(3)式となる。
更に、(3)式を用いて、水平耐力F(α)が最も小さくなるときの地盤改良体12の、せん断面方向角αを求めることで、水平耐力F(α)を決定することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、水平耐力特性算出ステップと最小耐力算出ステップを経て、地盤改良体12の水平耐力F(α)を算出できる。即ち、建物重量、地盤改良体12の強度、及び地盤改良体12の頭部の凹凸部24の形状等に基づいて、地盤改良体12の水平耐力F(α)が決定される。このとき、後述するように、(3)式では複数の凹凸部24の存在が前提とされている。即ち、小規模な凹凸部24を密に設置することにより、凹凸部24の施工性を向上させ、かつ、必要な水平耐力Fを確保できる。
【0056】
また、凹凸部24における凸部14の水平長さLa、凹部22の水平長さLb、及び凸部14の高さHの比が一定であれば、(3)式で得られる地盤改良体12の水平耐力F(α)は同じ値となる。このことから、施工性に応じて、凹凸部24の形状を選択することができる。
【0057】
また、凹凸部24の寸法を、凹凸部24と躯体16側コンクリートのせん断強度比(2〜5倍程度)に対応させた寸法、即ち、凸部14の水平長さLaを、躯体16側コンクリート(凹部22の水平長さLb)の2〜5倍程度とすることにより、躯体16側コンクリートを無筋にすることも可能となり、施工コストの削減と省力化を図ることができる。
【0058】
(第2の実施の形態)
図2の断面図に示すように、第2の実施の形態に係る地盤改良体28は、頭部に凹凸部52が設けられ、躯体36との間で滑り止め機構34を構成している。
【0059】
地盤改良体28は、第1の実施の形態で説明した地盤改良体12と、凹凸部52の形状のみが相違する。即ち、地盤改良体28の頭部には、深さH2の凸部(幅Ld)が、凹部(幅Lf)を挟んで連続して複数形成されている。凹凸部52の上には躯体36が形成され、凸部48は躯体36のコンクリートに呑み込まれている。凹凸部52を介して、地震時の水平力Rが躯体36へ伝達される。
【0060】
凹凸部52は、地盤改良体28の破壊強度以上の水平力Rが作用したとき、凸部48が凹部50と隣り合う面の下端部から破壊される。このときのせん断破壊面18は、凸部14の下端から、水平面20と平行な位置(角度α=0)に発生するよう形成されている。
【0061】
具体的には、せん断面傾斜角度αと地盤改良体28の水平耐力F(α)の関係を示す水平耐力特性P2は、上述した(3)式で算出され、算出結果は図2(B)の実線で示す特性P2となるように、凹凸部52の寸法が決定されている。
【0062】
この結果、水平耐力特性P2において、水平耐力F(α)が最も小さくなるときの、せん断面傾斜角度αは、矢印M2で示す、水平面20と平行な位置(角度α=0)になる。そして、このときの水平耐力F(α)は、縦軸の目盛から180000(kN)となる。
このように、せん断面傾斜角度αを水平面20と平行な位置にすることより、地盤改良体28のせん断強度を最大限活用でき、水平耐力F(α)を最も高くすることができる。
【0063】
その他の地盤改良体28と躯体36との接合構造34の構成については、第1の実施の形態で説明した接合構造10と同じであり、説明は省略する。
【0064】
次に、第2の実施の形態に係る地盤改良体の水平耐力算定方法について説明する。
先ず、水平耐力特性算出ステップを実行する。本ステップは、既述の第1の実施の形態と同一であり、説明は省略する。本ステップにより、図2(B)の実線で示す水平耐力特性P2を求める。
【0065】
次に、凹凸部調整ステップを実行する。即ち水平耐力特性算出ステップで算出された水平耐力特性P2が、予め設定した、せん断面傾斜角度αが、水平面20と並行になる位置(角度α=0)において最小値となっていない場合には、最小値となるよう、凹凸部52の凸部48の高さH2を調整する。そして、調整後の凸部48の高さH2に対応させた水平耐力特性P2を、再度(3)式で算出する。
このステップを、予め設定した、せん断面傾斜角度αが、水平面20と並行になる位置(角度α=0)において、平耐力特性P2が最小値となるまで繰り返す。
【0066】
最後に、最小耐力算出ステップを実行する。即ち、せん断面傾斜角度αが、水平面20と並行になる位置の水平耐力F(α)を、地盤改良体12の水平耐力F(α)とする。
これにより、水平面20と並行な面にせん断破断面18を生じさせることができる。また、地盤改良体28のせん断強度を最大限活用でき、水平耐力F(α)を最も高くすることができる。また、せん断破壊面18の位置(せん断面傾斜角度αq)を、設計段階で予め設定しておくことができる。
【0067】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る図示しない地盤改良体は、図2に示す第2の実施の形態に係る地盤改良体28と、凹凸部52の形状のみが相違する。以下、相違点を中心に説明する。
【0068】
図示しない凹凸部は、図3(A)に示す水平耐力特性P3を有する形状とされている。即ち、水平耐力特性P3における最小値は矢印M3で示す、せん断面傾斜角度αが10〜45度の範囲内のいずれかの角度とされている。
【0069】
これにより、凸部が極限滑り抵抗力を超える水平力を受けて、せん断面傾斜角度αの位置(10〜45度の範囲内)で破壊されても、いずれの角度においも部分的に損傷されることとなる。
この結果、図3(B)の模式図に示すように、水平変位と抵抗力の関係は次のようになる。ここに、横軸に水平変位を、縦軸に抵抗力をとっている。
【0070】
実線Aに、せん断面傾斜角度αの位置が水平面20と並行な位置となる水平破壊の特性を示している。水平変位の初期に、一時的に大きな抵抗力RAを発生するが、凸部が破壊された後は、急激に抵抗力が低下する。
【0071】
一方、破線Bで示すように、ある程度の残留滑り抵抗力を残すように制御することで、水平変位の初期の最大抵抗力RBは抵抗力RAより低下するが、凸部が破壊された後にも、躯体と改良体の山状のメカニカルな噛み合いを残すことができる。この結果、凸部の残された部分により、ある程度の残留滑り抵抗力が確保され、滑り止め機構の抵抗力の急激な低下を防止できる。
【0072】
次に、第1展開例に記載の地盤改良体の水平耐力算定方法について説明する。
先ず、水平耐力特性算出ステップを実行する。本ステップは、既述の第1の実施の形態と同一であり、説明は省略する。本ステップで水平耐力特性P3を算出する。
【0073】
次に、凹凸部調整ステップを実行する。即ち、水平耐力特性算出ステップで算出された水平耐力特性P3が、予め設定した、せん断面傾斜角度αにおいて最小値でない場合には、水平耐力特性P3が、予め設定した、せん断面傾斜角度αにおいて最小値となるよう、凹凸部24における凸部14の高さH2を調整する。そして、調整後の凸部14の高さHに対応させた水平耐力特性P3を(3)式で算出する。
【0074】
このステップを、予め設定した、せん断面傾斜角度αにおいて、平耐力特性P3が最小値となるまで繰り返す。
最後に、最小耐力算出ステップを実行する。即ち、最小値とされた水平耐力F(α)を、地盤改良体12の水平耐力F(α)とする。
【0075】
以上の手順により、地盤改良体の水平耐力F(α)を算定できる。
【0076】
次に、複数の凹凸部を形成することの有利な点について説明する。
図4(A)に示すように、従来用いられていた大きな凹部70は、躯体72側からコンクリートが入り込んだ突起74が設けられ、抵抗力を確保している。この方法では、凹部70を近接して設けると1個当たりの抵抗力が低下する問題があり、疎な間隔で大きな凹部70を設ける必要がある。このような場合、極限抵抗力を超えると、地盤改良体74の凹部70の周囲に受働破壊が発生すると同時に、応力集中に伴う圧縮破壊92が発生する。この結果、抵抗力が急激に低下する。
【0077】
一方、図4(B)に示すように、本実施の形態では、凹部76と凸部78を繰り返し設けることで、水平力Rを複数の凹部76と凸部78に分散させることができるため、応力集中による圧縮破壊を防止することができ、山状の噛み合いを保持できる。この結果、残留応力を高めることができる。
【0078】
これにより、大地震の終局時には、地盤改良体90の頭部で、実線94の位置でせん断破壊を生じさせてエネルギーを吸収させることができる。また、大地震後の余震に対しては、抵抗力を確保できるように、残留抵抗力を高めた滑り止め機構を提供することができる。
【0079】
更に、躯体16と地盤改良体12が接触する表面積を大きくすることができる。また、地盤改良体12の頭部の掘削量を削減できるので、躯体コンクリート量を減らすことができる。
【0080】
(第4の実施の形態)
図5(A)(B)の断面図に示すように、第4の実施の形態に係る地盤改良体30は、地盤改良体30の頭部に凹凸部31を有する。図5(B)は滑り止め機構88の側面図であり、図5(A)は、図5(B)のX−X線断面図である。
【0081】
滑り止め機構88は、地盤改良体30と躯体86を有し、地盤改良体30は、原地盤を改良した柱状の地盤改良体を互いにラップさせた壁体として構成されている。
【0082】
地盤改良体30の凹凸部31の凹部32は、頭部を壁体の幅方向に横断する溝状に形成されている。また、凹部32には、躯体86のコンクリートが入り込み、凹部32が横断する方向は、平面視において、頭部の長さ方向に対し角度βを持って交差している。
【0083】
これにより、地震時の水平力Rを躯体86から地盤改良体30へ伝達させる。このとき、地盤改良体30の面外方向の水平力Rに対する抵抗力の剛性は低いものの、躯体86の基礎スラブと地盤改良体30を一体化させることで、地盤改良体30の壁体に囲まれた地盤内の変形や、液状化の発生防止の効果を期待することができる。本実施の形態は、面内方向の水平抵抗力と同時に、面外方向に対して水平抵抗力を発現することができる。
【0084】
他の構成は、第2の実施の形態と同じであり説明は省略する。
なお、図5(C)に示すように、凹部32の角度βは、鋭角に限定されることはなく、鋭角の角度βと鈍角の角度γを交互に組み合わせてもよい。更に、鈍角γのみとしてもよい。
【0085】
(第5の実施の形態)
図6の断面図に示すように、第5の実施の形態に係る地盤改良体40は、地盤改良体40の頭部に凹凸部45を有する。図6(B)は滑り止め機構96の側面図であり、図6(A)は、図6(B)のX−X線断面図である。
【0086】
滑り止め機構96は、地盤改良体40と躯体43を有し、地盤改良体40は、原地盤を改良した柱状の地盤改良体の外周部を互いにラップさせた壁体として構成されている。
外周部がラップされたラップ部には、地盤改良体40の壁体の長さ方向に対して直交する方向に、矩形状に形成された凹部42が配置されている。凹部42には、躯体43のコンクリートが入り込み、地震時の水平力Rを躯体43から地盤改良体40へ伝達させる。
【0087】
これにより、地盤改良体40の頭部に形成する凹凸部の掘削、除去作業を省力化できる。また、水平耐力Fは、構築する矩形状の凹部の深さD、幅W、及び厚さTで決定することができ、必要最小限の掘削量で滑り止め機構96を構築できる。
他の構成は、第2の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0088】
(第6の実施の形態)
図7の断面図に示すように、第6の実施の形態に係る地盤改良体44は、地盤改良体44の頭部に凹凸部49を有する。図7(B)は滑り止め機構98の側面図であり、図7(A)は、図7(B)のX−X線断面図である。
【0089】
滑り止め機構98は、地盤改良体44と躯体48を有し、地盤改良体44は、原地盤を改良した柱状の地盤改良体の外周部を互いにラップさせた壁体として構成されている。地盤改良体44の頭部には凹凸部49が形成され、柱状の地盤改良体44の中心部には、円柱状に形成された凹部46が、壁体の頭部から深さD2で設けられている。凹部46には、躯体48のコンクリートが入り込み、地震時の水平力Rを躯体48から地盤改良体44へ伝達させる。
【0090】
このように、滑り止め機構98の凹部46を円柱状とすることで、地盤改良体44が高強度に形成された場合であっても、コアカッターと呼ばれる専用の器具を用いることができ、容易に円柱状の凹部46を施工でき、施工性が向上する。
他の構成は、第2の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0091】
(第7の実施の形態)
図8の滑り止め機構66の断面図に示すように、第7の実施の形態に係る地盤改良体54は、地盤改良体54の頭部に凹凸部60を有する。滑り止め機構66は、地盤改良体54と躯体68を有し、地盤改良体54は、原地盤を改良した柱状の地盤改良体の外周部を互いにラップさせた壁体として構成され、躯体68のコンクリートと凹凸部60で接合されている。
【0092】
凹凸部60は、凸部56の両側に形成される凹部58、62の深さを、それぞれ異ならせている。即ち、凸部56の一方の端部には深さH3の凹部58が形成され、他方の端部には、深さH3より浅い深さH4の凹部62が形成されている。
【0093】
これにより、凸部56に発生するせん断破壊面64は、破線64で示すように、凹部58側の端部で発生したせん断破壊面64と、凹部62側の端部で発生したせん断破壊面64が、途中で角度をもって連続する特性となる。
【0094】
これにより、せん断破壊面64が水平方向に直線状に発生するのを防止でき、地盤改良体54の水平耐力Fを増大させることができる。
他の構成は、第2の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0095】
(第8の実施の形態)
第8の実施の形態に係る地盤改良体は、図1に示す地盤改良体12の頭部に、靭性を補強する繊維が混入された構成である。外観、形状は、既述の地盤改良体12と同一であり、図示及び説明は省略し、相違点である繊維を中心に説明する。
【0096】
図9に示すように、繊維100を地盤改良体12に混入することにより、繊維100の摩擦抵抗でせん断破壊面106が補強される。
【0097】
せん断破壊面106を補強するために混入する繊維100は、破断強度が200〜1200MPaでヤング係数が2〜15GPaの機械的性質を有するものが望ましい。例えば、ポリプロピレン繊維が該当する。
【0098】
また、繊維100の直径は10〜50μmの範囲内が望ましい。これは、地盤改良体12と繊維100の接触を十分に確保するためには、ある程度の大きさが必要なこと、一方、繊維100の直径が大きくなり過ぎると、繊維100を屈曲させて相互に絡み合わせるのが困難になるため、大きさに限界があるためである。
【0099】
なお、繊維100の形状が直線状では、直径が適切な大きさであっても、繊維100同士が相互に絡み合うことはなく、十分大きな摩擦抵抗を得ることはできず、図9(A)に示すように、繊維100と繊維100が相互に絡み合うよう混入させることが望ましい。
【0100】
これにより、地盤改良体12と繊維100の間に十分大きな摩擦抵抗を作用させることができる。この摩擦抵抗により、地盤改良体12の表面での破壊面106の発生、破壊面106の成長を抑制できる。即ち、局所的な応力が集中する頭部の靭性を補強することができる。また、耐震性も向上できる。更に、繊維100を補強していない地盤改良体の下部には、荷重分散効果で均等な水平力が伝わるようにすることができる。
【0101】
他の構成は、第2の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【符号の説明】
【0102】
10 滑り止め機構
12 地盤改良体
14 凸部
16 躯体
18 せん断破壊面
20 水平面
22 凹部
24 凹凸部
28 地盤改良体
104 繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に凹凸部が形成され、凸部を構造物の躯体に呑み込ませた地盤改良体で前記構造物を支持し、水平力を前記躯体から前記地盤改良体へ伝達する、地盤改良体の水平耐力算定方法であって、
前記水平力により、前記凸部が破壊されるときに生じるせん断破壊面の水平面に対する傾斜角度をせん断面傾斜角度をαとし、前記せん断面傾斜角度αに沿って構造物が変位するときに、前記構造物が重力に逆らって変位するときに消費される仕事量を、前記地盤改良体の水平耐力に加算する水平耐力算定方法。
【請求項2】
前記水平耐力の算定方法は、
前記せん断面傾斜角度αと前記地盤改良体の水平耐力F(α)の関係を示す水平耐力特性を、下式で算出する水平耐力特性算出ステップと、
前記水平耐力特性から、前記水平耐力F(α)を最も小さくする前記せん断面傾斜角度αpを求め、前記せん断面傾斜角度αpにおける水平耐力F(αp)を、地盤改良体の水平耐力とする最小耐力算出ステップと、
を有する請求項1に記載の水平耐力算定方法。

【数1】


ここに
Pf:地盤改良体と躯体境界面の摩擦抵抗面における鉛直力(kN)
Ps:地盤改良体のせん断抵抗面における鉛直力(kN)
α:地盤改良体のせん断面傾斜角度(度)
φ:地盤改良体の摩擦角(度)
μ:地盤改良体と躯体境界面の摩擦係数(−)
S:地盤改良体のせん断面の1個当たりの面積(m

【数2】


De:地盤改良体の奥行き方向の有効幅(m)
La:地盤改良体の凸部の水平長さ(m)
H :地盤改良体の凸部の高さ(m)
Fc:地盤改良体のコンクリートのせん断強度(kN/m
N:地盤改良体の凸部の総数(個)
【請求項3】
前記水平耐力特性算出ステップと、
予め設定した、せん断面傾斜角度αqにおける前記水平耐力F(αq)が最小値となるよう、前記凹凸部の凸部の高さHを調整し、調整後の前記高さHに対応させた前記水平耐力特性を前記(1)式で算出する凹凸部調整ステップと、
最小値とされた前記水平耐力F(αq)を、前記地盤改良体の水平耐力とする最小耐力算出ステップと、
を有する請求項2に記載の水平耐力算定方法。
【請求項4】
前記せん断面傾斜角度αqを0度(水平面)とする請求項3に記載の水平耐力算定方法。
【請求項5】
前記せん断面傾斜角度αqを10〜45度の範囲内のいずれかの角度とする請求項3に記載の水平耐力算定方法。
【請求項6】
頭部に凹凸部を形成し、凸部を躯体に呑み込ませ水平力を前記躯体へ伝達する地盤改良体であって、
前記水平力により、凹部と隣り合う前記凸部が破壊されるときに生じるせん断破壊面の水平面に対する傾斜角度をせん断面傾斜角度αとし、下記(2)式で算出される前記せん断面傾斜角度αと前記地盤改良体の水平耐力F(α)の関係を示す水平耐力特性を用いて、予め設定した、せん断面傾斜角度αqにおける前記水平耐力F(αq)が最小値となるよう、前記凹凸部における前記凸部の高さH、前記凸部の水平長さLa、及び前記凸部の総数Nが調整されている地盤改良体。

【数3】


ここに、
Pf:地盤改良体と躯体境界面の摩擦抵抗面における鉛直力(kN)
Ps:地盤改良体のせん断抵抗面における鉛直力(kN)
α:地盤改良体のせん断面傾斜角度(度)
φ:地盤改良体の摩擦角(度)
μ:地盤改良体と躯体境界面の摩擦係数(−)
S:地盤改良体のせん断面の1個当たりの面積(m

【数4】


De:地盤改良体の奥行き方向の有効幅(m)
La:地盤改良体の凸部の水平長さ(m)
H :地盤改良体の凸部の高さ(m)
Fc:地盤改良体のコンクリートのせん断強度(kN/m
N:地盤改良体の凸部の総数(個)
【請求項7】
前記せん断面傾斜角度αqを0度(水平面)とする請求項6に記載の地盤改良体。
【請求項8】
前記せん断面傾斜角度αqを10〜45度の範囲内のいずれかの角度とする請求項6に記載の地盤改良体。
【請求項9】
前記地盤改良体は、地盤を改良した柱状の改良柱を互いにラップさせた壁体として構成され、前記凹凸部の凹部は、前記地盤改良体の頭部を前記壁体の幅方向に横断する溝状に形成され、前記凹部が前記頭部を横断する方向は、平面視において、前記壁体の長さ方向に対し角度を持って交差している請求項6〜8のいずれか1項に記載の地盤改良体。
【請求項10】
前記改良柱がラップされたラップ部には、前記壁体の長さ方向に対して直交し、矩形状に形成された前記凹部が配置されている請求項6〜8のいずれか1項に記載の地盤改良体。
【請求項11】
前記改良柱の中心部には、円柱状に形成された前記凹部が、前記壁体の頭部から所定の深さで設けられている請求項6〜8のいずれか1項に記載の地盤改良体。
【請求項12】
隣接する前記凹部の深さを異ならせた請求項6〜11のいずれか1項に記載の地盤改良体。
【請求項13】
前記地盤改良体の頭部には、前記壁体の長さ方向に、前記凹凸部が複数形成されている請求項6〜12のいずれか1項に記載の地盤改良体。
【請求項14】
前記地盤改良体の頭部には、靭性を補強する繊維が混入されている請求項6〜13のいずれか1項に記載の地盤改良体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−107446(P2012−107446A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258115(P2010−258115)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】